最大にして最強の南波刑務所で、囚人と看守がくり広げる超お馬鹿アクションコメディの『ナンバカ』。ビビッドな色合いと、個性的なキャラクターが注目の作品です。まずは人気の秘密を知っていただくため、ひと癖もふた癖もあるキャラクターや魅力の数々を、一挙に紹介していきます。
双又翔が描く『ナンバカ』は、2013年からcomicoで連載中のコメディ漫画です。目を引くオールカラーのビビッドな色合いで、一気に注目を集めました。
スピード感のあるアクションと、キャラクターに隠されているさまざまな闇など、波のある展開も魅力のひとつです。
またキャラクターが持つ才能が、単純かつ斬新にまとめられていて、誰が読んでも分かりやすくなっているのも人気の秘密となっています。
- 著者
- 双又翔
- 出版日
- 2015-11-12
『ナンバカ』は、日本最大にして最強のセキュリティを誇る、南波刑務所が舞台。ひとりの脱獄も許さない、世界最高水準の徹底したセキュリティが自慢です。
そこでは、13舎13房に収監されている4人の囚人と看守を中心とした、おバカでハイテンションな日常がくり広げられています。
おバカなのは、囚人だけではありません。南波刑務所に投獄されている囚人も管理する看守も、みんながみんなぶっ飛んだキャラクターなのです。
すべてを紹介することはできませんが、たくさんのキャラクターのうち、ほんの一部の「おバカ」を紹介していきましょう。
物語の舞台は、とある孤島にある南波刑務所。この刑務所は、脱獄不可能といわれるほどの、世界最高水準のセキュリティを誇っていました。そんななか、13舎13房の囚人、ジューゴ、ロック、ウノ、ニコは、ゲーム感覚で日常的に脱獄をくり返し、看守との「追いかけっこ」を楽しんでいたのです。
本人たちは、南波刑務所の居心地がいいため、本気で脱獄するつもりはありませんが、看守の双六一(すごろく はじめ)は自身のプライドにかけて、日々彼らを追いかけているのでした。
何度13房に戻しても、また脱獄。また戻して、また脱獄……そんなイタチごっこの日々を過ごす彼らの戦いは延々と続くのでした。
出典:『ナンバカ』1巻
ジューゴはどんな鍵でも開けることができ、南波刑務所が誇る最高のセキュリティさえ破るのは簡単ですが、唯一、手・足・首にはめられた枷だけは、まったくはずすことができません。それは、かつて収監されていた刑務所で、首の後ろに傷のある男に、寝ている間にはめられたという謎の枷なのです。
また、時折その枷のせいでジューゴの腕は長い剣に変化し、人間性も凶暴になってしまいます。その枷がどういった仕組みになっているのかは不明ですが、一旦凶暴化すると仲間では抑えきれず、最強看守の出番となるのです。
ジューゴは、その枷と関係のある「首の後ろに傷がある男」を追って、各地の刑務所を転々としていました。
南波刑務所に入ってからは、本気で脱獄する気はまったくなく、それどころか13房を「家」にしようと考えています。ただ、周りに乗せられてテンションがあがり、脱獄をくり返していますが、ひとりの時は無口で大人しい性格です。
1巻では、看守長がジューゴを、「最強の天才脱獄囚No.610の男」の息子だと語っていますが、610番をナンバカ風の名前で読むとムトー。その男が父親だとすると、ジューゴの脱獄の才能は遺伝なのかもしれません。
またジューゴの心のなかには、「エルフ」という者が存在しています。エルフはいつかジューゴを支配するといっていたので、ジューゴは不安と恐怖にかられていました。
しかし、そんな恐怖から救ってくれたのは、13房の仲間の存在でした。自分には脱獄以外に何もないと思っていたジューゴですが、彼らがいることで、不安と恐怖の支配から逃れることができたのです。
ただ、首の後ろに傷のある男が、なぜジューゴを選んで枷をはめたのかということだけが心残りとなっています。なぜ、どこの刑務所でも見つからないのか、謎は深まるばかりです。
出典:『ナンバカ』1巻
ウノは13房ではリーダー的な存在で、常に仲間を引っ張っていくタイプの人物です。投獄されてもギャンブルの癖は直らず、刑務所内でも囚人相手に賭け事をしている模様。ただ、賭けるものは雑誌を読む順番という軽いものなので、看守も見逃しています。
ウノも、投獄されては脱獄をくり返していましたが、その理由は恋人とのデートが目的。デートの日だけは必ず脱獄しているので、大人しくしている時はつまり、デートの約束がないということなのです。特に今のところは、受付の女の子を大層気に入っているので、脱獄する予定はありません。
彼はとにかくイケメンが大嫌いです。新年大会がおこなわれた、2巻のカードゲーム勝負では、3舎6房のトロワとハニーのイケメン2人に大勝利。しかしこれは、イケメンだから闘志を燃やしたのではなく、ウノの洞察力の凄さを示したシーンでもあります。
相手も気づかないようなちょっとした仕草、瞬きや口の動きなど、些細なことも彼は見逃さないのです。さすが、イカサマギャンブラーといわれるだけあって、その才能はまさに天性なのでしょうね。
出典:『ナンバカ』1巻
ロックはとにかく食通で、食べることが大好きです。彼から食を取ったら何も残らないでしょう。刑務所内のメシがまずいと言っては暴れて脱獄をくり返し、南波刑務所に収監されました。しかし、南波刑務所で配給される食事がことのほか美味しく、いたく気に入ったので、暴れなくなったのです。
他の刑務所に収監されているときは、メシがまずいといっては、牢をブチ破って脱獄してしまうほどの怪力を発揮していました。根は優しいですが、まずいメシには大暴れするという単純志向の持ち主なのです。
また、体の大きさに似合わず、小さくて可愛い動物が大好きという一面も持ちあわせています。館内で双六一が飼っている猫のクーを可愛がっており、スキあらば持ち帰ろうとしています
- 著者
- 双又翔
- 出版日
- 2016-05-12
出典:『ナンバカ』1巻
ニコは、ギャングに足として使われていたドラッグの売人でした。本人はそれがドラッグとは知らずに売っていたので、軽い刑期で済んでいます。一応おこなわれた薬物検査では、多数のアレルギーや病気が見つかったため、集中治療を受けなければなりませんでした。
しかし、注射と薬をことごとく嫌がり、別の収容所に移しても治療の日が近づくと牢をブチ破って脱獄。結局、軽い刑だったものが「器物破損」と「加重逃走の罪」で南波刑務所に収監されました。ニコの病気は「人に移す」ものではなく、対象の人物の動きを完全にコピーしてしまうという「伝染される」ものでした。これもニコの特異体質によるものです。
また、南波刑務所は最先端の医療を取り入れているため、注射をすることなく投薬のみで治療しています。なお、薬はニコの好みの味で精製してくれているので、今は薬の時間が何よりの楽しみとなっているようです。
ニコの病気はいまだ解明されていないものも多いので、今後とんでもないものが見つかるかもしれません。また、定期的に投薬をしないと、人間性や容姿が恐ろしく変貌してしまうという特徴もありますが、その原因もニコの病気と関係あるようです。
出典:『ナンバカ』2巻
双六一は、13舎の主任看守長で、日々4人の脱獄を追い回しています。重度のヘビースモーカーで、時間されあれば常にタバコを吸っているほどです。
2巻の新年大会では、書道の腕前を披露する一面もあり、また常人離れした力強さで囚人たちを押さえ込むなど、まさに無敵の看守です。
- 著者
- 双又翔
- 出版日
- 2016-09-12
出典:『ナンバカ』1巻
ヤマトは、極度の方向音痴で、刑務所内でも常に迷子状態。しかも、それをもろともしない大らかな性格の持ち主で、愛馬の大和丸に乗って出勤した時に壁を多少壊しても、まったく気にしません。日本男児たるもの、白米を食わずしていかなるものか、というほど無類の白米好きで、13舎にも米俵を差し入れすることもあります。そのため、食にうるさいロックとも気が合う様子。
ただ、常にハイテンションなことと、ハードな訓練に引っ張り出すことから、13舎の囚人から煙たがられている存在でもあります。
体の頑丈さは人一倍で、思い切りぶつかっていっても、殴りかかっても、どうってことはありません。ロックと同様、馬鹿力が自慢ですが、欠点は力の加減ができない不器用さと、周りの空気を読めない(無視?)ことです。
出典:『ナンバカ』1巻
九十九は、忍者の里に生まれた忍の一族のひとりでしたが、あまりにも忍の才能がなく、里では誰も相手にしてくれませんでした。そんな九十九が幼少の頃、ある映画監督の女が母親だと名乗り、里から誘拐されてしまったのです。
それから数年後、九十九は演技という意外な才能を発揮して、俳優界の大スターとなりました。しかし、忍者の里で生まれた忍というプライドは捨てきれず、「隠密行動」をしていたため、不法侵入で逮捕されてしまいます。
忍であるがため、「忍法(実際には忍法とは程遠い)」で脱獄をくり返していたので、南波刑務所に収監されました。九十九の俳優としての人気を捨てるのは惜しいと、監督の助手が何度も刑務所に足を運んでいます。しかし、彼らは自分の稼ぎが目当てだということと、自分は忍として生きたいとの理由で、今のところ復帰するつもりはないようです。
南波刑務所を出た後は、才能のない忍の道を目指すのか、俳優の道を選ぶのか……といったところでしょう。
ムサシは、愛情豊かに育てられていましたが、突然身体から発火するという悲劇を背負ってしまいました。人体発火というだけで、実際に何か罪を犯したわけではなく、その危険性から収監されてしまうのです。彼の人体発火にも、ジューゴと同じ「首に傷のある男」がかかわっており、ムサシもまたその男を捜しているひとりでした。
「首に傷のある男」にたどり着くため、その鍵となるジューゴの枷を狙っています。危険性のある人物のため独房に入れられていますが、その後処置を受けたため、人体発火の危険性は抑えられているようです。
本質的にはとても真面目な青年で、かつては通訳を目指していたこともあり、40ヶ国語ほど話すことができます。また、点字通訳も同時にマスターしたという勤勉な青年でした。
もともと「お日様」みたいに体温が高かっただけのムサシが、人体発火にまで至った経緯とは……。
- 著者
- 双又翔
- 出版日
- 2017-02-10
リャンは、師匠や仲間を守るため、仕方なくチャイニーズマフィアの構成員となり、仕事を請け負っていました。元々は、自分の宗派に熱心で、日々筋トレを欠かさないストイックな人物。新年大会が行われた2巻では、食に対するこだわりを述べたロックに「くだらない」といい、キレられたうえに敗北しています。
リャンは、南波刑務所に収監されたことにより、チャイニーズマフィアから逃れることができたので、ある意味とても感謝しているようです。そのため、刑務所内での鍛錬にも余念がありません。
出典:『ナンバカ』4巻
3舎の看守部長キジは、とにかく美しいものが好きで、ド派手なメイクに長いつけまつげが特徴です。待たされることと、オカマと呼ばれることが大嫌い。囚人たちだけではなく、他の看守にもよく小言を言うので、どちらかというと保護者のような存在です。
周囲を気遣っての言葉や行動も多く、所内で総合医院長と総合科学部長を務める、御十義夫婦の喧嘩を仲裁するなど、面倒見のいい一面もあります。
暴走する囚人を止めるための「職務執行」で使用する武器は、円形に刃がついた大型のもので、盾の代わりにもなる優れもの。3巻ではムサシの暴走をとめるため、武器を超速で回転させて彼の発火を飛ばしています。
年齢、国籍、すべてにおいて謎の存在です。首の後ろに傷のある男を「あのお方」と呼び、深く関わる存在。ジューゴの前に神出鬼没に現れますが、その姿は他の人からは見えません。ジューゴの過去だけでなく、ムサシの人体発火にも関係しているようで、ふたりから憎まれています。
常に邪悪な笑みを浮かべる不気味な姿。「あのお方」の研究の邪魔になると見なした者は、即座に始末する残忍さをもち合わせる、まさに外道たる人物です。
何の研究をしているのかも、まったくの謎に包まれています。ジューゴの前に現れても、そこに実体があるのか不明です。さらに、「いつかジューゴの体を支配する」と言った意味も、いまだ明かされていません。
とにかくおバカキャラ勢ぞろいで、笑える作品です。しかし、笑える展開だけでなく、シリアスな一面やサスペンス的な要素も含まれているので、満足して頂けるのではないでしょうか。オールカラーなので、漫画の雰囲気そのままを味わって頂けるのも魅力です。