その独特な模様と色彩で人の目を惹くアゲハ蝶。春から夏にかけてよく見かけますが、彼らは一体どういう暮らしをしているのでしょうか。本記事では、自分で育ててみたい方に向けて、アゲハ蝶の幼虫の育て方を紹介します。あわせて、アゲハ蝶について深く理解できるおすすめの3冊も取り上げるので、ぜひご覧ください。
・飼育かご
水槽型のかごを用意しましょう。プラスチック製の飼育かごがホームセンターで売られています。透明なかごに2mm位のあみ目のプラスチックの蓋が付いているかごを選びましょう。なお、全面網目の虫かごは幼虫が糞をしたときに周りにころげ落ちてしまうので避けた方がよいです。
・割りばし、または木の棒
羽化するときに成虫がつかまり、羽を乾かすのに必要です。羽化の際、つかまるのに失敗して下に落ちてしまうと、広がりきれなった羽がみるみる黒くなり、飛べない成虫になってしまいます。
・餌
ミカン科の植物の葉を食べます。カラタチ、ミカンの葉っぱを枝ごと与えましょう。山椒の葉っぱでもかまいません。
・ティッシュペーパー
かご内の湿度を保つのに役立ちます。餌となる葉から出てくる水分によって結露が発生すると、幼虫の病気になる恐れもあります。ティッシュペーパーやキッチンペーパーなどをかごの底に敷くことで、無駄な湿気を吸い取ってくれるのです。
幼虫は体が柔らかいので、隙間があると逃げてしまう可能性があります。小さな生き物であるため、1度迷子になるとどこに行ったかわかりません。そして一旦外に出ると、餌を求めて歩きまわります。蓋の穴はとにかく小さい方がよいでしょう。
また幼虫はとにかく天敵が多く、もっとも怖いのは寄生蜂です。卵を体に植え付けられないためにも、小さい穴の蓋を選び、長時間開けっ放しにしないようにしましょう。様子を確認し、餌を補充したら、速やかに蓋を閉めるようにしてください。
水槽の中はあまり湿らせないようにしましょう。幼虫は水を飲みません。餌の水分だけで充分です。たとえば霧吹きなどで内部を湿らせてしまうと、カビなどの原因となってしまいます。そうすると幼虫がウイルス等に感染して病気にかかる恐れがあります。
それでは、幼虫を育てていくのにどのくらいの葉っぱが必要なのでしょうか。
わかりやすく説明すると、4齢幼虫までは大体10枚くらい。5齢幼虫になると、それこそもりもり食べます。個体や種類によっても違いますが、40〜50枚は食べるでしょうか。
幼虫はとにかく食いしん坊。葉っぱがなくなる前に早めに追加して与えましょう。理想は飼育かごの中にカラタチなどの林や森ができるように置くことです。何匹も飼っている場合、餌がなくなってしまうと、共食いを始める危険性さえあります。そのため、枝ごと与えましょう。
成虫は2週間しか生きられないので、交尾が終わると大忙しです。
アゲハ蝶のメスは、ミカン科の木に2mmくらいの白みがかった黄色の卵を産みます。大体200〜300個もの卵を葉っぱ全体に均等に産むのです。産みつけられてからは、およそ5日ほどで孵化します。気温によっても多少変わりますが、遅くとも7日もすれば生まれてくるでしょう。
生まれたばかりの幼虫は、鳥の糞そっくりの模様をしています。最初は4mmほどの小さな赤ちゃんです。この幼虫が葉っぱを食べて大きくなっていきます。
幼虫は1枚の皮膚に覆われているので、ある程度成長するともっと大きくなるために皮を脱ぎます。これを脱皮といい、4回くり返して大きな幼虫に成長していくのです。
脱皮のたびに名前が付けられていて、生まれたばかりの赤ちゃんは1齢幼虫、次の脱皮で2齢幼虫、そして3齢幼虫、4齢幼虫と呼びます。そして4回目の脱皮で、黄緑色の5齢幼虫となるのです。この頃には体も4〜5cmほどになり、蛹になるための最終段階となります。ここまで成長するのに、だいたい1か月ほどかかります。
2週間ほど経って、無事に蛹の期間が終われば、いよいよ成虫。黒っぽい縞模様が透けて見えるようになれば間もなくです。蛹の背中に割れ目が走り、湿った羽が折りたたまれた成虫が出てくるでしょう。
折りたたまれている羽を乾かすため、飼育かごの割り箸や棒につかまります。2時間くらいで羽が広がり、空を飛べる状態になります。早朝に羽化することが多いです。
もっとも多く見かけるのがアゲハ(ナミアゲハ)です。成虫を時々見かけるかと思いますが、名前のとおり、薄黄色と黒の縞模様をしています。
幼虫は黄緑色で、吸盤の上の方に白い柄があるのが特徴です。頭に蛇の目のような模様があるので、スズメなどにはこれが猛禽類の目に見えます。天敵から身を守るのに役立っているのです。カラタチなどミカン科の植物の葉が主食です。
怒ると2本のオレンジのツノを出して威嚇します。このツノは臭角といい、天敵から身を守るために悪臭を放ちます。
真っ黒いカラスのような色をした蝶を見かけたことがありませんか?これがクロアゲハです。ナミアゲハよりふた回りほど大きいです。
幼虫はナミアゲハよりもやや茶色がかった体色です。怒った時に出す臭角はなんと赤紫色をしています。
この2種類は同じアゲハの仲間です。形もよく似ていて、カラタチの木にたくさん暮らしており、私たちに馴染み深いミカンの葉もよく食べます。餌の入手も比較的容易で生活圏も近いため、飼育もしやすいでしょう。夏休みの自由研究として、親子で生態を観察するのもよいですね。
アゲハ蝶が飛んでいる姿を見かけたことがない方はいないでしょう。しかし、卵から成虫になるまでの過程をすべて見たことがある人は少ないのではないでしょうか?
この本は彼らの一生を追ったドキュメンタリーで、アゲハ蝶のことがひと通り理解できる内容です。
ミカン科の木に産卵し、生まれてきた幼虫たちがその葉を食べて成虫になるまで、アゲハ蝶の生態を分かりやすい写真付きで紹介しています。
- 著者
- 藤丸 篤夫
- 出版日
- 2009-07-01
昆虫写真家の著者がふんだんに写真を織り込み、アゲハ蝶の魅力を余すことなく解説している本書。
彼らの一生を追うだけでなく、飼育方法なども掲載されています。まさにガイドブックとしては最適な1冊でしょう。
幼虫が生まれる瞬間を見たことのある方はいますか?
この絵本の主人公は、生まれたての幼虫です。ちょっとした事件に巻き込まれながらも果敢に生きていくそのたくましさを描いています。
- 著者
- 小杉 みのり
- 出版日
- 2013-09-20
アゲハの赤ちゃんが誕生する瞬間を収めた絵本です。
小さなお子さんのいるご家庭で、命の大切さを考えながら一緒に読んではいかがでしょうか?
私たち人間と同じ世界に生きるアゲハ蝶。しかし、同じ景色でも、彼らからの見え方は全然違うのです。
そんな景色の見え方の違いを、科学の視点からとらえていきます。少し視点を変えるだけで、彼らの新しい魅力が見つかるかもしれません。
- 著者
- 野島 智司
- 出版日
- 2012-02-02
本書では、アゲハ蝶以外にもネコ、イヌワシ、カタツムリなどさまざまな生物を取りあげています。私たちがこの世界を一部からしか見ていないことに気づかされ、驚くでしょう。そしてますます、生き物の奥深さに面白さを感じるはずです。
いかがでしたか?入門書から物語、ちょっと違った視点からアゲハ蝶が好きになる本までさまざまな本を紹介しました。ぜひ手にとってみてくださいね。