絶望感しか漂ってないとはいっても、決して内容がつまらないという意味ではありません(たまにそういう本もあrK☆#ピ◆・・・)。俗にいうアレです。イヤミスってやつです。読んだあと嫌な気持ちになるミステリーのことです。
イヤミスといわれる作品たちは、イジメや嫉妬、猟奇殺人といったムゴい内容のものが多く、読んでいると精神がえぐられそうになります。恐らく好き嫌いがはっきり分かれるはず。私も初めのうちは少し敬遠してました。が、怖いもの見たさで何冊か読んでいるうちにハマりだし、今では大好きなジャンルの一つに。
だって面白い作品が多いんですもの!!
ってことで今回は、私のお気に入りを紹介していきまーす! あ、一言いっておきますが、影響を受けやすい人は本当に注意です。ちなみに私は影響受けまくってます。あははっ! 泣きたい。
盤上の敵
- 著者
- 北村 薫
- 出版日
- 2002-10-16
今回の一押し!
実は私、この本がイヤミスだったとは露知らず。元々ミステリーとしての評判がすこぶる高かったため、トリック目当てで買いました。「うっふふーん。楽しみ楽しみー!」と小鳥が戯れるかのようなテンションで本を開くと、ん? ん? 何やら冒頭に注意書きが載っているではありませんか。
そこには、著者・北村薫さんからこんな一言が。「今、物語によって慰めを得たり、安らかな心を得たいという方には、このお話は不向きです」と。……おいおいおいおい。不穏すぎるやないか。
今作の主人公は、TVディレクターの末永純一。ある日、猟銃を持った殺人犯が彼の家に立てこもり、妻の友貴子が人質にされてしまいます。彼女を救うため、純一は警察を出し抜き、犯人との直接交渉を開始。そして迎える衝撃の結末……!というお話。
本編は、純一と友貴子、二人の視点が交互に描かれる形で進行していきます。主に、純一の視点では犯人との攻防戦が、友貴子の視点ではそれまでの回想が中心に描かれています。
……はい。ここが今作のポイント。友貴子の回想こそが、今作のイヤミスたる所以となっております。一言でいうと、ムゴいです。主に彼女が体験したイジメ(もはや傷害のレベル)が赤裸々に綴られているのですが、これがかなり壮絶な内容。トラウマになります。
しかも恐ろしいことに、著者・北村薫さんの描写がうますぎるんです。五感を刺激する巧みな描写によって、イジメの壮絶さがパワーアップしております。「うわぁもうやめてぇぇ」って感じです。
と、率直な感想を述べてみましたが、面白さは抜群です。ぐいぐい引き込まれます。
この容赦ないイヤミスっぷりに耐えてでも、一読の価値はありますぞ。
凍花
- 著者
- 斉木 香津
- 出版日
- 2013-02-14
こりゃ切なかったなぁ……。ある家族をめぐる悲しい物語です。
美人で仲が良いと評判だった園部家の三姉妹。しっかり者で優しい長女、明るく天真爛漫な次女、甘えん坊な三女。一見幸せそうに見える一家ですが、ある日、長女が次女を撲殺。動機は、大切にしていた人形を投げられたからだという。どうしても納得のいかない三女は、本当の動機を探るため、姉の調査に乗り出します。すると、徐々に自分の知らない別の顔が明るみになり、姉に対するイメージが一変。そしてたどり着いた悲しい真実とは……。
いやはや、ものすごく切ないお話でございます。まさに慟哭。人間の奥底に潜む闇、誰にも言えない悩みといったものがリアルに描き出されており、読んでいて苦しくなりました。
このドロドロ感、凄まじいです。これ、夜一人で読んじゃあかんやつです。凹みます。
悲しいストーリーですが、他のイヤミス作品に比べると僅かながら希望が感じられる印象です。単にイヤミスという言葉で括ってしまうのは勿体ない作品。おすすめです。