キャラの濃すぎるお客様、イカれた同僚、売場で起こる珍事件……本好きはもとより、そうでない方も爆笑間違いなし!今回は、リアルな仕事風景を描くドタバタ書店コメディ漫画、『ガイコツ書店員本田さん』をご紹介します。
書店員と聞いて、あなたはどんなイメージをもちますか?
落ち着いた穏やかな職場で、本に囲まれながら、静かで知的でおしとやかな方々が務めるお仕事……と思いきや、そのイメージは本作を読むと大きく覆されるでしょう。
キャラの濃すぎるお客様、イカれた同僚、売場という戦場で起こる珍事件……そんな職場で忙しく働くガイコツの姿をした書店員、本田さんが主人公です。
知的でおしとやかな書店員の姿はどこにもありません。本田さんの視点で描かれた書店はどこまでも現実的でありながら、書店員の日々はこんなに面白くて刺激的なんだ!と思わせてくれるでしょう。
- 著者
- 本田
- 出版日
- 2016-03-26
『ガイコツ書店員本田さん』は、書店のリアルな現場をコメディタッチで紹介しています。3巻発売時には、アニメ化も発表されました。作中では慌ただしく店内を動いている様子が伝わってきますが、動画になると、さらにその忙しさが伝わってきそうです。登場する書店員キャラは、皆顔が何かしらデフォルメ化されているので、声はなかなか想像つきませんが……動くガイコツ書店員本田さん、今からアニメ化が楽しみですね!
今回は作中から、面白エピソードをいくつかピックアップしてご紹介します。
主人公でもあり作者である本田さんの実体験をほぼそのまま漫画に描かれている本作。ガイコツ頭の本田さんは、漫画売り場担当の書店員です。
都内の書店には、外国人の方からマニアックな趣味をもつお客様まで、人種も年齢もさまざま。本田さんは、そんなお客様やこれまた個性的な同僚たちと、まるで戦場のような職場で面白く刺激的な毎日を送っています。
ある時は外国人観光客にオススメのBL漫画を聞かれたり、ある時は体育会系の接客研修に出席したり、またある時は同僚たちと、本のおまけ同封作業に忙殺されたり……。ユニークな登場人物たちとの、書店での日々が描かれています。
書店の知られざる裏側や実際にある作品など、伏字をふんだんに盛り込みながら語られる書店員の本音は、本好きにとって興味深いエピソードばかり。しかし、そこまで本好きでない人も書店が気になってしまうような、本と書店への愛と魅力にあふれた漫画です。
作中に出てくる書店員や個性的なお客様はもちろんのこと、1番魅力的なのは、この漫画の主人公でもあり、著者でもあるガイコツ書店員の本田さんです。
なんでも著者の本田さんは、アルバイトで入った書店での出来事を漫画にしたら面白いのでは?と思いついてpixivで公開したそう。それを見た「ジーンピクシブ」の編集者にスカウトされ、同サービスで漫画を連載することになりました。
ちなみに、このインパクト満点のガイコツ頭の本田さんのビジュアルですが、本田さん自身がキャラクターを作ることが苦手だったため、このキャラデザインになったそう。普通の人物を描くよりも書き込みが多く、逆に面倒くさい、という現象が起こっているようですが……。
話を読み進めても、「書店で働くコミック担当のガイコツ」ということ以外、本田さんの基本情報はなく、はたして男性なのか女性なのか、そもそも本当に「本田さん」は実在する人物なのか?という疑問が浮かびます。
ユニークな社員たちと忙しく働きつつも、個性の強いお客さんに戸惑う本田さん。ぜひ生で見たい気持ちになりますが、残念ながら現在は書店を退職されているようです。
「NA○UTO」「エ○ァンゲリオン」など、日本の漫画が世界でも人気となっている昨今、外国から来店されるお客様も珍しくないそう。
そんなある日、本田さんのもとに現れたのは、華やかなオーラをまとった初老のイケメン外国人です。
初老のおじさまは、娘に頼まれ、とある漫画を探していると言います。「なかなか見当たらなくて困っているんだ」と疲労感をにじませ、本田さんにスマホの画面をチラリ。そこに映っていた1冊の本は……18禁同人誌!?
「某有名万事屋漫画の触手もの」という完全に想定外の案件に、本田さんは言葉を失い、そして頭を悩ませます。「それは18禁の同人誌で素人向けではない」「お客様の娘さんには刺激が強すぎる」などさまざまな想いが頭をよぎりますが、まず1番に伝えなければならないことがあると気がつきます。
そう、「当店では薄い本のお取り扱いはございません」と言わなければならないことを……!(しかも英語で)
その後も、BL好きの外国人美女軍団、爆買いするアジア系外国人など「ジャパニーズ・マンガ」を求めて次々とやってくる熱量の高いお客様。たじろぎながらも対応する本田さんのやり取りが面白く、思わずくすりと笑ってしまうエピソードばかりです。
某社営業のSさんから、各地の書店員や営業が集まる飲み会に誘われた本田さん。以前その営業さんから紹介された方々がかなり個性的だったことを思い出し、『ガイコツ書店員本田さん』の著者であることは隠して、漫画のネタを探すという名目で参加することにします。
書店員の生の声を!と意気込む本田さんですが、「チクショー、取次め!」「BLが世界を平和にするんです!!」など、開始早々罵声の飛び交う飲み会に圧倒されてしまうのです。
その飲み会で、ある書店員が突然本田さんを指さし「ガイコツ書店員みたい」と言い出します。本田さんはバレているのかと思いドキドキ。本田さんの事情を知っている営業さんが本の感想を求めると「ムシの良いことばっか書きやがってと思います」「綺麗ごとばっか」などと熱く批判する熱血書店員に、本田さんは思わず「すみません」と謝ってしまい……!?
みんな本が好きで、本好きな方々の気持ちに応えたいと思うからこそ、つい声を荒げてしまう……そんな静かな熱意を感じるエピソードの数々に、書店員さんに敬意を払わずにはいられない、と感じることでしょう。
- 著者
- 本田
- 出版日
- 2016-12-24
本田さんの漫画売り場では、出版社やジャンルで本棚を分けて、それぞれの棚に担当がついていました。
それが今回、大規模な担当シャッフルがされることになります。本田さんの新担当はいったい……!?
素人が安易に踏み入れてはいけない感のある「ゲーム系書籍」の棚はどう頑張っても無理ゲー、と同僚と話しているうちに、本田さんの版元(出版社)別の棚分析が始まります。この分析が書店員の視点で考察されているため、一般読者にはとても面白く感じられるでしょう。
なかなか漫画が完結しない、もしくは完結しても売れるので新作を置くスペースがない地獄の「集○社」の棚、レーベルごとの発売間隔を狭め、漫画を多産している情熱と狂気の「講○社」の棚、「名探偵コ○ン」を品切れにすることは万死に値する「小○館」の棚などなど……。
そして本田さんがもっとも恐れるのは、「毎日が新刊発売日」の多頭型出版生命集合体「KAD〇KAWA」!! 他にも「秋○書店」や「白○社」など担当の精神力が求められる個性的な版元が、本田さんの独断と偏見による「大変そうな棚」として列挙されています。
結果、新担当は「アメコミ」「大判画集」に決まりますが、それは本田さんにとってまったくの新境地でした。新しい棚を愛せるのだろうか……と不安がる本田さんに、先輩が「そのうち愛芽生えんじゃね!?」とひと言。雑に送り出されます。
その後、なんだかんだ付き合っていくうちに愛着が芽生えていく本田さんに、ほっこりできるお話です。
- 著者
- 本田
- 出版日
- 2017-09-27
- 著者
- 本田
- 出版日
- 2016-03-26
独特すぎるキャラながらも、超リアルな書店の様子が面白い本作。3巻ですでに最終回の兆しに触れられているということで、4巻で完結となるかもしれません。
アニメ化で注目も集まる本作をぜひ、ご自身の目でご覧ください!
いかがでしたか?書店や出版社の裏側が垣間見れる本作は、本好きの方におすすめしたいコミックエッセイです。書店に馴染みのない方でも、この作品をきっかけに、新たな発見があるかもしれません。ぜひ手にとって読んでみてください。