コミュ症系ヒロイン古見さんの日常を描く作品、『古見さんは、コミュ症です。』の魅力を、本気で考えてみました!
『古見さんは、コミュ症です。』は、タイトルのとおりコミュニケーションをとるのが苦手な女の子・古見さんと、古見さんと友達になった男の子・只野くんの2人を中心とした、日常を描くコメディ漫画です。
……ここまでだと、「なんだ、類似する作品が多く存在する日常系漫画じゃないか」と思うかもしれません。
しかし、この漫画、ただの日常系漫画ではないのです。
新たなヒロインジャンルの開拓、違和感のないデフォルメ絵との配合、うまく入れられた恋愛要素など、日常系漫画を好む読者にとっても、普段あまり読まない方にもとっても、新鮮な作品となっています。
そんな真・日常系漫画『古見さんは、コミュ症です。』の魅力を、本気で考えていきます!
気になった方は、こちらの動画も見てみください。
全校生徒が強烈な個性を持っている伊旦高校に入学した只野くんは、同じクラスの美少女・古見さんと友達になりました。しかし、古見さんはコミュニケーションが大の苦手。
「お弁当が食べられなかったんです。」
「本当は喋りたいんです。」(『古見さん、コミュ症です。』1巻から引用)
まったく喋らない彼女の本音は、普段の彼女の態度からは想像がつきません。
一緒にお弁当が食べたい。他愛のない会話を楽しみたい。こんな普通のことが、彼女にはとても難しいのです。
そんな古見さんの夢は、「友達を100人つくること」。只野くんは彼女の夢を叶えるべく、友達づくりの手伝いをするという約束をします。こうして、只野くんと古見さんの普通じゃない高校生活が開幕するのです。
超絶美人で黒パンスト装備、無表情で無口な古見さんをキャラクターで分類してみると、いわゆる「クーデレキャラ」に当てはまるのではないでしょうか。
代表的な「クーデレキャラ」といえば『新世紀エヴァンゲリオン』の綾波レイや、『涼宮ハルヒの憂鬱』の長門有希などが挙げられるでしょう。彼女たちに共通するものとして、「基本的に感情を表に出さない」というものがあります。
では、同じく「クーデレキャラ」に分類される古見さんも、「感情を表に出さない」キャラクターであるといえるのでしょうか。
答えは「YES」であり、「NO」でもあります。
古見さんは基本的に言葉を発しません。また基本的に無表情ですから、彼女の周りのキャラクターたちにとっては「感情を読みとりにくい存在」です。
しかし、彼女がそういった態度をとってしまう理由は「コミュ症」だから、ということを、只野くんと読者は知っています。
この「コミュ症」であるという事実を知っているだけで、実は古見さんの感情を読みとることが簡単にできてしまうのです。
これまでの「クーデレキャラ」たちは、我々読者にとって一貫して感情が読みとりにくい存在でした。そんななかで出てきた2つの側面を持つ古見さんというキャラクター。彼女は「クーデレキャラ」の進化した新たな形であり、最高峰であるといえるでしょう。
- 著者
- オダ トモヒト
- 出版日
- 2016-09-16
『古見さんは、コミュ症です。』はコメディ漫画ではありますが、恋愛要素もしっかりと詰まっています。
しかし、みなさんが期待する恋愛漫画のような直接的な表現はありません。
本作で表現されているのはあまりにも甘酸っぱい、たとえば他の人は気づいてくれなかったのに髪を切ったことに気づいてくれた、とか、夏祭りでお互いに着てきた浴衣を照れながらも「似合っているよ」と褒めあうなど、本当にちょっとしたことなのです。
お互いを意識するきっかけとなったあの日のように、胸がキューっと苦しくなるようなシーンがてんこ盛りです。
古見さんや只野くんが通う伊旦高校は、その名のとおり「異端者」の集まりです。
学校の生徒全員が幼馴染のコミュ力お化け、長名なじみにはじまり、上がり症の上理卑美子、負けず嫌いの矢田野まける、古見さんを異常なほど愛してやまない山井恋……。
……断言します。みんなバカです。しかし、愛すべきバカたちなのです。
そして、彼女たちがいなければこの漫画は成立しないと言っても過言ではありません。
只野くんと古見さんだけの話ももちろん面白いですが、この2人のキャラクターの性質上、話の展開がなかなか難しい。そこでこの、愛すべきバカたちの出番なのです。
彼女たちが起点となって、古見さんと只野くんをうまく誘導することが可能になっています。
たとえば、上がり症の上理さんは食べることが大好きです。何か食事をしに行こう、という話になった場合は彼女がキーとなってきます。
ヤンデレ気質な山井さんはおしゃれで友達も多い女の子です。どこかに遊びに行こう、という話やショッピングの回になると必ず登場します。
このように、愛すべきバカたちが実は『古見さんは、コミュ症です。』という漫画を支えているのです。
5巻では、高校生活の華、文化祭の模様が描かれています。古見さんのクラスの出し物は、なんと「メイド喫茶」。彼女のメイド服姿が見れちゃいます。
またこの文化祭の回は、古見さんの成長にもつながる重要な物語でもあります。普段よりもクラスメイトと関わる時間が多く、自身の役割を自覚できる良い機会だからです。
また、新キャラ尾根峰さんの登場で、ぐぐぐっと恋愛要素を強く感じ取れる内容となってきました。古見さんが自覚なく嫉妬したり、尾根峰さんのひと言にあたふたしたりしているので、今後のキーマンになってくるでしょう。
さらに、終盤のとある「イベント」では、本作では珍しい直接的表現が多く描かれていることから、今後物語が大きく展開していくことが予想されます。
古見さんの、恋愛と夢という2つの要素が確認できる巻であるといえるでしょう。
- 著者
- オダ トモヒト
- 出版日
- 2017-07-18