「渋い大人になりたい」木崎亮史は、趣味が喫茶店巡りという、なんとも渋い高校生です。理想に近づくため大人を「演じている」さまがとても可愛らしく、しかし喫茶に対する熱い想いは素晴らしいものがあります。実在するお店が登場するところも注目ポイントのひとつです。スマホの漫画アプリで無料で読むことができますよ!
「渋い大人」を目指している高校生の木崎少年が、趣味である喫茶店巡りをしていくお話です。理想に近づけるように喫茶での「大人の流儀」を見出し、クールで落ち着いたアダルトな高校生を演じています。
しかし理想とは裏腹に、周りからみた木崎少年は「可愛らしい」印象があるようで、店でくつろいでいる彼の耳には「かわいい」という声が入ってきて動揺したり、勝手が分からなくて挙動不審になったりと、「ほろにが」な姿も垣間見ることができます。
実在する店舗が登場するので、馴染みの店や有名店で木崎少年が満喫している姿を見ることができます。
また珈琲だけでなく、喫茶店おなじみのサンドウィッチやナポリタン、ご当地メニューなどのグルメも見逃せません。
スマホで無料で読むことができるので、ぜひチェックしてみてくださいね。
- 著者
- 左東 武之
- 出版日
- 2016-12-09
木崎少年は、老舗の珈琲店はもちろん、海外発祥のオシャレなカフェ、全国展開しているチェーン店などにも足を運び、ありとあらゆる喫茶店を楽しみます。
学校が終わると喫茶店へ通い珈琲を味わう、休みの日には少し足を伸ばして名店を訪れる、修学旅行の日には、宿を抜け出してモーニングに出かけるほどの徹底ぶりです。
「渋い大人」を目標としている木崎少年は、喫茶での立ち振る舞いを「大人の流儀」として自分なりに思い描いており、理想に近づけるように日々大人を「演じて」います。美味しいものを食べて飲んで、たまに「大人」を忘れてはしゃいでいる少年の様子に、思わずくすっと笑ってしまうでしょう。
本人は落ち着いているつもりでも、背伸びしずぎて恥ずかしい思いもしてしまう、まさに「ほろにが」な姿も微笑ましい作品となっています。
渋い大人を理想としている木崎少年は、「イマドキの子」扱いされるのを嫌がります。そんな彼の喫茶店での楽しみ方は、本を読んだり、音楽を聴いたり、マスターとの会話を楽しんだり……木崎少年はそれを「大人の流儀」として心得ています。
そんな心意気を持ってはいるものの、生絞りジュースがあればすかさずオーダーしちゃうし、熱い珈琲にはついフーフーしてしちゃったりと、ちょっと抜けたところがなんとも可愛らしいのです。
すぐさま「大人」であることを意識して平然を装いますが、再び美味しいものを口に入れてにやけている木崎少年を見ると、こちらまでニヤニヤしてしまうでしょう。
そんななか、クラスメイトの女の子に喫茶にまつわる知識があることを知り、喫茶店で優雅にくつろいでいる高校生は自分だけだと自賛していた木崎少年はライバル心を灯します。
さらにその女の子と一緒にモーニングをする機会があり、最初はタジタジな木崎少年でしたが、結局は欲望に勝てずに一緒になって楽しんじゃうという、期待を裏切らないところが見どころです。
木崎少年のお店選びのこだわり、それは「たったひとつでも魅力的なものがあれば足を運ぶ」ことです。初めて行くお店は事前にリサーチをして、そのお店の何が1番愛されていて、何を売りにしているかを把握してから訪ねるのです。
作中では、老舗店の歴史やオシャレな内装など、その店にまつわる背景がとても繊細に描かれています。たとえば珈琲という同じものを扱っていても、同じ店はひとつとして存在しない、という思いが作品から伝わってくるでしょう。
店内に展示されている雑貨や、装飾からもお店のこだわりを感じることができ、まるで自分がそこでくつろいでいるかのように空間が広がります。
店舗で提供されている喫茶グルメも、おもわずお腹が鳴りそうになるほど美味しそうに描かれています。しかも本作に登場するのは実在するお店なので、実際に行ってみたくなること間違いなしのクオリティです。
木崎少年が訪れたのは、老舗喫茶店「カフェーパウリスタ銀座店」です。明治時代から続くこのお店は、関東大震災で閉店したものの再建され、昔と変わらずに愛されている名店です。
店内は、シャンデリアがある1階はほぼ再建した時のまま。当時使われていたスプーンやカップなども復元されています。最近2階に禁煙席が増設されたそうですが、木崎少年はあえてレトロな1階の席に座り、珈琲に映るシャンデリアを見て楽しんでいます。
名物のキッシュとブラジルコーヒーを嗜んでいる少年ですが、近くに座っているおばさまたちが「イマドキの子」の話をしだして動揺しはじめました。
必死に「イマドキの子」と思われないように、平然とした顔で珈琲を口にしますが、大人の話し声にどうも落ち着かない様子です。
デザートにケーキを食べようと店員に声をかけますが、これまた「イマドキの子は甘いものが好き」「イマドキの子はダイエットをしている」という会話に影響され、もんもんと悶えるのです。
自分のことを話しているわけではないと分かっていても、必死に抵抗してしまう木崎少年は、はたしてデザートにたどり着けるのでしょうか。
地下にあるお店に行くまでの通路にはいくつもの壁掛け時計があり、階段を下りるとそこに待ち構えているのが「本格珈琲 昭和」です。平成にできたお店ではありますが、レトロ感あふれる雑貨や置物で昭和を感じさせる店内に、木崎少年の期待は膨らみます。
今回が2度目の来店になる少年は、前回売り切れで食べられなかった「ハンバーグサンド」を食します。シンプルにハンバーグとキャベツだけの組み合わせたサンドウィッチですが、精肉店から調達しているというお肉のこだわりがつまった、絶品です。
満足げにハンバーグサンドと相性のいいコクのあるコロンビア珈琲を味わった後、メニューを見た木崎少年はあるものを見つけてしまいます。それを見つけた瞬間にすぐさまオーダーし、提供されるとこれまたすぐさま飲み干してしまった木崎少年。1杯だけでは物足りず、おかわりまでしてしまいます。
木崎少年が「大人」を忘れてしまうほど夢中になったもの、シンプルであるがゆえに腕が試されるあの飲み物、皆さんのなかにも好きな方は多いはずです。さあ、何でしょうか。
- 著者
- 左東 武之
- 出版日
- 2016-12-09
カッコつけたいけど、うまくキマらない……。
そんな思春期男子の理性と本音が純喫茶で戦う本作。木崎少年の可愛らしい様子と細部まで丁寧に描かれた喫茶店に引き込まれる作品です。
本作はやはりそんな木崎少年の奮闘が最大の魅力でしょう。純喫茶という大人でも今時行く人は珍しい、少し敷居の高いお店に、どうにかして馴染みたいという気持ちで背伸びする彼は本当に可愛い。(可愛いと言われるのは嫌がりますが)
前作『夜の珈琲』ではワケありげなマスターを描いた左東武之ですが、こんな主人公も描くことができるとは、人物造形の幅広さに驚かされます。
ぜひそんな木崎少年の頑張る姿を見てみてください。彼の頑張りを見れば、あなたも入りづらかったあのお店に入る勇気をもらえるかもしれません。
本作はスマホアプリで無料で読めるので、そちらからこの世界を覗いてみるのもいいかもしれません。
実在するお店に木崎少年が入るので、読者の近所のお店や、テレビや雑誌で見たことがあるお店が出てくるかもしれません。「大人」に憧れて背伸びする姿は誰しも経験があると思うので、この作品で当時の自分を思い出すのも面白そうです。木崎少年のように、自身なりの「喫茶の流儀」を見つけてみてはいかがですか。