今回は、ポップで笑えてテンポがよくておまけに絵がかわいい、BLの入門書的コミック『純情ロマンチカ』をご紹介します。この作品がきっかけでBLに目覚めた女子も多いのではないでしょうか?アニメ化もされ、女子たちの間にひとつのムーブメントを起こしました。
本作は中村春菊が描くBLコミックです。その魅力は何といっても、個性的なキャラクターのカップルたちによる、多種多様なボーイズラブを楽しめることにあります。
高橋美咲(たかはしみさき)と宇佐見秋彦(うさみあきひこ)のカップルをはじめ、彼らを取り巻く周囲の人々にもさまざまなボーイズラブが咲き乱れます。
- 著者
- 中村 春菊
- 出版日
この「純情」シリーズでは、
など、いろいろなシチュエーションでの恋愛模様が楽しめます。あなたはどのカップルがお好みですか?
主人公の美咲は高校生。志望校に合格するため、兄の親友で小説家の秋彦に家庭教師をしてもらうかたわら、彼の家で一緒に暮らすことになりました。
ある日、秋彦が書いたボーイズラブ小説、それも兄と秋彦をモデルにした作品を発見してしまい……。
- 著者
- 中村 春菊
- 出版日
- 2003-12-01
秋彦は、同居する美咲に何かとちょっかいをかけてきます。時にはエッチなことも......。そんな秋彦に振り回される美咲は、迷惑なはずなのに、なぜかいつもちょっとドキドキしてしまうのでした。
毎回いろんな事件を起こしてはたくさんの人を巻き込み、ハチャメチャな展開を見せる2人ですが、さまざまな出来事をとおして、お互いにかけがえのない存在となっていきます。
高橋美咲(たかはし みさき)は平凡だけど、誰にでも好かれる、明るく元気一杯のかわいい男子高校生。8歳の時に両親が事故死してから、兄の孝浩と2人で暮らしてきました。手先が器用で家事は万能、特に料理は超得意。将来は編集者になるのが夢です。
ある時、ひょんなことから、兄の親友で売れっ子小説家の宇佐見秋彦に、住み込みで家庭教師をしてもらうことになった美咲。秋彦にしつこいほどに構われる毎日は、最初こそ少し迷惑だったけれども、今はそれも込みで楽しく生活しています。
秋彦と一緒に生活していくうちに、身勝手で自己中で一見傲慢にも見える彼の、実は繊細で優しい気持ちに触れることになります。自分だけに見せる彼の一面を知るうちに、美咲は徐々に秋彦に心惹かれるようになっていくのです。
- 著者
- 中村 春菊
- 出版日
- 2004-06-01
ポーカーフェイスの秋彦が分かりにくく落ち込んでいても、それを敏感に感じとって一生懸命励ましたり、さりげなく元気づけたり、彼なりの方法で秋彦を優しく包んであげる美咲は、秋彦にはなくてはならない癒し系、心のオアシスなのです。文句を言いながらも、いつも秋彦に付きあってあげてる彼は、懐の大きな男の子なのかもしれません。
「うさぎさん......泣きたかったら泣いてもいいよ......」(『純情ロマンチカ』1巻から引用)
美咲の兄、孝浩に10年間片思いをしてきた秋彦は、突然、孝浩の婚約を知らされてショックを受けつつも、その気持ちを隠して笑顔で祝福します。秋彦の気持ちを知る美咲は、そんな彼を気遣って、強引に外に連れ出しました。
そして美咲は、泣けない秋彦の代わりに泣いてやるのです。雪が降る夜、自分よりひと回りもふた回りも大きな秋彦の背中を抱きしめて慰めるシーンは、美咲の癒しを象徴するような心温まる優しいシーンです。
宇佐見秋彦(うさみ あきひこ)は、文壇の各賞を総なめする大人気小説家。その一方、趣味と実益を兼ねたBL作家としても活動中です。
宇佐見グループの御曹司で、容姿端麗、頭脳明晰、おまけにお金持ちという超ハイスペック男子なのですが、生活能力はゼロ。性格にも若干の難があります。俺様な暴君だけれども、愛情表現がストレートで可愛いところもあります。美咲による愛称は「うさぎさん」。
学生時代から美咲の兄・孝浩に10年間片思いを続けるも、友情を失うことを恐れて打ち明けることができず、相手に恋心を知られないまま、孝浩の婚約と同時に失恋してしまいました。
ひょんなことから美咲の家庭教師となるのですが、元来他人と暮らすなんて考えられなかった秋彦が、元気で明るい美咲と一緒に暮らすことにより、誰かと暮らすのも悪くないと思うようになるのです。
- 著者
- 中村 春菊
- 出版日
- 2004-10-29
いつも元気一杯で、人が良くて......ちょっかいをしかけるとリアクションが可愛いから、秋彦はついつい美咲に構いすぎてしまいます。時々、そんな自分の行動が美咲を傷つけてるんじゃないか?いつか美咲は自分から離れていくんじゃないか?と勝手に不安になり、ひとりで落ち込んでしまうのですが、結局美咲の能天気な癒しパワーで元気になっています。
ある日、自分の父親や兄が美咲と接触したのを知った秋彦。美咲を疎まれるくらいなら、彼と距離をとった方がいいのではないかと思うようになります。
「オレが一番怖いのは美咲を失う事だ」とつぶやく秋彦に
「大丈夫だよ、俺......うさぎさんの事、好きだよ」(『純情ロマンチカ』8巻から引用)
と言われ、ようやく美咲の素直な気持ちを知ることができるのでした。
上條弘樹(かみじょう ひろき)は『純情エゴイスト』の主人公。恋人の草間野分にだけ「ヒロさん」という愛称で呼ばれています。幼い頃から勉強にも習い事にも絶対に手を抜かず、すべてに全力投球の頑張り屋です。
大学を首席で卒業し、大学院に進み、若くして助教授にまでのぼりつめました。プライドが高く、負けず嫌いで意地っ張り。大学ではその厳しさゆえ、学生たちから「鬼の上條」と呼ばれ、恐れられています。でも中身は実は繊細で、野分いわく「可愛い寂しがり屋さん」なのです。
秋彦の幼馴染で、子どもの頃からずっと片思いをしていました。ある日、秋彦に失恋してしまった弘樹が公園の片隅で泣いていた時に、偶然出会ったのが野分です。
いくら邪険にしても自分になついてくる野分の存在は、失恋で空いてしまった心の隙間を埋めるように、静かに弘樹の心に浸透していくのでした。
- 著者
- 中村 春菊
- 出版日
- 2006-04-28
しかしある時、野分が弘樹に告げることなく突然アメリカに留学してしまい、ショックを受けます。1年後に彼が帰国してからも、そのわだかまりが原因で素直に心を開くことができません。「またいつか、黙って自分から離れてしまうかもしれない」と不安になった弘樹は、彼に別れを切り出すのです。
弘樹の職場まで押しかけ「別れたくない」と食い下がる野分に連れ込まれた大学の夜の図書室で、野分に本を投げつけながら怒りをあらわにする弘樹。涙をこぼしながら
「好きだ......好き......好きだ......好きなんだよ......好きで悪いか、チクショウ、馬鹿野郎!」(『純情ロマンチカ』2巻から引用)
と、初めて自分の素直な気持ちをぶつけます。
年上であることや頑ななプライドをかなぐり捨てた弘樹の、純粋で一途な気持ちが心にしみる名場面です。
草間野分(くさま のわき)は研修医。生まれてすぐに孤児となり「草間園」という孤児院で育ちました。185cmを超える長身です。
18歳の時、気に入られている大手企業の社長たちとチームを組んでいた草野球の練習中、ボールを追いかけていった先で、失恋してベンチに座って泣いていた弘樹と出会います。弘樹の泣き顔にズキューン!と一目ぼれしてしまった野分。家庭教師をしてもらうという口実を作って、せっせと弘樹のもとに会いにいく彼は、まさに健気なかわいい大型ワンコです。
高校卒業後、当初は別の仕事をしていましたが、弘樹に刺激を受けて大検をとり、国立の医大へ進みます。その後アメリカ留学を経て研修医になり、将来の夢は小児救急の医師になることです。
弘樹のことが大好きで大好きで、これから先少しでも長く一緒にいるために、優秀な弘樹に釣り合う男にならなければ!ということをモチベーションにして、過酷な医師の仕事を頑張っています。でも、いつもほんの少し言葉が足りないため、弘樹との間にたびたび誤解を生む展開になってしまうのです。
- 著者
- 中村 春菊
- 出版日
- 2007-02-01
ある日、連絡が取れない弘樹のことを心配した秋彦が訪ねてきます。優しい言葉をかけてくる秋彦に対し、失恋したばかりの弘樹は心の整理がつきません。
「その気がねぇなら、優しくすんな......」思わず彼への想いが込みあげ、涙がこぼれそうになった瞬間、弘樹の涙を秋彦に見せたくない野分が放ったひと言がこちら。
「ヒロさんは俺がもらいます!」(『純情ロマンチカ』1巻から引用)
こう秋彦に言い放ち、弘樹の背後から彼の目を自身の大きな片手で覆い隠すのです。この場面は、多くの読者の心に鮮烈に残る印象的なシーンだといえるでしょう。
年下であることから、いつも弘樹に対して引け目を感じていた野分が、全身全霊で愛する弘樹を守った瞬間です。
『純情テロリスト』の主人公、宮城庸(みやぎ よう)は、大学教授をしていて、弘樹の直属の上司です。学部長の娘、理沙子と結婚するも、3年で離婚しました。現在はバツイチの気ままな独身貴族。いつもへらへらしている自由人ですが、文学と松尾芭蕉への愛は本物です。
オーストラリア留学から帰国した後、理沙子の弟・忍に呼び出され、突然「好きだ!」と告白されます。宮城も以前から忍のことは憎からず思っていたものの、所詮は子どもの戯言だと、取り合っていませんでした。
宮城は高校時代の教師との辛い恋を引きずっていたので、恋愛などするつもりはなかったのですが、断っても断っても諦めない、執拗なテロリストのような忍のアタックに困惑するのです。
- 著者
- 中村 春菊
- 出版日
- 2007-11-01
いくら忍が真剣に自分の想いを伝えても、大人の宮城は冗談めかしてのらりくらりとかわします。ふざけて軽く見せてはいても、過去の教師との恋とその死は、彼の心に色濃い影を落としていました。
ある時、宮城が持っていた亡き恋人の写真を偶然見つけ不安になってしまった忍に想いを伝えるため、彼は強引に忍を車に乗せ、自分の故郷に連れ帰ります。そして一緒に先生の墓標の前に立ち、
「先生、俺はこいつが好きです!」(『純情ロマンチカ』7巻から引用)
と今は亡き人に宣言するのです。ずっと引きずってきた辛い恋を、やっと過去のものにすることができたのかもしれません。
高槻忍(たかつき しのぶ)は、宮城の大学の学部長の息子で、宮城の元妻・理沙子の弟です。口が悪くて生意気だけど、純粋で健気な男の子。若さゆえの思い切りの良さと潔さを持ちあわせています。
料理なんてやったことがなくて下手くそなのに、大好きな宮城のため、日々得体のしれない愛妻料理づくりに励む、健気なところも彼の魅力です。
以前、路上でからまれているところを宮城に助けてもらったことで、宮城を好きになるのですが、その直後に彼が姉の婚約者であることを知るのでした。傷心からオーストラリアに留学するも、2人の離婚を知って帰国、すぐさま宮城に「好きだ」と告白するのです。
- 著者
- 中村 春菊
- 出版日
- 2008-04-01
姉の婚約者と知り1度は諦めたものの、独身に戻った宮城にテロリストのごとく強引に迫ります。
いくら気持ちを伝えても、いつも自分を子ども扱いして一線を引く煮え切らない宮城に対して、
「かかって来い!覚悟はできている!」(『純情ロマンチカ』9巻から引用)
と男の子らしくベッドへ誘いますが、口で言うほどすれていない可愛いツンデレ男子です。
井坂龍一郎(いさか りゅういちろう)は『純情ミステイク』の主人公で、秋彦と家が隣の幼馴染。昔は小説家を目指していましたが、学生時代の秋彦が手慰みで書いた作品を読み、彼と自分の才能の差を見せつけられて自ら筆を折りました。その後は丸川書店の編集者を経て、専務取締役から社長になっています。
「落としの井坂」と呼ばれ、強気でやり手、売るためなら手段はいとわない強引な性格ですが、内面は繊細で優しい一面も持っています。もういい大人の龍一郎ですが、恋人の朝比奈が相手だと、いくつになっても甘えが出てしまい可愛くなってしまうのです。
- 著者
- 中村 春菊
- 出版日
- 2011-06-01
龍一郎は、幼い頃から自分の世話係としてついていた秘書の朝比奈のことがずっと好きでしたが、朝比奈は自分の父親のことが好きなんだと誤解していて、なかなか素直になれません。互いに想いあっているのに、2人はなかなか距離を縮めることができないのです。
冷たい態度の朝比奈に「嫌々自分のもとにいるならならやめてしまえ」と激高した龍一郎。そして朝比奈は家を出ていってしまいます。会社も辞め、龍一郎の前から消えようとした彼のことをなじりますが、「龍一郎が好きだから、そばを離れる」と言う朝比奈に
「お前が俺に思っていることはオレがお前に思っていることだ!」(『純情ミステイク』から引用)
と自分の恋心を告白し、彼を繋ぎとめるのです。
幼い頃からお互いに好きだったのに、近くにいすぎたためにかえって心がすれ違ってしまっていた2人。十数年の時を超え、ようやく心が通じあえたシーンです。
朝比奈薫(あさひな かをる)は龍一郎の秘書兼お世話係。幼い頃から龍一郎の遊び相手を務めてきたので、2人は幼馴染も同然です。有能ですが、寡黙で余計なことはしゃべらないので、いつも龍一郎をやきもきさせています。
見た目が冷静でクールなため、なかなか相手には伝わらないのですが、内に秘めた龍一郎に対する愛情と執着心はかなり強いものがあります。一見冷たく見える風貌と態度、それに対する内に秘めた情熱と男らしさは、読者にはたまらないギャップかもしれません。
朝比奈の家は、父親が事業に失敗、一家心中寸前のところを龍一郎の父親に助けられました。それ以来朝比奈は、恩返しのためにも井坂家に誠心誠意尽くすのでした。
- 著者
- 中村 春菊
- 出版日
- 2017-12-28
朝比奈と龍一郎が相思相愛になってから数年後、龍一郎に、御曹司の宿命でもある見合い話が持ちあがります。
自分に見合い話を持ってきた朝比奈に対し、半ば当てつけでお見合いを受けることにした龍一郎。朝比奈も冷静な態度をとっていましたが、結局焦って見合い会場へ乗り込んでしまうシーンは、普段は決して見せることのない余裕のない姿となっています。
恋人同士としての関係を築いている、美咲と宇佐見。美咲は出版社から内定をもらうことになり、公私ともに順調……かのように見えますが、宇佐美の父親から干渉されたりと、うまくいかないことも多々あるようです。
なかでも1番の問題は、美咲の兄に自分たちの関係をどう伝えるかということで……。
- 著者
- 中村 春菊
- 出版日
- 2018-09-01
ある日、美咲は義姉・真奈美から、宇佐見と付き合っているのかと問われます。彼は兄に関係がバレることを恐れて、何も言えません。しかし、このままの状況をよくないと感じた彼は、意を決して真奈美に、ウサギさんが好き、ということを伝えるのでした。
本巻の見所は、なんといっても、宇佐見の優しさです。美咲がいつか自分自身で気持ちを伝える日がくることを予想していた彼は、前もって真奈美に話を通していたのです。きっと自分の言葉で話してくれるから、最後まで聞いていてあげてほしい、と……。一見不器用な宇佐美ですが、そんな彼が見せた優しさに、読者もつい胸を打たれることでしょう。
宇佐美の優しさ、そして真奈美からの応援をもらった美咲。果たして彼は、兄に自分たちの関係を伝えることはできるのでしょうか。
おすすめのBL作品を紹介した<【200万人の本好きが選ぶ】おすすめ名作BL漫画ベスト39!本当に面白い歴代漫画をランキングで紹介!>の記事もおすすめです。
いかがでしたか?キラキラした素敵なカップルばかりでしたね。なにしろ長いお話なので、ほかにもご紹介できていない名シーンがたくさんあります。ぜひ本を手に取って、ご自身の目で確かめてみてくださいね。長編コミックだけどまだまだお話は続きます。結末をお楽しみに!