ヒット作『サプリ』など、20~30代の働く女子のリアルな日常を描いた作品が多い、漫画家・おかさざ真里。そのなかでも、恋に仕事に悩む女性にぜひ読んでもらいたい名作漫画『&』(アンド)の魅力をご紹介します。
2006年に月9で実写ドラマ化された漫画『サプリ』で有名な、おかざき真里。女性の恋と仕事をテーマにした作品を多く発表していて、特に20~30代女性からの圧倒的支持を得ています。
職場恋愛や仕事に対する姿勢など、ちょうどその年代の女性なら誰しも抱えたことのあるテーマを、主人公や登場人物をとおして丁寧に描いています。著者自身、もともと広告会社に勤務していた過去があり、働く女性の日常がリアルに浮彫りになっているのです。
登場人物たちは皆、ありふれているけれど切実で、女性が思わず共感してしまう悩みを抱えています。そして悩みを抱えつつも落としどころを見つけ、恋に仕事にまい進していくのです。
もしあなたが女性で、同じように日常に消化できない思いがあるなら、ぜひ手に取っていただきたい作品です。
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おかざき真里のおすすめ漫画ランキングベスト5!大人女子がハマる!
大人女子から絶大な支持を集めるおかざき真里。大人ならではのリアルな視点で描かれた漫画の数々に、ハマる女性が多くいます。そこで今回はまだ彼女の作品を読んだことがないという方に、特におすすめしたいおかざき作品を5作、ご紹介します。
派遣の医療事務スタッフとして働く青木薫は、26歳の今まで彼氏がいたことがなく、恋愛経験の少ない女性です。彼女は「他人に触れられること」が苦手で、男性と親密な関係になるのを避けていました。
そんな薫は、ダブルワークとして自分のネイルサロンを開こうと決意します。なかなかサロンに適した物件が見つからない薫の前に、大学の後輩で理系男子のシロ(城田孟司)が現れました。どうやら彼は、小さなプログラミング会社の社長をやっているそう。
会社の空きスペースを貸してくれないかという薫の頼みを、二つ返事で承諾するシロ。彼が大学時代から自分に想いを寄せていることなどつゆ知らず、薫は自分のネイルサロンを開業します。
さらにひょんなきっかけから、勤務先の病院の医師、矢飼黄河が薫にちょっかいを出すようになってきました。矢飼は医師としての腕は一流ですが、人嫌いで毒舌家と、ひと癖もふた癖もある男です。
しかし彼とかかわるうちに、薫は「彼に触れられたい」と思っていることに気付きます。けれど薫が想いを寄せるほど、矢飼は薫を避けるようになり……。
- 著者
- おかざき 真里
- 出版日
- 2012-01-07
主人公の薫は派遣の医療事務。患者からのクレームに、その立場ゆえ「事務は処理する術も権限も持たない」と歯がゆく思います。
そして一念発起し、ダブルワークで念願のネイルサロンを開きました。そこで初めての客を迎えますが、緊張で思いどおりにいかなかったから、という理由で、無償で客を返してしまいます。
それを、「甘い」「遊びならやめろ」と指摘され、落ち込む薫。経営者として仕事をすることの難しさを知るのです。
作中で薫は、さまざまな人から「やりたい事をやれて羨ましい」と皮肉ともとれる言葉をかけられます。読者からも一見そう見えるのですが、本当は薫が先のない不安に駆られていることがわかります。
都内で暮らすには厳しい額の手取り、昇給の見込めない今の仕事……そんな不安を抱えながらも、正社員などの堅実な道を選ぶわけでもなく、悩みながら自分を生かしていくための仕事を選ぶのです。
- 著者
- おかざき 真里
- 出版日
- 2013-01-08
薫は恋愛経験がありませんが、それゆえにまっすぐ矢飼に想いをぶつけます。一方の矢飼は、過去の恋愛経験があるがゆえに、前に進むことができずにいました。
いろいろなもどかしさと感情の高ぶりで矢飼は薫にキスをしますが、後日、ただの一時的な性欲のせいだと言われた薫はショックを受けてしまいます。
なぜこんなにも苦しいのかわからなかった薫ですが、それは「恋」だと同僚の美由起に教えられました。そうして次第に自分の気持ちを自覚し、矢飼に恋をしていると気づいた薫は、その感情をストレートにぶつけます。
一方の矢飼は、そんな薫の気持ちすらも「性欲のせい」だと一蹴します。直後に薫の悲しむ姿を見て自分のバカさに呆れるのですが、なかなか素直になれません。というのも、矢飼は過去の恋愛にとらわれたままなのです。
動かない矢飼に、薫は捨て身の性欲でいいと、なんとセフレ宣言。そんな彼女の熱に浮かされて、2人はラブホテルへと向かいました。ついに薫と矢飼は結ばれる寸前までいきますが、薫が処女だと知った矢飼は「こんなことをしてはいけません」と、再び突き放すのです。
距離が縮まったかと思いきや、また離れて……大人なのに恋愛を知らない薫と、大人だからこそ踏み込めない矢飼。不器用な2人の複雑な感情が邪魔をして一向に距離の縮まらない様子に、もどかしくも目が離せません。
触れるようで触れないように進んでいく2人。薫は父親の死がトラウマになっているのですが、矢飼も何か大きなものを抱えているようなのです……
大学時代の後輩で薫に一途な思いを寄せるシロも、大人でワイルドな魅力を持つ矢飼とは正反対ながらも、人気の高いキャラクターです。
彼にとって薫は、永遠の憧れの先輩。さりげなく薫を見守り、困っていたら飛んでいって寄り添う様子は、まさに忠犬のよう。ポーカーフェイスを気取りながらも、内心薫に対して尻尾をぶんぶん振っているかのような、わかりやすい好意を示すシロはとても可愛い魅力の持ち主です。
そんな健気で素直なシロですが、恋愛に疎い薫にはその気持ちがまったく伝わっていません。ライバルの矢飼にするりとかっさらわれる様子は不憫でたまりませんが、そんな遠慮がちな彼がたまに見せる男の顔は、こちらもドキドキしてしまいます。
ちなみにシロが薫を好きになったきっかけとなる話が、1巻の番外編に収録されています。学生時代、薫が無邪気に放った言葉で恋に落ちたのですが、それ以来ずっと彼女のことを想っているシロの一途さにキュンとしてしまうでしょう。
- 著者
- おかざき 真里
- 出版日
- 2014-04-08
最終話に近づくにつれ、矢飼が抱えていた秘密が明かされ、薫はショックを受けます。「なぜ嘘をついたの」と怒る薫に、矢飼はただただ「ごめん」とくり返すばかり。彼の抱える問題の重さや、自分の複雑な感情に押しつぶされそうになった薫は、矢飼のことを責め立ててしまいました。さらに薫は、矢飼に触れられることまで拒絶するようになってしまうのです。
すべてが明らかになった後、2人は遊園地へ出かけます。デートを楽しむ薫と矢飼ですが、ふとした瞬間、彼らの間に横たわっている現実が甦り、絶望を感じてしまうのです。
好きだからこそ、近いからこそ、傷つく……愛し合いながらも苦しむ2人が最終回で出した答えは……⁉
恋愛に「もしも」は付き物ですが、本作を読んで何度「もしも」と思ったことでしょう。しかし「もしも」は起こりません。絶妙なバランスのうえに成り立つ恋愛の儚さと美しさは、読後も味わい深く胸に残ります。
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