池上永一おすすめ著書7選!2017年新刊『ヒストリア』まで傑作多数!

更新:2021.11.10

個性的かつ魅力的なキャラクターを登場させ、類まれなる想像力で驚きのストーリーを展開させる作家、池上永一。ここでは、そんな人気作家池上のおすすめ小説を、新刊も含めてご紹介していきたいと思います。

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池上永一とは

1970年、沖縄県那覇市に生まれた池上は、3歳から中学校卒業までを石垣島で過ごします。その後、沖縄の高校を卒業し早稲田大学へと入学。在学中に執筆した『バガージマヌパナス』が日本ファンタジーノベル大賞を受賞し作家デビューを果たしました。

1998年に刊行された『風車祭(カジマヤー)』が、2作目にして直木賞候補へと選出されると、その後も沖縄を舞台とした小説を発表していき注目を集めます。2005年には、池上作品初の沖縄以外を舞台としたSFファンタジー『シャングリ・ラ』を発表。アニメ化もされるなど、たいへん話題になりました。2017年、構想に20年をかけ執筆されたという長編小説『ヒストリア』が発表され絶賛を受けています。

構想20年!池上永一の新代表作

待望の新刊となった池上永一の長編小説『ヒストリア』は、第二次世界大戦での沖縄戦を生き残り、南米ボリビアへと移民した女性の半生を描く壮大な物語です。

1945年3月。主人公の知花煉(ちばなれん)は、沖縄戦で爆撃に遭い魂(マブイ)を落としてしまいます。奇跡的に生き残るも、家族など大事なものは全て失い、それでもたくましく商売を始め、戦後の沖縄を生き抜いていました。ところがあることをきっかけに米軍から追われる身となってしまい、移民としてボリビアへの逃亡を図ることになります。

著者
池上 永一
出版日
2017-08-25

魂(マブイ)とは、沖縄の言葉で生きた人間の魂を意味します。人間は複数のマブイを持っており、精神的ショックを受けたときなど、体からその中のひとつが離れてしまうことを「マブイを落とす」と表現します。煉はマブイを落とし、本体の煉とマブイの煉、ふたつの存在に分かれてしまうのです。

主人公がとにかく魅力的に描かれており、思わず心を奪われてしまいます。次から次へと事件に巻き込まれ、チェ・ゲバラとの恋なども経験しながら進んでいく、波瀾万丈な生き様から目が離せなくなるでしょう。

戦後にあった、沖縄からボリビアへの移民政策について詳しく知ることもでき、エンターテインメント性たっぷりでありながら、重い何かを突きつけられる重厚な作品になっています。

男として生きることを決めた少女の物語

19世紀末の琉球王朝を舞台に、運命に翻弄される少女の姿を描いた池上永一の歴史小説『テンペスト』。分かりやすく読みやすい物語となっていて、小説が苦手な方にもおすすめできる作品です。

女であるがゆえに、男児を熱望する父から名前も付けられずに育った少女は、自ら真鶴という名を付け、いつしか頭脳明晰で聡明な子へと成長していました。兄が失踪してしまったことから、真鶴は性を偽って男装し、宦官として生きていくことを決めます。孫寧温(そんねいおん)と名乗って挑んだ科試は、最年少で合格。首里城へと入って、様々な改革に着手するようになるのですが……。

著者
池上 永一
出版日
2010-08-25

ライトノベルのような読みやすさでありながら、かつてはひとつの王国として独立していた沖縄の歴史について、とても詳しく綴られた素敵な作品です。

容姿端麗な主人公が、宦官として政治の危機を幾度となく乗り越え、時には女性として恋にも悩むストーリー展開は、先が気になり読む手が止まらなくなってしまいます。登場人物それぞれのキャラクターが非常に印象深く、沖縄の歴史をまったく知らない方でも、最後まで飽きずに楽しむことができるでしょう。

近未来の東京を描く話題のSF小説

『シャングリ・ラ』は、地球温暖化が加速した近未来の東京を舞台としたSFファンタジーです。

地球温暖化が世界全土で進み、経済市場が炭素へと移行する中、東京は空中都市「アトラス」へと拠点を移していました。地上では急速な森林化が進み、「アトラス」へ住むことのできない貧困層は、熱帯雨林と化したスラム街で難民となるしかありません。主人公であり反政府組織のリーダーである北条國子は、この格差社会に立ち向かうべく、政府へ反旗を翻します。

著者
池上 永一
出版日
2008-10-25

なんと言っても物語の舞台設定が素晴らしく、著者の想像力の豊かさには脱帽させられるばかり。その上妙なリアリティーがあり、その世界観にのめり込んでしまいます。

現実の世界でも二酸化炭素削減のため「炭素税」が設けられていますが、本書では二酸化炭素の削減率が低い国に対して利息が発生する「経済炭素」が存在します。このため東京では、地上を森林化してしまうという大胆な手法で、高い炭素削減率を誇っており、これに反発する主人公ら貧困層と政府の戦いが、驚くほどの迫力で描写されているのです。

様々なエピソードがテンポ良く展開され、アトラスに秘められた真実が徐々に明らかになっていく過程にはわくわくします。ボリューム満点の大作ですが、最後まで疾走感を失わずに物語が描かれており、まるで漫画を楽しむように読み進めていけることでしょう。

少女の成長を描いた池上永一のデビュー作品

池上永一のデビュー作となった『バガージマヌパナス』は、沖縄の雰囲気を存分に堪能しながら、なんとも破天荒で魅力的なひとりの少女の成長を追う物語です。

主人公の仲宗根綾乃は19歳。高校を卒業後、進学や就職はせずに、86歳の老婆オージャーガンマーとのんびり過ごしたり、いたずらをして遊んだりと毎日のように自由気ままに楽しんでいました。そんなある日綾乃は夢の中で、島の神から「ユタ(巫女)になりなさい」とのお告げを受けます。面倒なことが嫌いな綾乃は、その神のお告げさえも従わずに済ませようとするのですが……。

著者
池上 永一
出版日
2010-01-23

19歳の少女と86歳の老婆が見せる不思議な友情が、心地よく胸に響く作品です。ヒロインの過激な行動や、コミカルなやり取りは大いに笑いながら読むことができるのではないでしょうか。終盤では思わず涙してしまうような場面もあり、様々な感情を与えてくれる作品です。

沖縄の習慣や言葉、信仰などをふんだんに織り交ぜながら描かれた物語であり、温かい優しさが胸に沁みる1冊となっています。

沖縄の魅力が凝縮された傑作長編小説

直木賞候補にも挙げられた、池上永一の長編小説『風車祭』。個性的なキャラクターが続々と登場し、魂(マブイ)を落とした少年と、魂だけの姿となりさまよう娘の、恋の行方に惹きつけられる作品です。

97歳の長寿を祝う島の行事「風車祭」を1年後に控えた仲村渠フジは、退屈を何よりも嫌い、高校生の比嘉武志にあるいたずらを仕掛けました。まんまと引っかかり妖怪火を目撃した武志は魂(マブイ)を落としてしまいます。その妖怪火は美しい娘の魂ピシャーマと6本足の豚の妖怪ギーギーであり、武志はピシャーマに恋をしてしまったのでした。

著者
池上 永一
出版日
2009-10-24

キャラクターのインパクトがとにかく強く、コミカルで明るいやり取りの数々は本当に魅力的。徐々にそれぞれの登場人物に愛おしさがこみ上げてきてしまい、いつまでも物語の世界に浸っていたくなるような感覚を味わえるでしょう。思わぬ形で回収される伏線も面白く、気づけば神秘的かつユーモアに溢れたストーリー展開の虜となっているかもしれません。

沖縄に行きたくなること必至の素晴らしい作品ですから、ぜひ1度読んでみてくださいね。

多彩な彩りを見せる魅力的な連作短編集

『統ばる島』は、沖縄の八重山諸島を舞台に、島それぞれの物語が紡ぎ出されていく連作短編集となっており、8つの短編の他、書き下ろし短編1つが収録されています。

「竹富島」は祭の島。種子取祭(タニドゥル)の開催を控え、奉納舞踊に中学生の優奈と航平が抜擢されました。「波照間島」では、毎日を鬱々と過ごす主人公の少女が伝説の楽園を目指し、「小浜島」では4人の子供を育てたひとりの女性が、火ヌ神の導きを受けます。

著者
池上 永一
出版日
2015-05-23

物語は「新城島」「西表島」「黒島」「与那国島」と続き、これら全ての島々を繋ぐ「石垣島」でひとつになるという、絶妙の構成に酔いしれる1冊です。

ユーモアを交えながら沖縄の人々を描き、島の様子が鮮明に浮かび上がるような情景描写で読者を魅了するこの作品。静かな優しさと沖縄の美しさを、心ゆくまで満喫することができ、素敵なひとときを過ごせることでしょう。

少年の舞う姿に心を奪われるエンターテインメント小説

18世紀の琉球王国を舞台に描かれる『黙示録』では、舞踊の才能を武器に琉球の世を駆け上がっていく少年の、激動の半生が描かれています。

病気の母と貧しい生活を送り、日銭を稼ぎながら毎日を必死に生きる少年、蘇了泉(そりょうせん)は、ある日、踊奉行の石羅吾に人目を引く才能を見出され、舞踊の道へと進むことになります。舞踊で頂点を極めるべく、楽童子の選抜試験に挑むことになるのですが、そこで後のライバルとなる雲胡(くもこ)と出会い、激しい戦いを繰り広げるようになるのです。

著者
池上 永一
出版日
2017-05-25

目的のためなら手段を選ばず、あらゆる手を使って困難を乗り越えていく主人公の姿がとても印象的です。乗り越えては突き落とされる、波乱万丈の人生はまさにジェットコースター。怒涛の展開には本当にドキドキさせられてしまいます。

非凡な才能を持つ2人の少年が、激しく競い合い成長を遂げていく姿が濃密に綴られており、活き活きと鮮明に描写された琉球の舞には、夢中になってしまうことでしょう。史実を織り交ぜながら描かれた、極上のエンターテインメント小説です。気になった方はぜひ読んでみてください。

池上永一のおすすめ作品を7つご紹介させていただきました。どれも1度読んだら忘れられない、インパクトの強い傑作ばかりです。興味のある方は、その独特な世界観へ浸ってみてはいかがでしょうか。

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