昆虫の力を持つ殺し屋たちのバトルを描いた『アラクニド』。蜘蛛として生きていくことを決意した主人公の成長と戦いの物語です。スマホの漫画アプリ「マンガUP!」で無料で読むことができますよ。今回はそんな本作の魅力をネタバレを含みつつご紹介していきます。
『アラクニド』は、原作・村田真哉、作画・いふじシンセンによる作品。「月刊ガンガンJOKER」で2009年から2016年まで連載され、単行本は全14巻です。
昆虫×エログロ漫画とだけ書いてもご理解いただけないと思いますので、少し説明をしましょう。主人公を含め登場人物の多くは昆虫の特性をを有していて、その能力を活かしてバトルをくり広げます。もちろんバトルが激しくなれば、かわいいキャラクターがあられもない姿になることも……。
基本的には殺し屋同士のバトルになるので、生易しい戦いではなく、血が噴きでたり頭が吹き飛んだりするグロテスクな表現もあります。
エロ!グロ!大好き!という方にはもちろんおすすめですが、バトルが中心の物語なので、バトル漫画としても楽しむことができます。
- 著者
- 村田 真哉
- 出版日
- 2010-07-22
本作の冒頭は「組織」の殺し屋同士の会話から始まります。殺しのターゲットは藤井という人物。この藤井は主人公の藤井有栖(以下アリス)の叔父で、1年前に母が自殺してからは彼女の唯一の身内です。
高校生のアリスは集中すると周りが何を言っても聞こえなくなることから、無視していると勘違いされて学校でいじめられていますが、家庭内も安心できる環境ではありませんでした。
叔父はアリスを殴ったり、亡き母を悪く言ったりとロクでもない人物で、本に集中して学校に行くのを忘れていた彼女を躾といって手篭めにしようとします。
その時、家のチャイムが鳴りました。逃げようとして玄関に向かっていたアリスが見たものは、宙吊りになって死んでいる叔父と、彼を手にかけた「蜘蛛」のコードネームを持つ殺し屋だったのです。
蜘蛛はアリスをも手にかけようとしますが、死にたくない一心で反撃に転じた彼女の姿を見て、自身と同様の「CEC(先天性集中力過剰)」の能力を持っていると見抜きました。
それ以降蜘蛛は、自身の望みのために、アリスを後継者にするべく特訓を開始します。その結果、彼女は徐々に「蜘蛛」としての才能と能力を開花させていきます。
しかしその特訓の最後には、卒業試験と称して蜘蛛との戦闘が待っていました。蜘蛛の望みは、組織の殺し屋として名前と戸籍を奪われた「自身の死」で、アリスに殺されるのを望んでいたのです……。
彼女は蜘蛛の遺言「何者にも名前を奪われず自力で絡め取る蜘蛛として生きろ」という言葉を胸に、「蜘蛛狩り」という組織の追っ手と戦う茨の道を突き進むことを決意しました。
- 著者
- 村田 真哉
- 出版日
- 2010-10-22
本作の魅力のひとつとして、殺し屋同士のバトルに昆虫の能力や生態をプラスしたことがあげられます。ネタバレですが、実際のバトルシーンの展開とともに解説していきましょう。
沖めぐみは蜚蠊(ゴキブリ)の能力を持った殺し屋。アリスと戦って負けたことから、彼女の力や容姿に惚れて仲間になります。
ゴキブリの特性として以下の2つがあります。
「風読み(エアディテクション)」:わずかな風の変化から相手の動きや罠を見抜く力
「膏流し(オイルピレーション)」:体表から大量に油脂を分泌することで拘束から逃れる力
めぐみはこの能力を活かしてアリスを助け、ともに組織の追っ手と戦います。
「蜘蛛狩り」のボスが、殺し屋の「蟲」たちにアリスを狙うよう仕向けたデスゲームの最中、蟲の気配を感じためぐみはある教室に逃げ込みます。しかしそこには、「ゲジ」の名を持つ殺し屋が先回りしていました。
蟲としての純粋な走行性能でゴキブリを上回る能力を持つゲジ。めぐみはスピードで押され、攻撃を一方的に喰らってしまい、意識を失ってしまいます。
しかしトドメを刺そうとゲジが放った攻撃を、めぐみは無意識で回避しました。そう、実際のゴキブリが頭を切り落とされても餓死するまで生きるように、めぐみは蟲としての修行の成果で、無意識化でも回避行動に移れる能力を持っていたのです。
ゲジの攻撃を避け続けるうちに意識も回復してきます。連続する攻撃で疲労したゲジのスピードは簡単に避けられるものになっていて、彼女は反撃を開始するのです。
ゴキラリアットをくらい、ゲジは昏倒。軍配はめぐみに上がりました。
ちなみみにめぐみが持っている回避行動に移れる能力は、実際のゴキブリの「ジャイアントニューロン」という巨大神経組織に関係する能力となっています。
- 著者
- 村田真哉
- 出版日
- 2014-08-22
アリスの持つ「CEC」という能力は、脳の障害によりひとつの事柄に対する集中力が異常に高まって、日常に必要な最低限の思考や行動が阻害される架空の脳疾患。
しかし裏を返すと、この能力があるとひとつの事柄(戦闘時の相手の呼吸や動きなど)に対する認知を広げ、相手の動きを先読みして凌駕することができるようになります。
またアリスは蜘蛛糸(スレッド)という、蜘蛛糸を19万本編み込み、先端から糸がついている刃物を噴出する武器を持っています。1500度の熱と600キロの重量に耐える強靱さを持っていて、このスレッドとCECの能力を使って敵と対峙するのです。
作中では、10巻から登場する蠍(サソリ)の力を持つ蟲に襲われ、毒で体がマヒして動かなくなる絶体絶命の状況に陥りましたが、唯一動かせる指先を使い、スレッドを身体に巻きつけてむりやり戦うというマジックのような使い方もみせています。
その後物語は、「蜘蛛狩り」のボスが軍隊アリの能力を持つ蟲に命じてバトルを仕掛けていくところから、さらに加速していきます。
戦いを求めてやってくる蟲、報酬目当てでアリスを狙う蟲、アリスが自分と同じ力を持っていると知り友達になろうとやってきた蟲など、さまざまな思惑を抱える蟲たちがアリスを狙って学園にやってくるのです。
その中で「生」を勝ち取ろうと苦戦する彼女らの戦いは迫力満点で、読者を楽しませてくれるでしょう。
- 著者
- 村田真哉
- 出版日
- 2015-02-21
『アラクニド』はバトルだけではなく、えっちな描写やグロテスクな表現があるのも魅力です。
上述した軍隊アリの蟲たちですが、彼らは「女王支配(クイーンズルール)」という、自身の唾液を摂取した相手を兵隊にし、意のままに操ることができるようになる能力を持っています。
クイーンズルールという名称ですが兵士も同様の能力を持つため、学園中で兵士と化した男子学生たちが女生徒を強姦するシーンがあったり、バトル中に服が切り刻まれることで下着がポロリしてしまうシーンもあります。
また彼らのバトルは基本的に殺し屋同士の戦いになるので、主人公や敵がボコボコにやられたり、血を吐いたり、時には嘔吐や失禁をしたりすることも。グロテスクでバイオレンスな描写が好きという方には特におすすめです。
- 著者
- ["村田 真哉", "いふじ シンセン"]
- 出版日
- 2013-08-22
本作でアリスが最も苦心した敵のひとりとして登場し、人気を博しているキャラがいます。それがディノポネラ。巨針蟻の能力を持った人物で、「最強の蟲」と称されるほどの強さを誇ります。南米に生息するディノポネラの毒を塗った「巨蟻針(ディノスパイン)」を装備した手甲で相手い直接的に攻撃する戦い方をします。
「集中力操作自在 (CDF)」という能力を持ち、時を操ることのできる彼女は、「CEC」を持ち、自分と同じくらいの強さを持つアリスに親近感を抱いていました。
戦場で両親を殺され、孤児になったあとに針蟻に育てられたディノポネラは、自分と同じくらい強い友達を探すことが目的で今回の戦いに参加した人物。
アリスがごく普通の女子高生だということを知って幻滅し、ショックから彼女を殺そうとしてきます。
途切れることのない攻撃にアリスは瀕死状態。しかしそこでなぜ自分だけこんな目にあうのだろうという気持ちから、母が死ぬ前日にある約束をしていたことを思い出します。
そこから一連の出来事には黒幕がいるであろうことに気づき、「殺される前に殺すしかない」と、覚醒。そこから一気に反撃に出るのです。
ディノポネラは結局アリスにトドメをさされた訳ではないのですが、その最後は凄惨。敵キャラながらも辛い過去を持っている彼女が犯されるシーンには胸が痛くなります。
最強の敵・ディノポネラの強さ、最後についてはぜひ作品で!本作の魅力が詰め込まれた、迫力満点のバトル、エログロな展開を楽しめます。
- 著者
- ["いふじ シンセン", "村田 真哉"]
- 出版日
- 2016-02-22
最終巻で判明する「蜘蛛狩り」のボスの正体は、意外な人物でした。これはぜひご自身で読んで確かめてくださいね。
軍隊アリの能力で国民が暴徒化し、日本は壊滅的な被害を受けます。そんななかでボスを倒し、心身ともに傷ついたアリスでしたが、何とか学園を抜け出しました。
めぐみに匿われ、体力が回復したアリスが外に出ると、まだまだ混沌とした状況が待ち受けていましたが、それでも彼女は自分の信じる道を進んでいく形で物語は終了します。
ただ、蟲の能力を持つ殺し屋たちは他にもたくさんいますし、作中に登場したものの消息不明のままの蟲もいるので、続編を期待できるでしょう。
また前日談ではありますが、「芋蟲」を主人公にした『キャタピラー』というスピンオフ作品があります。実はこちらに「蜘蛛狩り」のボスだった人物も登場しているので、気になる方はチェックしてみてください。
手に汗握る昆虫×バトル漫画『アラクニド』。次々と襲いかかってくる蟲たちと戦いながら、成長する主人公の姿にドキドキしてください。バトルの展開の速さと作画の上手さで、気づけばどんどん読み進めてしまうこと間違いなしです。