イラストレーターのマルイノは「魔法少女育成計画」シリーズをはじめ、さまざまなジャンルのイラストを手掛け、ティーンから大人まで幅広い世代に人気があります。今回はその人目を惹くイラストが存分に堪能できるライトノベルを5作紹介しましょう。
マルイノの詳しいプロフィールは公表されていませんが、12月生まれ、AB型、丸いものが好きなイラストレーターです。
主にライトノベルのイラストを手掛けていますが、集英社みらい文庫など児童向け図書の挿絵も担当しています。また、2016年には「週刊ファミ通」にて『スプラトゥーンほのぼの4コマ&プレイ漫画』のコラムとイラストも手がけました。
その作風はとても独特で、愛らしくもどこか闇を抱えているような目力のある高貴な人物画を多く描いています。またツヤがあり思わず触ってみたいと感じてしまうような、髪の毛の描き方も特徴的です。
「魔法少女育成計画」シリーズや「拷問塔は眠らない」シリーズなど、バトルやホラーを扱った小説の挿絵も担当。しかしマルイノ自身は、バトルや血まみれ、手術シーンといったグロテスクな要素のある作品は苦手という、意外な一面も持っています。
遠藤浅蜊が執筆したファンタジーアクション小説にマルイノが挿絵を手掛けた作品です。この「魔法少女育成計画」シリーズはTVアニメ化もされ、本作は「JOKERS」「ACES」に続く3作目、完結編となります。
魔法の力が希薄になり、魔法の国が本来の力を保つことができなくなったため、人々はさまざまな方法で魔法の国の復活を試みます。魔法の国三賢人の現身である金髪巻き毛の少女プク・プックは、魔法少女の力を使って魔法装置の封印を解き、再起動をさせるという救済計画を立てました。
しかし左目に眼帯をして車椅子を操る魔法少女のプフレは、その計画の多大なリスクを案じ、記憶を失った状態である作戦に出て……。
- 著者
- 遠藤 浅蜊
- 出版日
- 2016-12-10
サスペンス、アクション、戦闘が多数散りばめられている作品です。しかし登場人物のほとんどが愛らしい魔法少女であり、彼女たちの得意技は「困っている人の心の声が聞こえるよ」「猛スピードで走る魔法の車椅子を使うよ」「誰とでも仲良くなれるよ」などクスッと笑ってしまうような可愛いもの。そのギャップが人気の秘密といえるでしょう。
マルイノが本作で描くイラストも、その愛らしい世界観を存分に表しています。魔女、悪魔、戦士などさまざまな風貌の魔法少女たちが楽しめますよ。
特に人物紹介で描かれている2頭身のキャラクターたちは、小説の内容を知らない方でも十分に楽しめる、見ているだけで飽きないものです。
文章内の挿絵は、直接的なアクションシーンのイラストはありませんが、少女たちが対峙する際の意志の強さが目の表情によってはっきりと感じられる、見ごたえのあるものです。
ぜひ手に取って魔法少女たちの愛らしさを堪能してみてくださいね。
久楽美月が執筆した小説にマルイノがイラストを描いたファンタジー作品です。星暦1993年、工業都市で大規模な爆発事故が起こってから雨の降る量が激減した世界が舞台となります。
降水量が10分の1にまで減った世の中には、「雨女」と呼ばれる少女が居ました。彼女の名はジュビア。雨の降らない土地でも、彼女の周りだけは雨が降り続けるのです。
かつて恩人に言われた「雨女と晴男、2人が出会うとき世界が変わる。」という言葉を胸に、彼女は晴男を探し求めています。
- 著者
- 久楽美月
- 出版日
- 2013-11-09
世間一般でもよく口にする「雨女」や「晴男」を題材に、その運命を切なく描くヒューマンドラマです。
雨女であるジュビアは、雨が降らなくなった事故当初は救世主と呼ばれ崇められますが、しだいに「雨を奪った女」というレッテルを貼られ、呪いを宿すものとして断罪されるようになります。その宿命は読んでいてとても切なく苦しいものです。
その一方で「晴男」のアスールは、雨に嫌われたと自らを語り、運命を切り拓くために旅に出ていました。
その2人の切ない心情を、マルイノの挿絵が絶妙に表現しています。一見美しくて可愛らしい男女ですが、彼らのバックグラウンドにある闇や心の揺れ、そして真の強さがしっかりと表情に描かれているのです。
カラー画では、ジュビアの大きくて赤いリボンが目を引きます。ジュビアの洋服にはところどころリボンがあしらわれているので、ぜひ細かい部分まで彼女の愛らしさを堪能してみてくださいね。
仰木日向の小説にマルイノがイラストを手掛けた作品。スーパーヒロインを育成する学校に通う少女たちの日常を描いた、アメリカンコミック風のコメディです。ニコニコ動画では、ボイスドラマも公開されています。
ヒロイン育成女子校であるヒロインアカデミーに通い、シェアハウスで共同生活を送る生田目亜依(なまためあい)、剛力ハルカ(ごうりきはるか)、超野悠美(ちょうのゆうみ)の3人。ある時彼女たちの元に、超有名なA級ヒロインである熊瀬川リン(くませがわりん)が加わることになります。
しかしリンは、イメージとはずいぶん違って……。
- 著者
- 仰木 日向
- 出版日
- 2014-12-03
ちょっとほのぼの、ちょっとドタバタな少女たちの学園生活を描いたコメディ青春ストーリーです。著者である仰木日向が本書のあとがきにて「スーパーヒーローやアメリカが大好きで思いっきりアメコミ風にしたかった」と述べているとおり、セリフが多用された軽い読み口の作品となっています。
挿絵は、キャラクターデザインこそマルイノのイラストらしい髪の毛のつや感と愛らしい顔立ちをしていますが、漫画のようにコマ割りをされていたり、セリフがついていたりと、文章以上にアメコミ感満載です。他のライトノベルではなかなか見ることのできないマルイノのコミカルな画が楽しめるでしょう。
響野夏菜が執筆した小説にマルイノがイラストを描いた、ちょっと変わった姉弟愛を描いた日常ミステリーです。1話ごとに事件が解決する連作短編となっています。
舞台は、世界の貿易の要所、マト。亡き両親から受け継いだ家業「おたすけ屋」を営むジュリは、食事もろくにとらず、ひたすら働く日々を送っています。それもすべて大好きな6歳違いの弟、ユヅルのためです。
一方のユヅルは、自らの部屋でワガママ放題の毎日を送っていました。
ある日、仕事を探しにジュリが隣の傭兵酒場に行くと、とある屋敷の警備の仕事が舞い込んで……。
- 著者
- 響野 夏菜
- 出版日
- 2014-10-14
ちょっとした事件を、ユヅルが安楽椅子探偵のごとく解決していくことで物語が進みます。しかし本作のメインはミステリーではなく、狂っていると言っても過言ではないほどの、ジュリのブラコンっぷりでしょう。
ズタボロになるまで働き、自分はろくに食事もとりません。そんな姉の行為を当たり前のように享受している弟のユズルの姿は、読みようによっては腹が立つでしょう。
ただその個性的過ぎるユズルを憎みきれないのは、何と言ってもマルイノが描く彼のビジュアルが美しく、まさに王子様のようだから。天使の美貌を持つ彼の、どこか儚げで守りたくなるような姿と、彼同様に愛らしくとにかく一生懸命さが溢れるジュリのビジュアルは、その姉弟の関係性を見事に表現しています。
登場人物の衣装が欧風で、レースや飾りが多数用いられたおしゃれなものなので、細部まで十分楽しむことができます。ネタバレとなるものは含まれていないので、ストーリーを読む前に挿絵だけ堪能してみるのも良いかもしれません。
葉巡明治の小説にマルイノがイラストを手掛けた、貴族少女の第2の人生を描いたファンタジー小説です。
貴族の令嬢であるリテトエトは、自分の屋敷を焼き討ちにされ、執事のセバスに命からがら助けられました。しかし追手に襲われ、川に投げ出されてしまいます。
意識が途切れる間際にセバスが伝えてきた言葉は「合言葉を覚えていますか」。
その後リテトエトがベッドの上で目を覚ますと、そこに居たのは謎の生物・魔物で……。
- 著者
- 葉巡 明治
- 出版日
- 2014-01-24
合言葉とは、「人生2周目を過ごすこと」、つまり貴族としてではなく普通の女性として幸せな生活を楽しむことでした。
貴族として生きてきた少女が、貴族としてのスキルを用いて魔物たちの街作りをサポートするファンタジーストーリーです。ただしリテトエトには、貴族時代におこなってきた数々の悪事が祟り、時折暗雲が立ち込めます。軽快なストーリーのなかに現実味を帯びた暗さが垣間見える、絶妙な作品です。
マルイノのイラストは、とにかく魔物が可愛い!文章では「西洋かぼちゃに表情を彫り付けたような何か」とか「ボロッちい布をローブのようにまとわせたような外見」などと描かれている魔物たちが、ペットにしたくなるような愛らしい外見で登場します。
しかしその風貌はきちんと得体のしれない何かであり、その小動物のようで異質な存在感が物語を引き立ているといえるでしょう。
リテトエトはゴスロリ風のドレスを纏い、執事のセバスは美形青年に描かれていて、魔物たちの世界観にしっかりとマッチしています。ぜひファンタジー溢れるイラストの世界観を堪能してみてくださいね。
愛らしくもどこか個性的で人目を惹くマルイノの画が堪能できるライトノベルを5作品ご紹介しました。いかがでしたか?西欧風のお人形さんのような愛らしい画が最大の特徴となりますが、『青と黒の境界線』のように落ち着いた画も魅力的です。また『スーパーヒロイン学園』のように、アメコミ風の振り切った作品でも違和感がないのがすごいところ。いろいろな作品の中からぜひお気に入りの画を探してみてくださいね。