星を渡る奴隷となった主人公グラジオラスの戦いと冒険を描いた『わたしのカイロス』)。この記事では、本作の見どころや、キャラクターの魅力を詳しくご紹介したいと思います。
『わたしのカイロス』は、理不尽な理由で「咎人」という奴隷身分に落とされた少女の挑戦と奮闘を描いたSF冒険ファンタジーです。主人公のグラジオラスがカイロスという少年と出会うことで、物語は加速していきます。
本作の魅力は主人公たちを襲う容赦のない展開から感じられるスリルと、苦戦しながらもそれらを乗り越えていく姿にあります。
この記事では物語の注目ポイントと、既刊2巻(2017年現在)の魅力・見どころについて紹介いたします。
- 著者
- からあげたろう
- 出版日
- 2016-06-09
正当防衛が貴族の怒りを買い、「咎人」という最底辺の身分に落とされた少女・グラジオラス。さまざまな異星に送られ、見世物としての殺し合いを強いられることとなった彼女は、はじめに降り立った星でカイロスと名乗る少年に出会います。
生き残りさえすれば「永遠の自由」を与えられるという剣闘刑に挑む彼女は、生きて帰るという信念は強いものの、非力で敵に太刀打ちできません。巨大ロボットを前に成すすべもなく命を諦めかけますが、颯爽と現れたカイロスが彼女の「武器」となり、その窮地を救ったのでした。
今後もグラジオラスとカイロスは、力を合わせて危険なデスゲームに挑みます。
全体的に丸みを帯びた可愛らしい作画で、主人公のグラジオラスも丸い眉毛がトレードマークの可愛らしい少女です。SFファンタジーとしてロボットやドラゴンなど多様な種族が登場しますが、必要以上の無機質な恐ろしさはなく、どこかポップな仕上がりとなっています。
しかし、グラジオラスが血で血を洗う殺戮ゲームに参加させられている以上、バイオレンスは避けられません。手始めとでもいうように、初戦で大型ロボットと対戦した彼女は健闘するも、レーザーで片足を吹き飛ばされてしまいました。
他にも、人間の体が泡のように膨れ上がって爆散するシーンや、モンスターの一撃で四肢がバラバラに飛び散るシーン、無実の子供が惨殺されるシーンなど、容赦ない残酷表現に震え上がります。
目をつぶりたくなるような場面も多々ありますが、そういった要素がこの物語にスリルと緊張を与えていることもまた確かです。きっとページをめくる手が止められなくなることでしょう。
突然、砂漠地帯が広がる惑星に落とされる少女、グラジオラス。彼女は「剣闘刑」に処され、ひとり見知らぬ地で戦わなければなりませんでした。彼女が生きて帰らなければ、家族の命も奪われてしまうという、絶望的な状態です。
ただ、そんな過酷な状況下でも諦めない心の強さが彼女の魅力のひとつ。惑星で出会ったカイロスの協力を得ながら、彼女は戦いに挑んでいきます。
物語の随所で、優しさのあふれる彼女の行動が描かれます。人に対して思いやる気持ちが、彼女の心の強さにつながっているのでしょう。人柄が滲み出ているセリフひとつひとつが、胸にすっと染み込んできます。
カイロスは、グラジオラスが最初に降り立った砂と機械の星に住んでいた少年です。幼いながら機械に関する知識と技術に長け、砂漠だけが無限に広がるその星でもひとりで生きてきました。
彼女に戦うための武器を与え、絶体絶命の窮地に駆けつけ、最初の戦いの勝利に貢献したカイロス。咎人への加勢は認められないと知らされると、「自分はグラのブキだ」と公言し、彼女の身を守っていくことを誓いました。出会って間もない自分を、優しさと勇気をもって救ってくれた彼女に恩返しがしたかったのです。
そんな2人がチームワークを発揮し、強敵を退けていく様子は爽快の一言。巨大ロボットと対峙した時も、まずロボットを水の中に誘い込んでショートさせ、動きが鈍ったところをグラジオラスがおとりとなって誘導し、その隙にカイロスが砂に埋もれた宇宙船から熱エネルギーを噴射させ、ロボットを塵にしてみせました。
打ち合わせでもしたかのような連携プレーはその後も続きます。カイロスは機械で、グラジオラスは咄嗟の機転で、襲い来る苦難を乗り越えていきます。
可愛いふりして逞しい2人の奮闘ぶりに、熱くさせられること間違いなしです。
アキレアは63戦無敗を誇り、「永遠の自由」に王手をかけていた咎人です。あまりの強さから「不死の英雄」という異名までつけられた彼は、2つめの星でグラジオラスたちの前に現れました。
集められた数十人が一丸となり、猛獣の溢れる危険な星で生き延びろというサバイバルゲーム。「女や子供を死なせたくない」という咎人らしからぬ発言をする彼は、グラジオラスとカイロスを庇いながら戦います。多数の猛獣に襲われてしまった時も、その相手を一手に引き受け、生きている仲間を全員逃しました。
彼のような人がなぜ咎人に落とされてしまったのか。その理由は過去に仕えていた皇族の子供2人を「守れなかった」ことにありました。彼の壮絶な過去を描いたシーンは、あまりの残酷さと理不尽さに言葉を失ってしまうでしょう……。
サバイバルゲームの終盤、星の主らしきドラゴンを倒せば無事生還という場面で、ドラゴンに飲み込まれそうになったグラジオラスとカイロスを庇ったアキレアは片腕を飲み込まれます。牙が食い込み抜けなくなったそれを見て「こりゃダメだ」とあっさり腹を括った彼は、グラジオラスにとんでもない提案をするのでした。
「腕に巻きつけてた爆弾が 幸か不幸か入ってるんだわ コイツの口の中 俺たちの勝だぜ」(『わたしのカイロス』1巻から引用)
そして、グラジオラスに爆弾のスイッチを押せと言うのです。起爆してしまえばドラゴンはもちろん、アキレアも間違いなく爆死します。「できるわけない!」とグラジオラスは拒否するのですが、それでも彼は「チャンスは今しかない」と叫んで起爆を促すのでした。
ここまで全ての戦いに勝利してきたアキレアは、このサバイバルを生き残りさえすれば晴れて自由の身です。彼ひとりの力でならきっとこの戦いも切り抜けられたはずでしたが、自身の身の自由よりも、グラジオラスとカイロスを守り抜くことを選びました。
死が直前に迫った状況でも笑い、グラジオラスたちに勝利を掴ませようとする彼の姿は、まさしく戦士。そんな誇り高いアキレアを守るために、グラジオラスはとんでもない行動に出ます。
アキレアは何を思い、どんな気持ちでグラジオラスたちに寄り添っていたのでしょうか。「不死の英雄」である彼の勇姿は、きっとグラジオラスたちの胸に刻まれたことでしょう。
少女グラジオラスは、貴族を襲った咎人として砂と機械の星に落とされました。すでに満身創痍だった彼女はその場で気を失ってしまいます。そんな彼女を保護したのは、砂漠の宇宙船に住む少年カイロスでした。
「剣闘刑」の受刑者として、生きるためには戦わねばならないと理解していたグラジオラス。カイロスの協力もあって無事に強力な武器も手に入れられた彼女は、戦いの地へ向かうために1人で砂漠を歩きます。 そんななか、咎人のしるしとして取り付けられていた首輪が光り、戦いの火蓋は突然切られます。
誰が相手だろうと勝利してみせると意気込んだ彼女の前に現れたのは、巨大すぎるロボットだったのです。
- 著者
- からあげたろう
- 出版日
- 2016-06-09
はなから咎人側に勝たせる気など一切ないデスバトル。圧倒的な力の差を前にグラジオラスは闘志を折られますが、同時に相手の弱点にも気づいて応戦します。大きさの違いを活かした戦法で勝ち筋を掴んできたかと思われましたが、油断した瞬間に片足を吹き飛ばされてしまうのでした。
1巻からさっそくハードな内容が続きます。希望を見せたすぐ後に絶望の淵に落とすような展開は、息切れを起こしそうなほどの激しさです。
しかし、グラジオラスがピンチになればなるほどカイロスの存在が輝きます。幼くも勇ましい彼は、今後どんな武器となってグラジオラスを救うのでしょうか。次なる戦いへと続く、2巻での活躍に期待大です。
2つめの惑星に送られたグラジオラスとカイロスは、「永遠の自由」まであと一歩のところまできたアキレアと出会いました。咎人となる前は皇族直近の護衛として剣を振っていた彼は、他を圧倒する強さをもって2人を守ります。
大勢いた味方が1人、また1人と命を落としていくなか、ついに現れてしまったどう猛なドラゴン。3人は無事に生き残ることができるのでしょうか?また、アキレアが手にする「永遠の自由」とは、一体……?
- 著者
- からあげたろう
- 出版日
- 2016-12-09
このエピソードで気づかされるのは、咎人というのが本来どんな人間たちであるのかということ。グラジオラスのように言われのない罪で剣闘刑にかけられた人物も少なからずいますが、ほとんどは弁解のしようもないような罪を犯した悪党たちです。
敵は猛獣だけとはかぎらないという緊張感に当てられながら続くサバイバル。その見どころは、グラジオラスを守るためにアキレアの持つ爆弾を、意を決したカイロスが爆破させようとするシーンと、アキレアを助けたいグラジオラスが見せた度胸ある行動です。
壮大な世界観の中で、命がけの戦いは続きます。グラジオラスのさらなる成長と、新たな味方との出会いなど、要チェックな内容が満載です。第3巻の発売が待ち遠しくなること間違いなしの『わたしのカイロス』は、SF好きやファンタジー好き以外の方々にもおすすめできる傑作漫画です!
- 著者
- からあげたろう
- 出版日
- 2016-06-09
王道の設定と萌え絵ともとれる画風が魅力的な本作。そのどちらも今流行しているものとは異なる懐かしさをはらんでいます。
設定は昔ながらの王道を感じさせる地球外人類の話。独自の文明を築いており、階級社会やその星ならではの科学など、懐かしのSF世界観が好きな人にはたまらない作品です。
また、萌え絵とも言える画風は、現代のキャピキャピしているものではなく、どこか柔らかさを感じさせるもの。これもまた70〜80年代あたりに流行した傾向と言えるのではないでしょうか。かつてを知る人にはたまらないものとなっています。
それらの完成度が高いので、懐かしの雰囲気が好きな方にはもちろん、その内容を知らない世代にも新鮮に楽しめる作品に仕上がっているのです。
ぜひ、懐かしくて新鮮な本作の魅力を作品本編で感じ取ってみてください。スマホアプリで無料で読めるので、そちらからまず試しに覗いてみるのもいいかもしれません。
バトル・冒険・ファンタジーなど、たくさんの要素を含んだ『わたしのカイロス』。グラジオラスとカイロスが絆の力で絶望を打ち砕いていくストーリーは、諦めないことの大切さを教えてくれます。ぜひ手にとってみてください。