「アオヨビ」は、緑豊かな田舎にある高校を舞台とした青春ほのぼの漫画です。ロリータファッションブランドが好きな少女が、かつて東京で暮らしていた転校生に「ある相談」を持ちかけることで、物語が動き出します。
『アオヨビ-青春予備校-』は、深水チロリが描いた青春ラブコメディです。透きとおるような優しくて淡い線と色使いが特徴で、全編フルカラーで楽しむことができます。
主な登場人物は、東京から田舎へ転校してきた恋愛の「先生」と、弓道部のエースに片思いをしているロリータファッションの女の子、そして彼女の片思いの相手の3人です。
恋愛初心者の彼らが織りなすストーリーは、ピュアかつ胸キュン間違いなし!心が暖まる作品です。
- 著者
- 深水 チロリ
- 出版日
- 2016-10-12
田舎の高校へ転校してきた白河玲央は、東京育ちが滲み出てる、と学校の女子生徒から大人気。イケメンで優しいことから、恋愛相談を受けたり告白されたりと、充実した高校生活を送っていました。
しかし実は彼、かつては太っていて友達もおらず、恋愛経験はほとんどありません。そんななか、今日もいつものように恋愛相談にある女子生徒が現れました。
夢星うさこと名乗る彼女は、弓道部のエース庵将に片思いをしていて、彼と仲良くなる方法を相談しにきたのです。
不器用な高校生たちが送る恋愛の結末はいかに?純粋で心温まる青春ラブストーリーです。
イケメンでオシャレで東京出身の玲央は、田舎の高校生たちから見たらまさに憧れの的。しかし、東京にいた頃の玲央は、太っていることが原因で、好きな人にひどい振られ方をしています。それを機にダイエットをはじめ、自分の過去を知っている人がいない田舎へ引っ越してきたのです。
「転入して一ヶ月… クソど田舎だが モテキャラ確立で 再スタート成功だな」(『アオヨビ-青春予備校-』1巻より引用)
彼は人に頼られれば素直に応じる優しい性格の持ち主で、恋愛相談に来たうさこの悩みも解決しようと真剣です。彼女のために将をランチに誘ったり、夏祭りデートの約束を促したりと、躍起になっています。
しかしあれこれとアドバイスをしていくうちに、玲央はうさこに対して別の感情を抱きはじめました。一途に将へ思いを寄せている彼女の姿を見て、恋心を抱いてしまったのです。
『アオヨビ-青春予備校-』には、それぞれのキャラクターの複雑な心情が事細かに描かれています。単なる三角関係を扱った漫画ではなく、玲央がなぜうさこのことを好きになったのかがしっかりとわかるため、彼を応援したくなってしまうのです。
夢星うさこは、弓道部に所属している庵将に恋をしている女子校生です。ロリータファッションが好きで、さくらんぼのポンポンがついている靴下をはいて自転車に乗ったところ、車輪に巻き込んで派手に転倒。それを笑わずに助けてもらったことをきっかけに、将に恋心を抱きました。
夢星うさこという名前は自分で作った名前であり、本名は村山田タネといいます。おしゃれで自分のスタイルがはっきりしている彼女は、学校のほかの生徒たちからは「変人」と言われていました。玲央も、ゆめこと出会った当初は、彼女の服装について指摘します。
「この格好じゃないとダメだ!」
「これがあたしなんだから!」
「恋愛得意だって聞いたから ありのままの私で青春出来る方法を教えて貰えると思ったんだ」(『アオヨビ-青春予備校-』1巻より引用)
おっちょこちょいで純粋な彼女は、とにかく一生懸命。普段は人の目を気にせずに堂々と我が道をいくのに、将の前だと顔を真っ赤にしてしどろもどろになってしまうのです。
しかしうさこは玲央にアドバイスをもらい、試行錯誤をしながらも徐々に将と絆を深めていきます。
本作の特徴は、噛ませ役のキャラクターがいないこと。それぞれ、そうしなければならない理由を明確にしているため、ぼんやりとした印象をうけることがありません。彼女たちは目的をもって行動しているので、読者もしっかりと事実を受け止めることができます。
ストイックで堅実的な庵将は、弓道部の副主将を務めているエースです。何事よりも弓道を優先させる忙しい生活を送っていて、うさこに突然告白された時も、弓道を理由に断りました。
「俺… 副主将やってっから 毎日忙しくて とても他の事 考える余裕が 無くて…」(『アオヨビ-青春予備校-』1巻より引用)
それでも彼女を嫌っているわけではないので、玲央の企みとうさこの努力によって、徐々に彼女と距離を縮めていきます。そしてついに、デートを重ねる仲にまでなるのですが……。
ストイックな将らしく、うさこと弓道のどちらも中途半端にしたくなかったため、苦渋の決断を下しました。結果的に将はうさこを振り、弓道を追いかけたのです。
好きな人を振るといった展開は、他の三角関係を取り扱う漫画ではあまり見かけません。まさに弓道バカをこじらせたキャラクターだといえるでしょう。
アオヨビ-青春予備校-5-
2017年08月10日
最終回で、玲央の過去が暴露されます。デブで嫌われ者で友達もいなかった事実を知ってもなお、うさこは彼を突き放すことなく、かばいました。昔の自分の姿を知っても歩み寄ろうとするうさこに対し、それでも過去をひた隠しにする玲央にの姿に胸がぐっと切なくなります。
玲央がいまの自分を、将や過去の自分と比べながら思案する場面には、思わず共感してしまうでしょう。不器用ながらも悩むキャラクターたちから目が離せません。
そんな最終回の見どころは、勇気を振り絞って言った玲央のある言葉です。彼の言葉に、うさこはどう返すのでしょうか。彼らの青春の結末を、ぜひその目で確かめてみてください。
『アオヨビ-青春予備校-』というタイトルが付けられるくらい、玲央もうさこも将も恋愛初心者です。青春を学ぶために努力をしたり、周りの人に協力してもらったりする姿は、見ていて応援したくなります。不器用ながらも懸命に恋愛をする高校生たちの青春が、本作には詰まっています。ぜひ1度手に取って読んでみてくださいね。