腕は超一流!だけど、言動は超ポンコツ! 『信長の忍び』は、織田信長に仕える忍びの少女・千鳥を主人公とした歴史4コマ漫画です。普段はポンコツでドジっ子な彼女が、敬愛する信長さまの天下布武を成し遂げるため一生懸命に働く姿がなんとも微笑ましい……! 今回は、アニメ化もされた本作の魅力を、個性豊かなキャラクターとストーリーの見どころからご紹介します。本作はスマホアプリで無料で読むこともできますので、気になった方はぜひ試してみてください。
天下人織田信長と、忍びの少女千鳥(ちどり)を中心に、多くの歴史上の人物の活躍を描いた4コマ漫画『信長の忍び』。2016年10月から2017年9月までに、アニメシリーズ1期、2期が放送された人気作品です。
腕は立つけどド天然の忍び少女と、かっこよさと可愛さを兼ね備えた信長の掛け合いが魅力の本作の見どころをご紹介していきたいと思います。
- 著者
- 重野 なおき
- 出版日
- 2009-06-29
1555年の戦国時代、尾張国(現在の愛知県)の領主だった織田信長は、川で溺れていた忍びの少女千鳥を助けます。伊賀から密偵にきた彼女は、信長の「日本の乱世を自分の手で終わらせる」という壮大な野望と懐の深さに感銘を受け、一人前の忍びになった暁には織田家に従える忍びになろうと心に決めたのでした。
千鳥と信長、その他の愉快な仲間たちが天下統一を目指して邁進する物語が始まります。
戦によって両親と故郷を失い、あてもなくさまよっていたところを忍びの師匠に拾われ、忍びとして育てられた千鳥は、大きくて丸い目と広いおでこがチャームポイントの少女です。幼少の頃密偵に来た尾張国で「大うつけ(おろか者・バカ者)」と呼ばれていた信長に会い、その人柄に惹かれて織田家に仕えると心に決めました。
素直で正直者な彼女はまったく忍びらしくありません。お前は誰だ?と聞かれれば「忍びです」と答え、どこから来たかと聞かれれば「伊賀から来ただなんて言えません!」と言ってしまうコテコテのドジっ子です。
性格はそんな風ですが、腕は超一流。背後から襲って来た複数人の刺客を一瞬で仕留め、名のある武将に手合わせを申し込まれた際も、武器も持たないまま簡単に背後を取ってみせたのでした。
しかし、千鳥の一番の強さは腕ではなく、心にあります。過激な性格で「逆らうものを許さない」ともっぱらの噂だった信長。彼は自分の忍びとなるために来た千鳥に、「ワシのために死ね」と言いました。それに彼女は「それは無理です」ときっぱり答えたのです。
忍びの本分は、どんな状況の中でも生き抜いて味方に情報を伝えること。そのため、侍のように主君のために命を張るだけでは役目をまっとうできないのです。千鳥は「それでもよければ雇ってください」と言い切り、まっすぐな瞳を信長に向けたのでした。
この言葉に信長はあっさり納得すると、「ワシのために生きろ」と言い換えます。ここではじめて千鳥は大きく返事をしたのでした。
泣く子も黙る信長を前に臆さず意見できるほど芯の強い千鳥。自分にできること、すべきことをしっかり理解している彼女の目には一切の迷いがありません。そのまん丸の目に見つめられると誰でも毒気を抜かれてしまいそうです。信長の忍びとしての彼女の活躍に注目してください!
日本史上最も有名な偉人の一人である織田信長は、小説や漫画などの多くの作品で題材として取り上げられ、時にはヒーロー、時には悪役として描かれています。では、本作の信長はいったいどんな人物なのかというと……、お茶目な男前です。
物語では信長の意外な一面がたくさんピックアップされています。彼が甘党で下戸だったという噂が残っていることをご存知ですか?松永久秀が建てた名城・多聞山城(たもんやまじょう)に張り合い、「いつかお菓子の城を建てる」と鼻を荒くしながら意気込む信長はとても可愛くて新鮮です。
また、男前な信長の行動にキュンとしてしまうシーンが1巻にあります。護衛を連れずに街を散歩していたところを刺客に襲われ、それを幼い千鳥に助けられた際、彼は帰ろうとする彼女を呼び止め、持っていた布で長い髪を自分の手で結ってあげるのです。助けてもらった礼だという布とポニーテールは千鳥のトレードマークとなり、彼女の宝ものとなったのでした。
他にも、信長の正室の帰蝶(濃姫)との夫婦仲についてや、家臣に対するゆるい態度など、まだ見ぬ信長の姿が盛りだくさんです。本作を通し、今まで持っていたイメージと違う織田信長を楽しんでみてはいかがでしょうか。
ポップな絵柄とギャグ満載の内容が楽しい本作ですが、物語の大筋はほぼ史実の通りで、織田信長が歩む天下人への道が忠実に描かれています。
そのため信長が活躍した戦国時代の流れについて、楽しみながら学ぶためのテキストとして本作はうってつけです。4コマ漫画という構成も手伝って、一つ一つの出来事をしっかりと把握しながら歴史を読み解くことができます。
個性際立つキャラクターとして登場するたくさんの偉人たちについても、その設定が全てフィクションというわけではなく、実際に伝えられている人柄をベースにしています。教科書だけでは知ることのできない豆知識も豊富ですので、歴史通になるための第一歩としても本書は非常におすすめです。
史実に忠実な歴史漫画である以上、シリアスな展開は避けられません。戦の激しさや惨さ、かつての仲間の死や裏切りについても描かれています。また、普段は忍びとして情報収集に着手することが多い千鳥も、戦場では戦忍び(雑兵の一人として戦う忍び)として戦場を駆け回り、信長の天下のために敵を切り倒します。
- 著者
- 重野なおき
- 出版日
- 2017-08-29
「桶狭間の戦い」で今川氏との戦いを終えた織田軍。勝利こそしたものの、自軍が受けたダメージも決して小さくはありませんでした。激しい戦いの中で消耗した千鳥も手当てをうけて療養しています。そんな千鳥の元に、彼女の活躍を記録したいという男が訪れます。
本来忍びとは裏方の仕事のため、自分たちの仕事について答えることはできません。そのため千鳥は自分が見た戦の様子を話すことで男に協力することにしました。その歴史書作りの最中、男は千鳥に「女の子という立場で、人を斬ることは怖くないのか」と聞きます。
その質問に千鳥は「こわくないけど、斬りたくない」といい、こう語ったのでした。
「昔 信長様が言ってたんです 自分はこの乱世を終わらせるために戦うと」「だから 私が動く事で信長様が勝ち 戦の無い世に少しても近くのなら」「私はそういう事をするのに なんのためらいもありません」(『信長の忍び』1巻から引用)
千鳥のこの言葉に感動した男は千鳥を尊敬し、今後もたくさんの話を聞かせてほしいと彼女に頼みます。太田牛一(おおたぎゅういち)と名乗るその男は、後に織田信長に関する最も重要な資料となる「信長公記」の著者となる人物なのでした。
その話を聞きつけた秀吉や帰蝶も歴史書作りに協力すると言い出し、せっかく千鳥の忠義が心に響く名場面だったのに、オチのギャグへとしっかり持って行かれてしまいます。このシリアスとギャグが入れ替わるテンポのよい展開が、血なまぐさいはずの戦国時代の風景を、明るくて気軽なものにしてくれているのかもしれません。笑あり、名言ありの物語をぜひ読んでみてください。
日本史を好きになるきっかけになるかもしれない本作。無料漫画アプリ「マンガPark」で公開中の今、ぜひ一度読んでいただきたいと思います。