恋をしたい。でも、どうしてもできない……。あるトラウマを抱えた少女の、純愛ストーリーです。 主人公は、ワケあって男性が嫌いな女の子。でも、恋はしたいというジレンマを抱えています。男はみんなオオカミだって思うけど、理想の王子様に会いたい。そんな矛盾だらけのヒロインが奮闘する物語です。果たして、彼女は素敵な恋ができるのでしょうか。 そんな本作は、スマホアプリから無料で読むこともできます。ぜひご利用ください。
主人公・天野謡は、ワケあって激しい男嫌いの女子高生。「男なんてオオカミだ!」と公言して、はばかりません。
しかしクラスメイトが恋人を作って幸せそうにしているのを見て、自分も素敵な恋をしてみたい、男嫌いの自分を変えたい、と思うようになります。
そんなあるとき、彼女は運命の出会いを果たします。ギター工房の職人として働く、戸野田譜という男性に一目ぼれしたのです。
彼女は思い立ったらすぐ行動するタイプなのか、初対面の彼に向かって、いきなり告白。見知らぬ女の子から突然告白された戸野田は、当然驚きます。彼女の恋は、一体どうなるのでしょうか。
この記事では、そんな本作の魅力をご紹介していきます。ネタバレ注意です。
主人公の天野謡は、とある理由で男性恐怖症になってしまった女の子。それゆえに男はオオカミだと公言していますが、恋に対するあこがれは持っています。
そんなあるとき、見た目が超絶理想の男性・戸野田譜に出会い、一目惚れ。
ちょっとすみません
あたしの王子様になってください
(『初恋ダブルエッジ』1巻より引用)
初対面にも関わらず告白するのです。しかし、自分から告白したにも関わらず、彼女は男性嫌いのため彼に近づくことができません。まるでハリネズミのように触ろうとするものを無意識に刺してしまいます。
男性嫌いのヒロインが告白することから、物語は始まっていきます。 果たして彼女は、この恋をきっかけに自分を変えることができるのでしょうか。
男はみんなオオカミだという考えの謡は、一目惚れした戸野田のことも、変わらずオオカミだという認識でいます。付き合ってくださいと自分からアピールをしているのに、いざ彼が近づこうとすると、思わず距離を取ってしまうのです。
しかも、それだけでなく、男はオオカミだ、野獣だ、犯罪者だ、と罵る始末……その不可解な行動に、急に告白された戸野田は混乱します。
- 著者
- 小田原 みづえ
- 出版日
- 2014-10-17
無理もありませんが、謡には謡なりの事情があり、男は嫌いだけど恋はしたい、恋をして自分の世界を変えたい、と思っているのです。
そんな彼女のことを、戸野田はまるでハリネズミみたいだとたとえます。確かに警戒心むき出しの彼女は、敵から身を守ろうとして針を逆立てたハリネズミ。そんな状態では、とてもじゃないですが近づくことはできません。
オオカミとハリネズミは、距離を縮められるのでしょうか。
謡が男性恐怖症となってしまったのには、ある理由があります。
14歳の時に道を歩いていたところを、知らない男性に襲われかけたのです。その際、大事にしていたギターを使って身を守りましたが、そのギターはボロボロに……。
それ以来、男性はみんなオオカミだという認識を持つようになり、男性に触れられることが苦手で、近くにいる状況にも耐えられません。
戸野田に対しては恋愛感情があるからか、彼から触れられても平気なことが多いのですが、時には拒絶してしまうことも。そんな自分に傷つき、彼ともなかなか距離を縮めることができず、悲しい思いをしているのでした。
でも、彼としっかり付き合いたい、恋をして自分を変えたい、という思いが彼女を動かしました。荒療治ですが、男性ばかりのバンドに助っ人として参加し、ギターを演奏。観客が男性ばかりで足が竦んでしまうこともありましたが、戸野田の励ましにより、無事ライブを成功させたのです。
- 著者
- 小田原 みづえ
- 出版日
- 2015-04-17
謡の努力と一途な思いは戸野田にも伝わり、やがて2人は付き合うことに。彼に触れられることにも慣れていき、自分から抱きつくことまでできるようになりました。
過去のトラウマにはまだ苦しむことがあり、簡単に男性恐怖症を克服することができませんが、謡はあきらめません。
男性とのかかわりを避けるため、いつもは裏方を担当していた文化祭ですが、今回は表舞台で活躍しようとメイドのコスプレに挑戦するのです。戸野田は心配でならないようですが、彼女は着実に成長していきます。
幼い時に襲われて負った傷は深く、何度も辛い思いをする謡。それでも戸野田のために頑張る彼女の姿を見ていると、ひとりでは克服できない過去のトラウマも、好きな人と一緒ならば乗り越えられるのではと感じられます。
謡の一途さに惹かれて付き合うことになった戸野田ですが、彼女とつき合うことにはさまざまな困難が付きまといます。
謡は男性恐怖症ですが、手をつないだり抱きついたりと、戸野田とのスキンシップはできるようになってきました。しかし彼女の心の傷は深く、襲われた過去がたびたびフラッシュバックすることがあるのです。この姿には、謡を支えている家族も投げだしたくなるほどでした。
彼女は、自分の過去のトラウマのせいで戸野田を振り回してしまうのではと不安に思うあまり、彼とすれ違い、ケンカをしてしまいます。
さらに、これまで彼女を送り迎えするなど何かと面倒をみてくれていた弟の修平が、実は血のつながりが無く、さらに彼女のことを想っていることがわかる急展開。謡の家族である修平が、恋のライバルとなったのです。
- 著者
- 小田原 みづえ
- 出版日
- 2015-10-17
しかし戸野田は、彼女との間に立ちはだかるさまざまな問題にも屈することなく、謡を優しく見守り、愛してくれます。もし彼が謡と同じ高校生であれば難しかったかもしれませんが、彼が大人だったからこそ、彼女のすべてを包んでくれたのでしょう。
2人の恋は一難去ってまた一難といった具合ですが、謡が徐々に強くなっていき、お互いの愛も深くなっていきます。
本巻では、戸野田の工房にやってくる新たな登場人物・大学生のすみれにも注目。どうやら、工房の人たちとも顔見知りらしい彼女ですが……一波乱の予感です。
ここまで謡は何度もトラウマに苦しんだり、彼女に想いを寄せる修平や、戸野田に片思いをする女性の存在に悩んだりして、関係がギクシャクすることがありました。
しかし、そうしたなかでも2人の絆が揺らぐことはありません。謡は戸野田といることで強くなり、どんな困難も乗り超えていったのです。
やがて謡は大学生になります。選んだのは、なんと共学の大学。男性と関わる時間が大幅に増えましたが、それでもキャンパスライフを謳歌する姿に、たくましくなったと感じられるでしょう。
とはいえ、楽しいことばかりではありません。大学で再会した中学校の同級生に、謡の過去の暴行事件を知っている者がいたのです。このことを周りにバラすと脅されてしまい……。一体、彼女の運命はどうなってしまうのでしょうか。感動の最終巻です。
- 著者
- 小田原 みづえ
- 出版日
- 2017-10-17
本巻では、メインの2人以外にも、修平とすみれの関係にも要注目。アクシデントでキスをしてしまった2人。すみれは、だんだんと修平への想いを自覚していくようになります。しかし、なかなかこの2人、想いが通じ合いません。じれったいこの関係は、果たしてどのように終着するのでしょうか。
巻を増すごとに、どんどん強くなっていく謡。戸野田と出会っていなければ、彼女はここまで成長できなかったかもしれません。ここまで何があってもお互いを想う気持ちを捨てなかった彼らなら、これから何があっても乗り越えていけるでしょう。
結婚式の衣装に包まれた表紙のような展開は待ち受けているのでしょうか。気になる方は、ぜひ本編でお確かめください。
好きだけれど、過去のトラウマから近づくことすらできないという、切ない恋を描いた本作。謡の抱えた傷は深いもので、しかし勇敢な彼女はそんな自分を克服するためにしっかりと前に進んでいきます。
そんな彼女に徐々に惹かれていく戸野田ですが、読者もまた彼女のひたむきさに心を動かされていきます。矛盾することをよく言う彼女ですが、頭で考えていることと感情が一致しない苦しさは、本人が人一倍実感しるところ。
それでも、彼を好きだという気持ちによって、強くあろうとするのです。
もちろん少女漫画である本作の魅力は戸野田にもあり。彼の謡を見守る優しさ、彼女に比べると大人であるゆえの余裕は、読者をキュンキュンさせることでしょう。
ぜひ、そんな魅力的なふたりが織りなす恋物語の行く末を作品本編で見届けてみてください。読者にも勇気を与えてくれる良作です。
辛い過去を負った主人公という設定ですが、重いストーリーではなく、胸がきゅんとする展開が詰まったラブストーリーとなっています。トラウマに負けずに前向きに生きていく謡と、彼女を見守る戸野田の優しい愛情に引き込まれる魅力的な『初恋ダブルエッジ』。興味を持った方は、ぜひ読んでみてはいかかでしょうか。