人気のライトノベルシリーズのイラストを多く手掛ける黒銀。可愛いキャラクターもカッコイイキャラクーも書き分けるテクニックを持っている彼が、挿絵を描いたライトノベルを5作紹介します。
黒銀は、ライトノベルの挿絵やキャラクターデザインなどを手掛けるイラストレーターです。ロボットが登場する「ナイツ&マジック」シリーズなど、メカニックなデザインを得意としていますが、一方で可愛い女の子もカッコイイ騎士も描く絵師でもあります。
今回は黒銀の魅力がわかる幅広いジャンルの作品をご紹介します。
ソフトウェア会社に勤める28歳のサラリーマン・倉田翼は、プログラマーとして働いています。納期に間に合わせるための「最終防衛ライン」と呼ばれるほどの天才ですが、そんな彼には、ロボットオタクというもうひとつの顔がありました。
重度のオタクである彼は、残業代でプラモデルを買い込むのが趣味。その日もいつものようにプラモデルを購入し、ほくほくした気分で帰宅していた翼でしたが、なんと交通事故に巻き込まれて命を落としてしまい……!?
- 著者
- 天酒之瓢
- 出版日
- 2013-01-30
小説投稿サイト「小説家になろう」で人気を博し、後に書籍化、マンガ化、アニメ化をした人気シリーズです。
主人公の倉田翼は序盤で交通事故に巻き込まれ、早々に死亡してしまいます。そして異世界で生まれ変わり、新しい人生を送ることになるのです。
翼が生まれ変わったのは、人と魔獣が暮らすセッテルンド大陸にあるフレメヴィーラ王国という場所でした。彼はその国のエルネスティ・エチェバルリア、通称エルという少年に生まれ変わったのですが、倉田翼の頃の記憶を持っていたのです。
フレメヴィーラ王国には幻晶騎士(シルエットナイト)という巨大なロボットが存在しており、ロボットオタクだったころの記憶を持つエルが夢中にならないわけはありません。エルは狂喜してロボットのパイロットを志しました。
ロボットオタクでプラモデラー、そして優れたプログラマーという知識を最大限に活かして、自分でロボットを作っていくことになるのです。
エルが自らの妄想をどんどん現実のものにしていく過程は他にはない面白さがありますが、そんな彼が作るロボットを可視化してくれるのが黒銀のイラストです。デザインがどれもカッコよく、読者のイメージもさらに加速していくでしょう。
異世界転生もの、ロボットバトル、魔法や魔獣などライトノベルの王道の設定を使用しながら、それでもオリジナリティを感じられるのは、やはり主人公がロボット作りに励んでいるから。2巻以降はさらにロボット作りの描写が増えるので、1巻を読んで気に入った方はぜひ続けて読んでみてください。
中高一貫の進学校に通うアリサは、周囲からはおっとりした優しい女の子として見られている、内気な女の子です。彼女は厳しい母親に締め付けられ、ロリータファッションやパンク音楽が好きな本当の自分を押し殺していました。
ある日、アリサの前に不思議な青年が現れます。深紅色の瞳を持っ彼の後を追いかけると、不可思議な空間へと迷い込んでしまい……!?
- 著者
- 西台 もか
- 出版日
- 2015-04-15
「ビーズログ文庫アリス」が創刊された時にその第1弾として発表された作品です。作品のベースとなった楽曲は、原案である骨盤Pがネット上に発表したもので、そのミステリアスな歌詞や歌声は瞬く間に高い人気を得ることになりました。
主人公のアリサは、本当は祖父からもらった杏梨紗という名前があるのですが、母親が暴走族みたいで嫌だと言い、普段はカタカナで生活しています。
母親はこの他にもアリサの持ち物を勝手に捨てるなど理不尽な扱いをしてくるのですが、彼女はそんな母親に反抗することができないでいました。
内気でどこか闇を抱えたアリサが迷い込んだ場所は、「白ウサギ」や「帽子屋」など、さまざまな役職や能力を与えられた参加者たちが「無垢なるアリス」を狙ってデスゲームをおこなう「不思議の国」でした。
アリサはその「アリス」に選ばれてしまい、ピンチに陥ります。
デスゲームという設定からもわかるように、本作はダークな世界観が特徴です。ホラーではないので、怖いものが苦手な方でも大丈夫。ゴシックな雰囲気が好きな方は面白く読むことができるでしょう。
ストーリー展開もテンポがよく、よい意味で期待を裏切るものもあり、最後まで飽きることなく一気読みすることができます。
そんな本作を飾るイラストは、黒色が目を引く表紙で暗めの雰囲気が漂っていますが、一方でキャラクターはとても可愛らしく描かれています。可愛さとダークさの融合は作品の世界観にもピッタリです。
海洋国家スピネイア王国屈指の港町カルディスに暮らすディエゴは、ある日、友人のアルバロから「新大陸遠征軍」の船に乗ろうと持ちかけられます。
最初は嫌がっていたディエゴでしたが、密かに異国の呪術・陰陽術を研究していることを教会に知られてしまったことをきっかけに、船に乗ることを決意しました。
こうして新大陸へと足を踏み入れた彼らが目にしたものとは……!?
- 著者
- 和ヶ原 聡司
- 出版日
- 2016-11-10
大航海時代を迎えた架空の大陸での物語。主人公のディエゴは異国の呪術である陰陽術に魅せられ、その研究に没頭している青年です。
研究熱心であるせいか変わり者で頑固なイメージがありますが、物語が進むにつれて、正義感があり自分とは異なる立場の相手とも理解しあえる柔軟な面もあることがわかっていきます。
そんなディエゴの友人で、彼が新天地へと向かうことになったきっかけでもあるアルバロは、お調子者で社交的な性格。港町で雑用をしながらさまざまな情報を入手していて、ディエゴにとっては貴重な存在でした。
この他にも、ディエゴたちが新大陸に足を踏み入れた後に出会う、水の檻に捕らえられた少女・レラや、先住民の女戦士・ローゼンなどが登場します。
本作は架空の話ではありますが、先住民と侵略者の対立という構造は歴史上でもとても大切なテーマで、それと同時に重たく難しいものも秘めています。ディエゴが先住民と交流を重ね、自分たちの先人がおこなってきたことを知り、目の前の現実と向き合っていく姿は、成長物語としても読みごたえがあるでしょう。
先住民とディエゴたち旧大陸の人間は、もちろん文化も歴史も違います。本作のイラストではその違いが服装や兵器などでもわかるように描かれており、読者に世界観を伝えてくれます。大航海時代や歴史好きの方をはじめ、ファンタジーを読みたいけれど長いシリーズを読むのは大変だと感じている方にもおすすめ。ディアゴたちがどんな道を進んでいくのか、ぜひ手に取って確かめてみてください。
自分が地球に住んでいて日本人だったことは覚えているが、自分がいったい何者なのかはわからない……気が付いた時にはそんな状況に陥っていた「俺」。そんな彼の耳に聞こえてきたのは、自分が転生者であるということでした。
日本で死亡した後、剣と魔法が入り乱れる異世界へと転生した「俺」を待っていたのは、バトルに次ぐバトルの冒険物語だったのです。
- 著者
- 迷井豆腐
- 出版日
- 2016-06-23
ライトノベルではお馴染みの異世界転生もの。主人公は神様の手違いで死んでしまった日本人の青年ですが、「俺」自身は以前の自分のことを一切覚えていません。ただ、自分自身のことは忘れていますが、当時の知識は残っているという状態です。
そんな彼の転生先での名前はケルヴィン。職業は召喚士です。しかも転生時にレアスキルである召喚術を得ていました。召喚術とは、契約を結んだ相手を配下に置くことができるというスキルで、ケルヴィンはすでに転生を司る女神・メルフィーナを従えていました。
ケルヴィン自身には記憶がありませんが、日本で死んだ後、転生の手続きをする際に出会った彼女に一目惚れをしたことをきっかけに、メルフィーナと契約を結び、配下にしたのです。
剣と魔法、神様にハーフエルフに魔族など、さまざまな種族が生きる世界は、まさにRPGのようなファンタジーです。実際、作中でケルヴィンが転生し、そのスキルやレベルが表示されたステータス画面はゲームそのもののようでした。
ケルヴィンはメルフィーナやハーフエルフのエミル、魔王の娘のセラなどに囲まれたハーレム状態で、ラブコメを展開していきます。
個性的な性格のキャラクターを描き分けたイラストは、特にメルフィーナに注目。彼女のしっかりしているようで天然なイメージが表れています。
また、後半にかけて激しくなってくるバトルシーンでは、ケルヴィンがレベルの高い敵もどんどんなぎ倒していきます。王道の設定をこれでもかと詰め込み、読者の期待を裏切らない満足のいく物語で、異世界ものをあまり読んだことない方への入門としてもぴったりです。
他国にもその名を轟かせるシルヴェストロ騎士団。そのなかで王国の最終兵器と称される美貌をもっているのが、副団長のノーラヒルデです。
彼は、かつて戦いで負傷をした際に出会った、黒竜のクラヴィスを従えていました。
- 著者
- 朝霞 月子
- 出版日
- 2017-04-28
作者・朝霞月子の「黄金竜」シリーズのスピンオフ作品で、本編で人気の高かった副団長ノーラヒルデを主人公に据えています。
表紙に描かれているのがノーラヒルデとクラヴィスです。ファンタジックな雰囲気も相まって、思わず手に取ってしまう美しさ。少女漫画のような綺麗なイラストは、作品の世界観にピッタリです。
主な舞台は「黄金竜」シリーズと同じくシルヴェストロ騎士団。これはその名を他国に轟かせる有名な騎士団で、所属する騎士たちも曲者揃いです。
彼らを率いる団長のフェイツランドは「破壊王」と呼ばれるほど屈強な男で、「黄金竜」シリーズでは彼と、新米騎士でありながら小国の第二王子だったエイプリルという少年との、年の差カップルが描かれていました。
本作の主人公であるノーラヒルデは、騎士団のなかでも目を引く美貌を持ち、隻腕ながら副団長を務めるほどの力の持ち主です。そんな彼が従えているのが黒竜のクラヴィスで、ノーラヒルデは下僕だと公言して憚らないのですが、2人の間には強い絆があることがわかります。
ちなみにクラヴィスは竜であり人ではありませんが、人の姿になったり小さな竜の姿になったりすることができるのです。
ストーリーは騎士団の日常や他国への遠征などが中心で、甘いシーンは少なめですが、いざその場面になれば濃厚な展開もあるので、ぜひ最後まで読んでみてください。
いかがでしたか?イラストレーターを追いかけてみると、普段自分では手に取らないような作品と出会えることもありますね。この機会にぜひ新たな扉を開いてみてください。