漫画『恋は雨上がりのように』の魅力を最終回まで全巻ネタバレ紹介!映画化!

更新:2021.11.26

女子高生が恋した相手はバイト先のファミレス店長、45歳。ゆっくり静かに進む胸キュンラブストーリーです。アニメ化、そして大泉洋と小松菜奈で映画化もされました。 ファン急増中の『恋は雨上がりのように』、略して「恋雨」の見どころを1巻から最終10巻まで紹介します。

ブックカルテ リンク

漫画『恋は雨上がりのように』の魅力を全巻ネタバレ紹介!文学中年が青春を取り戻す?

小説家になりたい、という夢が半ばのままの痛みを抱えた中年、バツイチ、子持ちの男が美少女女子高生と恋に落ちる……これだけ聞くとまるでいかがわしい漫画のようでしょうか?おっさん向けの夢物語だと思われる方もいるかもしれません。

しかし本作は幅広い年代から、美しく心を揺さぶる作品だと評価されています。その理由は何なのでしょうか?

おそらくそれは作品を読めば実感していただけることでしょう。

美しい雨の描写、文学的な感情表現、だらしなくかっこつかない現実のリアリティ……今回はそんな本作の魅力をお伝えするため、全巻のストーリーを紹介していきます。作品の魅力を展開からも感じとっていただければ幸いです。ネタバレも含みますので、未読の方はご注意ください。

恋は雨上がりのように 1(ビッグコミックス)

2015年04月03日
眉月じゅん
小学館

漫画『恋は雨上がりのように』あらすじ

漫画『恋は雨上がりのように』あらすじ
出典:『恋は雨上がりのように』1巻

怪我をきっかけに子供の頃から大好きだった陸上をやめたあきら。ある日、彼女は雨宿りで入ったファミレスの店長にちょっとしたことで元気付けられます。そして彼女はささいなことではあるものの、それで彼に恋してしまうのです。

しかし実際の店長・近藤はどこにでもいるようなだめだめな中年親父。それでもあきらは彼を知るたびにどんどん惹かれていきます……。

本作はそんな中年親父と女子高生の日々を綴った恋愛漫画です。設定だけ聞くとトンデモな作品に思えてしまいますが、それだけで終わらないのがこの作品。シーンや心理描写がすべて丁寧で美しく、つい見入ってしまうストーリーなのです。

今回はそんな『恋は雨上がりのように』の魅力を徹底紹介!最新刊のネタバレも含みますのでご注意ください。

「恋雨」の魅力をネタバレ紹介1:美しい出会いのシーン

「恋雨」の魅力をネタバレ紹介1:美しい出会いのシーン
出典:『恋は雨上がりのように』1巻

無表情な美少女のあきらは高校2年の17歳。ファミレスでバイトをしており、そこの店長の近藤に惹かれています。彼女が近藤に惹かれ始めたきっかけはある雨の日のこと。

怪我をしてしまい、子供の頃から大好きだった陸上、ともに頑張ってきた友人たちと離れなければいけなくなってしまったあきら。彼女は部活を離れ、ひとりで家に帰ることが増えます。

そんな中。いつもの学校からの帰り道で急な雨に振られたあきら。雨宿りのために近くにあったファミレスに入ります。

店内でぼうっと外を見ているあきら。雨がやむのをじっと待っている彼女に、店の店長・近藤がコーヒーをサービスしました。しかしブラックが飲めない彼女の様子に気づいた彼は、手品でミルクを出して見せ、彼女に渡します。

「きっと、すぐにやみますよ」

もらったコーヒーを飲み、外に出ると雨が上がった空に雲間から太陽がのぞいていました。

正直、女子高生が中年男を好きになるというのはかなりありえないファンタジーではないでしょうか。しかも近藤のようなTHE冴えないおっさんであればなおのこと。

そんな下手するとイロモノ漫画になってしまう可能性も出てくる設定ですが、この出会いのシーンからも分かるように、本作はどこか文学的な香りも漂う美しさがあるのです。ヒロインが女子高生であることや中年男を好きになるという設定も、物語の本質はそこではないと思えるような説得力があります。

「恋雨」の魅力をネタバレ紹介2:雨の告白シーン

「恋雨」の魅力をネタバレ紹介2:雨の告白シーン
出典:『恋は雨上がりのように』1巻

久々に部活に顔を出したのはいいものの、やはりそこに自分の居場所がないことを自覚させられるあきら。部員たちが彼女のバイト先に来ようとするのをつい冷たく拒否してしまいます。

部活をやめたあとにやっと見つけた自分の居場所と、そこで心の支えとなってくれている店長をとられるような焦りや、見ようによってはみじめな自分や逃げ場所とも捉えられてしまう今の状況を見てほしくないという気持ちがあったのでしょうか。

部活からの帰り道、曇っていた空から雨が降り始めます。

おのずとあきらの足が向いたのは近藤のいるファミレス。傘もささずにびしょ濡れになりながら歩いて来る彼女に、近藤は驚いて中へ入りなよと言います。しかし彼女はそこから動かないまま、最初はつぶやくように、次ははっきりとこう言うのです。

「あなたのことが好きです」

そして呆然とする近藤をおいて、雨の中、また傘もささずに来た道を引き返していくのです。

この前にも一度だけ好きですと言われた近藤は、その時は人間的な意味でだと捉えましたが、この状況での言葉には真意に気づき、戸惑います。そして何も答えられないまま彼女を見送ることとなるのです。

雨に濡れ、部活で居場所のなさに気づき、やつあたりのようにかつての仲間とぶつかってしまうという散々な状況なのに、読んでいて心が重くなりすぎないのは、彼女の近藤への気持ちが希望としてその場にあるから。辛い状況だからこそ、彼女の拠り所である恋心の美しさが際立ちます。

年が離れているとはいえ、ひとりの人間にこんな風にむき出しにぶつかってこられて心を動かされない人はいないのではないでしょうか。あきらの最悪な状況での勇敢さに心を動かされる名シーンです。

「恋雨」の魅力をネタバレ紹介3:美少女に迫られても揺らがない中年男!?

「恋雨」の魅力をネタバレ紹介3:美少女に迫られても揺らがない中年男!?
出典:『恋は雨上がりのように』1巻

45歳万年店長、バツイチの近藤。ちょっとねぐせがついてたり、ズボンのチャックが開いてたり、ストレスで10円ハゲができてたり、大きな声でくしゃみをしたり。そんな生活臭と加齢臭が漂う中年男性です。

しかしそれがすべて好きだというあきらはなかなかファンタジーのような存在ではありますが、実は近藤の性格もファンタジーと呼べるほど「最後の線引き」のような部分がしっかりしています。どちらも好感が持てる清い人物だから、この設定に負けない清潔感あるストーリーになっているのです。

一度目のあきらの告白に「ありがとー!!」と喜び、人間として受け入れられたと喜ぶ近藤。この下心のなさはなかなかいない男前っぷり。普通はそんな風に冷静を装いながらも心の中では多少は期待してしまうのではないでしょうか。

このように「性的に見られない」という安心感は多くの女性安心できる長所ではないでしょうか。現実ではなかなか見つけられなさそうなファンタジー中年男性です。

そして2度目の告白の後、本気ですと言いながらほおを赤らめるあきらに、近藤はついドキドキしてしまいます。しかし作家を目指している者らしい冷静さで自分を分析し、的確な表現で気持ちを表現、自分に歯止めをかけるのです。

「しきりに胸がしめつけられるのは…その若さと純粋さ。

そして若くはない自分へのいたたまれなさ。

周りの目だけが理由なんじゃない。何より俺が、

傷つきたくないんだ」

まっすぐなあきらが惹かれた人物らしい、実直な性格が感じられます。このように相手が女子高生であろうと誠実に、下心なく向き合えるのが女性の心も掴む要因となっているのです。

告白は雨に濡れながら【『恋は雨上がりのように』1巻ネタバレ注意】

告白は雨に濡れながら【『恋は雨上がりのように』1巻ネタバレ注意】
出典:『恋は雨上がりのように』1巻

 

ファミレスの店長に片思い中の橘あきらは、17歳の女子高生。

ロングの黒髪でクールビューティーのあきらは口数も少なく、店長を「すき……」と見つめていても「そんなに睨まないでくれよ」と誤解されてしまうような女の子です。このような状況なので、彼女のときめきやとまどいは、セリフよりも表情で語られることの多い作品です。

1巻では、そんなあきらの切ない片思いの状況と、彼女が過去に負った足のケガのことなどが描かれます。

全巻をとおして、大事な場面では雨が降っていることも見逃さないでくださいね。

第1話から、あきらの店長への恋心がストレートに描かれます。でも、店長にはまったく通じていません。

店長の名は近藤正己(まさみ)。バツイチで小学校4年生の男の子がいるパパですが、息子の勇斗(ゆうと)は母親の元にいます。父と子の仲は悪くはなく、面会もよくしているようです。

あきらは店長のプライベートについてよく知らなかったのでしょう、ファミレスのバックヤードにいる男の子が彼の子どもだと知って、ショックを受けてしまいます。それでも勇斗と仲よくなり、店長がすでに離婚しているとわかって安堵するのでした。

あきらはかつて、陸上の短距離走の選手でした。足が速く、エースとして活躍していたものの、アキレス腱のケガで部活をやめてしまったことが描かれています。

陸上部の友人、喜屋武(きゃん)はるかとは少しぎくしゃくしていて、他の陸上部員たちとも距離をとっている状況。彼女にとって、学校はあまり楽しい場所ではなくなってしまっているようです。

また、あきらに好意を寄せるクラスメイトの吉澤が、同じファミレスにアルバイトとしてやってきますが、彼女は吉澤のことはまったく意に介していません。

そしてある雨の日、傘もささずにバイトに来たあきらを、店長が出迎えます。びしょ濡れのあきらはついに店長に告白を……。

 

あのひとの家【『恋は雨上がりのように』2巻ネタバレ注意】

女子高生に告白されても素直に応じることなんてできない、45歳バツイチ子持ちの店長。

ストーリーはゆっくりじっくり、2人の心情を追いかけながら進んでいきます。特にあきらについては、セリフやモノローグよりも表情の変化で描写されるので、文字だけを読み流していると見逃してしまうかもしれません。

この巻では、バイト仲間の加瀬、そして店長という2人の男性とデートをするあきらの、態度の違いが見どころです。

 

恋は雨上がりのように 2 (ビッグコミックス)

2015年06月12日
眉月じゅん
小学館

告白をしたものの、店長から返事をもらえなかったあきら。その時店長はひたすら困っていました。年齢も立場も、なにもかもが違うので、戸惑って当然かもしれません。それでもあきらは強引にデートの約束をとりつけ、ウキウキしている様子です。

そんな時、ふとしたことでバイト仲間のチャラい加瀬に、店長への気持ちを知られてしまいました。あきらは必至で口止めをしますが、その代わりに加瀬ともデートをすることになりました。

待ち合わせ、映画、お茶……デートコースは似ていますが、あきらの態度や表情は、加瀬と店長とでは大違い。自分の気持ちにまっすぐな彼女は、読者の目にもまぶしく見えます。

そしてこの巻の最終話、店長が休みの日に、彼の息子の勇斗がファミレスに遊びに来ました。お父さんの家に行くと言うので、バイト終わりのあきらが一緒について行くことになります。

初めて行く店長の家。アパートの2階にあるそこは、片付いてはいますが男の独り暮らしらしい部屋でした。店長は不在で、あきらはついあちこち見てしまいます。奥の部屋は書斎のようですが、そこには意外なものがありました……。

あなたのことが知りたくて【『恋は雨上がりのように』3巻ネタバレ注意】

3巻では、出世の見込みのないファミレス店長として描かれていた近藤の、新たな一面が見えてきます。

あきら自身も彼のことをもっと知りたいと思っていて、図書館で少しその片鱗に触れることができました。

さて、『恋は雨上がりのように』の重要なシーンでは雨が降っているのですが、台風ともなるとさらに大きな出来事が……?

恋は雨上がりのように 3 (ビッグコミックス)

2015年10月09日
眉月じゅん
小学館

季節は夏です。店長はあきらとの関係を前巻のデートで終わらせたつもりでいましたが、彼女の恋心は止まりません。店長のことをもっと知りたくなっています。また、先日見た部屋についても、謎が残っていました。

図書館で偶然見かけた店長の真剣な表情は、あきらの知らない一面でした。彼が手に取っていた本が意味するものは、なんなのでしょうか。
 

そして台風の日、店長が風邪で休んでいると、部屋のチャイムがしつこく鳴ります。しかたなく出てみると、そこには心配そうなあきらの姿があって……。

さらにこの巻では、ケガでのリタイアして以降陸上に距離をとっているあきらと、陸上部の友人の喜屋武はるかの友情も描かれます。こちらもまた、気持ちを分かち合うにはまだまだ時間がかかりそうな様子です。

胸がちぎれそう【『恋は雨上がりのように』4巻ネタバレ注意】

3巻に引き続き、4巻も台風の夜から始まります。ここであきらと店長の関係が、少しだけ変化することになるのです……。

また夏祭りで髪をアップにした浴衣姿のあきらも、しっかり目に焼きつけておきたい可愛さ。
 

さらに、新しく店長にゆかりのある人物が登場します。この人物との会話で、店長のかつての夢がわかるのですが……。

恋は雨上がりのように 4 (ビッグコミックス)

2016年02月12日
眉月じゅん
小学館

台風の夜、独り暮らしの男の部屋、女子高生と2人きり、そして停電……。なんともドキドキするシチュエーションが描かれます。

暗がりのなかで店長と言葉を交わしたあきらは、嫌われていないと知り、よかったと小さくつぶやいて涙を流しました。

店長もこれ以上あきらを放ってはおくことができず、ついにその手を伸ばしてしまいます。そこで何が起こったのか、店長の揺れる心のモノローグにも注目しつつ、ぜひ実際に読んでいただきたい見どころのシーンです。

恋というよりも人間として彼女に惹かれてしまった近藤。恋よりもずっと強い気持ちではありますが、やはり気持ちのままに行動するのは怖いもの。彼女にも己にも自分たちは「友人」だと言い聞かせ、距離をおくのです。

なかなかじれったい展開。しかし心理描写が丁寧なのでそれが嫌だと感じないのがこの作品の素晴らしいところです。

またあきらは、ついに店長のメールアドレスをゲット。店長はガラケーのため、連絡手段はメールか電話のみ。ちょっとした短いメールにも、彼女は心を躍らせています。

さらに、店長が図書館で借りた本の作者が、実は店長が知っている人だったことがわかります。その人と再会することで、彼はかつて抱いていた夢を再び思い出すのでした。

おじさんだって心は揺れる【『恋は雨上がりのように』5巻ネタバレ注意】

あきらの恋心は、最初から一途に変わっていません。この巻では、店長の気持ちが変化していきます。昔の友人に会い、かつての夢を思い出し、冴えない現状をあらためて思い知るのです。

そして、そんな自分を好きだと言ってくれる女の子がいることに気づきました。

あきらの瞳にまっすぐ見つめられることで、彼の心が動いていきます。

 

恋は雨上がりのように 5(ビッグコミックス)

2016年06月10日
眉月じゅん
小学館

文化祭の季節になりましたが、学校でのあきらは無表情のままです。しかし別の高校に通うバイト仲間のユイが遊びに来て、恋バナを一緒にする彼女の表情は生き生きとしていました。

また植物園や古本市など、店長とあきらは一緒に出かけることが多くなります。これまではどこか1歩引いていた様子だった店長にも、変化が表れてきました。
 

後半では、弱い雨が降るなかで2人が何気ない会話を交わすシーンがあります。ここではこれまでに見られなかった店長の心の機微が描かれていて、見どころになっています。

さらに、陸上部時代のあきらに憧れている他校の女子が登場。あきらの陸上への思いは変わるのでしょうか。

走りたい?走りたくない?【『恋は雨上がりのように』6巻ネタバレ注意】

6巻では、あきらと陸上の関わりがクローズアップされます。本作では物語の最初からすでに陸上部を辞めた人物として描かれていたあきら。

そこにはどれほどの思いがあったのでしょうか。

恋は雨上がりのように 6(ビッグコミックス)

2016年10月12日
眉月じゅん
小学館

5巻の最後に登場してきた、あきらに憧れている陸上部の女の子が再び登場します。彼女は倉田みずきといい、高校の新人戦では200m走の記録保持者になるなど、実力者です。あきらをめがけて猛ダッシュをした後、なぜ走らないのかと問い詰め、自分も2年前に同じケガをしていることを告げて去っていきました。

一方のあきらは、クリスマスプレゼントとして店長に手編みのマフラーをあげることにします。これをきっかけに編み物が得意だという陸上部のはるかと接近することになり、彼女は図らずも、避けていた陸上と徐々に距離を縮めていきます。

どうやらすぐに復帰するつもりはないようですが、今後の動向に注目です。

またある時、息子の勇斗と一緒に買い物に来ていた店長は、どれがいいのか迷っていたところ、偶然はるかに遭遇します。店長は何も知らずに言葉を交わしましたが、あきらの気持ちを知っていたはるかは、品定め。悪い人ではないことを確認しました。

俺は、橘さんのことが……【『恋は雨上がりのように』7巻ネタバレ注意】

7巻ではあきら、近藤それぞれの夢への思いが丁寧に描かれます。

まずは近藤の方から。大学時代、同じ小説家という夢を追い、夜を語り明かした同級生の九条が突然彼の部屋を訪れます。彼は小説家になるという夢を叶えた、いわば近藤と近いようで正反対の人物です。

九条は最近話題になっている小説家の本を持って、この作者の良さが分からない、小説家として流行がわからないのは致命的だと近藤に助けを求めてきます。それに対して近藤は良さが分からないのはダメなのか、とのんびりと返すのです。

恋は雨上がりのように 7 (ビッグコミックス)

2016年03月10日
眉月じゅん
小学館

スパイクを捨てようとしていたあきらですが、ケガをした時のことを思い出し、やはり捨てずに取っておこうと決めました。どうやら大きく迷っているようです。

また、みずきによって陸上部の後輩たちにバイト先を知られてしまいます。彼女らは悪気なくファミレスに来るのですが、あきらは会いたくありません。無表情に見えるあきらの微妙な変化を察して、店長は担当テーブルを替わることを提案しました。

「デザートの盛り付けが上手だからそっちを対応して」と言う店長に、あきらは小さく「ありがとうございます」と答えます。

店長はそんなあきらから目を逸らして、ある気持ちを自覚するのです。

この時もまた、雷をともなう強い雨が降っていました。

眠れない夜【『恋は雨上がりのように』8巻ネタバレ注意】

季節は進み、すでに冬です。前巻で自分の気持ちに気がついてしまった店長ですが、かえってあきらへの接し方に戸惑うようになってしまいました。

一方のあきらは、以前よりも陸上へ心が傾いているようです。また高校2年生の冬ということで、進路も本気で考えなければなりません。バイトと部活と進路と恋……時間は静かに、しかし確実に過ぎていきます。

せっかく店長の気持ちが向いてきたのに、タイミングの悪さにやきもきしてしまうでしょう。

恋は雨上がりのように 8 (ビッグコミックス)

2017年07月12日
眉月じゅん
小学館

12月となり、ファミレスではクリスマスメニューも始まりました。しかし店長は落ち着きがなく、不眠に悩まされています。あきらの元気がないことに気づいているようですが、ついつい避けてしまっていました。

たまに会話を交わすも、お互いに知られたくないことを秘めていて、どこか噛み合いません。アルバイトの仲間たちはその理由にとっくに気づいているようですが……。

そんななかで、あきらは店長の息子である勇斗に、速く走れるようになるアドバイスをしていました。はるかにも「戻っておいでよ」と言われ、みずきの走りを見に行くなど、本格的に陸上へ関わりはじめます。

そして冬休みを控えたある日、彼女のクラスでは進路が話題に上がりました。いったいあきらはどんな道を選ぶのでしょうか。
 

また、8巻では同じ職場で働くあきらの同級生・ユイと吉澤の関係にも進展があります。

実はあきらの前にマフラーを完成させていたユイ。クリスマスに告白する予定でしたが、それを早めて気持ちを伝えることにしました。そして緊張しながらもどうにか彼をデートに誘うことに成功します。

吉澤とのデートに誘うのに赤面している様子や、決まってからヘアピンを買いにいく様子がとても可愛いです。そしてデートに現れた彼女のいつもとは違う様子に、吉澤もドキドキしてしまいます。

吉澤がユイに惹かれていっていることだけを描いた回もあったくらいなので、ここでふたりはハッピーエンドか、と思いきや、いい感じだったデートの途中で、吉澤はあきらの面影を探していました。もちろんユイもそれに気づきます。

それでも勇気を出して告白した彼女でしたが、結果はノー。せっかく編んだマフラーもどこか悲しげに映ります。

それぞれの過去を超えて【『恋は雨上がりのように』9巻ネタバレ注意】

あきらと店長、それぞれの夢への予感が強まってきました。特に店長は、学生時代からの同志で売れっ子小説家の九条ちひろと切磋琢磨する展開になりそうです。

はるかやユイなど友人がそれぞれの道を見据えて歩んでいく様子に、不安になっていたあきら。何気なく店長に相談をすると、彼は諦める道もあること、しかし、諦めると永遠に後悔することを伝えてくれました。

それを聞いた彼女は、自分の進むべき方向について、そして足の傷について、再び向き合います。

著者
眉月 じゅん
出版日
2017-11-10

一方の店長も、あきらを励ました言葉に自分自身も鼓舞されたようで、ペンを持ち、机に向かいました。その様子からは、一文字一文字に気持ちが乗っていることが感じられます。

次の日あきらがバイトをしていると、九条が店にやってきます。彼は過去に店長から、女子高生の描写がイマイチだと言われた経験があり、話を聞いていたあきらが17歳であったことに驚いている様子です。

その後、九条は出版社のパーティーに参加し、若干17歳にしてヒット作を生み出した町田すいという作家に出会います。彼自身は町田の作品の魅力がわからず、時代についていけないのではないかと悩んだ理由になっていました。

九条は再びファミレスに行ってあきらと再会し、自身の創作活動に活かすために、彼女と交流をしていくことを考えます。

成功を手にしながらも、冴えないファミレスの店長をしている近藤にどこか憧れをもっていた九条。しかし、何かしら悩みの解決の緒を見つけたようです。

9巻ではこの他にも、あきらがみずきと再会して陸上へ復帰の兆しを見せるなど、今後のストーリーを期待させる展開があります。

未来を感じさせる、最終回【『恋は雨上がりのように』10巻ネタバレ注意】

元日、近藤はアパートの部屋で執筆活動をしています。新年の挨拶と、これから会えませんか?という内容のあきらからのメールに気づかない近藤。しかし待ちきれないとでもいうように、返事も待たずにあきらが近藤の部屋を訪れます。

近藤は入浴していてチャイムが鳴ったような気がしつつもあきらが訪れた事に気づけません。  そのあとにメールに気が付き、玄関のドアノブにマフラーと手紙が入った紙袋がかかっているのを見つけた近藤は急いで彼女を追います。  

著者
眉月 じゅん
出版日
2018-04-27

無事会うことのできた2人は近藤のアパートへ向かいます。いつものように何気ない会話を交わす2人ですが、近藤はあきらとの別れを予感します。   

そんな近藤をよそに、あきらは書きかけの原稿を見つけ、近藤が小説を書いていることを知り喜びます。ガーデンの店長としてではなく、1人の個人としてあきらに接する近藤の言葉は彼の本心であり、2人の間には優しく少し甘い時間が流れます……。   

初めは女子高生に想いをよせられていることに困惑し、どうしたらいいか分からずにどこかぎこちないやりとりを交わしていた近藤ですが、あきらの真っすぐな想いを徐々に受け止められるようになった姿が10巻では描かれています。   

2人は神社に初詣へ行くことになり、楽しい時間を過ごし部屋へ戻ろうと言うあきらですが、近藤は自分の中にあるあきらへの想いが抑えられないものへと変化していることを自覚し、彼女と部屋へ戻らないことを決意します。    

そんな近藤の決意を後押しするかのように天気は大雪。家まで送っていくと言う近藤に帰りたくないと言うあきら。近藤は、そんな彼女に物語のラストへ続く問いかけをする。

 雪は雨に変わっており、思えばあきらが近藤に想いを伝える重要な場面は決まって雨でした。近藤の問いかけに対するあきらが出した答えとは?    

あきらの恋の結末を描いた最終回はぜひ10巻をごらんください。    

あきらと店長の年の差は28歳。この2人の間に恋愛は成り立つのでしょうか。細かい表情をじっくり読み解きたい正統派のラブストーリーです。


年の差カップルの恋愛を描いた作品を紹介した<漫画『恋は雨上がりのように』の魅力を最終回まで全巻ネタバレ紹介!映画化!>もおすすめです。気になる方はあわせてご覧ください。

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena
もっと見る もっと見る