とかく恋というのは悩みが多く、すれ違いが起こるものです。年の差が大きければ大きいほど悩みの幅は広がりますが、その強い想いを再認識することも出来ます。年の差恋愛の醍醐味をぎゅっと詰め込んだ名作恋愛漫画を、ランキング形式でご紹介します。
年齢を重ねても綺麗な女性は多くいますが、世間的なイメージとしては、より若い女性が魅力的だと言われています。とくに女性は、もう若くないから、と一歩引いてしまうもの。特に子どものいる女性は、その傾向が強いように思えます。
『わたしは真夜中』は、31歳のバツイチ子持ち女子、夜野とばりが主人公です。元の夫の浮気が原因で離婚したものの、中学からの長い付き合いのため、未だによき理解者。息子の聖は義母が面倒を見てくれており、2人にも確かな絆があります。図書館司書として働き、経済的にも安定しているのに、どこか空虚な気持ちが消えないとばりは、ある日あかるい笑顔の若い男性利用者、池端太一と出会います。
本と図書館の魅力にハマった、19歳の太一の目の下のクマを気にしていたとばり。実は不眠症だった太一に、とばりの傍なら眠れると、添い寝を懇願されます。利用者と司書という関係から抜け出すことに、困惑するとばりは、結婚に失敗し、他者の気持ちをうまく汲むことができない自分の性格を考えると、好意を受け取ることができません。
大人になり切れない自分を嫌と言うほど知っているとばりの心理は、男女問わず共感できるでしょう。心の奥でくすぶっていた、人間関係の不安や大人であることへのプレッシャーを代弁してくれます。
太一は爽やかですが、グイグイと押してくるところが若い、と感じられるはず。静かに燃えていく恋心が、戸惑う心を表しているようにも思えます。とばりは、無理なく己を着飾れる、シンプルな可愛らしさのある女性。少しだけ後ろ向きなとばりの、等身大の魅力に惹かれる恋物語です。
七史(ななふみ)と紅緒(べにお)は9歳離れたおしどり夫婦。小さな日本家屋で仲睦まじく暮らしています。しかし、そんな幸せな久世夫妻にはある秘密が……。
それは紅緒が「家に祟られている」ということです。彼女が敷地から一歩でも出ようとすると、快晴だった天気が大荒れになり、それでも家に戻らないと、頭上から物が落ちてきたり、紅緒に向かって車が突っ込んできたりと、命の危険のある危機が襲ってきてしまうのです。
久世さんちのお嫁さん(1)
年下の嫁を溺愛する旦那と、そんな旦那を愛し、時々可愛く叱る嫁の、心温まるやりとりにほっこりさせてもらえる物語です。家の外ではぼーっとしている七史が、紅緒の前でだけはデレっとしてしまう様子にニヤニヤしてしまいます。
しかし、夫婦愛を描いたほのぼの系恋愛漫画かと思って読むと痛い目を見るのが『久世さん家のお嫁さん』です。物語が進むにつれて、祟りの本当の恐ろしさが明らかになります。このままでは、いつか紅緒は家の祟りに殺されてしまうかもしれないのです。
本作に含まれる祟りなどのホラー要素は、ただ夫婦の愛を盛り上げるためだけのエッセンスではありません。土地の過去や一族の習わしといった濃い歴史要素と、夫婦を襲う恐ろしい祟りの正体には、思わずぞっとさせられてしまいます。特に「白い少女」が現れるシーンは鳥肌もの……。
そこで、大学で民俗学の研究をしている七史が、その知識を活かして紅緒を襲う祟りの正体を解明しようと奔走します。愛する妻を救うために危険も顧みず、正体不明の敵に立ち向かう七史の姿にはじんとさせられてしまうでしょう。幼妻として彼を献身的に支える紅緒の様子もまた素敵です。
果たして夫婦は愛の力で祟りを退け、紅緒の自由を勝ち取ることができるのでしょうか。後半にかけての大どんでん返しがたまらない作品となっています。
『久世さんちのお嫁さん』については<隠れた名作『久世さんちのお嫁さん』の魅力をネタバレ紹介!>の記事で紹介しています。ぜひご覧ください。
主人公の中村詩春(なかむらしはる)は孤児院育ちの女子高生です。幼い頃から年下の孤児たちの面倒を見てきたので、子供の扱いは大得意。将来の夢は保育士で、放課後はいつも保育園でバイトをしています。そんな彼女は、ある日双子の園児の茜と葵が自分に懐いているのを知った保護者の松永政二(まつながせいじ)から、「ベビーシッターになってくれないか」と頼まれるのでした。
- 著者
- こうち 楓
- 出版日
- 2009-05-19
『LOVE SO LIFE』は天涯孤独な詩春が、松永や双子との生活を通し、迎えてくれる家族がいる暖かさ、大切な人がいる幸せを覚えていく物語です。
詩春は何でも一人でこなせるしっかりもののお姉さんですが、別の言い方をすれば、「頼る」ということを知らないまま育ってしまった少女。人とは違う環境に身を置いているという自意識も強いため、周囲と自分の価値観がズレていることと、それを知られることを恐れています。
松永や茜、葵とともに疑似家族的な生活を送るようになっても、完全に寂しさを拭えるわけではありませんでしたが、松永の暖かい言葉や包み込んでくれるような優しさに触れ、ささやかな幸せを感じられるようになりました。その特別な気持ちが恋心へと変わるのにも、そう時間はかかりません。
松永は人気沸騰中のイケメンアナウンサーです。カメラの前ではキリッとした爽やか系男子として仕事をこなしていますが、OFFの日はいつまでも寝巻きを脱がず、さらに部屋は散らかり放題です。仕事と育児とで多忙を極めていることもわかりますが、このギャップは母性本能をくすぐります。
ただ詩春は女子高生で、対する松永は有名アナウンサー。世間的に見ても交際は難しい状況です。そんななか、松永が見せた言動からは彼の一途さと誠実さが滲み出ており、詩春が羨ましくてたまらなくなるはず。ゆっくりと育まれていく恋の様子をお楽しみください。
『LOVE SO LIFE』について紹介した<『LOVE SO LIFE』が無料!物語の魅力を最終回までネタバレ紹介>の記事もあわせてご覧ください。
主人公の青石花笑は33歳、彼氏いない歴=年齢という奥手女子です。大学生の時に処女喪失の機会を失って以来、恋愛に苦手意識を持ち、拗らせています。33歳の誕生日に会社の飲み会に参加した花笑。アルバイトをしている21歳の大学生、田之倉悠斗と酔った勢いで一夜を共にしてしまいます。花笑は何も覚えていませんでしたが、どうやら処女喪失したうえに、悠斗と交際の約束までしてしまったよう。花笑は戸惑いながらも、8歳下の悠斗との交際をはじめます。
- 著者
- 藤村 真理
- 出版日
- 2012-04-25
綾瀬はるか、福士蒼汰主演でドラマ化もされた藤村真理作『きょうは会社休みます』は、恋愛初心者である年上女性・花笑と、恋愛経験豊富な年下男子・悠斗との恋愛模様が描かれています。
花笑はモテない女子というわけではなく、恋愛に尻込みして踏み出す勇気が無かったというタイプの女性。悠斗と恋愛をすることで、相手の事を考える幸せ、嫉妬など様々な感情を知っていきます。年齢は花笑の方が上ですが、恋愛経験では悠斗の方がリードをしているという関係性もポイント。会社や恋愛の事で悩む花笑をサポートしてくれます。
年下男子と年上女子の恋愛というと、遊ばれてるんじゃないかと不安が首をもたげるもの。しかし悠斗ははっきりと気持を伝えてくれます。
「年上でも年下でも花笑さんだから好きなんだ」
(『きょうは会社休みます。』より引用)
花笑に好意を寄せる年上男性・朝尾侑に対してもひるまずに牽制。
「あの人のことちゃんと考えてますからあなたもちゃんと諦めてくださいね」
(『きょうは会社休みます。』より引用)
独占欲を窺わせるのもドキドキしてしまいます。
一回りも下のイケメンと恋愛、しかも取り合いまでされるとか、現実では有り得ない、夢のような展開にも程があると思いつつも、読めば思わず胸がきゅんとしてしまうはず。年がある程度上の女性なら誰しも憧れてしまうシチュエーションを楽しめる、大人女子に向けた作品です。
綾瀬はるかの出演作を紹介した、こちらの記事もおすすめです。
<綾瀬はるかの七変化を知り尽くす!実写化映画・テレビドラマの原作と役の魅力を紹介>
福士蒼汰の出演作を紹介した、こちらの記事もおすすめです。
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女性ならば、年上の男性が無条件でカッコよくみえる時期というものがあったのではないでしょうか。学校の先生、近所やお店のお兄さんに胸をときめかせた少女時代に身に覚えはありませんか?とはいえ、そういった気持ちは少女時代の輝かしい思い出としてあるもので、長い年月の中で想いを貫き通すほど、強い感情を抱くことはそうはありません。
- 著者
- チカ
- 出版日
- 2011-04-07
チカ作『これは恋のはなし』は、物語開始時・31歳の小説家・内海真一と10歳の小学生・森本遥の恋愛が描かれた作品です。犯罪じゃないかい、と思った方。とても正しいのですが、実際に小学生と恋愛をするわけではないのでそこはご安心を。最初は保護者と年上男性に憧れる少女としての関係を描き、遥の成長に合わせ、変化する二人の関係や感情を丁寧に追っていきます。最終巻で遥は女子高校生になっているので、年齢差21歳は絶対に覆らないものですが、関係性がより恋愛方面にシフトしていきます。
その恵まれた容姿からデビュー当時は「文芸界のプリンス」と騒がれた真一は、スランプに陥っていました。気分転換を兼ねて田舎の祖母の家へ引っ越すと、そこに子猫とともに少女が現れます。遥は家庭に複雑な事情を抱えた少女。彼女のどことなく、すべてを諦めたような眼。猫の面倒を見るために家に出入りするようになった遥は、人と深く関わり合おうとしない真一にシンパシーを感じるとともに、徐々に惹かれていきます。
真一は常に大人としての対応をとろうとするため、2人の関係は完全に「大人と子ども」です。しかし遥が口にした言葉によって、大人に片想いをする少女という微妙な関係が始まります。
「真一さんのことが 好きなんだと思います……私」(『これは恋のはなし』より引用)
その年齢なりの一生懸命さで真一を受け止めようと頑張る遥のいじらしさに、読者も自然と恋を応援してしまいます。同時に、いつもそばにいてくれる遥を徐々に意識し、迷い、葛藤する真一の気持ちも理解できるため、読者はやきもきしながらふたりの関係を見守っていくことになります。
年齢差から感じられる世間の目という問題も作中で描かれ、より年齢差を意識させられる本作。相手を思いやる気持ちに溢れた、ピュアな恋物語です。
豊川悦司が榮倉奈々の足にキスをするという衝撃的な映像で話題をさらった映画の原作が、西炯子作『娚の一生』です。東京の大手電機メーカーで働く30代半ばの独身女性、堂薗つぐみと、東京の女子大学で哲学の講師をしていた50代の海江田醇の恋愛を描きます。
- 著者
- 西炯子
- 出版日
- 2009-03-10
西炯子作品の特徴でもある、影がありながらも艶を帯びた空気が全編に流れ、どこか退廃的な雰囲気を醸し出しています。陰と陽が明確に分かれ、印象的な動作を切り取った画面構成はとても映画的。読者はつぐみの表情や海江田の動作にはっとさせられながら、物語に深く潜り込んでいきます。
仕事一筋に生きてきたものの、大きな案件に関わる体力や意欲の衰えを感じ、田舎の祖母の家へ身を寄せたつぐみ。すぐに祖母は病気で亡くなりますが、そのまま在宅勤務に切り替え、祖母の家へ住むことにします。
そこに、離れの鍵を貰ったという海江田が登場。ふたりは同居することになります。離れに住み始めた海江田と奇妙な同居生活を送り始めたつぐみですが、不倫をしていた過去の痛手から、人を信じることができないまま。海江田に自身を尊重され、優しくされるうちに心が揺れます。
つぐみはキャリアウーマンですが、女性としての自分の自己評価が低いという女性。そのことを自身で理解しており、思い悩んで自信を失くしていきます。
「いい年をして自分にいつまでも自信がなくて、自分だけを見てくれる人と向かい合う自信がないのよ。そのくせ人には愛されたいの」(『娚の一生』より引用)
そう口にしてしまうくらいこじれているつぐみを、時には厳しく、けれども有り余る包容力で包んでいく海江田。明らかに面倒くさい女性であるつぐみを愛する海江田は、重ねてきた年齢を感じさせる心の余裕が見えるところもときめきポイント。優しい愛情だけではなく、恋をする者として情熱的なところも見せる海江田に、つぐみ同様読者もハマっていくこと間違いなしです。
年齢を重ねることで生まれる、男性の色気もふんだんに感じられる本作。枯れ専じゃないから、と手に取らないのは損!これぞ大人といえる海江田の魅力を存分に感じてください。
紫式部が書いた「源氏物語」では、光源氏が好きだった女性、藤壺に瓜二つの少女、紫の上を育て、妻にするというエピソードがあります。当時は当たり前だったのかもしれませんが、現代ではちょっと受け入れがたい感覚。しかし、愛情の形としてはありなのかもしれない、と視点を変えられるような漫画作品があります。
- 著者
- 宇仁田 ゆみ
- 出版日
- 2014-10-08
宇仁田ゆみ作『うさぎドロップ』は、30代の独身男子・河地大吉が、施設に入れられそうになっていた祖父の隠し子である6歳の鹿賀りんを引き取り、一緒に生活していく姿を描いています。
コミックス1巻から4巻までは二人が家族関係になる過程が中心。りんの成長を大吉の目線で追っていくため、どちらかといえば育児漫画としての側面が強くなっています。5巻から9巻はりんが高校生になり、母親という存在について多くの事を考え、学んだからこそ起こる大きな変化を描きました。
高校生になり、家族や母親について様々なことを考えたりんは、その過程で大吉を好きだと感じ、夫と妻という形で本当の家族になりたいと望みます。大吉は高校卒業まで待って、りんの気持ちが変わらなかったことで、気持ちに応えるのですが、愛情の形が恋愛というよりは家族愛の延長のようにも感じられます。家族に恵まれなかったからこそ家族を切望するりんに、大吉が与えられる最も大きな贈り物が、夫婦となって作る家族だったのではないか。そんな風に感じられるのです。
りんがまだ小さなころに大吉を父と呼ぶことを拒むシーンがあります。
「わたしのおとうさんは、おじいちゃんだもん ダイキチはダイキチでいい」(『うさぎドロップ』より引用)
大吉はりんを娘のように思って育てますが、彼女は大吉を大吉個人として認識しており、父親とは感じていないのではないか、それは子供の頃からだったのではないか、と推測するのは深読みしすぎでしょうか。育児漫画と思っていたら恋愛、という展開に賛否両論が巻き起こりましたが、着地が予想外だっただけでふたりの愛情に嘘偽りは感じられません。これも一つの、愛情の形として残るものなのです。
本作をもっと知りたくなった方は<『うさぎドロップ』結末が賛否両論?ラストはなぜああなったのか考察【無料】>をご覧ください。
10代の少女、特に女子高校生というのは独特な輝きを放っているものです。女子高校生に「好きです」などと言われたら成人男性ならほとんどの方は嬉しいに決まっているでしょうが、そんなチャンスはなかなか巡ってくるものではありません。
- 著者
- 眉月じゅん
- 出版日
- 2015-01-09
眉月じゅん作『恋は雨上がりのように』は、そんな夢を漫画化した作品と言えます。とある海辺の町に住む17歳の女子高生・橘あきらと、ファミリーレストランの店長をしている45歳の冴えないオッサン・近藤正己。あきらはケガを理由にずっと打ち込んできた陸上を辞めざるを得なくなり、ふさぎ込んでいました。
そんな時、雨宿りのために立ち寄ったファミレス「ガーデン」で、近藤に出会います。
「ただ雨が止むのを待っているだけじゃつまらないでしょう」(『恋は雨上がりのように』より引用)
そう言ってコーヒーをサービスしてくれた近藤が、ちょっとした手品を見せた後に、すぐ止むと予言したとおりに雨が上がります。自分の行き場のない気持ちの象徴だった雨が上がった。この些細なきっかけで、あきらは近藤に恋心を抱くのです。
近藤は、自他ともに認める冴えないオッサン。頭に10円禿があり、ズボンのチャックをうっかり閉め忘れ、クレームを入れる客に対して頭を下げ続けます。大きなくしゃみをする姿などは典型的。それでも恋をしているあきらの目から見ると、愛おしい人に変わるというのが、羨ましくもかわいらしくもあり、近藤しっかりしてくれよ、と発破をかけたくなります。見た目がクール系の美少女であるあきらが、必死に近藤にアプローチする姿は、悶絶するほどのかわいらしさ。一喜一憂する姿に、読者もほっこりします。
あきらは積極的にアプローチするようになりますが、困惑気味だった近藤も少しずつ気持ちを動かされます。
「なんだか うれしいと感じることが増えた気がする…俺自身、何も変わってないのに」(『恋は雨上がりのように』より引用)
しかし、近藤は挫折を知っている大人の男。すぐさま気持ちに応えるほどの行動力はありません。若い頃を思い出して心は沸き立つものの、今の自分とのギャップに及び腰になってしまう。そんな年齢を重ねたからこそ起こる悩みが、夢のような状況にリアルさを与えます。あきらと近藤は、どうなっていくのか。恋の行方が雨上がりの空のように美しければ、と思わずにはいられない作品です。
年の差には様々なパターンがありますが、それぞれのカップルが強い絆で結ばれているのが感じられます。同年代では起こりえない、年齢という壁を挟んでの恋愛模様。きゅんとすること間違いなしの名作揃いです。
『恋は雨上がりのように』については<漫画『恋は雨上がりのように』の魅力を最終回まで全巻ネタバレ紹介!映画化!>で紹介しています。こちらもあわせてご覧ください。