キュートな女の子が、天使と一緒に魔法を使って悪を倒すファンタジー漫画!……そういったものを連想しませんか?しましたよね? たしかに可愛い女の子もいれば、天使もいて、魔法もでてきます。しかし!メインキャラクターとして大活躍するのは、なんと屈強なおっさん(!)です。この記事では表紙と本編のギャップが激しい本作の、見どころと魅力をご紹介します。
神威の呼び鈴「リィン・ロッド」に選ばれた新たな魔法少女「プリティ☆ベル」は、ボディービルダーの大男高田。そんな耳を疑いたく鳴るような設定で描かれるファンタジー漫画が『魔法少女プリティ☆ベル』です。
題材となるのは天使や悪魔だけでなく、物語が進むにつれて政治や軍事といった現実的なテーマにも触れる、世界観の広い作品となっています。この記事では最新25巻(2018年7月現在)までの見どころと、魅力についてご紹介いたします。
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- 著者
- KAKERU
- 出版日
- 2010-05-10
魔法少女プリティ☆ベルをサポートする2人の天使ミルクとココアは、「リィン・ロッド」に適合した少女美咲エリ(みさきえり)を探して飛び回っていました。プリティ☆ベル誕生を阻止しようとする魔族に狙われている彼女たちに時間はありません。
悪魔の攻撃に傷つきながら降り立った人間世界で、ついに適合者の気配を察知したリィン・ロッドが光り出します。「近くに美咲エリがいる!」と、ミルクとココアは希望に満ちた表情で振り返りましたが、そこにいたのはトレーニング中のボディービルダー高田厚志だったのです。
「「神威の呼び鈴」リィン・ロッド 其を鳴らすは魔力ある乙女 魔を帯びし聖戦士 神威の召喚者 その名は……」(『魔法少女プリティ☆ベル』1巻から引用)
雰囲気抜群の冒頭が読者の期待を煽り、傷を負った2人の天使はただならぬ状況を予感させます。そんななか激しく輝き出したリィン・ロッド。2人が振り返った先には可憐な少女がいて、天使と悪魔との戦いが幕を開ける……と思わせて、現れたのは筋肉隆々の角刈りのおっさん高田でした。
開始2ページめでのこの出オチ。タンクトップから覗く分厚い胸筋とバキバキの腹筋にインパクトがありすぎます。高田を光り輝かせているのは聖なるオーラではなく汗か何か。「あ、展開読めた…」と今後何が起こるか悟ってしまうミルクとココアの無表情が切ないです。
リィン・ロッドが鳴ってしまったものは仕方ないと、ミルクとココアは天使と悪魔の事情について高田に話して聞かせますが、その場所が高田宅の居間だというところがまたシュールです。鈴と羽とリボンが可愛い杖を囲んで正座する3人の様子から「これでいいのか?」と思わずにはいられません。
はじめは魔法少女にされる可能性が出たことに戸惑った高田でしたが、ミルクとココアも屈強な成人男性をキラキラの魔法少女にするつもりはありません。「小学4年生の美咲エリという、可愛い適合者がすでにいる」という旨を伝えてこの事態を収めようとしましたが、「そんな年端もいかない少女が悪魔と戦うのは危険だ」と、逆に高田の使命感を煽るかたちとなってしまうのでした。
「魔法少女」から最も遠い適合者に出会ってしまったミルクとココア。不測の事態に内心大慌てな2人は、高田とともに世界を守るのか、それとも魔法少女のイメージを守るのか、究極の選択を迫られます。
本名高田厚志(たかだあつし)、ボディービル選手兼「高田ジム」のコーチをつとめる35歳。ケガをしている天使を匿ったことといい、幼い少女の代わりに悪魔との戦いを引き受ける姿といい、根っからの善人です。近所に住む子供たちからは「筋肉おじさん」と呼ばれています。
高田にリィン・ロッドを渡す決心を最後までつけられず、一度ミルクとココアは逃げ出してしまいますが、2人が再び現れた悪魔たちよって危機的状況に追い詰められると、颯爽と現れて身を呈して彼女たちを守りました。気迫のみで相手を退かせる姿は大迫力です。
そして、ミルクの手からいつの間にかリィン・ロッドを奪った高田は魔法少女へと変身します。羽と星に包まれながらセーラー服をモチーフとした衣装を身にまとっていきますが、純白の空間の中では高田の浅黒さと絵柄の異質さがだけが際立ちます。この変身シーンには一度見たら忘れられない破壊力がありますので、ぜひ見てみてください。
その後の戦闘シーンでも、魔法少女という設定を一切無視した攻撃方法で敵をなぎ倒していくわけですが、「誰も傷つけない」という高田のスタンスは激しい戦いを平和な結末へと導きます。高田の実直さと優しさ、クセになる魅力に注目です。
マッチョな魔法少女(?)という設定とボケとツッコミの応酬からギャグがメインの作品と勘違いしてしまいそうになりますが、本作は濃厚なファンタジー漫画です。
主な勢力は対立する「天使」と「悪魔」、そのどちらにも属さない「プリティ☆ベル」の3つ。天使軍団は一枚岩ですが、魔族はさらに東西南北にわかれて組織を作り、それぞれが「魔王」を頂点として自衛しています。そして、人間を襲う魔族から人間たちを守るためにうまれたのがプリティ☆ベルでした。彼女たちは本来、神話の怪物やアイテムを召喚して戦う少女です。
そもそもなぜ魔族が人間を襲うのか、それは「悪魔が現世にとどまるためには、自分の代わりとなる負の思念を魔界に打ち落とし、その反動に頼る必要がある」からでした。そうやって現世に登ってきた悪魔を討つために天使は人間に力を与え、悪魔と戦わせていたのです。
しかし、それはもう古い話。悪魔はもう人間を身代わりにしなくても現世に止まれる技術を開発していました。しかし、それでも天使と人間、悪魔の戦いは終わっていません。これはいったいどういうことなのでしょうか……?
天使や悪魔などの種族は関係なく、正義感の強い者や心優しい者、逆に危険な者は存在します。本当の敵はどこにいるのか、何か陰謀があるのか、物語に散りばめられた伏線に注目し、黒幕を予測するのもまた、本作の楽しみ方の一つです。
ラスボス登場!わけもわからぬまま、ついに最終決戦へと突入します。
- 著者
- KAKERU
- 出版日
- 2018-05-10
ここまで謎に包まれていた、天界が魔族を殲滅しようとする理由。それが、ついに明らかになっていきます。それぞれの事情が交錯する、政治的な内容の本巻。きっと読んでいて、人権や民衆について考えさせられるはずです。
本巻は、高田とゼルエルが対峙する場面から始まります。高田は、天界側が撤退をするなら、こっちも攻撃をしないと語りかけます。しかし、それに対してゼルエルも決して折れません。天界側にはどうしても折れられない、ある理由があるようなのです。
彼が提示する厳しい条件に対し、高田は一体どう決断を下すのでしょうか。
ついに終わりが見えてきた『魔法少女プリティ☆ベル』。さらに目が離せません!
襲い来る数々の敵を気合いと筋肉で跳ね除けていく高田の活躍が眩しい本作。読み進むことで世界観の深さも感じ、ディープなファンタジー漫画として楽しむことができるでしょう。機会がありましたらぜひ読んでみてください。