芸術を志す者たちの恋と葛藤を描いた物語『エゴイストブルー』。「芸術」と「美しさ」の本当の意味を教えてくれる奥の深い作品です。
- 著者
- Gino0808
- 出版日
- 2016-04-08
悩みをかかえる美術大学生と、天才画家の恋を描いたラブストーリー『エゴイストブルー』。芸術を志す者の苦悩と挫折を表現し、「芸術とは何か」を訴えかけてくる物語です。芸術をテーマに掲げる本作は作中で数々の名画について触れているため、読みながら絵画にまつわる知識を得ることもできます。
この記事では2巻までの見どころと、作品の魅力についてご紹介いたします。
谷崎ユリカ(たにざきゆりか)は名門美術大学に通う4年生。小さな頃から画家を目指し、絵を描くこと以外はすべて二の次にして生きてきました。作成中の卒業制作の出来は将来のキャリアに影響します。必ずよい絵を完成させようと日々奮闘しますが、心の片隅では言葉にできない悩みを抱えていました。
そんなある日、ユリカは大学内で見知らぬ男に声をかけられます。何気無い会話をしながら男の手がスケッチブックに何かを書き込んでいるのに気づいたユリカはそれを取り上げ、そして驚きました。描かれていたのはユリカのヌードだったのです。
さらに男は自分の絵のヌードモデルになるようユリカに言います。一度は断ったユリカでしたが……?
「芸術の神様に愛されるためなら、自分は一生処女でいい」とまで言えるほど芸術一筋なユリカは、男性経験のない22歳です。いくら絵のためだとはいえ、見ず知らずの男に突然ヌードモデルをやれと言われても首を縦に振れません。
その出来事をゼミの教授石動(いするぎ)に相談すると、彼はユリカの予想に反してモデルになることをすすめます。教授からそんな言葉が出ると思っていなかった彼女は驚きますが、その後に聞かされた言葉で深く傷つくことになるのでした。
「君の絵は感情に欠けるつまらない絵」、「人生経験が足りていないのが絵から感じられる」、「愛や恋のなんたるかを知らない子供の絵に、心を揺すられる人などいない」。今までの努力を全否定するかのような言葉にユリカは涙します。すると教授は彼女に近づき、自分が教えてやるといわんばかりに体の関係をせまるのでした。
- 著者
- Gino0808
- 出版日
- 2016-04-08
芸術一筋のユリカの清さは彼女のオーラに現れています。そのユリカと、欲望に満ちた石動の姿が対照的です。まとわりつく石動の手を振り払えなかったのは、「画家になりたいんだろ?」というささやきに迷ってしまったからでしょう。
しかし、誰かが走り去っていく音を聞いて我に返ったユリカはなんとかその場を逃げ出し、大学内を駆け抜けます。その先で出会ったのは、昼間にユリカのヌードを描いた謎の男でした。
危ないところを救われたものの、体に恐怖が残っているユリカは1人になるのを怖がります。それを察した男は「ヌードモデルをするなら一緒に来ていい」と交渉を持ちかけました。迷った末、ユリカが出した返事とは……?
変態という第一印象をユリカに与えた男が、実は世界的な天才画家だったという事実が後に明かされます。彼はなぜユリカの大学にいて、なぜ彼女をモデルにヌードを描こうとしているのでしょうか?隠された深い訳が、続く2巻で明かされます。
男の正体が、天才画家の前島賢二郎(まえじまけんじろう)だと知ったユリカ。実は前島はユリカにとって憧れの画家でした。間近で見た彼の絵に心を奪われた彼女は、徐々に彼自身にも惹かれていきます。
前島はユリカを「桜」というタイトルで描く絵のモデルにしようとしていました。裸婦を題材に描かれるその絵はこれまでに何枚か描かれてきましたが、前島はどうしても「5番目の桜」を超える「桜」が書けずにいたのです。
そこで、偶然出会ってインスピレーションを強く刺激されたユリカにモデルを依頼し、ついに彼女もそれを承諾したわけですが、スランプに陥っているのか前島の筆は進みません。どうしても彼の役に立ちたい。そう思ったユリカは、ある驚きの行動に出るのでした。
- 著者
- Gino0808
- 出版日
- 2016-08-09
普段は粗暴さの目立つ前島ですが、彼が描く絵は繊細そのもの。女性の髪や肌のなめらかな質感をキャンバスに表現しきる画力にユリカは圧倒されます。なかでも、現状の前島の最高傑作である「5番目の桜」に描かれた裸婦の出来は群を抜いていて、今にも呼吸し始めそうなほどの存在感を放っています。
自分が見込んだモデルであるユリカを前にしても絵が描けない前島は、画家としての自分の全盛期は過ぎてしまったのかもしてないと笑いますが、ユリカだけは彼を励ましました。生まれて初めての恋をしている彼女の健気さは感動を誘い、どれだけ前島のことを真剣に思っているのかが伝わります。
前島に画家としての自信を取り戻させるため、ユリカは女性として大変覚悟のいる行動に出ました。「5番目の桜」に引けを取らないオーラを見せる彼女の姿は必見。ユリカの協力で前島は、過去の自分を超える絵を完成させることができるのか。ラストに向けて動き出す物語に注目です。
- 著者
- Gino0808
- 出版日
- 2016-08-09
純情なユリカは前島の手で恋と愛を知り、芸術家としての大きな一歩を踏み出すことができるのでしょうか……。前島を想うユリカが悩ましい表情を見せるシーンや、普段の雰囲気をガラリと変えて一心にキャンバスに向かう前島を描いたシーンは、それこそ一枚の絵画のように美しい仕上がりです。
この機会にぜひチェックしてみてください!
いかがでしたか?芸術家一人一人がもつ価値観とポリシーのぶつかり合いを描いたシーンなどは、思わず唸らされるような言葉が散りばめられています。もしかすると、あなたの好きな絵についても取り上げられているかもしれません。
この記事を読んで興味を持っていただけましたら、ぜひ読んで見てください。