自身の誕生日10月8日がペンネームの由来だというtoi8。画集の代表作『幻想少女』で人気を誇るtoi8はアニメーターとしても活躍しており、彼のイラストはどんな物語の世界観にも不思議なくらいマッチします。今回はそんなtoi8が手掛けた作品のなかでも、特におすすめのライトノベルをご紹介します。
toi8(といはち)は、アニメーターとしても活躍するイラストレーターで、ライトノベルをはじめ、数多くの人気小説のイラスト、ゲーム、アニメ、さらに漫画の世界でも活躍しています。
鉛筆画のような特徴的な画風ですが、どんな物語の世界にもピタリと雰囲気のあったイラストを描き、小説の世界観を際立たせるベテランのイラストレーターです。
日本列島がまるごと異世界に召喚された……!?
突如、異世界へと飛ばされた「日本」。そこは竜やエルフと人類などが共存する、ファンタジー世界でした。文化水準も常識も異なる未知の世界で生き残るため、「日本」がとった行動とは……!?
- 著者
- みのろう
- 出版日
- 2017-03-17
ネット小説大賞を受賞した作品。日本列島がまるまる異世界へ飛ばされてしまうという、異世界転生モノの作品のなかでも一味違う切り口と、特定の主人公がおらず「日本」を中心に描かれることが特徴の物語です。
日本列島が転生したのは、人類や竜などさまざまな種族が存在する世界。その文化水準は各国によってまちまちで、中世くらいの国もあれば、20世紀くらいの国もあります。
そこで「日本」はトップクラスの文化水準を誇るのですが、一方でエネルギー源や食糧などの多くを輸入に頼っているため、外交をしなければ生き残ることができません。そこで「日本」は各国との外交へ乗り出しました。
しかし、現代の常識が通じません。そして「日本」は武力戦争へと巻き込まれていくことになるのです。
「日本」の生き残りをかけた奮闘物語ではありますが、描かれている多くは自衛隊が他国と戦うというシーン。特定の主人公や特に目立つ登場人物がいるわけでも、国民の混乱や、奮闘する人物が描かれるわけでもないのです。
しかし続く戦闘描写は魅力的で、不思議と物語へと引き込まれていきます。toi8のイラストも、異世界の世界と戦闘シーンを、彼の特徴のひとつである鉛筆画の雰囲気が残る絵で描いています。人間ドラマを読みたい方には向かないかもしれませんが、戦闘描写や自衛隊の物語が好きな方にはぜひ読んでほしい一冊です。
1999年、大予言に反して滅亡しなかった世界の片隅で、それはひっそりと始まっていました。
少女たちの肉体が腐り、未知の物質へと変わっていくという謎の病。娘を侵された医者は、研究のために研究所を設立します。
そして、その研究所でひとりの少女が誕生しました。
- 著者
- 日日日
- 出版日
日日日と書いて「あきら」と読む作者が描く、滅びの物語。タイトルの「ビスケット」は主人公の少女の名前で、「フランケンシュタイン」の由来は彼女が死体のつぎはぎでできた少女だからです。
彼女が生まれたきっかけは、研究者たちの手慰みでした。謎の病を研究していた彼らは、病によって死んだ少女たちが発症した部位を繋ぎ合わせ、ひとりの人間の肉体を作りあげたのです。そうしてできあがった少女は、自らの意思で動き、放浪しはじめました。
物語は、複数の短編と本編で構成されています。短編はひとつひとつで完結しているのですが、すべて少女によって語られる物語となっており、その合間に彼女がいる世界の本編が描かれているのです。
カニバリズムや解剖など、読者によってはグロさを感じるような描写もありますが、本質はそこではありません。作中に強く漂う切ない空気をぜひ感じてください。
またラストも、ハッピーエンドなのかバッドエンドなのか、それともメリーバッドエンドなのか、人によって捉え方が違うでしょう。
toi8が手掛けた表紙に描かれているのが、主人公の少女・ビスケット。どこか淡い印象を与えながらも何を見ているのかわからない目や、切なさと狂気の両方を感じさせる表情は、まさに物語の世界観そのものです。
鬼や悪魔と呼ばれ恐れられてきた存在――その正体は、次元の裏側より送り込まれてきたプログラム「鬼」に感染し、同族に強い殺意を持つようになってしまった人、殺戮因果連鎖憑依体と呼ばれる者たちでした。
そんな「鬼」を滅ぼすために影で動くのが、日本の暗部組織「門部」です。そこに所属する2人の討伐員、圭と叶はいつしか激しい戦いへと身を投じていき……。
- 著者
- オキシ タケヒコ
- 出版日
- 2014-12-18
本作は「一大叙事詩」と銘打たれていて、SFやバトルアクション、そして伝奇物などの要素が含まれた壮大なストーリーとなっています。
キーワードとなる殺戮因果連鎖憑依体というのは、「鬼」と呼ばれるプログラムに感染してしまった人のことで、彼らは凶悪な殺人鬼と化しています。そんな「鬼」に対抗するために自らの肉体を改造して戦うのが、主人公2人が所属する暗部組織「門部」です。
百刈圭(ももかりけい)という22歳の青年はこの組織の筆頭討伐員。16歳の少女・乾叶(いぬいかなえ)は、彼の後輩に当たります。心に同じ傷を抱える2人の前に現れたのは、「鬼」のなかでも珍しい「白鬼」と呼ばれる存在で、その出現により彼らは激しい戦いへと巻き込まれていくことになるのです。
どこかホラーのような雰囲気すら持ちつつもSF要素の強い本作の世界観を、toi8の画風が見事に表現しており、物語を彩っています。SFの専門用語も多く使われますが、説明を重ね少しずつ物語へと引き込んでくれる構成になっているので、読み進めるほどに面白くなっていくでしょう。後半でくり広げられる、迫力あるバトル展開も必見です。
夏休みに入る少し前のこと。高校2年生のヨシユキは、自分の鞄に見覚えのない本が入っていることに気付きます。それは配役以外何も書いていない、不思議な台本でした。
何となく不気味に思いそのまま捨てるのためらった彼は、去年使っていた1年生の教室へ行き、誰かの机の中に入れてしまおうと考えます。しかし、そんなヨシユキの前に謎の少女が現れて……。
- 著者
- 清水 マリコ
- 出版日
中身を失ってしまった台本のパーツを、ひとつずつ集めていくというメルヘンチックな物語。ヨシユキの前に現れた少女は、自らを「本の妖精」と名乗り、彼の持っている本が、元はひとつの物語だったものが壊されてばら撒かれたうちのひとつだと語ります。
物語が元に戻らず壊れてしまうと、本の妖精である自分の存在も消えてしまうと言う少女。ヨシユキはもうすぐ夏休みということもあって、一緒にパーツを探すことにしました。
メルヘンチックな設定から入る物語で、作者自身が「ノスタルジック小説」と語る本作は、思い出を振り返るようなどこか淡い雰囲気があります。
toi8の描く柔らかなタッチや色使いは、本作の世界観をさらに印象深く伝えてくれるでしょう。読後の余韻をゆっくり楽しみたい方におすすめの一冊です。
平凡な高校生の天城颯也(あまぎそうや)は、ある日突然、異界へと召喚されてしまいました。放り出された場所は、魔獣がうごめき、神や幻獣が存在する神話の世界。颯也は何とか元の世界へ戻ろうと考えますが……。
- 著者
- 稲葉義明
- 出版日
- 2014-03-29
上下巻の長編ファンタジー作品です。ある日突然、現代の高校生が異世界へと召喚されてしまう、いわゆる異世界転生系の物語ですが、他の作品と違うのは、物語のスタート時点で颯也が異世界へやってきてすでに1年もの月日が経っているというところでしょうか。
また、異世界へやってくる際に特別なスキルを与えられ、強い力を得ることもありません。颯也も、一応異能を得てはいるのですが、それは決して強いものではなく、生き延びるためにかろうじて役立つ程度。そのうえ使うために代償を払わなけらばならない不便なものです。
決して主人公に優しいとはいえない状況ですが、そういった困難を、物語が始まった時点で颯也はすでに乗り越えてきたことになります。
読者は彼と一緒に初めての異世界を体験できるわけではないので、序盤は戸惑ってしまうかもしれませんが、いつのまにか構造や状況を理解し、するとそれまで積み重ねてきたストーリーが伏線になっていることがわかります。下巻できちんと収束していく感覚も味わえるので、ぜひ上下巻揃えて読んでみてくださいね。
toi8のイラストは、特にヒロインや女の子の可愛らしさを強調した絵柄になっており、色調やタッチはアニメ絵より。ファンタジーな世界観に引き連れていってくれます。
いかがでしたか?物語の世界観に合わせたイラストは、表紙を見るだけでもストーリーへの想像を掻き立てられますよね。toi8は他にも人気シリーズを数多く手掛けているので、気になる方はぜひチェックしてみてくださいね。