近未来を舞台に、ド派手なアクションと重厚なストーリーで描かれる作品『バタフライ・ストレージ』。無料で読めちゃいます! SFアクション好きにはたまらない魅力を、2巻までご紹介します。スマホアプリで無料で読むこともできるので、ネタバレが気になる方はご自身でご覧ください!
緊張感とスピード感溢れるアクションシーンと、「命」について考えさせられる深いテーマ性が魅力のSF漫画『バタフライ・ストレージ』。
人が死ぬと、魂が蝶となって肉体から抜け出る世界で、主人公を含む登場人物たちはそれぞれの事情を抱え、その思惑が複雑に絡みあうことで生まれる壮大なドラマを描く作品です。
この記事では、そんな本作の魅力と、2巻までの見どころを紹介していきます。ネタバレを含むのでご注意ください。
- 著者
- 安堂維子里
- 出版日
- 2016-11-11
ちなみに本作はスマホアプリで無料で読むこともできるのですが、この不思議な世界が気に入ったら、『天獄の島』もおすすめ。アプリをダウンロードする機会があれば、そちらもご覧になってみてください。
ダウンロードする前に『天獄の島』がどんな作品か知っておきたいという方は以下の記事からどうぞ。
『天獄の島』が無料!スリル満点のサスペンスホラー漫画!【ネタバレ注意】
舞台は近未来、死んだ人の魂が「蝶」として身体から抜け出す世界で、国家機関「死局」は、死者の蝶を回収・管理することを目的に活動しています。
蝶には死人の人生がデータとして記録されているのですが、死後49日が経過すると消滅してしまうため、死局には蝶の迅速かつ確実な回収が求められており、主人公の小野百士(おのひゃくし)もそんな死局に勤める人間のひとりです。彼はかつて何者かに妹の蝶を奪われた経験があり、その回収に異常な執着を持っているのでした。
果たして妹を救うことはできるのか、そして蝶を巡った謎の組織と死局の戦いの行方はどうなるのか。人の魂を巡る死局員たちの物語が幕を開けます。
本作はその設定ゆえにスリリングで、ドラマ性溢れる展開が楽しめる作品になっています。登場人物たちもそれぞれ「命」に対して秘めた想いがあり、その心理描写の掘り下げがより一層ストーリーの重厚さを増しているのです。
読みごたえのある作品をお探しの方は、ぜひチェックしてください。
人の魂が形を成したものであり、人生のデータ記録でもある「蝶」という存在は、本作の世界観の根幹を成す設定です。
先述のとおり、人が死ぬと蝶は肉体から抜け出て、49日が経過すると消滅してしまうという時限付き。そのため、蝶を回収・管理する組織である死局は、蝶が消滅する前に回収しなくてはなりません。
回収された蝶は冷凍されることで期限が凍結され、データから再生したホログラム映像を用いて故人と遺族の面会ができたり、故人の蝶を大量に集めてビッグデータとして活用できたりします。死局はその名のとおり、まさしく人の死を管理する組織だというわけです。
そんな本作の設定のため、物語には常に「死」が中心に動いていきます。当たり前の話ですが、現実に私たちが住んでいる世界では、死後その人がデータとして保存されることはありません。そのため魂がどうなるのか、どこへいくのか、残された人たちが知ることはないのです。
ところが本作では、データとはいえ遺族と故人が面会し、実際に会話をすることができます。しかも、大量の故人の魂を集めることで、生前はできなかった故人同士の「大会議」をおこない、重要な議題に対するもっとも有効(であると考えられる)な結論を導き出すこともできるのです。
死んだ人のデータは更新されることはないのですが、死後もその人の魂が生前と同じか、それ以上に社会に対する有用性を持つことを考えると、この世界における魂の価値は本当に情報のみなのだろうかと考えてしまわずにはいられません。
このように、多くの読者がすでに自分のなかに持っている「生」や「死」に対する考え方に、疑問符を投げかける深いテーマ性が、本作の大きな魅力であるといえるでしょう。
ここまで本作の世界観についてお伝えしましたが、主人公の小野百士もそんな世界で「蝶」にまつわる問題を抱えているひとりです。
彼は子どものころに飛行機事故で家族を失ったのですが、双子の妹である千里(せんり)と彼だけ一命をとりとめました。しかし千里は、事故当時から外見的に成長が見られず、目は開いているものの魂の抜けてしまったような状態に陥ってしまっています。
その原因と考えられるのが、事故後に千里の体から抜け出た蝶が、死局に回収されず謎の男によって食されてしまったという事実です。百士は自身も死の瀬戸際をさまようなかで、その光景を見ていました。そして謎の男の行方を追うため、そして妹の蝶を回収するために、蝶を管理する死局で働くようになります。
そんな悲痛な過去を持つからなのか、それとも本人の元々の性質なのか、彼は大変なシスコンです。何があっても妹のことを優先し、妹の写真を常に持ち歩き、時には死局のデータベースに侵入して仲間からも追われる立場になるほど。
またかつてのトラウマゆえか蝶に対する執着が異常で、蝶を奪い去る悪人を決して許さず、是が非でも蝶を遺族に送り届けようとするのです。
感情に左右されて動く百士の戦い方はとてもリスキーで、多少の危険は意に介さないため、読者は常にハラハラさせられます。時には味方からも疎まれるほどに無茶な暴走ぶりを見せる百士の活躍に、手に汗握ること間違いなし。
また画力の高さを最大限に活かした動きのある戦闘シーンと相まって、SFアクションが好きな方であれば垂涎ものの内容です。
- 著者
- 安堂維子里
- 出版日
- 2016-11-11
蝶の回収・管理をおこなう死局という組織について語られる1巻です。冒頭では百士の幼少期の飛行機事故について回想があり、その後は死局に入った彼と死局員の面々たちによる戦いが描かれます。百士の過去と個人的な目的を中心のため、主人公の活躍を存分に堪能することのできる構成でしょう。
主に死局の目的と活動内容を解説しつつ、百士や他の死局員たちがそれぞれ蝶について思惑を抱えていることを匂わせる形で、ストーリーが進行していきます。
死局員の訓練風景、蝶の密売組織との戦い、そして千里の蝶を巡った百士の秘密裏の行動などが描かれ、2巻に続いていく形です。
そんな1巻の見どころは、蝶の密売組織を鎮圧する際の死局の活躍を描いた場面でしょう。本作の魅力のひとつであるド派手なアクションのお披露目ともいえるシーンで、死局員それぞれがしっかり活躍する見応え抜群な内容です。
- 著者
- 安堂維子里
- 出版日
- 2017-06-13
2巻では、百士以外の死局員が抱える思惑について明らかになっていきます。妹のために死局のデータベースにハッキングをしかけようと奔走(暴走)する百士に対し、チームの実質的なまとめ役である田中が制圧しにかかるところから物語が始まります。
チームのボスの荒井や、百士の先輩の神田といった死局員の面々についても掘り下げられ、特に夫の蝶を奪われた過去を持つ荒井のエピソードは、彼女の人柄を知り共感できるでしょう。
また、これまであまり前面に出ることのなかった田中の活躍シーンも多く、強くてかっこいい中年キャラクターが好きな方には特におすすめの巻です。
死局に対し攻撃が仕掛けられる緊迫した場面もあるため、1巻から引き続き怒涛のアクションシーンも満載ですよ。
そんな2巻の見どころは、百士と田中によるやり取りの一幕。千里の蝶を取り戻すきっかけを掴もうと、死局のデータベースに侵入した百士は、まんまと罠のダミーデータに引っかかってしまい、田中によって拘束されてしまいました。
これまで派手に立ち回っていた百士を、赤子の手をひねるように捕らえてしまう田中には圧巻のひと言。その後彼が百士に諭すように語り掛けるのですが、このシーンが年長者らしい魅力に溢れているのです。
ほかにも各キャラクターの設定が徐々に明らかになっていき、彼らを通じて本作の世界観に触れることができます。
ちなみに冒頭でもお話しましたが、本作が気になる方は『天獄の島』という作品もおすすめ。アプリをダウンロードすれば、こちらも無料で読めますので、ぜひご覧になってみてください。
事前にどんな作品か知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
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