無料で読める『ど根性ガエルの娘』が壮絶。波乱の展開を4巻までネタバレ紹介

更新:2021.11.11

『ど根性ガエル』の著者を父に持った娘大月悠祐子と、その家族にまつわる実話を描いたエッセイ漫画『ど根性ガエルの娘』。この壮絶な物語は無料のスマホアプリで公開中です。この記事では作品の魅力と、見どころとなる「吉沢家」の壮絶な過去についてご紹介します。

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無料で読める『ど根性ガエルの娘』の壮絶な記録を4巻までネタバレ紹介。「死にたい」と思いながら生き続けた、ひとりの漫画家の過去

著者
大月悠祐子
出版日
2017-02-17

 

1970年から1776年にかけて「週刊少年ジャンプ」で連載され、人気を博した国民的ギャグ漫画『ど根性ガエル』。吉沢やすみによって50年近くも前に描かれた作品ですが(2017年現在)、日本人であればその名を知らない人は少ないでしょう。2015年7月には「ど根性ガエルの後日談」という設定で実写ドラマ化もされ話題を呼びました。

ここでご紹介するエッセイ漫画『ど根性ガエルの娘』の著者大月悠祐子(おおつきゆうこ)は、吉沢やすみの実の娘です。誤解しないでいただきたいのは、本作が有名漫画家の父に便乗して描かれた作品ではなく、ひとりの女性としての大月悠祐子の「戦いの記録」であるという部分です。

その過去は壮絶を極めています。かつて吉沢家では何が起こっており、どう再生していったのか。この記事では衝撃の展開の見どころについてご紹介していきます。

スマホの無料アプリで読むこともできますので、内容が気になる方はぜひ試し読みしてみてくださいね。

 

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『ど根性ガエルの娘』のあらすじ

『ど根性ガエルの娘』のあらすじ
出典:『ど根性ガエルの娘』1巻

『ど根性ガエル』の連載が終了した頃、悠祐子はまだ10歳にも満たない少女でした。スランプに陥り漫画が一切描けなくなってしまった父は仕事も妻も子供も、何もかもを捨てて失踪します。その時締め切りを守れなかった漫画原稿は合計13本。昭和時代の漫画家にとって締め切りを破るという行為は漫画家の「死」を意味するものでした。

自殺未遂までして、失踪した父やすみが何をしていたかと言うと、雀荘、パチンコなどのギャンブルに明け暮れるホームレスのような生活。ゴミに埋もれて眠る日々を過ごしていたのです。しかし、ふと家族や仕事のことを思い出した父はついに家へと帰ってきます。

変わり果てた姿ではあれ、無事に帰ってきた父を優しく迎え入れた母。「大丈夫」だと励ます姿は、これから再生の物語が始まっていくことを予感させます。しかし、この時から始まったのは「再生の物語」ではなく、「苦難の物語」だったのです。

苦労をした家族の再生の物語?【1巻ネタバレ注意】

8歳の大月悠祐子の密かな楽しみは、ある一室の壁に開いた大きな穴を覗き込むこと。幼い悠祐子は、普段は額縁で隠されているその穴の向こうに未知の世界が広がっていると信じていたのです。

しかし、悠祐子が無邪気に遊んでいた穴は、癇癪を起こした父が怒り任せに蹴り破ってできた穴でした。気に入らないことがあると父は物に当たり、部屋の中は落ちた食器や倒れた家具でぐちゃぐちゃになります。その中で途方にくれる母親の姿はもはや日常風景でした。

『ど根性ガエル』で得た収入も全てギャンブルに費やし、明日食べるものにも困るようになって母は働きに出ます。元看護師で、仕事をとても好きだった母は仕事を通して笑顔を取り戻しはじめていました。母を先頭に家族が温かみを取り戻しているように感じられた中、事件は起こります。

仕事の付き合いで少し遅くなり「飲んできちゃった」とはにかんだ母に、父が手をあげたのです……。

著者
大月悠祐子
出版日
2017-02-17

そんな暗い過去の話を、母は41際になった悠祐子に食事の席で聞かせています。当時の荒れ狂っていた父の話に「よく離婚しなかったね」と悠祐子は言いますが、父が手をあげたのはあの一回きりで、本当は優しい人なのだと、懐かしそうに語るのでした。

蹴り破られられた穴で遊ぶ無邪気な悠祐子の様子が心をえぐります。当時の乱暴な父や疲弊した母の姿に、幼い彼女は何の違和感も覚えていなかったのです。

それにしても、なぜ母は本当に父と別れなかったのか。その理由は母が真正の「だめんず好き」だったことにあります。漫画業界から干されて収入を無くし、なけなしの金を持ってパチンコ屋と雀荘に入り浸っていた父のことを「無職になってくれてよかった」とノロケまじりに語り出したのです。

ボロ雑巾のような姿で帰ってきた父のことも「可愛かった」「母性本能がくすぐられた」と幸せそうに話します。なんてたくましい母親でしょう。そんな母を見て「この人がお父さんの奥さんでよかった」と密かに思う悠祐子。家族がどん底から這い上がることができたのは、母のおかげだと言っても過言ではなかったのです。

続く2巻では、さらなる苦難の記憶が描かれます。

感動の収束へ?【2巻ネタバレ注意】

16歳の悠祐子は、自室の机の上に残された父からのメモを読んでいました。「すまん。借りる。必ず返す。」とだけ書かれたそれは、父が高校生になった彼女の入学祝い金を手にギャンブルをしに行ったことを意味します。父は娘と息子の金に手を出すようになっていたのです。

母に相談すれば取られた分の金額をきっちり返してもらえましたが、それは母の稼いだお金であって、父から返されたことになりません。悠祐子は納得できませんでしたが、それでも母はお金を受け取らせるのでした。

反抗期にもさしかかっていたのか、この頃の悠祐子は父の理不尽な言葉に多少文句を言えるようになっています。ある日、ギャンブルに負けたらしい父が不機嫌を露わにしながら帰宅し、雑用を言いつけてきた際に「自分でやれば」と強気に出ます。

しかし、タイミングを間違えると大変なことに……。不機嫌の絶頂だった父は歯向かう悠祐子に睨みつけ、危険を察知して悠祐子が立てこもった部屋のドアを殴り、蹴り、怒号をあげます。気が済んだのか、ぶつくさと何かを言いながら父がどこかへ消えて行ったとわかると、悠祐子は膝を抱えて涙するのでした。

著者
大月悠祐子
出版日
2017-02-17

当時限界だったのは悠祐子だけでなく、母も同じでした。自分が頑張って働くことで家族を養い、父を守ることで家族を「まともな形」に戻そうとしていたのです。「男の子が父親を尊敬できないのは可哀想」かこつけて弟には、悠祐子は父に金を盗まれていると思い込んでいる、と嘘までつきます。「立派な父親像」を守るため、母は悠祐子を犠牲にしたのです。

家族に囲まれてはいるものの、暖かさのない家庭で母は孤独も同然だったことでしょう。頭を抱えるようにして泣き崩れる母親の姿なんて、子供からしたら最も見たくないものです。しかしその母から、まともな家庭を築くための犠牲にされてしまった悠祐子は絶望したはず。

思春期で抱えるには大きすぎる苦難は、良くも悪くも悠祐子を成長させたのでした。

この頃の苦労を思い出しながら、悠祐子は母に「あの時、支えてあげられなくてごめんね」とあらためて母に謝ります。その言葉に母は大泣き。自分こそ娘に辛い思いをさせてしまったと謝るのです。

ここでも母のだめんず好きは見られます。これからは自由に生きてねと悠祐子に励まされると、母は「自由に生きて、お父さんと死ぬまで仲良く暮らす!」とさらに大泣きしながら宣言します。何歳になっても夫のことが大好きなのだそう。

この、母と娘が一緒に食事をするという和やかな風景が挟まれなければ、本作のエピソードはただただ辛く苦しい内容の連続になってしまうでしょう。「吉沢家」で起きた出来事とはいえ、悠祐子や母が笑顔で振り返られるようになってよかった、と感じずにはいられません。

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大どんでん返し。15話から明かされる、娘として、漫画家としてのたたかい【3巻ネタバレ注意】

ここまで過去の苦難と、それらを振り返る悠祐子たち家族の風景が描かれてきました。父も母も落ち着き、悠祐子と弟もそれぞれの家庭を持って、吉沢家の「再生」は成されたように見えたはずです。

しかし、第3巻収録の15話で「本当の吉沢家」の現状が明かされます。

著者
大月悠祐子
出版日
2017-06-29

 

そのエピソードは、父が悠祐子の家でカレーを作っているところからはじまります。嫁に出た後でも娘を気遣う父の愛が感じられる行動です。並んでキッチンに立ち、できたカレーを向かい合って食べる様子は仲のよい親子そのもの。

この暖かいやり取りと同じものが1巻の1話でも描かれていました。ただ15話には、その幸せな風景を180度ひっくり返すような内容が書き添えられていたのです。それは、娘である悠祐子の「本当の気持ち」で……。

 

出典:『ど根性ガエルの娘』3巻

父のために、父が喜ぶ言葉を返す。そこに悠祐子の本当の気持ちはありません。今までの発言のすべては「父の怒りを買わないため」のからっぽの言葉。辛かった過去を過去として語る幸せそうな風景も偽物。吉沢家は崩壊していたあの頃から、再生なんてしていなかったのです。

悠祐子が16歳の時、理不尽を強いられても、金を盗まれても、母は「父のプライドを守るため」、「再び漫画を描かせるため」に罪のすべてを被害者である悠祐子に被せ、父に土下座させたのです。この出来事で、自分に味方はいないと身をもって知った悠祐子は、それ以来父に逆らうことをやめ、父の機嫌を損ねないことを第一に考えながら生きてきたのでした。

この残酷すぎる大どんでん返しは多くのファンに衝撃を与えました。1巻と2巻とで「苦難を乗り越えて絆を深めた家族」という風な感動的な様子を描いていたために、この真実は余計に胸を締め付けるものとなります。

さらに悠祐子が恐れていたことが起こったのは、『ど根性ガエルの娘』の単行本発売に際して行われた、父と悠祐子による対談の場。インタビューに気を取られて父の「望まない事」をしてしまった彼女は、担当編集者とライターの目の前で父に罵倒され、対談をめちゃくちゃにされてしまいます。

出典:『ど根性ガエルの娘』3巻

41年間生きてきて、父に本当の気持ちを言えたことなどただの一度もなかったという悠祐子。

「私は今まで 自分をとりまく この世界に 魂の底からあらがったことはなかった」(『ど根性ガエルの娘』3巻から引用)

そんな彼女が生まれて初めて自分の運命にあらがおうとし、その方法に選んだのが『ど根性ガエルの娘』の執筆だったのです。自分が見てきたこと、感じてきたことを全て作品に描き起こし、父に読んでもらう。そうして自身と「吉沢家」の物語に決着をつけることこそが、悠祐子が目指すゴールなのです。

ここから悠祐子の「漫画家として」、「娘として」の真の戦いが始まります。納得のいく作品を完成させ、本にすることができるのか。自分の身に起きた真実を描いた漫画で、歪な形のまま落ち着いてしまった家族を救済することができるのか。もがきながら筆を取る悠祐子の姿と、ラストへと迫る展開から目が離せません。

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次々と明かされる真実【4巻ネタバレ注意】

次々と明かされる真実【4巻ネタバレ注意】
出典:『ど根性ガエルの娘』3巻

19話以降で主に描かれるのは、発売された『ど根性ガエルの娘』1巻の売れ行きや、有名漫画家としての悠祐子の苦悩、父のその後など。
 

悠祐子いわく、驚くほど売れなかった『ど根性ガエルの娘』には、打ち切りの判断が下されました。電話口で涙する担当編集者は「2巻だけは出すことができる」と唯一の救いのように言いますが、なぜか悠祐子は2巻の制作を拒否したのです。悠祐子の狙いは他の出版社への移籍。場所を変えてでも悠祐子には、この作品を書き続けなければならないという強い使命感があったのです。

作品の連載の続行にいたるまでに、悠祐子にはどんな苦労と苦悩があり、どんな助けがあったのか。本作は一度読み始めてしまえば、悠祐子が心の底から笑える瞬間が来るまでどうしても読み進めたくなります。まだまだ続く悠祐子の戦いの記録を、ぜひその目で確認してください。

『ど根性ガエルの娘』はスマホアプリで無料で読める!1人の女性漫画家の戦いを見届けてみては?

著者
大月悠祐子
出版日
2017-02-17

有名漫画家の吉沢やすみが父親である大月悠祐子。連載の締め切りを守らず失踪した父、そして家族の物語を明け透けに描いた作品で、話題となりました。

1巻だけ読むと、家族再生の感動物語ともとれるのですが、2巻以降から一気に壮絶さが増していきます。もはや家族の物語だけではなく、漫画家を父にもつ女性、そして1人の漫画家である彼女の戦いの物語となっていくのです。

連載作品の裏側でくり広げられる、漫画家と編集側の対立。知られざる苦悩が明かされ、ネット上では一時騒然となりました。本当に自分が描きたい物語を描くため、彼女は奮闘していくのです。

いろんな視点から読むことができる本作。ほんわかと優しい表紙からは想像もつかないほど、衝撃的な物語が描かれています。スマホのアプリで無料配信されていますので、まだ読んだことがない方はぜひお試しくださいね。

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「家族の再生」を思わせるストーリーの中に隠れた本当のメッセージが、読者を震わせます。波乱の過去を生き抜いた悠祐子の姿を、最後まで見届けてあげてください。

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