周囲に呆れられながらも、自分たちの個性を大切にする主人公によるギャグ漫画『ハイスクール!奇面組』。作者・新沢基栄が紡ぎ出すのは、「変態」たちの平和な日常の姿です。今回は、個性豊かすぎる登場人物たちをネタバレありでご紹介します。
- 著者
- 新沢 基栄
- 出版日
新沢基栄が手掛け1982年から5年に渡って連載された『ハイスクール!奇面組』は、新沢の漫画デビュー作である『3年奇面組』の主人公たちが高校に進学し、そんな彼らの日常を描いたドタバタギャグコメディです。
『3年奇面組』から引き続き、一堂零・冷越豪・出瀬潔・大間仁・物星大の5人で構成された「奇面組」の面々を筆頭に、ヒロインの河川唯・宇留千絵といった個性豊かな「変態」キャラクターたちが繰り広げる物語は、テレビアニメ化や舞台化され、話題を集めました。
さらに、登場人物たちの名前は、一堂零(一堂、礼)、冷越豪(レッツゴー)、出瀬潔(出席良し)、大間仁(大魔神)、物星大(物干し台)といった具合にほとんどが語呂合わせになっているので、登場する人物たちの元ネタを考えながら読んでみるのも楽しいです。
本作のタイトルにもなっている「奇面組」とは、文字通り変な顔をした5人組のことで、彼らが巻き起こす様々な珍事は、「バカだなぁ」と呆れながらもほほえましく読み進めることができます。
また、本作には様々な「変態」が登場しますが、本作の「変態」とは広義的な意味としてではなく、奇人・変人、異常な行動状況のことです。
それが転じて、手足が伸びたり壁を歩いて渡るなど、人知を超えたもの=「変態」という位置づけを成しています。変態がほめ言葉たりえる漫画なのです。
その最たる例が、主人公の一堂零で、すぐに2頭身になったり人間とは思えない動きをしたり、箸の持ち方が異様だったりと、その「変態」的な要素をあますことなく見せつけてくれます。
ハチャメチャな設定なうえ、くだらないことを一生懸命やっている憎めない登場人物ばかりなので、読み終えた後には爽快感すら感じることができるのも魅力の1つです。
「一応中学」から、何とか「一応高校」に進学した「奇面組」をはじめとする『3年奇面組』のメンバーは、1年10組に配置され、ドタバタと青春時代を過ごしていました。
そんな中、新たに担任になった若人先生や、事代先生といった個性豊かな教師陣に加え、零の幼馴染みなど新たな顔ぶれも登場し、ますます活気づく高校生活。中学時とは違って、零と唯や、豪と千絵の恋愛要素も交えながら濃密な時間を紡ぎ出していきます。
零と唯の関係性にも変化が訪れたり、いつもの変態パワーが通じず零が交通事故に遭って入院したりと、様々な物語が紡がれる最終章は、本作ではなかなかお目にかかれないシリアスな展開で(ちょこっと)見どころです。
本作の主人公にして、奇面組のリーダーでもある一堂零(いちどう れい)。
人と同じという没個性状態を嫌い、個性を重んじる思考ゆえ、中学時代に「個性の追求」をモットーにした「奇面組」を結成しました。
メンバーの中で最も個性が強く、6頭身が2頭身に変化したり、体の関節がありえない方向に曲がったり、壁を歩いたり、人以外のものに変身したり……と、「変態」具合もピカイチで、その変態さはメンバーからも、からかいやツッコミの対象になるほどです。
無邪気で根は実直な性格の零。いかめしい外見のわりには、デリケートな部分を持ち合わせており、すぐにスネるなどのかわいらしい一面ものぞかせます。
学業においては教科書を見るとじんましんが出るほどに勉強嫌いで、成績があまりにひどいために中学を3回も留年しているというツワモノです。しかし、実家が玩具屋ということで、工作や機械類の操作には手腕を発揮します。
類まれなる変態ですが、本作のヒロインである河川唯に一目惚れし、ずっと彼女を想い続けています。そんな一途な面も持ち合わせた、わりと真っ当な男子です。
実は唯も零に好意を寄せており、周囲から見れば相思相愛の関係性ですが、当人たちはまったく気づいておらず、友人としての関係を育んでいます。
『ハイスクール!奇面組』はギャグコメディですが、一方で心が華やぐようなラブコメ展開も楽しめる一石二鳥の物語です。零と唯の恋模様からも目が離せません。
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太い眉毛とぎょろりとした目が特徴的な酒屋の息子が、奇面組メンバーにしてサブリーダーの冷越豪(れいえつ ごう)です。
全身毛深く、脂っ気の多い足の裏の毛を使って水上を歩くという特技を持った「変態」です。
短気ですぐ暴力をふるうことがありますが、基本的に異性には手を上げることはありません。口が悪く無愛想でデリカシーのない豪ですが、叔父夫婦への義理堅い一面も持ち合わせています。
居候させてもらっている叔父夫婦が営む酒店を文句ひとつ言わずに手伝い、それを「当然」と考えることができる豪は、粗暴に見えるけれど、実はものすごく真面目でいいヤツではないでしょうか。
中学時代の修学旅行や高校での臨海学校にも、一升瓶を持ち込むなど無類の酒好きですが、校内には持ち込んでないことから、彼なりのポリシーが存在するようです。
ヒロイン・唯の親友である千絵とは、意地っ張りな性格が裏目に出ていつも口げんかをしてしまうものの、「ケンカするほど仲がいい」関係へと発展します。
友人として付き合っていたはずの女の子が、気がついたら好きな人になっていたという超王道の展開。照れを隠しながら、千絵と接する豪の姿も、ぜひ最後まで見届けたいところです。
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無類の女好きで、スケベな出瀬潔(しゅっせ きよし)は、奇面組の中でも最も表情の変化が分かりづらいため、何を考えているのか掴みきれないキャラクターです。
潔はスケベを誇りにしているので、きっとの中ではスケベを考えているのでしょう。
そんな彼は、スケベと卑猥は別物という確固たる自身の哲学を持って、日々、スケベ活動にいそしんでいます。エッチなビデオやポスターを数多く持ち、実家が銭湯を営んでいることを利用して、女湯を何度も覗き見している潔。清々しいまでにスケベなところも、彼の魅力と言えるでしょう。
また、惚れっぽい性格で、好きな女性には尽くすタイプなのですが、外見とそのスケベさからほとんどが告白→すぐ失恋という流れになってしまっているのが、不憫でなりません。スケベだけど悪い人ではないんです、本当に。
奇面組の頭脳的な役割をすることも多く、話の聞き役や、暴走の歯止め役としても活躍しています。
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いつも笑っているような顔と福耳が特徴的な大間仁(だいま じん)は、奇面組メンバーの1人です。
極めて温厚な性格をしていて、楽天的なのんびり屋。1日の大半は「寝る」ことと「食べる」ことで終わってしまう、無類の食好きです。
食に対する執着が尋常ではなく、朝食に10合のごはんを平らげ、空腹が限界に達すると目の前の人間を食物と錯覚するほどです。また、仁の食事の邪魔をするものは誰であろうと妨害や制裁を与える、という冷酷非情な一面も持っています。
ふとしたきっかけから、病院に入院している淵乃屋麻衣(ふちのや まい)と交流を育み、彼女を気遣うなど優しい性格も持ち合わせているようです。
他が個性的すぎるきらいのある奇面組メンバーの中では、一番地味と言われている仁ですが、心の優しさや温和な性格にぜひ癒されてください。
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奇面組のメンバーであり、ひと際異彩を放つオカマちゃんが物星大(ものほし だい)です。
オカマといっても、完全に女ではなく男性の部分も持ち合わせた中性的な立場として存在しています。
涙もろく乙女チックな性格で、ぬいぐるみを抱いて寝たりポエムを読んだりすることが趣味な彼は、普通の女の子より女の子らしい性格をしているため、女子生徒とも仲良しです。
また、事あるごとに服を脱ごうとする大。服を脱いだ際に発せられる、彼の色香に惑う男子生徒も大勢いるとかいないとか……。
一方で不良に絡まれても引かない、豪胆で男らしい部分も持ち合わせている乙女な男子。そのギャップが最大の魅力なんです。
眉毛(しかも割と剛毛)が繋がっているうえ釣り目なのに可愛いって、本作でも現実世界でも、彼しかいないんじゃないでしょうか。
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河川唯(かわ ゆい)は、『3年奇面組』から登場している、本作のヒロイン。
成績優秀でスポーツ万能、容姿にも優れたハイスペックなヒロインとして描かれていますが、実は唯もかなりの変わり者です。
授業中にトイレに行くのが趣味だったり、くしゃみが「パッション」だったりと「変態」の素養はばっちり。
可愛らしい容姿から男子生徒に人気ですが、本人としてはあまり関心がなく、没個性を嘆き、個性を発揮できない現実に嫌気がさしていた中学時代に、奇面組と出会います。
「周りに流されず、個性を尊重する」という信条を掲げている唯は、同じように活動している奇面組に対しても親近感を感じ、意気投合。行動を共にするようになります。
また中学時代からの親友・宇留千絵も唯に負けず劣らず個性的なため、唯は彼女の個性を認め無二の親友として高校生活を謳歌することになるのです。
しかし話が進むにつれ、唯の変態エピソードはなりを潜め、さらには次第に千絵がボケるようになったため、千絵や奇面組へのツッコミ役となっていきます。
さらに、一堂零を「零さん」と呼び慕っていて、結婚することを夢想するなど、唯の意識の中では常に「りりしい人」として認識されています。零なのに。
実は零も唯を憎からず想っているのですが、当人同士は互いの想いに気づいていないというところがたまらなくキュンとしますね。
そんな零と唯の恋模様が一体どうなっていくのかも、本作の見どころの1つです。
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ポニーテールが印象的な宇留千絵(うる ちえ)は、『3年奇面組』の連載時(中学時代)から登場している唯の親友です。
スポーツ万能な千絵は、高校では唯とともにバレー部に入部して汗を流していますが、地道な努力や練習を好まず、実戦での活躍はあまり見られません。中学で1年落第した奇面組の面々と高校では同級生になり、時に自らもボケ、時に周囲のボケに激しくツッコミを入れながら、日常生活を送っています。
うるちえ(うるせえ=うるさい)という名前の通り「おしゃべり」で、勝気なお転婆娘。自分を飾らないさっぱりした気性の千絵ですが、「女性らしい女性」にあこがれる可愛らしい一面も持ちます。
ただ、ちょっと行き過ぎたボケや容赦ないツッコミが繰り出されるだけなんです。
また、料理の腕は壊滅的で、千絵の料理を食べて強盗が気絶してしまうというエピソードが展開されるほどの腕前。しかし本人は無自覚なのが残念すぎますね。
奇面組のメンバーである冷越豪には、腐れ縁からはじまった不器用な恋心を抱くようになり、物語の途中からは互いに意識しあうような間柄になります。
作中では、素直になれない2人の不器用な恋愛模様が随所に描写されているので、そのムズムズしてキュンとするじれったさをぜひ楽しんでみてください。
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若人蘭(わかと らん)は、中学時代に奇面組の担任を務めていた伊狩増代(いかり ますよ)の後輩で、高校では奇面組のクラスの担任となっています。
フリルの着いた派手な服装をすることもあり、お嬢様育ちゆえの世間知らずから、伊狩先生の結婚式に「花嫁より目立つ」ドレスで参加しようとするなど、天然なエピソードにはこと欠きません。
当初は頼りない印象でしたが、徐々に面倒見がよく子どものあしらいが上手いという元来の性格が顔を覗かせ、物語の中盤以降には常識的なツッコミ担当の頼れる先生にモードチェンジします。
後に、教育実習生としてやってきた事代先生とともに、奇面組のクラスの担任・副担任となり、問題児たちを2人で指導していくようになるのです。
また、事代先生は蘭に好意を寄せている描写が数多く登場しますが、そのあからさまな好意に対して歯牙にもかけていなかった蘭が、のちのち真面目な事代先生に惹かれていく様子からも目が離せませんよ。
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一応高校の前身である応生高校の出身で、当初は教育実習生として登場した事代作吾(じだい さくご)は、一応高校1年10組の副担任として赴任してきた体育教師です。
劇画風の顔立ちと真面目で豪快、熱血漢で情にもろい性格をしており、時代遅れな言動とベルボトムのジーンズがトレードマークのアツい男。
柔道の有段者の彼は、柔道部の顧問を務め、「体育大の姿三四郎」と呼ばれていたことを自慢にしているようです。
実は低身長で胴長短足のため、ベルボトムジーンズの下に、シークレットブーツを履いていることをごまかしている、というセコさも持ち合わせています。
若人先生に好意を寄せているのですが、イマイチ格好つけきれずに三枚目の役回りになってしまう損な部分の多いキャラクターです。
見た目に似つかわしく、ボロいアパートで貧乏暮らしをしていて、常に金欠という可哀想な一面もあります。
しかし、とても一途で前向きな性格は、こんな先生がいたら学校が楽しいだろうなと思うような、鈍くさくても憎めない、いい先生なんです。
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40センチもある長い顔と変わった形の上唇が特徴である骨岸無造(ほねきし むぞう)は、中学時代の零の同級生であり、勉強以外に関心を持たない「骨組」のリーダーです。
「恐怖のお勉強集団」と自負する通り、勉強以外には興味を示さず、色恋沙汰にも関心はない様子。
実技科目中には勝手に主要5科目を勉強したり、スポーツ大会中にコート内で勉強を始めてしまったりと、真面目なのに問題児扱いされる不憫な人物です。
唯に一目ぼれするも、まったく相手にされないまま中学を卒業し、名門進学高校である「尾利高(おりこう)」へと進学しました。
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美形揃いのメンバーばかりを有する「色男組」のリーダーを務める切出翔(きれいで しょう)は、学校内の女子生徒からモテモテの色男です。
軽薄で女の子との付き合い方も八方美人ですが、なぜか憎めない翔。
唯に再三アタックをしていますが、「自信過剰でしつこい人は嫌い」とはっきり宣言されているという、誰にでもモテるけれど本当に好きな子からは報われないという可哀想な一面もあります。
学業や運動能力は特に高くはないようで、奇面組の中でも身体能力の高い零と豪に比べると、やはり運動能力は低く、スポーツなどで勝つことは少ないけれど、顔がイイから女子にモテるという役得な人物です。
ただ、女の子をナンパするために修得したスキーとスケートはとても上手なようで、どこまでもブレない男は女の子にモテるというスキルだけで生活しています。しかしそんな彼も、かつては女顔であることにコンプレックスを感じていたそうです。その顔を長所にしようと開き直った結果、今のように軽い性格になったんだとか。
そんな風にコンプレックスも前向きにとらえることができる、超ポジティブなところが翔の最大の魅力と言えるかもしれません。
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高校内で「番」を張っている、通称「番組」のリーダーが似蛭田妖(にひるだ よう)です。
その名の通りどこか厭世的でニヒルな雰囲気を漂わせる似蛭田ですが、自暴自棄になったりはせず、本作の中ではわりと真っ当に生きています。むしろ、一番ふつうなのが似蛭田かもしれません。
権力を振りかざす者には反発し、ケンカ上等・遅刻早退の常連・校則違反はしょっちゅうという不良ですが、喫煙などはせずケンカ以外の卑劣な行為を行わない、情に厚い部分を持ち合わせたアツい男です。
また、唯が他校の生徒に絡まれていた時や、唯の弟が車に轢かれそうになった時などに救いの手を伸べるなど、似蛭田の正義感の強さも随所に描かれています。
ボクシングに精通していて、ボクシング部をまとめて倒すほどの実力の持ち主。スポーツもかなり得意で、ケンカで鍛えた腕っぷしや瞬発力を活かし、雲童塊に引けを取らない運動能力を発揮しています。
一見、ワルそうな不良集団のリーダーですが、学校行事への真面目な参加や、弱気を助ける男気あふれる姿、「夏休み1週間延期」という遠泳の賞品に思わずバンザイする姿など、ギャップが激しいところも魅力の1つです。
そのギャップゆえか、キャラクター人気投票では常に上位をキープするなど人気の高さがうかがえます。
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高い運動神経を誇り、スポーツに絶対の自信を持つ雲童塊(うんどう かい)は、スポーツに秀でた人物ばかりで結成された「腕組」のリーダーです。
スポーツマンらしく、卑屈で卑怯なことはせず、根は単純で目立ちたがり屋。
いつも奇面組とのスポーツ対決で敗北を喫していましたが、一度、中学時代のバスケの大会で苦戦のうえ勝利し、少年漫画において珍しかった「主人公に勝利した登場人物」として連載当時、話題を集めました。
運動神経抜群で、スポーツ大会などでは大活躍! さらに、ケンカも「番組」に次いで強い、と有能な塊は教室でもトレーニングを欠かさず、自宅では特製ギブスを着用して生活するなど、プロのスポーツ選手になるための努力を惜しまない真面目な性格です。
また、ネーミングセンスは最悪で、バスケの「壁蹴りキャッチ」や野球の「魔球・打てるもんなら打ってみな」といった、単純極まりない技名を付けるなど、オツムの出来はあまり芳しくありません。
幼い頃からトレーニング漬けだったため、何らかのトレーニングを平行していないと授業や試験で調子がでないという変なクセを有しています。
学業については今ひとつでも、女子からの人気は「色男組」に次いで高いという、人気者です。
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一応高校のスケバングループ「御女組」のリーダーである天野邪子(あまの じゃこ)は、腰まである黒髪ストレートが印象的な美人です。
本作の登場人物の中でも人気は高く、人気ランキングでは女性部門で2位になったこともあります。
愛煙家で、常にタバコを吸っているほか、始業時間通りに授業に出席するものの、その後に早退するなど早退(サボり)の常習犯として校内でも有名なスケバンです。
さらに、勉強が出来るにもかかわらず、わざと白紙の答案を出して0点を取るなど、名前のとおりの「あまのじゃく」で「ツンデレ」な性格をしています。
音楽室をディスコ代わりにしてみたり、制服を着崩してみたり、他校生とケンカしたりとなかなかに不良な邪子ですが、唯からの「強い女性になりたい」という頼みに付き合ってあげたり、事代先生に淡い憧れを抱いたりと情に厚い一面も垣間見えます。
また、事代先生がケンカの仲裁に入った際には、そのアツい想いに恋をしてしまう邪子がとっても魅力的。
想いを伝えようと、唯や千絵と告白の練習をするのですが、その時の邪子の精一杯のセリフが、
「てめー、かくごはいいかよ」(『ハイスクール!奇面組』文庫版5巻より引用)
という、「それ、告白じゃなくてケンカやん」とツッコミを入れてしまうほどに不器用ですが、その世間ズレした告白に思わずキュンとしてしまいます。
結局は柔道で決闘をして、あっけなく事代先生を投げ飛ばしてしまい、恋から冷める邪子なのですが、その可愛さにきっと打ちのめされてしまうはずですよ。
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零の小学校時代の同級生であり、小学生の時には共に「変態」を競い合っていた宿命のライバルが、春曲鈍(はるまげどん)です。
零からは「鈍ちゃん」と呼ばれ親しまれていますが、極度の人見知りで友だちもおらず、学業も振るわず、運動神経も鈍い、と、どちらかと言えば社会的に不適合者。しかし、サッカーの腕前だけはピカイチで、並外れた技術を持っているという変わり者です。
その学業不振や人見知りなどから、零と、隣家同士である音成家の久子とのほかには、ほとんど友人と呼べる友人はおらず、人付き合いをあまり好まないために「寡黙な人」「人付き合いが悪い」と思われています。不憫です。
他人とうまくコミュニケーションをとることはできませんが、零や久子など、心を許した人物には物怖じせずに接することができます。
1人で留守番することになった鈍の家に勝手にあがり込んだ零と久子にも、「留守中に家に勝手に入るな!」とたしなめつつも、ゲームやトランプ遊ぼうと提案するなど、人見知りですが、人が嫌いではないんです。
また、鈍の滑舌は特徴的で、一人称は「おり」。日常会話においても、「か」→「きゃ」、「な」→「にゃ」、「れ」→「り」、「そ」→「しょ」と発音するので本当に分かりづらい!
でも、その滑舌の悪さがとてもいとおしく、めちゃくちゃカワイイという希有なキャラクターです。
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主人公・一堂零の隣に住んでいる音成久子(通称:チャコ)は、零と同様に留年しており、21歳ながら高校生として普通に過ごしていることから、「掟破りの成人女子高生」と呼ばれています。
減らず口をきく強気でふてぶてしい性格ですが根は素直で、幼馴染みの零と鈍を誘って趣味のままごとに興じるシーンも描かれるなど、かわいらしい一面も覗かせます。
また、音成家と一堂家は家族ぐるみで対立していますが、天真爛漫なチャコの性格ゆえか、比較的良好な関係を築いているのもポイント。確執があっても憎めない、作中にまったくの悪役が存在しないという好例ですよね。
「出たな!掟破りの成人女子高生!」「ふっ、お互い様よ~」という零とチャコの会話は、2人の挨拶のようなものなのです。
さらに、運動能力の高さも魅力で、バレー部では主将を務め、部員を牽引するなどのリーダーシップも持ち合わせています。
隣家同士でひとまとめにされた「成人高校生トリオ」として扱われることが多いですが、零や鈍と比べると「変態」要素はほとんどありません。
しかし、嘘泣きなどの小芝居に関しては2人を凌ぐほど上手で、零や鈍もたじたじとなってしまうほど。そんな女性特有のあざとさも感じられるところが、とても魅力的で愛すべきキャラクターです。
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読み終えた後に、高校っていいなと感じる『ハイスクール!奇面組』。誰1人として嫌いなキャラが登場しない作品で、個性的すぎる登場人物たちの青春を覗き見ることができる珠玉の物語です。ギャグコメディである本作の、根底に流れる青春の香りを感じてみてください。