幼馴染のあいつが突然女の子になった⁉普通のBLとも女装男子とも一味違う、合法BL『彼女になる日』。「性転換」モノの常識を大きく覆す、純情ラブストーリーとして人気のこの作品の魅力を、「another」と合わせて徹底紹介します。
ライバルの幼なじみが、ある日突然女の身体に……!?一般的にはコメディタッチのものが多いと思われがちな、いわゆる「性転換モノ」。しかし『彼女になる日』はそんな常識を大きく覆してくれること間違いなしの作品です。
変わる体と関係性に揺さぶられながらも互いを思い合って悩み、さまざまな障壁を乗り越えていく2人の姿にくぎ付けになる読者が続出しています。少女漫画好きからもBL好きからも、幅広い読者から支持を集めるこの作品の人気の秘密とは?
思春期の不安定で危うい心情をより繊細に描いた『彼女になる日 another』と合わせて、色の異なる2つの作品の魅力をそれぞれ紹介していきます。
- 著者
- 小椋アカネ
- 出版日
- 2013-07-05
女嫌いで真面目な男子高校生・三芳には、涼しい顔をしてなんでもそつなくこなす間宮という幼馴染がいます。何でもできて人気者の間宮に、三芳は常に対抗していました。さまざまな勝負を持ちかけては負け続け、気付けば高2の春。しかし突然、間宮の体にある異変が起こったことにより、その日常に変化が訪れます。
間宮の体に起こったのは、「羽化」と呼ばれる現象でした。「羽化」とは、世界が男女比を一定に保とうとするが故に、成長の途中で性別が変わってしまうものです。
急な出来事に戸惑う三芳に対して、意外にも女性化したことにはあっけらかんとした態度の間宮はある提案をします。その提案は、勝負を名目とした「三芳の女嫌いを治す特訓」。こうして、ライバルだったはずの2人の不思議な関係が始まったのでした......。
間宮の本当の心境、またそんな幼馴染を前にした三芳が起こす行動とは?そして2人の関係はどのような変化を迎えるのでしょうか……?
この作品の魅力の1つに、2人の関係の変化が繊細に表現されているという点が挙げられます。惹かれ合いながらも悩み、自分の気持ちに向き合おうとする2人の姿がいじらしくて、応援したくなってしまいます。真面目に関係性を作っていこうとしているからこその悩みと感情の変化が、丁寧な表現から伝わってくるでしょう。
特に三芳は、間宮が男性だった時も女性になってからも、相手に対する自分の行動を考え続けています。この姿勢にはプライドの高さがゆえに、1人になりがちな間宮が心を開くのも納得です。
恋人になるまでも、なってからも一筋縄ではいかない2人ですが、悩みながらも彼らならではの関係性を作っていきます。2人がどんな関係へと発展して行くのか、目が離せません。
また、元々男同士というなかなか珍しい設定なのに、不思議と身近で、現実味があるというのもポイントです。恋人になってから、変化した関係に戸惑って慎重に距離感を図りあったり、言わなくとも伝わると思っていたことが伝わらずにすれ違ったり、幼馴染の時と変わらない部分に安心したり……。友達から恋人になったカップルには1度は経験のあるエピソードなのではないでしょうか。
自分とは距離のある関係と思って読み進めていたはずがいつの間にか自分の経験と重ねてしまう、というこの不思議な感覚が、深い共感を呼んでいるのです。
- 著者
- 小椋アカネ
- 出版日
- 2017-07-05
本作では、高校時代から大人になるところまでが描かれています。2人は高校を卒業してから、大人ならではのさまざまな経験を味わっていくことになり、それらが障壁となって彼らの前に立ちはだかります。次々と難しい問題に直面し、そのたびに少しずつ2人の距離が近付いたり離れたりと揺らぐ気持ちにドキドキの連続です。
しかし一貫して、お互いの相手を思いやる気持ちは本当に真っ直ぐとしか言いようがありません。紆余曲折を繰り返しながらも、それを乗り越え通じ合う瞬間や、確実に2人の距離が縮まっていくのを見ていると、本当に幸せな気持ちになるでしょう。
また、恋愛感情だけにとどまらず、コンプレックスや家族関係に関するしがらみなど、ドラマ性と深みのあるテーマも扱いながら進んでいきます。話に重みがありながらも、常に2人のかわいらしさが楽しめる、とてもよいバランスです。胸焼けすることなくするする読めてしまうことでしょう。
自分の問題をひとつひとつしっかり解決して大人へと成長して行く2人。彼らの人間性にも厚みが出てきて、どんどん魅力的なキャラクターになっていきます。読み進めるごとにさらに感情移入が深まっていくことでしょう。
『彼女になる日 another』の舞台は『彼女になる日』と同じ世界の、とある中学校です。主人公はコンプレックスが原因で目付きが悪く乱暴、周りからも距離を置かれる問題児・相楽。クラスメイトの悪友・鳴海とともに黒川という女子に思いを寄せていましたが、ある日突然「羽化」してしまいます。
女になったことを楽しんでいた節もあった前作の間宮とは打って変わり、相楽はなかなかその事実を受け入れることが出来ません。
今回は、望まない性転換に直面した男子中学生の悩みが、より一層リアルに表現されています。葛藤する気持ちや揺らぐ感情が丁寧に描かれているので、中学生という時期ならではの焦れったさや繊細さを大いに感じることが出来るでしょう。
- 著者
- 小椋アカネ
- 出版日
- 2014-05-02
相楽と鳴海、そして黒川は、いわば三角関係。それぞれの想いが複雑に交錯していきますが、歪みのない純粋な気持ちの持ち主である彼らが、決してドロドロすることはありません。しかしなかなか自分の気持ちに、素直になれない3人。そんな彼らを見ていて、切ない気持ちになってしまうでしょう。
『彼女になる日』と同じように、重いテーマを扱っていますが微笑ましいシーンも交えて、話が展開していきます。それによっていつの間にか、キャラを大切に思う気持ちが読者に芽生えてしまうのが、この作品のずるいところです。
なかなか素直になれないながらも自分を見つめることから逃げない相楽、明るい優しさと思い遣りを持つ鳴海、飄々としながらも何か抱えている黒川と、3人それぞれが幸せになってほしいと思わざるを得ません。
果たして最終的に相楽の心を開くのは誰なのか、先の読めない展開に注目です。
複雑な設定でありながら、しっかりしたストーリーが特徴の『彼女になる日』。今回の記事を読んで気になった方は、ぜひ手に取ってみてください!