青春には様々な形がありますが、エンターテインメントで喜ばれるのは一段と過激であったり、あるいは衝撃の展開があったりする作品でしょう。今回は『ドメスティックな彼女』が好きなあなたにおすすめしたい、青春漫画5作品をご紹介します。
主人公の春日恭介は父親と2人の双子の妹の4人家族。彼らは揃って特殊能力が使える、超能力一家でした。彼らはその力のために幾度も引っ越しを余儀なくされていました。
7度目の転居を終えた恭介が街を散策していると、赤い麦わら帽子の少女と出会います。後日、その少女は学校一の不良、スケバンの鮎川まどかと判明。彼はイメージのギャップに戸惑うも、段々とまどかに引かれていくのでした。
その一方で、恭介がうっかり超能力のロングシュートを放った場面を目撃した少女、檜山ひかるは、彼に好意を抱き、積極的にアプローチを始め、まどかもそれを応援し始めます。こうして3人は奇妙な三角関係になってしまったのです。
- 著者
- まつもと 泉
- 出版日
本作は1984年から「週刊少年ジャンプ」で連載されていたまつもと泉の作品。
主人公が超能力者で、その力をきっかけにしてドタバタが繰り広げられるラブコメディです。今でこそ珍しい設定ではありませんが、当時は新奇性が高く、特にまだ硬派路線だったジャンプでは異例の作品でした。
最も目を引くのはヒロインまどかの設定です。儚げな少女と、男勝りの不良という二面性のあるキャラ。現在ラブコメのヒロインが強気で勝ち気なのは珍しくありませんが、元を辿れば源流の1つに当たるのが本作。当時、少年サンデーの『うる星やつら』が人気なのを受けて製作されました。
作者は元々少女漫画を愛好していました。そこで地味なヒロインの相手役の多くが不良であることに気付き、性別を転換して少年誌に逆輸入した結果、まどかというヒロインが誕生したそうです。そしてこれがポップな作風にマッチして大成功。ジャンプにおけるラブコメ作品の牽引役となったのです。
描かれるのは甘酸っぱい青春とお色気。胸の谷間やパンチラなど、今ほど過激ではありませんでしたが、本作の成功がなければ『To LOVEる』も生まれなかったかも知れません。
超能力が物語の鍵になっていて、恭介、まどか、ひかるがあっと驚く関係であることが後々明かされていきます。今読んでも色褪せない感動が楽しめるでしょう。
受験を控えた中学3年の真中淳平(まなかじゅんぺい)は、ある放課後の屋上で偶然、見知らぬ美少女のパンツを目の当たりにします。そのいちご柄が鮮明に焼き付いて、彼の頭から離れなくなりました。映画監督を志す淳平は、夕日を背景にあの少女を撮りたいと願うのでした。
彼は翌日になっていちごパンツと、屋上に残されたノートの「東城綾」の名前を手がかりに、謎の美少女の捜索を始めました。そうして候補に挙がったのが、いちごパンツの西野つかさとノートの持ち主である東城綾でした。彼女達どちらかが、謎の美少女なのでしょうか?
- 著者
- 河下 水希
- 出版日
- 2002-08-02
本作は2002年から「週刊少年ジャンプ」で連載されていた河下水希の作品。
主人公を魅力的な美少女が取り囲む、王道のハーレムラブコメディです。冒頭からパンチラ(モロ?)が飛び出すことからわかるように、際どいシーンが満載。ギリギリ一線を越えないさじ加減がまた、より一層本作の魅力となっています。
主人公の淳平はまさに、ラブコメ主人公のお約束のようなキャラになっています。ショートカットで明るいつかさになびいたかと思えば、三つ編みがチャーミングな眼鏡で清楚な綾も気になる、という優柔不断さ。
しかし、そういう展開でありながら純愛の雰囲気があるのも事実。それは彼が常に「いちごパンツの少女」を念頭に置いているためです。まあ、所詮パンツなのですが。不純な動機が純情に通じる、というのが面白いところ。
読者としては彼らの関係にやきもきすると同時、物語が進むごとにヒロインの少女達が見せる、新たな一面にどんどん魅了されていきます。サバサバしているのに家庭的なつかさ。文化系で奥手な綾。そして高校生編からは、大人っぽい北大路さつきに、妹属性が光る南戸唯(みなみとゆい)が現れてさらにハーレム度が加速していきます。
淳平が、あの日の夕日に見て、再びレンズに収めたいと思ったいちごパンツの少女。つまり、彼にとっての理想の彼女は一体誰になるのでしょうか?
主人公の間(はざま)は26歳の冴えないサラリーマンです。童貞の彼にようやく、仕事先の里美という美女と接点が出来ました。何度か飲みに行って、意を決してLINEで告白したところ、既読スルー。落ち込む間でしたが、酔っ払いに絡まれるところを助けた縁で、女子高生の野々宮鏡花(ののみやきょうか)と知り合いになります。
LINEを通じて徐々に交流していったところ、間は鏡花から告白されました。可愛い女子高生の告白に、答えは当然OK。ところが、幸せの絶頂に至った直後、里美からメッセージが届きます。それは以前の間の告白に対する、熟考を重ねたOKの返事でした。
かくして彼は、人生初の2人の彼女に二股をかけることになったのです。
- 著者
- 板倉 梓
- 出版日
- 2017-02-10
本作は2016年から「月刊アクション」で連載されていた板倉梓の作品。
誠実な童貞が一夜にして二股男にランクアップ――というか、むしろランクダウンというか。そんな急転直下の展開で始まる物語。
二股はどちらも不幸にする最低の行為ですが、一応彼なりの論理はあります。鏡花には告白されて快諾したこと、里美には自分から告白したこと。どちらも一度は心に決めて意思表示した手前、後から取り消すことが出来ない。どちらを取っても、想いを伝えた相手を傷付けてしまう、という理屈。
ここまで優柔不断だと、クズと見なすことに躊躇がなくなるのでいっそ清々しいです。交際経験のない男だけに仕方ないとはいえ、デートの内容もどちらも似たり寄ったりになりがち。片方ずつ相手にする両手に花状態に、どんどん増長していきます。間のクズっぷりは、人間とはここまで愚かになれるのかと、反面教師としては最適でしょう。
間の真実を全て知るのは、本人と読者のみ。大人の色気漂う里美とは体の関係まで進みますが、果たしてその毒牙がいたいけな女子高生にまでおよぶのか。女性側にはなんの罪もなく、彼女達はあくまでも純愛なので、それぞれの関係の発展が気になると同時に冷や冷やさせられます。
優柔不断を文字通り絵に描いた、非純愛の新感覚ラブコメディです。願わくば女性に幸福を、間に鉄槌を。
浅羽悠太(ゆうた)と祐希(ゆうき)は双子の兄弟です。彼らと塚原要(つかはらかなめ)、松岡春(まつおかしゅん)は幼い頃からの幼馴染み。そこに高校2年生になってから転校してきた橘千鶴を加えた仲良し男子5人組は、いつも他愛ない話を繰り返し、平凡な日常を謳歌しています。
イケメン男子の青春はゆる~い脱力日常コメディ。
- 著者
- 堀田 きいち
- 出版日
本作は2003年に「月刊少年ガンガン」で読み切り掲載され、その後「ガンガンパワード」、「月刊Gファンタジー」の順で移って連載が継続している堀田きいちの作品。
当初読み切り段階の作品形式は4コマ漫画で、しかも主人公は東晃一(あずまこういち)とあきらという2人のキャラでした。この2人が高校の体験学習で行った先の幼稚園に、千鶴を除いた現主人公達がいました。つまり2人の目線で見た4人の幼児の話だったというわけです。連載が決まって方向性が変えられて、現在の5人組男子の日常に落ち着きました。
主にボケを担当する双子の悠太と祐希、いじられ役の要、癒やし系なのに空気が読めない春、超マイペースで騒動を起こす千鶴。タイプの異なる5人の美男子が、愚にもつかないしょうもない毎日を過ごすのが魅力的なのです。同性同年代には共感され、そうでない層にはイケメンの愉快な日常として映ります。
彼らの日常もただ楽しいばかりではなく、ふとした瞬間に寂寥感を覚えます。こんな楽しい日常がいつまでも続けばいいのに、いつか終わってしまうのだろう、彼らも成長していくのだろうと感じさせられるのです。
でも、だからこそ今ここにある青春を謳歌しようという、前向きさが感じられる作品です。
主人公の榛名優(はるなゆう)は両親の海外勤務や、姉2人の都合によって東京に引っ越してきます。彼は常にスマホをいじりながら過ごす内気な少年でした。
そんな優は引っ越し早々、街中で女子高生の秋月風夏とぶつかりました。スマホを見ていたことから盗撮を疑われ、叩き壊されるという不運に遭います。その翌日、転入手続きを終えた優は、屋上で風夏と運命的に再会したのでした。
誤解を解いて見直した2人は、互いに少しずつ交流を深めて、やがて幼馴染みの氷無小雪(ひなしこゆき)の勧めでバンド「The fallen moon」を組むことになります。
- 著者
- 瀬尾 公治
- 出版日
- 2014-05-16
本作は2014年から「週刊少年マガジン」で連載されている瀬尾公治の作品。同作者の前作『君のいる町』、前々作『涼風』とは設定が共有されており、同じ土地やキャラクターがたびたび登場します。なお、時間軸は本作が後になっており、人物は成長した姿で登場します。
ヒロインの風夏は、今時携帯電話も持たず、CDプレイヤーばかりを聞く音楽好き。明るくさっぱりとしていて、やや乱暴なのが玉に瑕ですが好感の持てる少女です。実は『涼風』の主人公カップルの娘で、暴力的なのは母親譲り。
気の合う仲間とバンドを組み、当初いざこざのあったヒロインと仲良くなっていく……というのが大筋のストーリーです。バンド結成までの経緯や、結成後のごたごたもありますが、全てが青春の思い出となるような出来事。
しかし、それで終わらないのが本作の特徴。バンドも軌道に乗って、これから優と風夏の恋愛がここから発展していくと思われた矢先のこと。
なんとヒロインの風夏が交通事故で亡くなってしまうのです。あまりにもショッキングな展開に、唖然とする読者の心境は完全に優とシンクロします。そこから立ち直っていくのですが、あまりにも痛々しくて見ていられません。
そしてさらに驚くべきことに、本編に登場する第2のヒロインが風夏と瓜二つ。名前は碧井風夏(あおいふうか)と言って、名前まで同じなのです。ただ、優にとって二重の意味で複雑なのが、碧井風夏は風夏を轢いたトラック運転手の娘だということ。
ここまで来ると恋愛漫画、青春漫画としては未知の領域。そしてさらには……優と風夏達の物語がどう結実していくのかは、実際にご覧ください。
いかがでしたか? どれも一度見たら忘れられないものばかり。ひと味違った青春漫画をぜひお試しください。
『ドメスティックな彼女』についておさらいしたい方は<漫画『ドメスティックな彼女』の見所21巻までネタバレ紹介!>をご覧ください。