最初で最後の暗黒ライトノベルと評判の「されど罪人は竜と踊る」シリーズ。残酷、エロ、後味の悪い読後感……とにかくシリアスで、読み終わる頃にはすっかり気持ちが沈んでしまいます。でも面白い!そんな「され竜」シリーズ既刊20巻分をまとめてご紹介します。
「され竜」の略称で親しまれている本作。2003年からスニーカー文庫から刊行され、その後2008年にガガガ文庫に移っています。
「暗黒ライトノベル」と銘打たれるほど、他のライトノベルにはないエログロ描写込みのシリアスな作風なのが特徴で、スニーカー大賞の奨励賞を受賞しました。
竜や人間外の種族が存在するハイファンタジーでありながら、化学式を元に構築される「咒力(じゅりょく)」という魔法のようなものを使い、作中でも大量の化学式が羅列されています。
主人公は強いだけでなく、時に弱さが前面に押し出されたり理不尽な行動をとったりと、他作品ではあまり見ないような点も多々あり、ライトノベルらしくないライトノベルともいえる独特な作品です。
森羅万象を統べる究極の力、咒力(じゅりょく)。その力を操る咒式士であるガユスとギギナの2人組は、ダラハイド咒式事務所に所属し、日々の生活費のため護衛や探偵業のような仕事をこなしていました。
ある日、いつものように仕事を引き受けた彼らでしたが、2人の前に現れたのは900歳は超えていようと思われる巨大な竜で……!?
- 著者
- 浅井 ラボ
- 出版日
- 2008-05-21
主人公のガユスとギギナは、咒力(じゅりょく)を操る咒式士のなかでも、特にその力を竜退治や人殺しなどに使っている攻性咒式士です。そんな2人が巨大な竜を倒してしまったことから、国を巻き込む大陰謀に巻き込まれてしまうというのが本巻のストーリーになっています。
そんな運の悪さからも分かるように、ガユス・レヴィナ・ソレルは根っからの不運体質。何かと不測の事態に巻き込まれ、彼自身も「歩く非常識」などと呼ばれるほど浮気性な性格をしています。
そんな彼の相棒を務めるのが、美貌の戦士ギギナ・ジャーディ・ドルク・メレイオス・アシュレイ・ブフ。通称ギギナは、竜殺しを生業とするドラッケン族と人間のハーフで、剣術に長けています。ガユス以上にねじ曲がった性格で傍若無人な彼は、戦闘に狂う狂戦士です。
また、ガユスの恋人のジヴーニャ・ロレッツォ、通称ジヴは、お人よしで正義感が強いため、たびたび彼にからかわれますが、その度合いが一定を超えると想像を超える暗黒な性格が出てきます(通称黒ジヴ)。
とにかく登場するキャラクターすべてが個性的。それもシリアスで絶望的な方向に突出しているので、必然的にストーリーもダークネスで絶望的なものへとなっていくのかもしれません。
シリーズ内でもっとも基本的かつ重要な設定である「咒力」は、化学式を用いた魔法です。そのため作中には物理、数学、量子力学などさまざまな化学式が出てくるので、理数系が苦手な人にとっては読みにくさを覚えることもあるかもしれません。ですが、それが作品の世界観とリアリティを支えてもいます。
また、本シリーズの特徴である、グロ描写と緻密な戦闘描写にも多くのページが割かれています。圧倒的なグロさとスピード感に、他のライトノベルにはない気持ちが沈む読後感、それでいて細かな描写に思わず考え込んでしまったり胸を打たれたりすることもあるでしょう。
「禍つ式」――それは、太古の世界では邪神や悪魔と呼ばれていた、異界の化け物の総称です。
彼らの駆逐を警察から依頼されたガユスとギギナでしたが、それと同時に、天才咒式博士レメディウスの誘拐事件にも関わることになりました。やがて2つの事件の繋がりが見えてきて……。
- 著者
- 浅井 ラボ
- 出版日
- 2008-06-19
2巻は、天才咒式博士レメディウスとその恋人ナリシアの物語と言っても過言ではありません。ガユスとギギナが関わった誘拐事件、その当事者であるレメディウスを誘拐したのは、ウルムン共和国に反抗する「曙光の戦線」という反体制組織でした。
ウルムン共和国というのは、ドーチェッタによる独裁国家。ナリシアはこの「曙光の戦線」に所属する少女で、レメディウスと出会うことになりました。
レメディウスは「天才」といわれるとおり、1度記憶したものは決して忘れない能力を持ち、咒式は人のためにあるという強い正義感を持った人物です。しかしそんな彼も、組織に誘拐されウルムン政府の実態を目の当たりにしたことにより、徐々に変貌を遂げていってしまいます。
ナリシアと出会い、政府に狙われ、拷問をされ、壮絶な別れを経験したレメディウスの結末は、筆舌に尽くしがたいもの。エログロは序の口で、カニバリズム要素まで出てきて、読者の心を容赦なくえぐってきます。
2巻を手に取る方は、すでに1巻で本シリーズの世界観を承知した方も多いと思いますが、それでもラストは決してハッピーエンドとは言えませんのでご注意を。
相変わらずいろいろな仕事を引き受け、日々の生活費を稼いでいるガユスとギギナ。そんな2人が暮らしている掃き溜めの街エリダナでは、労働者たちが投資家を狙い破壊活動をくり返していました。
そんな荒れた世情のなか、ガユスの恋人ジヴは、ひょんなことから謎の指輪を託され、命を狙われることになってしまい……。
- 著者
- 浅井 ラボ
- 出版日
- 2008-09-19
ガユスとギギナの暮らすエリダナには、巨大で真っ黒な陰謀が渦巻いていました。ある日謎の指輪を託されたジヴは、その指輪を巡る争いに巻き込まれ、誘拐され、命まで狙われてしまうことになります。
彼女を誘拐したのは、ウォルロットという男。勇者であり虐殺者である彼の戦闘能力は凄まじく、ガユスとギギナが2人がかりでも敵いません。それに加えて、「古き巨人」と呼ばれる長命で巨大な体を持つ種族も指輪をめぐる争いに参戦してきて、物語は激しさと混沌さを増していくことになります。
相変わらずのスピード感と迫力、そして血飛沫や手足の切断など当たり前のエログロ描写。強敵と恋人の喪失という苦難にあって、ボロボロになってしまうガユスにも注目です。
本巻は600ページを超える長編ながら、完結はしません。後半は次巻まで持ち越しなので、一気読みを希望される方はぜひ次巻も合わせて準備をしておくといいでしょう。ただし読むのには精神力を使います。
ジブをさらった張本人であるウォルロットは、しだいに彼女に心惹かれていきます。
一方、世界滅亡の野望を抱いている「古き巨人」をはじめ、民衆、投資家、騎士団などさまざまな思惑がエリダナの街を包み込んでいきました。そんななかでくり広げられるガユスとウォルロットの対決の行方は……!?
- 著者
- 浅井 ラボ
- 出版日
- 2008-10-18
前巻に引き続き、自分の意思とは関係なく陰謀の鍵となる指輪を手にし、その渦中に巻き込まれてしまったジヴと、さまざまな人物の思惑が複雑に絡み合う本巻。とにかく登場人物が多く、それぞれの要素が複雑に絡み合ってストーリーが構成されていきます。
またガユスたちは「古き巨人」やウォルロットなど数々の強敵を相手に戦うため、その描写は流血なんて当たり前。咒力を用いたバトルシーンはスピード感も迫力もあって面白いのですが、本シリーズの魅力とはいえ、グロ描写のボリュームにはあらかじめ覚悟しておいたほうがいいかもしれません。
戦いのなかで、敵にガユスやギギナの力が通じないことが多々あります。よくある主人公は、さらに強い力を手に入れて敵を蹴散らす活躍をするものですが、本シリーズではそううまくはいきません。
しかしだからこそ、大きな組織の中で生きるために必死にな2人に魅力を感じるのです。たくましく生きる彼らの姿に注目してみてください。
食事の席の軽いゲームが、いつの間にか命と尊厳をかけたゲームに!
掃き溜めの街エリダナで生活費を稼ぐ2人ですが、やっぱり今日も一筋縄ではいきません。
- 著者
- 浅井 ラボ
- 出版日
- 2009-02-19
本巻は複数の短編を収録した、連作短編集になっています。
食事の席のゲームがいつの間にか命がけのゲームとなる「禁じられた数字」をはじめ、詐欺グッズの工場へ送り込まれることになったガユスの悲惨な姿を描く「幸運と不運と」、国家の重要人物で、ガユスとギギナがもっとも苦手としている人物、モルディーンを主人公に据えたサイドストーリー「始まりのはばたき」など、いずれの結末もハッピーではない短編です。
一方で、前巻と比較するとギャグ要素もあり、笑えるシーンもあります。
もちろん本シリーズの魅力のひとつ、激しいバトルシーンや鬱度の高いシリアスも描かれていますが、いずれも短い話である分それほど重く感じないかもしれません。
短編がそれぞれバラエティに富んでいるのも面白いところです。不運体質をいかんなく発揮するガユスや、ギギナの激しいバトル、そして前巻に引き続きジヴにも見どころが満載なので、ぜひチェックしてみてください。
掃き溜めの街エリダナの地下には、謎の巨大迷宮が存在していました。ガユスとギギナは、恋人を探すある女性に誘われ、その地下迷宮へと足を踏み入れるのですが……。
2人の日々を巡る短編集第2弾です。
- 著者
- 浅井 ラボ
- 出版日
- 2009-04-18
前巻に引き続き、本巻も短編集になっています。文庫初収録になる作品や書き下ろしのおまけ小説もあるので、スニーカー文庫からの「され竜」ファンも必見の一冊です。
恋人を探す女性を護衛するため、エリダナの地下迷宮に足を踏み入れるガユスたちのエピソードを描いた「迷い路」では、その描写はもちろんのこと、緻密なイラストにもご注目。未知の場所を冒険するワクワク感を感じることができるでしょう。
とはいえ全体的なシリアス度合いは、前巻よりもアップしているかもしれません。副業で予備校でも働いているガユスと教え子たちのエピソードを描く「青の日射しに灼かれて」、猟奇殺人の元被告人を被害者の父親が守ってほしいと依頼してくる「尾を喰らう蛇」など、バラエティ豊かな物語が収録されています。
またおまけ小説では、ガユスとジヴが格闘ゲームに興じるエピソードが描かれ、され竜では珍しく楽しい気持ちになれるでしょう。しかしそれが余計に次巻への不安を煽ってくるのも、本作ならでは。
番外編のような様相を呈していますが、本巻で登場する新しい場所やキャラクターたちは、今後のシリーズに無関係ではないので、ぜひチェックしておいてください。
ならず者の咒式士に命を狙われていた少女・アナピヤをひょんなことから助けたガユスとギギナは、彼女とともに死都メトレーヤへ向かうことになりました。
アナピヤを狙っているのは、凶悪、冷酷、そして強い力を持った攻性咒式士たち。変態性と凶悪性を兼ね備えた彼らの魔の手から、逃れることはできるのでしょうか。
- 著者
- 浅井 ラボ
- 出版日
- 2009-08-18
本巻から長編シリーズが始まります。ガユスとギギナが出会ったアナピヤは、記憶を失った少女。旅の一座に拾われていましたが、その一座が強盗に襲われたところをガユスたちが助けたのです。
彼女は、凄まじいほどの咒力を持った不可思議な少女でした。愛されたいという想いが強く、しだいにガユスに惹かれていきます。もちろん彼にはジヴという恋人がいますが、もともと浮気性な性格なこともあり、しだいに彼もアナピヤの愛に応えようとするのです。
2人の関係性がどうなっていくのか、ぜひ注目してみてください。
また、アナピヤを狙う咒式士のひとり、ドラッケン族殺しのユラヴィカは、今後もシリーズをとおして重要な存在になっていきます。
ユラヴィカはもともと、竜殺しを生業とするドラッケン族の咒式士でしたが、竜殺しでは自分の誇りは満たされないと感じ、代わりに同族を殺害。その後も殺戮をくり返し、賞金首になりました。ギギナに強さを見出し、執着するようになります。
そしてギギナもまたユラヴィカに対し、複雑な気持ちを抱いていくことになるのです。
この他にも、女子供など弱者を憎み、愛する男を虐殺することで自らの欲求を満たす変態暗殺者バモーゾや奴隷のチェデックなど、グロテスクながら魅力のある敵方にも注目してみてください。
ユラヴィカやチェデックが自らの存在について語り合うシーンなど、残酷描写とはまた違う重みを感じる場面もあります。
本巻は上巻で、解決篇は次巻となります。気になる方はあらかじめ2冊、手元に用意しておいてくださいね。
凶悪で最強の咒式士ユラヴィカに命を狙われるアナピヤ。彼女を守るガユスとギギナは、とうとう死都メトレーヤへ辿り着きました。
しかしそこで待ち受けていたのはユラヴィカだけでなく、咒式犯罪を扱う武装査問官や、邪悪な研究者「ベギンレイムの尻尾」など、一筋縄でいかない陰謀の渦だったのです。
- 著者
- 浅井 ラボ
- 出版日
- 2009-10-20
前巻から引き続き、アナピヤを巡る愛と絶望の物語です。彼女の正体が明かされ、前巻ではもやもやしていた点が本巻でしっかり回収されていきます。
おなじみのエログロ描写ですが、ここまでのシリーズで1番と言っていいほどの凄まじさを誇ります。物理的なグロさだけでなく、ガユスの弱い部分や黒い部分など、目を逸らしたくなってしまうような内面も描かれ、読者を絶望的な気分へと引き込んでいくのです。
一方で、ガユスとアナピヤ、そしてジヴの恋愛も展開していきます。しかし彼らの恋愛事情がハッピーエンドにいくはずはもちろんなく、その結末に読者はため息しか出ないかもしれません。
愛されたいのに愛されないアナピヤの切なさに加え、ガユスも絶望的な結末を迎えます。読むのに精神力を使うので、お疲れ気味の方は閲覧注意です。
掃き溜めの街エリダナでは、命のやり取りは当たり前。しかしそんなエリダナの人ですら震えあがるような、狂気に満ちた殺人事件が発生します。
事件を起こしているのは、人を殺すために殺人を犯す猟奇的な集団「ザッハドの使徒」でした。アナピヤの一件で落ち込み気味のガユスとギギナも、この事件に巻き込まれていき……。
- 著者
- 浅井 ラボ
- 出版日
- 2010-07-17
本巻を含めて4巻にわたって描かれる大長編の始まりです。ガユスとギギナが暮らすエリダナで、猟奇的な殺人事件が相次ぎます。
しかし前巻でアリビヤともジヴとも別れたガユスは、抜け殻同然。ギギナも、得意なはずの剣の腕が鈍っていました。
そんな2人を横目に、事件はどんどん激しさを増していきます。殺人事件を起こしているのは、「ザッハドの使徒」と呼ばれる咒式を操る殺人者たち。ザッハドというのは、数千件もの殺人を犯した史上最悪の殺人者の名前で、今は監獄に収容されています。
そんな彼を信奉している殺人者たちが「使徒」と呼ばれていて、彼らはエリダナを舞台に、「祝祭」と称した殺人ゲームをくり広げていたのです。
このゲームは、誰が1番多く人を殺せるかというもの。これだけでも十分に狂気を感じるストーリーですが、大暴れするキャラクターたちもまた狂人なのです。
使徒のなかでも最悪のひとりと言われているのが、アンヘリオという殺人者。過去に900人以上も殺している精神異常者です。
しかし殺人をするだけでなく、自分が価値のある人物だと判断した相手には多額の金を寄付する、という側面も持ち合わせていて、この点がより一層彼の狂人っぷりを助長しています。
使徒編で重要な人物になってくるのが、パンハイマというキャラクターです。パンハイマは警備会社の社長で、白い肌と緋色の瞳を持った絶世の美女であり、超の付くサディスト。
警備会社の社長ではありますが決して正義の味方ではなく、犯罪スレスレの残虐行為も躊躇うことなくおこないます。しかもその行為が犯罪にならないようにできる富と、駆け引き能力も持ち合わせているのが厄介です。
この他にも、ガユスが心の隙間を埋めるように付き合いはじめたチェレシアなど、新たに関係を築く人物も登場し、ボリュームのある分量ながら最後まで飽きることがありません。
エリダナの街でくり広げられる「祝祭」と称された殺人ゲーム。誰がどれだけ殺せるか、という単純明快かつ残虐なゲームは、新たな参加者も増え、ますます混沌としていきます。
ガユスとギギナ、そしてパンハイマは、しだいにその渦の中心へと追い詰められていくのです。
- 著者
- 浅井 ラボ
- 出版日
- 2011-06-17
使徒による殺人ゲームの残虐さと苛烈さはどんどん加速。なかでもアンヘリオは、パンハイマの娘ペトレリカを人質として誘拐するなど暴虐の限りを尽くし、ゲームを牽引していきます。
一方のパンハイマは、自分の部下兼奴隷たちを街に放ちました。
さらに、かつて史上最悪の殺人王ザッハドを捕まえ、アンヘリオに息子と孫を殺された伝説の老咒式士・ロレンゾまで参戦。いよいよ混乱が増すエリダナで、ガユスたちも追い詰められていくことになりました。
本巻の特徴は、何といっても100ページ以上にわたって描かれる戦闘シーン。逆転劇に次ぐ逆転劇で、この長さでも最後まで読者を引っ張ってくれます。たっぷりと堪能してください。
またアンヘリオに誘拐されたペトレリカは、本作においてまるで聖女のように見えるキャラクターなのですが、その裏にも何か隠されていそうな雰囲気が漂ってもいるので、今後の動向に注目です。
誰がどれだけ殺せるか、1番殺したものが勝つ……。殺戮ゲームをしているはずでしたが、そのシナリオがアンヘリオによって書き換えられ、ザッハドの使徒同士での殺し合いが始まります。
一方のガユスは、別れたジヴと、その心の隙間を埋めるようにして付き合っているチェレシアとの間で決断を迫られていました。
- 著者
- 浅井 ラボ
- 出版日
- 2012-05-18
アンヘリオの策略により、使徒同士でくり広げられる殺戮ゲーム。使徒、ガユスとギギナ、パンハイマ、復讐の鬼と化したロレンゾ、猟犬と化した奴隷たちなど、「祝祭」には多くの人物が入り乱れます。
ただ本巻の序盤で、ガユスやギギナが仲間と食事をしながら作戦会議をしているので、読者も一緒に状況を整理することができるでしょう。
戦闘シーンは相変わらず苛烈で、負傷したガユスは入院してしまいます。しかもそこでジヴとチェレシアが鉢合わせてしまうタイミングの悪さ。三角関係の女同士の戦いは、グロ描写よりもある意味迫力があるかもしれませんね。
長編の3巻目ということで、ストーリーの進み具合はゆっくりですが、そのぶん細かい部分まで丁寧に描かれています。
そして本巻のラストは、パンハイマを巡る意外なもの。彼女がどのような運命を辿るのか、ぜひ手に取って確認してみてください。
「祝祭」と称された殺戮ゲームはエリダナの街全域に広がり、激しい市街戦をくり広げていきます。
そのなかで生き残るため、ガユスとギギナは、エリダナの攻性咒式士たちを集めて合同事務所を作りました。
一方、監獄に捕らわれていたザッハドの処刑が決定して……!?
- 著者
- 浅井 ラボ
- 出版日
- 2013-04-18
4巻にわたって続いてきた使徒編の最終巻であり、シリーズ第一部の完結巻でもあります。エリダナでくり広げられている戦いは、もはや災害と呼べるほどのもので、ガユスたちはかわいそうなほどに追い詰められています。
ライトノベルの主人公は強敵を相手にしたことで、自らをさらに強くしていくことが多いですが、彼らは強い敵を前に必死に生きるしかない等身大の主人公。今にも壊れそうなほど追い詰められていく姿は読者を暗い気持ちにさせますが、それでもなぜか勇気ももらえるのです。
本巻は使徒編の最終巻なので、「祝祭」をはじめこれまでの伏線が回収され、ガユスとジヴとチェルシアの三角関係に決着がついたり、何やら秘密を抱えていそうだったペトレリカの正体が明らかになったりと盛りだくさんの一冊になっています。
迎える結末は何とも後味の悪いものが多く、もちろんエログロ描写も健在。それでもついページをめくってしまうのが「され竜」シリーズの魅力なのでしょう。
特に三角関係の結末には賛否両論があるかもしれませんが、おそらく多くの読者の想像のナナメ上をいっています。
これまで長く続いてきた使徒編の結末、そして新たなる事件の予感を、ぜひ手に取って確認してみてください。
「祝祭」と呼ばれる殺戮ゲームを経て、ガユスとギギナの事務所の様子も少しずつ変わってきました。
そんななか、ガユスは結婚を申し込むためにジヴの実家へ行くことになります。しかし彼女の両親は猛反対。ガユスはなぜか、ジヴの父親とある勝負をすることに……!?
- 著者
- 浅井 ラボ
- 出版日
- 2013-12-18
本巻は第二部に入る前の、連作短編集になっています。ジヴとの結婚を申し込むために彼女の実家を訪れたガユスでしたが、猛反対され、なぜかジヴの父親と「ベイルス」で対決をすることになってしまいました。
ベイルスとは野球のことですが、咒式を用い、心理戦を張り巡らせた「され竜」ならではのもの。ジヴの父親は地元の最強球団を率いて、ガユスに勝負を挑んできたのです。ギャグ要素も多く、青春モノのような爽やかさもあるので、本シリーズでは珍しい話になっています。
とはいえ、その他の短編はやはりシリアス、暗い、グロいが揃っています。なかでも、ガユスとギギナがもっとも苦手としている男、モルディーンの配下である「十二翼将軍」をメインに据えた作品は必見。
翼将筆頭で凄まじい戦闘能力を誇るサナダ・オキツグや、死者のような白い肌が特徴の女咒式士ウフクス・ジゼロット、虹色の瞳で性別も年齢も不詳のヨーカーンなど、とにかく個性と特徴が爆発しているキャラクター揃いです。
そんな彼らが変態的な咒式を使って大暴れするので、翼将のキャラクターたちが好きな方は必見の話でしょう。
死闘を潜り抜けたガユスとギギナは、戦友達とともに新たな事務所体制を組むことになりました。その一方で、最重要指名手配犯である「世界の敵」が蠢き出します。
新たな仲間と新たな敵、さまざまなエピソードから開幕する「され竜」シリーズ第二部です。
- 著者
- 浅井 ラボ
- 出版日
- 2014-09-18
第二部の開幕は短編集。といっても、本格的に物語が動き出す前のプロローグ的な雰囲気もあり、期待感が膨らむ一冊になっています。
ガユスたちの事務所も新しくなったことで、仲間がグンと増えました。そして新たに「世界の敵」も登場。彼らを含め、これから始まる第二部で活躍するキャラクターにスポットを当てたお披露目巻といえるでしょう。
これまでに登場した人物では、ユラヴィカの過去にまつわるエピソードが読み応えたっぷり。意外な一面に触れて、イメージが変わるかもしれません。
また、本巻からイラストレーターが宮城からざいんに変更。まさに気持ちも新たにといったところでしょうか。これからの展開が楽しみになる一冊です。
新体制になったガユスとギギナの事務所。ザッハドの使徒の事件を経てエリダナでも有名な咒式士となった2人のもとには、新しい社員が続々とやってくるようになっていました。
そんななか彼らに護衛の依頼をしてきたのは、盲目の少女です。彼女はかつて革命派によって滅ぼされた、ハオル王家の王女で……!?
- 著者
- 浅井 ラボ
- 出版日
- 2015-01-20
いよいよ第二部が本格的に始まります。ザッハドの使徒の事件のせいで、意図せず有名になっていたガユスとギギナの前にアラヤという少女が現われます。彼女が王女を務めていたハオル国は発展途上国で、王家が富を独占しすぎた結果反乱が起き、王権が滅ぼされてしまいました。
今は革命政府が国を治めていますが、その統治もほとんど機能しておらず、国はボロボロの状態です。
王族の生き残りであるアラヤとその忠臣たちは、王族の復権を狙っていますが、同時に革命政府から命を狙われています。以前捕まってしまった際も拷問を受け、彼女は目が見えなくなり、体の自由もあまりきかなくなってしまいました。そのため彼女は、ガユスたちに護衛を依頼してきたのです。
そしてその見返りに、「宙界の瞳」と呼ばれる指輪に関する情報を差し出してきました。「宙界の瞳」は咒力を強化したり無効化したりすることができる謎の指輪です。
この話にのって依頼を引き受けたガユスたちとアラヤを中心に、ストーリーが動き出していきます。
一方北の監獄では、元十二翼将であるアザルリが脱走するという事件が起きていました。目と口以外を包帯でぐるぐる巻きにした彼は、約束を守らない人は皆殺しにする残虐な男です。
そんな彼がなぜかアラヤの周りをうろつきはじめ、その動きにガユスは、自分たちの身近な人間に彼と繋がっている裏切り者がいるのではないかと疑います。
裏切り者は誰なのか、アラヤと革命政府の組織はどうなるのか、「宙界の瞳」の行方は……さまざまな策謀がからみあい、大量の伏線を落として物語は次巻へと持ち越しです。
アラヤの護衛任務を引き受け、一行を乗せた船は、南の島を経由してある船島にたどり着きます。
船島とは、昔の豪華客船が座礁し、それが迷宮となった島のこと。その場所でアラヤは、モルディーンとの会談に臨むことになるのですが……。
- 著者
- ["浅井 ラボ", "ざいん"]
- 出版日
前巻に引き続き、アラヤを中心に動くハオル編の後半です。
本巻の序盤、一行を乗せた船が南の島に辿り着き、みんなで水着を着て海で遊ぶシーンがあります。なんともライトノベルらしいですが、「され竜」としては珍しいな……と感じるファンは多いはず。めったにない普通のシーンをぜひチェックしてみてください。
さて肝心の本編では、革命政府の2つの組織やアザルリなどの敵をかいくぐり、アラヤとモルディーンの会談を実現させるというストーリーが描かれます。その過程では戦闘シーンもたっぷりと差し込まれるのですが、メインの敵であるアザルリがとにかく強いので、ガユスとギギナだけでは手に負えません。
そこで登場するのが翼将たちです。しかもほぼ全員登場という豪華さで、ファンにとっては存分に活躍を楽しめる一冊となっています。
また、前巻でアザルリと裏で繋がっている者の存在が示唆されましたが、その正体も明らかに。あちこちに散りばめられていた伏線が回収されていきます。
この収束の仕方は読んでいて気持ちよいですが、結末はやっぱり後味が悪いもの。水着のシーンで心を緩めていた方は要注意です。
アラヤの事件を経て、ガユスたちはさらに有名になっていきます。同僚たちはその勢いを見逃さず、事務所をエリダナの守護者である七門のひとつとするべく動きはじめました。
一方エリダナでは、五大音楽祭のひとつである「エリダナ音楽祭」が開催されようとしていました。
- 著者
- ラボ, 浅井
- 出版日
前巻でハオル編が終わり、本巻から新たなストーリーが始まります。事務所が出世の道を狙うなか、ガユスとギギナの前には、エリダナでもっとも尊敬される咒式士のひとりジオログの弟子を名乗る、フロズウェルという攻性咒式士が現れます。
当初ガユスたちは、ジオログの弟子であることから手を結ぼうと考えるのですが、彼の本当の姿は超の付く危険人物でした。
一方で、「エリダナ音楽祭」に出場するルル・リューという歌手が依頼をしてきたり、そこに「世界の敵」のハイパルキュまで登場したりと、相変わらずさまざまな事件が絡み合います。
ルル・リューは、これまで名前だけ登場していた有名な歌手。ガユスもファンのひとりでした。そんな彼女は何者かから脅迫状を送りつけられていて、ガユスとギギナは彼女の護衛と犯人の捜査に乗り出すことになります。
しかし、なぜかハイパルキュもルルを狙っており、彼らはまたも壮絶な戦いへと巻き込まれていってしまうのです。
ハイパルキュは、殺しても死なない、という咒式士も驚愕する相手。強いとかそういう次元を超えてしまっているキャラクターにガユスたちがどう立ち向かっていくのか、ぜひ注目してみてください。
ちなみに本巻では、ガユスとジヴが結婚しています。実にさらりと描かれているのですが、意外に重大なこの事実。見逃さないでくださいね。
フロズウェルに捕らわれ拷問されてしまうガユス。ギギナの働きによって、なんとか解放されました。
しかし、七門の席を巡る事務所同士の戦いや、ルルを巡るハイパルキュとの戦いも激しさは増す一方です。殺しても死なないハイパルキュに対し、彼らはどんな戦法とるのでしょうか。
- 著者
- ラボ, 浅井
- 出版日
前巻のラストでフロズウェルに囚われてしまったガユス。これまで瀕死の重傷を負ったり死の淵から蘇ったりと多くのピンチを経験してきましたが、実は囚われの身になったのは初めての展開。どうなるのかと思いきや、解決に導いたのはギギナの働きでした。
ギギナは、フロズウェルが率いる事務所・銀狼社の咒式士を捕らえ、ガユスとの人質交換を提案したのです。この銀狼社というのはフロズウェルが率いる事務所で、所属する咒式士はいずれも社会からあぶれたはみ出し者ばかり。
それだけでも一筋縄ではいかなそうな相手ですが、そんな彼らもまたエリダナの七門の席を狙っていて、ガユスたちと対立することになるのです。
そんな事務所同士の出世争いをしている一方、ハイパルキュとの戦いも激化。戦闘シーンのボリュームは他巻同様たっぷりページ数を割かれていますが、本巻の特徴はその戦い方の多様さです。
ハイパルキュの作った童話の世界に閉じ込められた際は、謎解き要素の強い戦い方をしていますし、別の場面では正面きってのガチンコバトルもあります。事務所同士の攻防では咒式士たちの総力戦も見られ、最後まで飽きることはありません。
ルルを巡る話は本巻でひとまずの完結するので、前巻で大量に投下されていた伏線も回収されつつ、ラストは読者の予想を上回るどんでん返しが続きます。ちなみにグロ描写は相変わらずですが、エロはやや抑えめです。
フロズウェルとの戦いも終わり、無事にエリダナの七門の席を手に入れたガユスたちでしたが、そこに新たな試練が次々と舞い込んできます。
名門フォーハウト家の少女が不可解な死を遂げ、富豪マーコート家では9歳になった娘を殺しに黒い霧が現れ、復讐者ハンハットは残酷な真実を突きつけ……新たなステップを踏んだガユスとギギナが選んだ道とは。
- 著者
- ラボ, 浅井
- 出版日
事務所も大きくなり、前巻まで争っていたエリダナ七門の席も手に入れたガユスたち。本巻はそんな彼らが関わる4つの事件が描かれています。
いずれの事件にも救いがないのは本シリーズならではといえますが、今回の特徴はなぜかロリコン要素のあるキャラクターが多いこと。そこに意図があるのかはわかりませんが、これがまた不穏な空気を醸し出しているのです。
特に復讐者ハンハットの話では、人が抱く欲望や悪意が人を悲劇に突き落とし、読んでいて非常に重苦しい気分になるでしょう。
本巻のラストではガユスとギギナが「宙界の瞳」を求めて旅立つのですが、2人での旅立ちというのがミソ。物語が進みキャラクターが増えたからこその面白さはもちろんありますが、この2人の活躍を次巻に期待できる終わり方に、シリーズ初期からのファンには特にワクワクできるはずです。
「宙界の瞳」を求め、ガユスとギギナはルゲニア共和国へとやってきました。そこでは、かつて英雄と呼ばれた者たちがルゲニア新元首の座を巡り、争っています。
一方ネデンシア人民共和国では、謎の流星が落下したことをきっかけに未曾有の災厄が人々を襲っていました。ガユスとギギナの2人旅はどこへ向かっていくのでしょうか……!?
- 著者
- ラボ, 浅井
- 出版日
前巻のラストで、2人連れだって旅に出たガユスとギギナ。2人の会話のやり取りや戦いなど、まさに原点回帰と言ってもいいでしょう。
ただし、1巻や2巻で目立っていた悪態の応酬は、やや鳴りを潜めています。それが2人の成長の証なのかもしれません。
その一方、メインストーリーはついに大陸の崩壊が示唆されます。怪物や災厄が次々と現れるのはもちろん、もはや咒式も想像をはるかに超えたレベルにまで達しているため、何だかこのまま人類も世界も滅亡してしまうのではないかと思えてしまいます。
ここから次巻へどう繋がっていくのかが楽しみなところ。2018年のアニメ化とともに、楽しみに待ちましょう。
いかがでしたか?ライトノベルというジャンルでありながらまったくライトではない本シリーズですが、不思議と人を惹きつけるものがあります。エログロは人を選ぶかもしれませんが、1度ハマると中毒性があるのもまた事実。これまでは避けてきたけど……という方も、まずは1巻だけでも手に取ってみてはいかがでしょうか?