正統派少女漫画『君に届け』は恋愛と友情を描いたピュアな傑作青春作品でした。今回はそんな『君に届け』が好きな方におすすめしたい、少女漫画を5作品ご紹介します。
主人公柳尚人(やなぎなおと)は容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能な上に家柄も良い完璧な少年です。ところが彼の小学校に転校してきた九条美琴は、それ以上のスペックを備えた少女でした。
柳は九条に勝負を挑むも、1度も勝てないまま、小中高と時間は流れていきます。その間に、ひょんなことから「惚れたら負け」という知識を得る柳。大学生になった柳は九条に対して、彼へ恋愛感情を自覚させたら勝ち、という最後の勝負を挑みます。
- 著者
- 天乃 忍
- 出版日
- 2012-01-04
本作は2011年から「LaLa」で連載されていた天乃忍の作品。
幼馴染みの2人の関係が発展していく、とそこだけ見ればオーソドックスな恋愛漫画です。しかし、そこで肝になってくるのが柳の挑戦。
実はこの柳、小中高と様々なアプローチで九条に挑むのですが、いつの間にか彼女を好きになっていたのです。九条の方も表向きライバル関係ではあったものの、無自覚に気持ちが募っていた様子。
九条のそれが単なる友情なのか、はたまたそれ以上のものなのか。彼女に負けっぱなしだった柳が、その無自覚な気持ちを恋愛だと自覚させることで、「惚れたら負け」のルールに従って勝とうというわけです。このルールだと最初から柳が負けている気がするのですが。
恋は盲目ということでしょうか。ラブコメなのでそこは気にしてはいけません。このように、設定としては主人公柳は完璧人間なのですが、どこか抜けている愛すべきキャラです。一方の九条はとても良い子なのですが、恋愛関係がまるで駄目。端からでは両想いにしか見えないのに、本人達だけが気付いていないという、もどかしくも可笑しい状況となっています。
不器用な幼馴染みが、段々と近付いていく。その過程が絶妙に素敵な物語です。
主人公の吉岡双葉(よしおかふたば)は、中学生の時に好きな少年、田中洸(たなかこう)がいました。ところが1年生の夏休み中に洸は転校してしまったため、想いを伝えることが出来ませんでした。始まらないまま終わった初恋。
時は流れ、双葉はガサツな少女になっていました。高校2年のある日、彼女は学校で洸と再会を果たします。しかし、洸の苗字は田中から馬淵(まぶち)になっており、また彼自身も変化していたのです。あの時離れてしまった2人の運命が、ここから始まっていきます。
- 著者
- 咲坂 伊緒
- 出版日
- 2011-04-13
本作は2011年から「別冊マーガレット」で連載されていた咲坂伊緒の作品。
1度は実りかけて、しかし果たされなかった青春が、再び動き出す物語です。ただ、再会した2人はすっかり変わってしまっていて、上手く動き出すまでが少し問題。
高校生の時点での双葉は、女子力のない粗暴な女子高生です。元は大人しい性格だったのが、男子に人気となったことで女子から疎まれて孤立した過去があり、それを繰り返さないためにガサツを演じているのです。
一方の洸は、中学生時代は女の子と見紛う優しい少年でした。ところが高校生の彼は、言動もクールで意地悪になっていました。それは彼のつらい過去と苗字が変わったことに関わっており、物語でも大きく取り上げられるのですが……。ともかく洸も、双葉とは違った意味で変貌していました。
性格も環境も何もかも変わっていたとしても、それでも変わらなかったものがあります。それはお互いの気持ちです。洸がどんなに突っ張って、気のない素振りを見せたとしても、そこかしこで本音の部分が見え隠れします。
2人ともが意識しているのに、進みそうで進まない距離。一歩を踏み出せないところが、まさに淡い青春という感じです。洸は普段のクールな二枚目と肝心な場面でのへたれ具合にギャップがあって、非常に憎めないキャラとなっています。
タイトルの『アオハライド』とは、「青春=アオハル」に「乗る(ライド)」という造語。本作はそのタイトルに相応しい、切なく甘酸っぱい青春ストーリーとなっています。
町田一(まちだはじめ)は黒髪眼鏡の地味な少年。ルックスが並みなら成績は並み以下で、スポーツもまったく出来ません。それでも彼は周囲から愛されています。なぜなら彼は、人の良い面ばかりを見る、人間が好きな心優しい少年だったのです。
そんな彼はある日、人嫌いを公言する少女、猪原奈々(いのはらなな)と出会います。町田の優しさに触れて、奈々は心を開いていきます。奈々は段々と町田に惹かれていくのですが、人を思いやることが出来ても恋愛感覚のない彼相手に、その前途は多難でした。
- 著者
- 安藤 ゆき
- 出版日
- 2015-07-24
本作は2015年から「別冊マーガレット」で連載されている安藤ゆきの作品。
少女漫画ではあるのですが、あまり少女漫画らしくありません。まず主人公からして、イケメンでもなければ勉強も出来ず、運動も駄目。それなのに、人柄の全てが魅力的という不思議なキャラです。
町田を一言で表すなら「人たらし」。誰にでも平等に優しく接する町田。それがまた押しつけがましくなく、自然な振る舞いの結果なので、まるで好感度が服を着て歩いているよう。老若男女から愛されているのです。
誰にでも優しい町田ですが、彼のちょっと気にかかる存在となるのが奈々です。過去にいじめられた経験から人との関わりを避けていた彼女。誠意の塊である町田は、頑なな奈々をも魅了していきます。
町田は人の機微にも敏感で、どんな場面でも拍手ものの切り返しを自然と行います。が、それが自分のこととなると別。奈々は好意を抱いてたびたび接するのですが、町田は自分への気持ちにまったく気付きません。
誰もが好きにならずにはいられない、でも本人は自分について至って鈍感。他人ばかり気にかける、そんな主人公がどう変わって、どう幸せになっていくのか見守りたい気持ちにさせられる作品です。
幼い頃に両親が離婚し、父と暮らしている本宮真魚(もとみやまお)。彼女は近所に住む中村一家と仲良くなりました。
真魚が高校生になった時、父親が再婚することになります。義母と連れ子の妹とはぎくしゃくする真魚は、自宅での居場所を失いました。そんな彼女を気遣ってくれたのは、今では1人暮らしをする中村家の長男、基(ひろ)でした。
家族と馴染めず飛び出した真魚は、基の家に同居することとなります。
- 著者
- タアモ
- 出版日
- 2010-09-13
本作は2010年から「デザート」で連載されていたタアモの作品。
家族の中で居場所を失った少女が、社会人となった幼馴染みの元で暮らすうちに、新たな家族を得ていく物語です。高校2年の真魚と24歳の基は、幼馴染みとしてはやや年が離れています。そのため、傍目には兄と妹のような関係。
真魚は男勝りで勝ち気な少女です。ころころと表情がよく変わり、気心の知れた仲ということもあって、基を振り回します。そうかと思えば傷付きやすい部分もあって、年頃の女の子らしい繊細さも併せ持っています。
基は新人プログラマーとして働く社会人。なかなかのイケメンなのですが、真魚のことも含めて何かと気苦労が絶えません。中村家は数年前に両親が他界しており、兄妹のために実家を維持してきました。そのためか彼には父性も感じられます。
どちらにも共通しているのは、家族へのこだわりです。真魚は義母義妹との家族に違和感を覚え、基は両親の死によって離れ離れになった家族を想っています。
そんな2人が同居することで送る、新たな関係。それが2人にとって恋人でもなく、家族でもなく、それでいてどちらでもあるような、不思議と温かい居場所となっていくのです。また、父親と2人暮らしの長かった真魚にとって、基との家族生活は新鮮な発見の連続でもあります。
門限や食事のルール。多くの人にとって、それらは当たり前のことですが、真魚の目を通すことで改めて「家族」というものを考えさせられます。
そして当然、真魚も年頃の女の子なので、男性と暮らすことに色々と意識していくわけですが……そういった微笑ましい部分も含めて、全てが愛おしい一作となっています。
高校2年生の芹沼花依(せりぬまかえ)は、男同士の関係を妄想するオタク少女でした。彼女はかなりの肥満体型だったのですが、ある日大好きなアニメキャラが死んだことがショックで、1週間引き籠もって激痩せしてしまいます。しかもなぜか、別人のような美少女に。
すると、それまで見向きもされなかった花依がモテ始めたのです。学校でも有数の美男子4人から言い寄られることになるのですが、彼女自身は本性とかけ離れた現実に困惑するばかり……。
- 著者
- ぢゅん子
- 出版日
- 2013-10-11
本作は2013年から「別冊フレンド」で連載されているぢゅん子の作品。
主人公の花依はいわゆる腐女子。漫画やアニメ、リアルを問わず、男性同士のカップリングで妄想してしまう、ちょっとあれなキャラです。しかも当初は少女漫画の主役とは思えないような肥満体で、残念ながら恋愛とは縁遠い有様でした。
ところがそれが、推しキャラの「シオン」が亡くなったことで文字通り激変。実生活に支障をきたし、食事も喉を通らず、その結果、見事にスッキリ痩せて美少女に大変身してしまうのです。
ここで面白いのが、外見は変わっても中身はそのままということ。誰もが振り向く美少女になったのに、中身は残念腐女子。4者4様のイケメンからモテモテになっても、嬉しがるどころか逆に困惑してしまうのです。彼女にとってイケメンとは、遠くからイケメン同士でイチャイチャするものであって、1対1で自分に向き合う存在ではないのですから。
普通の逆ハーレムなら、どのイケメンと付き合うのか困るところを、彼女はイケメンから言い寄られること自体が困るという、セオリーを外した面白さがあります。
こうして男からモテモテ状態になっても、花依は男同士の絡みを楽しみます。男子4人はまっとうな恋愛を望んでるのに、花依はその男子達で妄想する。一切ブレない花依のキャラがいっそ清々しいです。
こうした設定がしっかりと機能しているので、腐女子がメインではあるものの、意外とどんな方でもラブコメとして楽しむことが出来ます。
講談社漫画賞(少女部門)に輝いたこともある本作は、実写映画化も決定しています。2020年7月10日から全国公開の予定です。
知的でクールな先輩・六見遊馬役で主演を務めるのは「THE RAMPAGE from EXILE TRIBE」の吉野北人。真面目で優しいクラスメイト・五十嵐祐輔役には神尾楓珠と、次世代のイケメン役者が軒を連ねます。2020年末での解散を発表している「E-girls」の山口乃々華が激やせした変身後のヒロイン・花依の姿を演じることにも注目が集まっています。
一方、2人1役で変身前の花依を演じるのは富田望生。「花依ちゃんのようにBL好きでなくとも、イケメン同士がじゃれ合っているのを見るのは楽しい!」と思える映画にしたいとコメントしています。原作とあわせて、ぜひお楽しみください。
映画『私がモテてどうすんだ』公式Twitterでも最新情報が確認できます。気になる方はこちらもどうぞ。
いかがでしたか?『君に届け』に負けないほどの青春の数々、心のどこかに引っかかったならぜひ読んでみて下さい。