奇しくも世の中は争いだらけ、日常系ほのぼのラノベには争いも何もありません。喧嘩くらいはしますがそれだけです。疲れる日常に飽きたら日常系ラノベを読んでみませんか?
とある秘密を抱えた主人公の高校生が、近隣に住む妖怪たちと付き合っていく物語。内山靖二郎による妖怪ラノベ、MF文庫Jライトノベル新人賞佳作受賞作の『神様のおきにいり』です。
その主人公である稲村智宏は、妹のような少女・珠枝が同居していることをひた隠ししています。ごく平均的な高校1年生ですが、そのせいで友達付き合いが微妙に悪いのが玉に瑕でした。ところがある日、国土交通省の男が現れたことで、智宏は桜の精や石の怪といった、ご近所に住む妖怪たちと交流を始めていくことになるのです。
- 著者
- 内山 靖二郎
- 出版日
この物語に登場する神様や妖怪たちもまた一般的に怖いイメージはまるでなく、キャラクターとしても個性的。派手さやインパクトこそありませんが、全体的にほのぼのとした雰囲気で、ストーリーとしては自分の家の近所で起きるような出来事に妖怪を混ぜておもしろおかしくした感じであり、楽しめる妖怪ラノベです。
ちなみにイラストを担当する真田葺人の挿絵の妖怪も含めたキャラのイラストは、柔らかいタッチで可愛らしいものばかりです。この挿絵の可愛さも相まるほのぼのとしたご近所妖怪譚、ぜひご堪能ください。
第二新聞部に所属する主人公の赤松は、ある日、部長の二階堂彩香から、人生相談のコーナーを設け、その担当になることを告げられます。彩香が選んだ回答者は、理系代表遠藤梨乃、文系代表の九条ふみ、体育会系代表の鈴木いくみの三人。赤松は回答の編集者のような立場になり、一癖も二癖もある三人と共に行動をするようになります。
- 著者
- 川岸 殴魚
- 出版日
- 2012-01-18
三人の人生相談に対する回答はおふざけと言った感じで、基本ギャグです。三人の中で一番ギャグ度が高いのは梨乃でしょうか。
部活を迷っていますという相談には「日本は理系によって支えられている。ゆえに将来も考えて理系の部活にするべき」と、自信がもてませんという相談では「逆に自信を持っている人間の自信を失わせ、相対順位を上げる」といった内容で、面白みが浮かんできます。
ほんのひと時くすりと笑いたいときに『人生』はいかがでしょうか。
主人公・坂町近次郎がトイレの扉を開けると、女物のパンツを履いた学園の王子様こと近衛スバルがいて……、という冒頭から始まるストーリーです。
なんと学園の王子様は女の子だった!という設定から始まり、基本はボケとツッコミを繰り返して展開されていくハイテンションコメディです。主人公の近次郎はボケとツッコミの両方をこなすユーティリティープレーヤー、ボケの傾向がある男装執事の近衛スバル、妹の坂町紅羽、変態メガネジャンキー鳴海ナクルに対しては厳しいツッコミを見せるも、スバルのご主人様の涼月奏やナクルの姉の鳴海シュレディンガーといったキャラには、逆にツッコミを返されるなど、主人公らしからぬボケっぷりを見せることがあります。
近次郎は有名なプロレスラーの母親と妹のリトルモンスター紅羽に教育的指導と称して毎日ボコボコに殴られて、すっかり並の男子では及びもつかない打たれ強さを手に入れます。しかし、そんな指導にも弊害がありました。それはあまりに殴られすぎたせいで、女性に恐怖心を抱くようになり、触れられると鼻血が出るようになってしまったことです。それは小さな女の子でも関係なく、一巻の時点では溺れかけた女の子を助けた際にも鼻血を出して倒れそうになるほどでした。
- 著者
- あさの ハジメ
- 出版日
- 2009-11-21
スバルの主人の涼月奏は、スバルの秘密を黙っておく代わりに、私達が女性恐怖症改善の手伝いをしてあげると主人公にとって魅力的な提案をします。
女の子であることを隠さなければいけない近衛スバルは巻を追うごとに女性らしさが増していきますが、そこのところがとても可愛らしいです。
ハイテンションなラノベを読みたいときに『まよチキ!』はおすすめです。
私立森野学園にやってきた少女、ホリン・シャレイリア。彼女は自らをドルイドと名乗る不思議な少女でした。多くの動物を引き連れ、森の守り手を自称する彼女に、主人公の白川夏穂が振り回されるドタバタラブコメディです。
奇妙で珍妙な敵と戦うことはありますが、戦闘描写は二の次。恋愛に関してノーマルだと思っていた主人公の夏穂が、どんどんとシャレイリアLOVEになっていきます。二人のくっつきそうでくっつかない関係にも注目です。
- 著者
- 志瑞 祐
- 出版日
コメディとしては一級品で終始ハイテンションが続いていきます。しょうもない敵が多く、終始楽しいノリで物語は進んでいきます。軽い百合要素もあり『ゆるゆり』や『きんいろモザイク』などが好きな方にもおすすめです。
物部文香はちょっとボーっとしたところがある女子高生。この度晴れて富津高校に入学をした彼女は、いつものようにぼんやりとしておりました。しかしぼーっとしている彼女にも悩みがありましす。それは所属する部活が見つからないということ。
文香は国語が苦手であり、その教科を得意としてそうな文芸部に所属しようとしたのですがありません。でも確か、そのような部活はあったはず、見間違いではないはずと校舎を歩き回っていると「タイが、曲がっていてよ?」と、見知らぬ上級生に話しかけられ……。
- 著者
- 平坂 読
- 出版日
ラノベ部と第を打っているだけあって、ライトノベル関連のパロディネタがとても多いです。全ては気づけないかもしれませんので、メインメンバーの名前の元ネタだけでも覚えていくとより楽しめるでしょう。以下元ネタになります。
主人公の物部文香は『Dクラッカーズ』の物部景。藤倉暦は『さよならトロイメライ』の藤倉冬麻。浅場美咲は『イリヤの空、UFOの夏』の浅羽直之。竹田龍之介は『ブギーポップは笑わない』の竹田先輩。桜野綾は『銀盤カレイドスコープ』の桜野タズサ。堂島潤は『悪魔のミカタ』の堂島コウ。吉村士郎は『護くんに女神の祝福を!』の吉村護。
上記の七人がメインキャラクターとなります。
物部文香を中心に、ライトノベル作家の暦、フツーの女子高生美咲、腐女子の綾、ムッツリスケベ龍之介、外見は女の子の潤、リア充士郎、外国からの転入生リア、などなど。これほどキャラクターが居ると一部は賑やかしになったり、いるだけのキャラクターがいたりしますが、捨てキャラが全くいません。みんな魅力的なので、優しい日常ストーリーが読みたい方にはおすすめです。
いつもの放課後、いつもの部室から始まる物語。36篇のショートショートが一冊に収められています。主人公である四ノ宮京夜はGJ部の前を通りかかった途端、中にいたメンバーに拉致されそのまま入部することになります。
彼を拉致したGJ部の部員は以下の四名(五巻以降は五名)。
噛み付き系ちびっこ部長の天使真央。クールで知的で、でも常識知らずのお姉さん、皇紫音。紅茶タンク天使の笑顔のんびりにこやか、天使恵。不思議系のいつも肉を食っているお姉さん、綺羅々・バーンシュタイン。
以上四名に囲まれて、何気ない日々を過ごしていくストーリーです。
- 著者
- 新木 伸
- 出版日
- 2013-03-19
かまえー、かまわないと噛み付くぞ―、そう言う部長は本当に噛みます。でもご安心下さい、ぶん殴っても蹴り飛ばしても、木刀で襲いかかっても謝らない暴力系ヒロインと違って、部長は謝ります。しょげます。泣きそうになります。そこがかわいいんです。紫音も恵も綺羅々もみんなかわいいです。ほのぼのした気持ちにキャラ萌えを追加した感じになります。
集中力が持続しなくて1日に4ページしか読めないという方にもおすすめです。
私立高校碧陽学園では、生徒会役員が人気投票で選ばれます。そこに選挙という要素は一切なく、本当に人気のある人が選ばれるというシステムなので、生徒会は必然的に美少女達が選ばれることになりました。
- 著者
- 葵 せきな
- 出版日
- 2008-01-19
そんな状況で本来は男子生徒の入る余地はなかったのですが、主人公の杉崎鍵は人気投票ではなく、試験で学年一位の人間が選ばれる「優良枠」で生徒会入りを果たします。猛勉強までして杉崎が生徒会に入りたかった理由、それはただ美少女達の揃う生徒会に入りたいという、ただそれだけでした。
ひたすら生徒会室で生徒会の役員が駄弁っている様子が描かれた日常ストーリーです。基本的には杉崎が語り部となり、個性的な役員達の会話を追っていきます。生徒会役員は全員美少女であり、個性的なキャラクターばかりです。
生徒会長の桜野くりむは、身長が140cmで小学生にも間違われるダメ人間で、副会長はスタイルと運動神経が抜群の椎名深夏。書記の紅葉知弦は大人の魅力に溢れているし、深夏の妹の真冬は男性恐怖症。こんな個性的な役員達が繰り広げる会話はとても面白くて、ギャグ要素と萌え要素がバランスよく混在しています。
そんなテンポの良い会話の一部をご紹介します。主人公の杉崎が生徒会に入った時に宣言を引き合いに出して杉崎に食ってかかるというシーンです。
「皆好きです。超好きです。皆付き合って。絶対幸せにしてやるから」(中略)「一途なんです! 美少女に!」
「括りが大きいわ!」
「希少種ですよ、美少女」
「そういう問題じゃない!」(『生徒会の一存』より引用)
こんな会話が中心になって物語は進んでいきます。ちなみに、引用したこの会話もこの後さらに続いていきます。短編で構成されているので、ちょっと何かを読みたい、疲れているから軽い読み物がしたいなど、気楽に読むラノベとしても最適です。
どこにでもいる普通の男子高校生の八坂真尋は、ある日突然、正体も理由もわからないまま「何か」に襲われます。助けを求めながら町中を逃げ回りますが、とうとう追いつかれ、死を覚悟した時、銀色の髪をした謎の少女に救われるのです。
- 著者
- 逢空 万太
- 出版日
- 2009-04-15
少女は、真尋が宇宙犯罪組織に狙われていると言い出します。さらには自分もまた宇宙人であり、なおかつクトゥルー神話に出てくる「ニャルラトホテプ」という神だと名乗り、真尋を守るためにやって来たのだと言うのです。もちろん真尋は戸惑いますが、そのままニャル子と日々を過ごすことになり……。
追いかけられる冒頭はスピード感とスリルがあり、冒頭から一体何が始まるのかと引きこまれる本作品。しかし真尋を助けるためにやってきたニャルラトホテプ、通称ニャル子の登場後はポップなハイテンションストーリーになっていきます。そもそもニャル子の登場自体、ちょっと気の抜ける感じです。
「いつもニコニコあなたの隣に這い寄る混沌、ニャルラトホテプです」(『這い寄れ! ニャル子さん!』より引用)
そう言ってニャル子さんは、真尋の前に颯爽と現れたのでした。それまでが緊迫感のあるシーンだったので、一気に気が抜ける感じですね。
この作品はクトゥルー神話をモチーフにした物語なのですが、神話だから難しいということはなく、神話を全く知らない人でも楽しむことができます。とはいえ、内容は神話のマニアックな部分をパロディにしているところもあるので、元ネタとなるクトゥルー神話を知っていると、より楽しむことができます。
主人公の安芸倫也は、自他共に認める筋金入りのオタク。しかし自身がオタクであることを一切隠さずに堂々と公言し、またどんな人とも馴染むことができる、社交性の高い少年です。ゲームやアニメグッズに対する情熱は半端ではなく、倫也は購入資金を作るためのアルバイトに励んでいました。
- 著者
- 丸戸史明
- 出版日
- 2012-07-20
ある日倫也は桜吹雪の中で出会った少女にインスピレーションを受け、彼女をモデルにした同人ゲームを作ろうと思い立ちます。実はその少女は倫也のクラスメイトの加藤恵。社交性の高い倫也が名前を憶えていないほど印象の薄い彼女をメインヒロインにするため、倫也は恵を「育成」することにしたのです。
この作品の特徴は、ヒロインであるはずの少女、恵がまったくヒロインっぽくないというところ。恵は個性的なキャラクターに囲まれ、その無個性ぶりをさらに強調されていきます。主人公と共にゲームを作ることになる、青い目と金髪が美しいお嬢様でありながら18禁の同人イラストを描く、澤村・スペンサー・英梨々や、コミュ障だけど新進気鋭のライトノベル作家として活動している霞ヶ丘詩羽など、メインヒロインを忘れるほど他のキャラクターは設定が盛られています。
「物語は、キャラクターが立っていれば九割方は勝ったも同然と言われることがある。それってつまり、キャラクターが致命的に立っていなかった場合は……」(『冴えない彼女の育てかた』より引用 )
主人公の倫也はそういう考えを持っているのに、最も個性のない恵をメインヒロインにしようとしているのです。無理ゲーのプレイを見ているかのような面白さがあります。
作者が元々ゲーム業界で活躍していた人ということもあり、ギャルゲー好きにはたまらないネタがいろいろなところで見つかるマニアックな面もある本作。しかしストーリー自体はそこまで突飛なものではなく、笑いどころもあるので知らない人はむしろ、読み終わった後にギャルゲーにも興味が湧いてくるかもしれません。
主人公の羽瀬川小鷹は、聖クロニカ学園高等部へ転校してきた2年生。しかし、天候初日から遅刻したうえに自己紹介もうまくいきません。さらに日本人とイギリス人のハーフだけど外見はほぼ日本人なのに髪だけくすんだ金髪という、一見ヤンキーのようにも見えてしまう容姿でも損をしてしまい、すっかりクラスで浮いた存在になってしまいました。
- 著者
- 平坂 読
- 出版日
- 2009-08-20
転校から1ヶ月も経つのに友達のいない小鷹でしたが、ある日、ひとりで楽しそうにおしゃべりをしている同級生の三日月夜空と出会います。夜空の行動を不思議に思う小鷹に、夜空は「エア友達」と話していたと説明。夜空もまた、小鷹と同様に友達のいない少女だったのです。それから夜空は友達を作るという目的のもと「隣人部」を作り、小鷹も強制的に入部させられます。
「……活動内容を聞いても何を目的とするクラブなのか理解できる者など一人もいないだろう。俺たち隣人部の活動目的。ずばり言ってしまえばそれは――『友達作り』である」(『僕は友達が少ない』より引用)
中性的な容姿で美少女なのに、周囲に不機嫌と取られてしまい友達ができない夜空を始め、ナルシストな女王様の柏崎星奈、美少女なのに漢前の楠幸村など、個性的であるが故に友達がいないという生徒達が続々と隣人部に入部し、小鷹の周りは次第に賑やかになっていきます。
しかし仲間達は仲が良いのか悪いのかよくわからない感じの関係で、終始「友達作り」に邁進します。しかし、そんな努力はいつも空回りでなかなか結果は出ません。読者としては「それは違うと思う」とツッコミを入れたくなるときも多々あります。
2011年に最も売れたライトノベルとも言われ、キャッチコピーは「残念系青春ラブコメ」。キャッチコピーのあるように、主人公が周囲のヒロインたちとどうなっていくのかという視点もあるので、日常系ストーリーとラブコメの両方を楽しむことができるライトノベルです。
大きな戦闘もなく、物語を辛くするようなスパイスもなく、物語通じてほとんど争いもないそんな物語を集めてみました。紹介をした物語は、平々凡々な日常を懸命に生きる少年少女ばかりです。日常でも一生懸命に生きる彼らに感情移入をしてみませんか?