美少女麻雀漫画『咲-Saki-』のスピンオフ作品である『シノハユ』。麻雀の描写とともに、日常も濃く描かれており、特に主人公・シノの心理が細かに描かれます。麻雀漫画としても、日常漫画としても楽しめる本作。ぜひとも読んでみてください。
- 著者
- ["小林 立", "五十嵐 あぐり"]
- 出版日
- 2013-12-25
『シノハユ』は「咲」シリーズのスピンオフ作品です。主人公・白築慕(しらつきしの)の麻雀への思いと日常が描かれます。シノと呼ばれる彼女は『咲-Saki-』の世代の10年前に行われたインターハイ出場者であり、本作はシノの小学生からの成長譚となります。
本作の特徴として、本編よりも日常のシーンが細かに描かれていることが挙げられるでしょう。したがって、麻雀漫画としても日常漫画としても楽しめることが魅力となっています。
また、シノのみならず他の登場人物にも焦点があてられることもあり、多くの少女の成長をその目で見ることができるのです。
さて、今回は『シノハユ』の魅力をいろいろな点から紹介していきましょう。ネタバレを含む内容となるのでお気をつけください。
- 著者
- 小林立
- 出版日
- 2014-09-25
麻雀が大好きな少女・白築慕は麻雀漬けの日々を過ごしていました。そして今日は母と叔父との家族麻雀の日。小学校で麻雀をしていたシノは急いで家へと帰ります。
楽しい家族麻雀で、シノの顔は笑顔であふれていました。しかし、その翌日母は行方不明となったのです。
シノは叔父に引き取られ、地元を離れます。母がいなくなっても健気に笑顔をみせていたシノでしたが、一人の時は涙をこぼしていたのです。
そんなシノを見かねた叔父は母を思い出す麻雀からシノを引き離そうとしましたが、シノは大好きな麻雀で注目される選手となり、大好きな母に見つけてもらおうと決意したのでした。
これは麻雀で全国の頂点を目指した少女たちの軌跡――。
「咲」シリーズといえば多くの美少女が出てくることが魅力のひとつと言えます。本作でも主人公・白築慕を筆頭に多くの可愛い少女たちが登場。今回は数多いる美少女の中で、シノのご紹介をしていきます。
物語はシノが小学4年生の頃から描かれますが、その時から聞き分けのいい大人びた少女でした。しかし麻雀に関してだけは頑固です。時には世話になっている叔父に反発することもあります。それほどまでに麻雀が好きなことがうかがえるでしょう。
もちろん、大好きな麻雀をしている時は常に笑顔。劣勢でも楽しむ姿勢を貫き、負けた時も悔しさをバネにさらなる成長をみせてくれます。そんなシノの喜怒哀楽は読者を微笑ましい気持ちにさせてくれるでしょう。
- 著者
- ["小林 立", "五十嵐 あぐり"]
- 出版日
- 2013-12-25
そして麻雀のみならず、仲間やライバルと触れ合うことで人としてもシノは成長していきます。特に中学生から団体戦が始まり、今まで自分が楽しむことだけを考えていたシノが、仲間とともに戦うことを覚えていくのです。
幼い少女が努力と必死な試行錯誤によって成長していく姿に、読者はエールを贈りたくなること間違いなし。それはシノのみならず、『シノハユ』に登場する少女たちすべてに言えることです。
頂点を目指す少女たちの軌跡を温かな眼差しで見守ってあげましょう。
「咲」シリーズでは仲間やライバルとの友情が多く描かれます。『シノハユ』も例に漏れずにシノと彼女を取り巻く人間模様が細かに描かれ、その描写に心を動かされることとなります。ここでは特にシノに関わることが多く、スポットライトがあてられる2人のキャラを紹介しましょう。
まず1人目がシノのライバルと言える石飛閑無(いしとびかんな)。明るく、人を引っ張る力のある閑無ですが、登場時は我の強いわがままな子といった印象を抱きます。しかし、シノと一緒に麻雀をして共に行動するようになってからは、周囲に目を向けることを覚え、しっかり者のリーダーへと成長しました。
彼女もシノと並んで成長していくことから、もう1人の主人公といえる存在でしょう。
そして、もう1人が中学時にシノと同じ湯町中学校へと進級してきた瑞原はやり(みずはらはやり)。幼い頃にアイドルの「牌のお姉さん」に笑顔にしてもらったことで、彼女に強い憧れをいだきます。その出来事から自分も彼女のように誰かを笑顔にできる人になろうと必死に努力を積み重ねていきます。
ふわふわとした雰囲気からは想像のつかない熱いを想いを持っているキャラです。
- 著者
- 小林立
- 出版日
- 2015-02-25
さらに本作の特徴として挙げられるのが、家族との繋がりが前面に押し出される点です。家族、特にシノが一緒に住んでいる叔父の描写が多いです。家族の描写が多いのはシリーズの中では珍しく、友情や家族との絆といった多くの密な関わりを見ることができます。
友人、ライバル、家族の誰もが優しさの溢れるキャラで、誰に着目しても毎話楽しめる作品と言えるでしょう。そしてどのキャラも可愛く個性豊かで、いろいろと目移りしてしまうのが本作の悩みどころです。
また、主人公はシノですが、話によっては主観で描かれるキャラもいて、さまざまな観点から物語を読み進めることができます。みんなを応援するもよし、誰かに肩入れするもよし、自分の楽しみ方を探してみてください。
『シノハユ』は「咲」シリーズの本編に比べると日常描写に多くのページを割いています。麻雀よりも何気ない日常の方が多く描かれているのです。 その代表として挙げられるのが、彼女らが年相応に遊ぶ姿。
勇ましく麻雀を打つ彼女らも、実際のところはまだまだ幼い少女たちです。海に遊びに行ったり、友達の家に泊まりに行ったりと、彼女たちも年相応に遊ぶ姿をみせてくれます。
そのようなシーンは彼女らもまだまだ幼い女の子だと読者に思い出させ、彼女らの笑顔に読者の心は温まるのです。
- 著者
- ["小林 立", "五十嵐 あぐり"]
- 出版日
- 2015-07-25
そして、その日常が細かに描かれており、麻雀漫画としてだけでなく、心温まる日常漫画としても楽しめることが本作の魅力でしょう。さらに登場人物の内面も細かに描かれているので、それぞれの抱える想いをしっかり理解することができます。
そういったことから親近感の湧く作品となっていて、シノや他の登場人物に寄り添ってあげることができるのです。各人の日常と内面の丁寧な描写に心が動かされます。
なんとか市大会を勝ち抜いたシノの所属する湯町中学校麻雀部は、県大会に向けて猛練習を積んでいました。しかし、顧問の坂根が部員のやる気に水を差すように部活を休みにしてきたのです。
納得できない部員たちは坂根に直談判しにいきますが、坂根は休暇をとっており話をつけることはできませんでした。そんななかで個人戦の市大会が始まります。
湯町中からはシノを含む3人が市大会を突破し、県大会へと歩を進めました。部員たちは今度こそ坂根と話をつけにいきます。
坂根は一流のアスリートはしっかりと休養を取るといいました。練習の時間を増やしすぎた部員をおもんばかっての行動だったのです。それでも、今まで大したやる気を見せていなかった坂根の発言に部員たちは納得できません。
部員たちは坂根がサボりたい口実だと決めつけ、坂根を尾行することとなりました。しかし、実のところは坂根は熱心に指導の勉強をしており、かつて過度な練習で壊れてしまった自分のような選手を出したくなかったのです。
そのことを知った部員たちは坂根に対して信頼をおくようになり、彼女の指導のもと県大会に向けた練習を続けました。
そして、いよいよ県大会が開幕します。
- 著者
- 小林立
- 出版日
- 2017-11-25
さて、8巻では坂根との確執がようやくなくなります。登場時から「顧問をしたくない」「顧問に期待するな」と言っていた彼女が、彼女なりに部員のことを考えていたことがわかります。
また、細かな描写はありませんでしたが、個人戦の市大会をシノは突破。しかし、4位という結果に満足できなかったシノは、叔父の前で珍しく落ち込んだ様子を見せました。
年齢があがるにつれて、シノはこのような悔しいといった思いを叔父にさらけ出すようになります。叔父を信頼しているからこそありのままの自分を見せることができるのでしょう。
そして、いよいよ県大会が開幕。今回の県大会には小学6年生の時に全国大会で3位に入賞したシノよりも注目の選手がいるというのです。
なんとその選手はシノと同学年で、小学生の時にプロ2人と打って、すべて勝ったという破格の選手なのでした。
猛者が続々と現れる県大会。シノと湯町中はどこまで勝ち上がれることができるのでしょうか。次巻を楽しみに待ちましょう。
『咲-Saki-』の10年前を描いたスピンオフ作品『シノハユ』。興味を持っていただけたでしょうか。「咲」シリーズはどの作品から読んでも楽しめるので、ぜひとも読んでみてください。