漫画『トコR55』で描かれるおじさん好き肉食女子とストーカー男子の日常

更新:2021.11.26

好みのおじさんがいたら会ってすぐに食べてしまう肉食系女子トコさんと、そんな彼女に恋をしてストーカー行為をする後輩男子のマサオミ。『トコR55』は、おじさん好き×年下男子という絶対に交わらない2人の恋する日常が描かれた作品です。

ブックカルテ リンク

『トコR55』の見所ネタバレ紹介!おじさん好き女子とストーカー男子の物語

おじさんであれば、太っていても痩せていても、豪快でも気弱でもなんでも好きな、そと子ことトコさん。『トコR55』は、街に出ては好みのおじさんを見つけて食するトコさんと、そんな彼女を想うあまりストーカー行為をしてしまう後輩男子マサオミの日常を描いた作品です。

トコさんに誘惑されるおじさんたちの姿と、絶対に報われない恋をしているマサオミの姿が何よりの見どころ。

この記事では、トコさんとマサオミに焦点をあてながら、本作の魅力を紹介していきます。
 

著者
イワシタ シゲユキ
出版日
2014-04-09

『トコR55』に見るおじさんの魅力と不毛な恋愛【あらすじ】

『トコR55』に見るおじさんの魅力と不毛な恋愛【あらすじ】
出典:『トコR55』

サックスがプロ並みに上手な音大3年生のトコさん。そんな彼女に想いを寄せ、ストーカーをしている後輩のマサオミ。彼は時間さえあればトコさんをストーカーし、彼女がおじさんを誘惑する姿を見続けます。

AVを借りに来た気弱なおじさんや、古本屋の堅物なおじさん、自分語りの激しいおじさんに、アイドルオタクのおじさんなど、トコさんは好みのおじさんを見つけてはセックスをするのです。

そしてマサオミはそんな彼女をつけまわしては、おじさんを妬み、報われない恋に嘆いています。
 

『トコR55』の魅力1:トコさんはサックスが上手(セックスも?)

『トコR55』の魅力1:トコさんはサックスが上手(セックスも?)
出典:『トコR55』

 

トコさんはサックス専攻の音大3年生。腕前はプロ並みで、素晴らしい才能を持っています。

しかしそんな彼女がサックス以上に好んでいるのが、おじさんです。

と言っても、俳優のようなイケイケのカッコいいおじさんではありません。いわゆる初老の、どこにでもいそうな冴えないおじさんなのです。

トコさんは街で偶然出会った好みのおじさんにロックオンしては、次々に関係を持ちます。じっくり攻めるのではなく、出会ってすぐ、数回言葉を交わすだけで、相手に好意を持たせてセックスまで持ち込むのです。

情事が終わればすぐに去る、ワンナイトラブどころではないのが彼女のすごいところ。また、狙った獲物は逃がさない熟練ハンター並みのテクニックを持ち合わせています。

誘い文句は回を追うごとに巧みになっていきます。おじさんとの共通点を見つけてその土俵に乗り、誘いこむのです。誘われたおじさんの方は、若くて可愛い子がそんなふうに接してくれれば、1回限りの情事とわかっていても体を重ねたくなりますよね。

彼女と熱い時間を過ごしたおじさんたちは、みな一様に清々しい表情を浮かべています。日頃くすぶっていて冴えないおじさんにとって、トコさんとのセックスは自分を取り戻す時間なのかもしれません。

おじさんがあられもない姿で賢者タイムを堪能しているなか、直前にしていた行為などなかったかのような態度で、実はストーカーをしてすぐそばにいるマサオミに電話をかけるのがトコさんのお決まりの流れ。マサオミは不毛な時間に自己嫌悪に陥りながら、いつまでもトコさんの恋愛対象内に入らないことを嘆くのです。

また彼女は、かなりの食いしん坊キャラとして描かれます。もしかしたらおじさんとのセックスは、トコさんにとって食事などと同じく生活をしていくうえで必須のものなのかもしれませんね。

街のグルメを食べ歩くようにおじさんを堪能するトコさんは、きっとサックスだけでなくセックスも上手なのでしょう。

 

『トコR55』の魅力2:マサオミの不毛すぎるストーカー規制法な日々

『トコR55』の魅力2:マサオミの不毛すぎるストーカー規制法な日々
出典:『トコR55』

 

本作は1話完結型で、トコさんが次々におじさんを落としていく物語です。その語り手となっているのが、「見守り」と称して彼女をストーキングしている後輩のマサオミ。

彼はトコさんの後をつけては、彼女がおじさんを誘惑していくさまを見ています。ストーカーなだけあって、トコさんにロックオンされたおじさんの萌えポイントを理解する考察っぷりはさすがのもの。

ここで勘違いをしてはいけませんが、マサオミは純粋にトコさんのことが好きなのです。ストーカー行為はしますが、無理やりどうこうしようなどとは考えていませんし、彼女に注意をすることもやめさせようとすることもしません。トコさんが、おじさんが好きだということを重々理解しているからです。

マサオミはトコさんがおじさんを誘うところを見届けて、情事を終えるまでホテルのすぐそばで待機しています。そして事後に満足げな顔で隠れている自分のそばを通る彼女を見ながら、自身の不毛な恋を実感しているのです。

おそらく、マサオミが突然変異で30歳くらい歳をとらなければ、この恋が報われることはないでしょう。彼は自分には決して向けられない愛情を注がれているおじさんに対し、妬みと敵意を感じながら、それでも彼女の後をつけては自分が絶対に踏み込めない空間を眺めるのです。

マサオミがこの恋に終止符を打てないのは、なんだかんだでトコさんが彼を頼ったり、優しくしてくれたりするからかもしれません。また一緒にバンドを組んでいるため、彼女は事あるごとに連絡をとってくるのです。

恋愛面でもそれ以外でもトコさんに振り回されるマサオミの姿は、健気というか、哀れというか、本当に彼女のことを好きにさえならなければこんなことにはならなかったのでは……という残念さがあります。

各話の最後は、常にマサオミの抱いている感情の吐露で終わります。音楽用語になぞったり、神様への願いという形で明かされたりする彼の想いに、ついつい同情してしまうかもしれません。

 

『トコR55』の魅力3:おじさんの夢を叶える物語?実は萌え要素も?

『トコR55』の魅力3:おじさんの夢を叶える物語?実は萌え要素も?
出典:『トコR55』

本作の魅力はやはり、あまり冴えないおじさん方を可愛らしい女子大生が食いまくる、という夢のような、そしてアダルトビデオのような物語という部分もあるかもしれません。

「おじさん好き」というのは年上好きの方が多いであろう女子には意外と多いかもしれませんが、それはあくまで建前上のおじさんであって、実際に好きなるとしたらある程度小ぎれいにしていたり、見た目がかっこよかったりしないとだめ、という現実があるのではないでしょうか。

その点、トコさんは生粋のおじさん好き。街にどこにでもいるような、20代女子からすると恋愛対象にはほぼなり得ないであろう妙齢の男性方をほぼ見境なく(見えるくらいに)ロックオン。次々と体を重ねていきます。

ある時はまさかのおじさんたちと3P、ある時はかなり太ったおじさん、ある時は地下アイドル好きのオタクおっさんなど、本当におじさんが好きなんだなぁ……と、何だか読者を途方に暮れさせるチョイスをしてくれるのです。

また、本作は単純におじさんウケ要素だけではなく、世の中には少し汚い(失礼)おじさんと美少女の恋愛に萌える人も一定数いるのだとか。そういう方達のニーズも満たしてくれる作品となっています。

どちらもかなりニッチなニーズに思えますが、そんなカオスさがこの作品を表しているようにも思えますね……。全10話収録なのでその世界をひとまず覗いていただければと思います。

『トコR55』の魅力4:ふたりの交わりそうで交わらない関係の結末

『トコR55』の魅力4:ふたりの交わりそうで交わらない関係の結末
出典:『トコR55』

 

トコさんとマサオミの関係は、最後まで変わりません。彼が目を離している隙にいつの間にかトコさんとおじさんが関係を持っていることもありますが、基本的にマサオミは、彼女がおじさんといい雰囲気になるさまを陰で見ているのです。

叶うことならば、トコさんの気持ちが少しでも自分の方に向いてほしいと願うマサオミですが、彼はトコさんの笑顔をそばで見られることが自分の幸せなのだとも考えています。

ストーカーという行為はいただけませんが、トコさんという人をよく理解したうえで自分の気持ちに折り合いをつけている彼の姿はいっそ清々しいでしょう。

一方のトコさんも、毎回1度きりの関係を築いて体を重ねる爛れた生活を送っているように見えますが、彼女の餌食となったおじさんはみな幸せそうですし、彼女自身も好みの男性と好きなセックスをできるのですから、それでいいのかもしれません。

トコさんもマサオミも、どんなに歪んでいたとしても、彼らなりに幸せを感じて毎日を過ごしているのです。周りがとやかく言うものではないのでしょう。

好きなら好き、幸せなら幸せ、と背中を押されるような前向きさがもらえる作品です。

 

積極的におじさんを誘うトコさんと、彼女をつけるマサオミ。2人の平行線をたどるような関係はもちろん、作中に登場するおじさんにも注目したいところです。読み終わったらおじさん好きになっているかもしれませんね。

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena
もっと見る もっと見る