思春期のある時期が来ると性転換する田中家に産まれた愛。『ひめごとははなぞの』は、そんな彼を取り囲む兄弟と友人たちのはちゃめちゃな日常を描いた作品です。f
6人兄弟の末っ子として大事にされてきた田中愛は、12歳になったある日、突然女の子になってしまいました。なんと彼の家系は思春期になると一定の期間だけ性転換してしまうという血筋だったのです。
『ひめごとははなぞの』は、そんな愛と田中家の人々の日常を描いています。
女体化した姿が見どころなのはもちろん、中1とは思えないほど小さくて可愛らしい愛の姿が見どころです。彼が着る洋服がおしゃれなものばかりなのも魅力的。
この記事では、登場人物全員が個性豊かな本作の魅力を、各巻の見どころを紹介しながらお伝えしていきます。ネタバレを含むのでご注意ください。
- 著者
- わたなべ あじあ
- 出版日
- 2009-01-01
思春期のある時期が来ると性転換してしまう田中家に生まれた愛。中学校に入学する直前に女の子になってしまった彼は、すでに性転換を済ませている4人の兄に助言をもらいながら、女の子として生活をすることになりました。
彼氏ができたり美人な女の子の友だちができたりと、順調に女子中学生をやっていましたが、突然体が元に戻ってしまい、本当は男だったことがバレてしまいます。
性別を偽っていたことで嫌われてしまったと思いますが、彼らは愛が男でも女でも好きだと伝えてくれました。そして愛は再び女の子の体をとり戻し、しばらくは女子として過ごすことを心に決めるのです。
思春期のある時期が来ると性転換する家系に生まれた愛は、入学式の日の朝、男子から女子へと体が変化し、女の子として中学生活を過ごすことになります。
女体化する場面やセーラー制服を着る場面もよいですが、やはり同じクラスの櫻井と出会ってから交際するまでの流れが1番の見どころではないでしょうか。
家庭の事情で一緒に暮らしている幼馴染の洋と、入学式で知り合った美人の蝶子と同じクラスになった愛は、慣れないながらもなんとか初日を終えます。
そして翌日登校すると、長髪で目つきの悪い男子生徒・櫻井が教室にいました。入学式を欠席するという悪っぽいオーラに、ヤンキーを目指していた愛は憧れを抱きます。
体調が良くないせいか機嫌が悪く、無邪気に話しかける愛に対しても塩対応だった櫻井ですが、どんな態度を取っても明るい愛に興味を示しました。
しかしそんな2人を意味ありげに見つめる女生徒が……。彼女は櫻井と同じ小学校に通っていて、フラれた経験がありました。そして嫉妬のあまり、愛に陰湿ないじめを仕掛けてくるのです。
そんな彼女に対し、愛は真正面から立ち向かい、文句を言います。素直に自分の気持ちを伝える姿を見た櫻井は、
「お前 俺と付き合え!」(『ひめごとははなぞの』1巻より引用)
当初の悪っぽいイメージとは違い、まだ男っぽさを捨てきれていない愛に公衆の面前で告白をするという、ちょっと物好きな少年でした。
「付き合う」ということや「恋愛」ということがどういうことかもわからないながら、愛は櫻井と付き合うことになります。
さて、愛のことを女の子だと思っている櫻井が、いつかその秘密を知ってしまった時、どのような行動をとるのでしょうか。
蝶子の家がヤのつく自由業であったり、彼女の従兄弟で女装をしている3つ子が登場したりと、見どころだらけの2巻。しかしまだ物語が始まったばかりにもかかわらず、愛が本当は男であることが櫻井や蝶子にバレてしまいます。
蝶子のプライベートビーチに遊びに行ったとき、愛はクラゲに刺されてしまい、それが原因なのか数年は戻らないはずの性転換期が終わり、男の子に戻ってしまうのです。
- 著者
- わたなべ あじあ
- 出版日
- 2009-11-01
こんなに早く男に戻る事例を過去に知らない田中家の面々はもちろん、目の前で突然性別が変わるという事態に驚く蝶子と櫻井。特に愛が女の子だと思って告白をした櫻井はショックと動揺を隠すことができません。
すぐに自宅に戻った田中家一同ですが、愛はひとり浮かない様子でした。
しかし翌日、彼のことを心配した櫻井と蝶子が、様子を見に来ます。櫻井は男の子の愛でも可愛いと思ってしまう自分に戸惑い、蝶子は愛を男の子だと意識して挙動不審になってしまいました。
そんな2人の姿を見て、愛は自分が気持ち悪がられていると勘違いし、大号泣。女の子になることに否定的だった彼が、女のままでいたかったと思うくらい、3人の仲は深まっていたのでしょう。
またこのシーンで、女の子の愛を異様に可愛がっていた蝶子が、同性愛者ではなかったということも判明します。愛と付き合う櫻井に敵意をむき出しにしていましたが、そういうわけではなかったようです。
男の子の姿になった愛への想いを溢れさせる蝶子と、いまだに気持ちの整理がつかない櫻井。彼らの今後の関係性と、愛の性転換の期間は本当に終わってしまったのかも気になるところです。
3巻では、愛の両親が登場。田中家の人々の性別が変わるのは、母方の血に理由がありました。
なんと母親は周期的に男性になるという例外の性質をもっています。愛も彼女のように愛が母のように性別を行き来するタイプなのか、性転換が超短期的に終わるタイプなのかはわかりませんが、どうやら何かしらの刺激を与えると再び女体化できるのでは、と推察されました。
- 著者
- わたなべ あじあ
- 出版日
- 2010-08-21
そこで、田中家は全員で愛を驚かせることに。長男・青龍の「ねこだまし」、次男・白虎の「実は苦いプリン」、三男・朱雀の「怖い紙芝居」、四男・玄武の「エッチな本」、愛の双子の兄で五男・恋の「クラッカー」、幼馴染の洋の「女装」、母親の「性転換」……さまざまな刺激を与えますが、愛は男のままです。
そんなとき、蝶子と櫻井が愛を訪ねてきました。そして2人は、自分たちが決して愛を嫌っているわけではないことを伝えてくれます。
その言葉を聞いて、涙を浮かべながら嬉しそうに笑う愛を見て、櫻井はおもわず抱きしめました。
愛が男でも女でも好きでいる覚悟を決めた櫻井は、その決意を見せるため、男の愛にとあることをします。これがきっかけとなり、彼はまた女の子の姿へと変わるのです。
いくら自分が本当は男だとしても、愛自身も櫻井のことを特別視していたことがわかります。
愛への想いを確かなものとした櫻井と、今は女の子でいたいという愛の願いが叶いハッピーな結末になりましたが、一方の蝶子は愛が櫻井に少なからず好意を抱いていたという事実に打ちのめされてしまいました。
そんな蝶子を見た愛は、ぐっと拳を握ってこう言うのです。
「俺! お前のことも大好きだぞっ!」(『ひめごとははなぞの』3巻より引用)
この言葉を聞いた蝶子は気力を取り戻し、再び櫻井への敵意をむき出しにしはじめました。当初の美少女キャラからどんどんかけ離れていく彼女から目が離せません。
この他にも3巻では、双子の恋の女体化や、愛の小さいころの話などを見ることができるので注目です。
4巻では、愛がみている不思議な夢の話が出てきます。最初の夢は、誰もが知っているアリスのお話。だいぶ愉快な仕上がりになっていますよ。
また、櫻井の家に泊まりに行きたいと駄々をこねる愛も描かれます。兄たちは猛反対し、それでも言うことを聞かない愛の頬を、次男の白虎が勢いあまって叩いてしまいました。
これまで怒られることは多々あれど、顔に手をあげられることはなかった愛。家出をしてしまいます。
- 著者
- わたなべ あじあ
- 出版日
- 2011-03-22
白虎も叩いてしまったことにショックを受けるのですが、そんな想いは知らずに愛は自宅を飛び出し、櫻井の家へと向かいました。
しかしそこで見たのは、熱で倒れている櫻井の姿。彼の家は放任主義で、面倒を見てくれる親がいなかったのです。
精一杯看病をするなかで、愛が思い出していたのは、白虎の言葉。兄の愛情は、ちゃんと愛に届いていたことがわかるシーンです。
また櫻井と愛のやりとりにも注目したいところ。恋と呼ぶにはまだ早いような2人の関係ですが、微笑ましいやりとりを見ることができます。
田中家のゴタゴタにひとり傍観を決め込んでいた幼馴染の洋に、愛の双子の兄である恋とのラブの予感が見え隠れします。
洋の初恋はかつて女体化した白虎だったため、女体化した恋の姿を見て、昔の恋心が疼きはじめてしまいました。
いつも冷静な彼の思春期の少年らしい姿は珍しく、見どころです。
- 著者
- わたなべ あじあ
- 出版日
- 2011-12-22
田中家の面々は、櫻井と蝶子も連れて、祖父母の家に遊びに行きました。そこで愛が出会ったのは、綺麗な顔をした外国人のような見た目の青年です。実は幼いころに1度会ったことがあるようなのですが、愛は覚えていませんでした。
そんななか、お祭りに出かけた一同。愛は祭の奉納で必要な狐の花嫁役をやることになります。しかしその途中で、例の綺麗な青年が愛をさらって逃げてしまいました。なんとその青年は、代々土地を守ってきた狐の神だったのです。
この時の櫻井の慌てっぷりに、彼が心から愛を大切に想っていることが見てとれます。
一方の愛は、持ち前の明るさとコミュ力で狐と仲良くなっていました。ずっと独りだったという狐に、愛は同情します。
「俺…お前の嫁になる。」(『ひめごとははなぞの』5巻より引用)
バカな子ほど可愛いと言いますが、こればかりは「何を言っているんだ」とツッコんでしまいますね。もともと「付き合う」ということすら理解していなかった愛なので仕方ないのかもしれませんが……。
血迷う愛を櫻井は取り戻せるのか、ハラハラな展開が続きます。
6巻では、愛のはちゃめちゃな夢の第2弾を見ることができます。前作以上にカオスな展開になっているので、ぜひ実際に読んで確認してみてください。
また洋と恋の関係にも注目です。
- 著者
- わたなべ あじあ
- 出版日
- 2012-09-22
物語が進むにつれて、女の子らしさが板についてきている愛。中身は幼稚園レベルなため、より一層可愛らしさに磨きがかかります。
そんな愛は、白虎の手料理が大好き。そこで櫻井と蝶子はそのテクニックを学ぼうと、白虎に教えを乞いました。
「お前のお嫁さんもお婿さんも料理上手らしいぞ」(『ひめごとははなぞの』6巻より引用)
2人とも飲み込みが早いうえ、青龍のこの言葉にさらにやる気を見せます。しかし彼らのテンションに反して、愛はどこか元気のない様子。そしてある夜、愛は泣きながら白虎のもとを訪れました。
「俺おっきくなってけっこんしたら白ちゃんのゴハン食べられなくなる?」(『ひめごとははなぞの』6巻より引用)
顔を真っ赤にして泣く愛を、その場にいた青龍は笑って抱きしめます。隠れブラコンの白虎も満更でもない表情。弟であれ妹であれ、末っ子がこれだけ懐いてくれたら嬉しくないわけがないですよね。
もしかしたら櫻井と蝶子のライバルは、白虎なのかもしれません。
最終巻の冒頭は、愛のはちゃめちゃな夢の第3弾から。美少女キャラをすっかり忘れた蝶子の百面相を堪能できますよ。
またこの巻では、誰も想像していなかったであろう、愛が風邪をひく話があります。「愛はバカだから風邪をひかない」という共通認識を覆すほどの病原菌の威力は絶大で、田中家全員と、お見舞いに来た櫻井と蝶子を病院送りにする展開になりました。
- 著者
- わたなべ あじあ
- 出版日
- 2013-03-22
ほかにも、これまで影の薄かった玄武の女体化したときの様子を見ることができます。ブラコンをこじらせていないせいか、もはやコマに紛れていた彼でしたが、女体化姿はモブでは済まされないほど可愛らしいものでした。
玄武はもっとも「女の子」を謳歌していたため、より女性らしく見えるのかもしれません。唯一のスポットが当たる話なだけに、彼のファンの方は必見ですね。
そんな7巻でもっとも見どころなのは、やはり最終話。愛と恋が成人し、それぞれ双子の子どもがいる状態で話が展開していきます。お母さんポジションだった白虎はすっかりおばあちゃんになり、4人の孫に囲まれて幸せそう。
さて、この時の愛と恋の性別はどちらなのか、2人の結婚相手は誰なのか、さらに大家族となった田中家の暮らしはどのようなものなのか、ぜひ読んでみてくださいね。
ギャグ要素の強い本作は、TSに初めて触れる人にも読みやすくおすすめの作品です。ぜひ読んでみてください。