数々のギャンブル漫画を生み出した福本伸行の代表作「カイジ」シリーズ第3弾『賭博堕天録カイジ』。いつものごとく、ハラハラするギャンブルと緻密な心理戦が描かれています。
「アカギ」や「天」といったギャンブル漫画生み出した福本伸行。彼の代表作ともいえる作品が「カイジ」シリーズでしょう。その第3弾が「黙示録」「破戒録」に続き、「堕天録」という名で登場しました。
もちろん、主人公は引き続きカイジのまま。しかし、今回はクズっぷりやだらしなさは早々になりを潜め、ガチモードのカイジを大いに楽しむことができます。
また、本作「堕天録」は「堕天録・和也編」「堕天録・ワンポーカー編」と続き、2018年現在は「堕天録・24億脱出編」が連載されており、かなりのボリュームとなっています。
- 著者
- 福本 伸行
- 出版日
- 2004-11-05
ボリュームのみならず内容もパワーアップしているので安心してください。福本のお得意である心理戦は今回も健在です。シリーズが進むごとに福本の心理描写は緻密になってきており、まちがいなく前作を上回る出来となっています。
さらに、敵キャラもパワーアップしているので、勝負は一筋縄ではいきません。これまで死闘を勝ち残ってきたカイジでも、何度も何度も追いつめられてしまうことでしょう。
さて、それでは『賭博堕天録カイジ』の魅力を「堕天録」「和也編」「ワンポーカー編」と区切って、ネタバレを交えながらご紹介していきましょう。
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- 著者
- 福本 伸行
- 出版日
- 2005-03-04
「沼」での勝利で借金を完済したカイジは、共に沼と戦った坂崎の家に居候していました。しかし、働かずに自堕落な生活をおくるカイジは坂崎に愛想を尽かせれ、300万の手切れ金を渡されて家を追い出されてしまったのです。
そんなカイジのもとに、地下収容所で仲間だった三好と前田が現れます。2人は勤めている会社の社長・村岡にむりやりギャンブルで巻き上げられた給料を回収してほしいとカイジに依頼してきました。
カイジは坂崎から受け取った300万を手に、「17歩」と呼ばれるギャンブルで村岡と戦います。しかし、思いもよらぬ裏切りが発覚して……!?
地下収容所で共に戦った仲間の三好と前田と再び手を組みギャンブルに挑むカイジ。今回おこなわれるのは「17歩」と呼ばれるギャンブルです。
2人でプレイする麻雀といえばよいでしょうか。通常の麻雀のように牌を積み、向かい合わせに座ります。プレイヤーは互いに自分の前の山を開き、手牌を作ります。この際、満貫以上の手作りをしなければあがることができません。
互いの手牌が組めたら勝負開始。自身の山の余り牌から敵に振り込まないように切っていき、17牌捨てきればドローとなります。振り込んだ場合は手牌の強さに応じた賭け金を支払わねばなりません。
- 著者
- 福本 伸行
- 出版日
- 2008-04-04
「アカギ」や「天」といった麻雀漫画を描いてきた福本だからこそ思いつくゲームでしょう。最低3人以上必要な麻雀を2人でおこなえるように工夫しています。また、麻雀は運の要素の強いゲームですが、17歩では通常の麻雀よりも初めから多くの牌を認識していることで、戦略性を強めています。
互いの手の読み合いに、捨て牌の危険性の読み合い、さまざまな読み合いがプレイヤーの間で交わされるのです。
カイジは三好と前田と組み、楽勝だと思い込んで村岡に挑みます。俗にいう通しで、村岡の手牌を2人から教えてもらっていたのです。
しかし、お金は人を狂わせるとは真実の1つなのでしょう。三好と前田、地下収容所で仲間としてともに戦ったはずの2人がカイジに近づいてきた真の目的とは……!?
カイジは孤立無援の戦いを迫られます。裏切り、イカサマ、なんでもありの麻雀「17歩」。カイジは勝ち残ることができるのでしょうか。
カイジは村岡との死闘を制し、4億8000万もの大金を手にします。しかし、今宵の勝負はこれでは終わりません。村岡との勝負の立会人であった帝愛グループ会長・兵藤の息子である和也にもうひと勝負挑まれます。
カイジはその申し出を承諾し、帝愛グループ傘下のレストランへと連れられました。そこで和也は小説家になるという夢、小説家になるための「取材」と称した非人道的なギャンブルの企画をカイジに告白。
数々のギャンブルで人間の土壇場での本性を見てきた和也は、人間は土壇場で必ず裏切ると言い切りました。対してカイジは和也の言い分を否定するのです。
この言い合いを機に、友情を確認するゲーム「救出」によるカイジと和也の戦いが幕を開けます。
- 著者
- 福本 伸行
- 出版日
- 2009-10-06
和也編にておこなわれる友情確認ゲーム「救出」とはどのようなギャンブルなのか。簡単なルールを説明しましょう。
プレイヤーは3人、それぞれ頭にランプのあるヘルメットをかぶります。そして、くじにて席順を決め、1番、2番、3番と階段状になっている席へと着席。この際、下にいる者が後ろを振り返るのは禁止です。
着席した後にイスに備え付けられているベルトを締めて準備は完了。いよいよゲーム開始です。
和也に選ばれた者のランプが光り、その者は「救出者」となり、その他2人は「人質」となります。救出者は自力で自身が救出者だと推測し、手元のボタンを押します。すると拘束が解除され、人質解放の権利を得ます。
この工程を30秒以上1分1秒未満で終わらせればプレイヤーの勝利です。1回クリアするごとに、報酬は元手の倍倍となっていき、報酬が1億円を突破すれば挑戦者側の勝利でゲーム終了です。
ただし、30秒未満で救出した場合は失格となり、賞金は0円。代わりに命は助かります。
そして、もしも1分1秒が経過するか救出者以外が誤って救出してしまうと、人質のヘルメットの機能が作動し、人質は頭蓋骨を粉砕されてしまうのです。
さて、「救出」のルールは理解できましたか?今回のゲームは今までのゲームの中でもっとも他者に依存しなければならないゲームです。また、他者を信頼しなければ全員が生き残れないゲームとなっています。
そして、なんと和也編ではカイジはプレイヤーとして参加しません。和也が考案したこの救出ゲームをおこなう見知らぬ3人を見守るのです。
人間の本性が裏切りだと主張する和也、それを全否定するカイジ。いったいどちらの言い分が正しいのか、自身の目で確認してみましょう。
友情確認ゲーム「救出」は1人のプレイヤーの裏切りによって幕を下ろしました。救出ゲームで敗れたフィリピン人のマリオと中国人のチャンには死の運命が待ち受けていました。
しかし、カイジが2人の借金7000万を肩代わりしたことで2人の命は助かります。さらにはマリオとチャンを味方に引き入れました。
その光景をみていた和也は似非の友情だと激怒したのです。人の中の善意を信じるカイジを潰すべく、和也は新たなギャンブル「ワン・ポーカー」を提案します。
こうして、カイジ対和也の直接対決が始まりました。
- 著者
- 福本 伸行
- 出版日
- 2013-11-06
さて、まずは今回おこなわれる「ワン・ポーカー」のルールを説明しましょう。名前から想像できるように、トランプ1枚の強さを競うゲームです。
プレイヤーは2人のタイマン勝負。ジョーカーを抜いたトランプを2枚プレイヤーに配り、プレイヤーはそのどちらかを使って勝負をおこないます。2、3、4と強さがあがっていき、Q、K、Aという序列になります。
ただし、7以下のカードは「DOWN」、8以上のカードは「UP」と相手側には伝わるのです。2枚とも7以下であれば「DOWN・DOWN」、片方が7以下、もう片方が8以上であれば「UP・DOWN」など。
その情報を用いて2枚のカードから選んで勝敗を決めます。次回のゲームは使わなかったカードを1枚残して、新たに1枚のカードを補填。この工程を繰り返していきます。
補足として、2はAにのみ勝てる、同数のときは引き分け、勝負の前に賭け金を上げる、もしくは勝負を降りることが可能です。
いかにも福本らしい心理戦が映えそうなゲームですね。カードの運もあるでしょうが、戦略の占める比率が高いギャンブルでしょう。
親の七光りともいえる和也ですが、意外にもギャンブルの才能はあるようです。さすがカイジを下した兵藤の息子なだけあります。
そして、和也編にてカイジが救出したマリオとチャン。この2人も人間の本来の姿が映し出されます。それはやはり和也のいう醜い姿なのか、それともカイジが信じる美しい姿なのか。
「堕天録」では土壇場や大金を前にした際の、人間の汚さが描かれています。心理戦に加えて、その点にも注目しながら読んでみましょう。