あるきっかけで「疑似家族」として生活をともにすることになった、1人の少年と、殺し屋の女。殺し屋としてのプライドと、1人の女としての母性が揺れ動く、切なくて心がヒリヒリする2人の交流。そして、その果てにある運命とは……。 この記事では、『スズキさんはただ静かに暮らしたい』の魅力と見所を全巻分ご紹介。ネタバレも含まれますのでご注意ください。本作はスマホアプリから無料で読むこともできるので、ぜひそちらもご利用ください。
タイトルだけ聞くとライトノベルのようにも思える本作ですが、なかなかどうしてハードボイルドでスリリングな展開がくり広げられるのです。
その魅力は、なんといっても、どう見ても普通の女の子なのに実は凄腕の殺し屋という謎の女・スズキさんでしょう。
ものすごく強い彼女は愛情を向けられることには慣れておらず、ひょんなことから一緒に生活することになったジンスケという少年に抱く自身の母性にも、戸惑いを隠せません。かといって殺し屋としてのプライドも捨てきれず……と葛藤する様子が、実に人間くさいのです。
- 著者
- 佐藤洋寿
- 出版日
- 2015-04-20
ある事件に巻き込まれた2人は、お互いの他に頼るものもなく、本当の家族のように身を寄せ合って生活することになります。そんな彼らの、一見ぶっきらぼうに思えるやり取りから感じられる絆は、本作の大きな見所の1つになっているのです。
孤独な殺し屋と、ひとりぼっちになってしまった少年の心の交流は切なくて、じーんとして、ほっこりして、そしてハラハラする珠玉の物語となっています。
彼らを取り巻く不穏な組織の動向と、追われる立場となったスズキさんとジンスケの結末を、どうか見届けてください。
母子家庭でひっそりと暮らしていた、小学生のジンスケ。学校から帰るとひとりぼっちでご飯を食べ、水商売をしている母の帰りを待つ生活をしています。
深夜に帰ってくる母を健気に待ちつつも、いざ顔を合わすとなかなか会話が続かず、自分の想いを素直に出せないぶっきらぼうな少年。それでも、自分のために慣れない仕事をしながら働いてくれる母のことを愛していました。
そんな彼の隣人は騒音に厳しく、すこし騒いだだけでもチャイムを鳴らして「うるさい」「わたしは静かに暮らしたい」「子どもはとっとと寝ろ」と悪態をついてきます。
そんな彼の日常は、10歳の誕生日に一変。
突然見知らぬ男が家に侵入し、母が凶弾に倒れてしまったのです。そして、その銃口はジンスケにも向けられました。
あわや……というところで、彼を助けたのが……そう、スズキさんです。いつも悪態をついてきた隣人こそが、スズキさんだったのでした。
こうして、親を亡くしたジンスケと「ただ静かに暮らしたいだけ」というスズキさんの、まったく静かには暮らせないハードでハートフルな「疑似家族」生活が始まるのです。
- 著者
- 佐藤洋寿
- 出版日
- 2015-04-20
スズキさんが事件に巻き込まれる形でスタートした、ジンスケとの「家族ごっこ」。なりゆきで共同生活を始めましたが、これまで「家族」のあたたかさを知らずに生きてきたスズキさんと、亡くなってしまったものの両親の愛情を受けて育ったジンスケは、根本的なところでわかりあえない様子です。
その生活は、最初から躓いてしまいました。
殺すところを見られた以上、あのチビを自由にするわけにはいかないし
いっそ…殺してしまうのが一番安全だけど…
(『スズキさんはただ静かに暮らしたい』1巻より引用)
母を亡くして傷ついているジンスケをよそに、スズキさんはこんな物騒なことを考えています。
しかし、ジンスケはもともとよい子だったのでしょう。スズキさんと生活をするうちに、少しずつ心を開くようになるのです。
それはスズキさんも同様で、幼いジンスケの世話をあれこれ焼いているうちに、彼のことが少しずつ大切な存在になっていきます。
凄惨なシーンも多い本作ですが、そんななかで描かれるひと時のほっこりとした雰囲気が、この2人の生活を応援してあげたいという気持ちにさせてくれます。
ただ、それでも彼らは本当の家族ではありません。
いよいよとなれば私はあんたなんか見捨てる…
しょせん私はあんたの母親でも何でもないんだから
わかってるよそんな事…
(『スズキさんはただ静かに暮らしたい』1巻より引用)
大切だと思いながらも、心の底からはまだ寄り添えあえない関係が切なくもどかしいです。2人の関係がこれからどのように変化していくのか、注目ですね。
普段は殺し屋として冷静で冷酷なスズキさんですが、だからこそデレた時のギャップが激しくてたまらなくかわいいのです。
当初はジンスケを「お荷物」として「殺してしまおう」とまで考えていた彼女。しかし母親を求める彼のぬくもりにほだされた瞬間、盛大にデレてしまうところがとってもキュートです。
本当に母が死んだのかを確かめるために、元のアパートへやってきたジンスケ。「もう一度だけ名前を呼んで」と彼が求めると、そこにタイミングよくスズキさんが来るのです。
「ママァー!」と言って彼女に抱きつくジンスケ。この時、彼女も抱き返そうとするのですが……その手にぜひ注目してみてください。
そして、その後は「離れろ!」「手間のかかるヤツ」と言い放ちます。盛大な照れ隠しでしかありません。
また、ジンスケと生活をともにするようになり、初めて自分以外の人のために「料理」をすることになったスズキさん。これまではインスタントラーメンやレトルト食品ばかりを食べていた彼女が、材料を揃えて作ったカレーは……。
ひと口食べて「おいしい」と言ったジンスケを直視できず、お盆で顔を隠してしまう姿もたまらなくかわいいです。「食べないの?」と聞かれて「ちょっと今お腹いっぱいになっちゃったのよ」と答える時の表情にもご注目ください。
殺し屋と逃亡生活という暗い展開の物語ですが、回を追うごとにデレが増えていく彼らの姿は、ずっと見守っていたくなってしまいます。
本作は、物語の冒頭からジンスケの母親が殺され、その後はスズキさんが犯人を殺すというヘビーな展開がくり広げられます。事の発端は、ジンスケの家族があるものを目撃してしまったことにありました。
実はジンスケの母親だけでなく、彼の父親も、数年前ある組織に殺されていたのです。
ジンスケも両親同様にその秘密を知っているため、もはや指名手配状態。行きがかりで命を狙われることになったスズキさんとともに、誰も2人のことを知らない土地で、家族のように暮らしていくことになります。
逃げ切れるところまで遠くに行こうとするスズキさんと、逃げてばっかりは嫌だと感じるジンスケ。母性が目覚め、殺し屋としてではなく2人でいることに喜びを感じるスズキさんと、彼女の愛用している銃を物憂げな表情で見つめるジンスケ。
逃亡生活は2人を強い絆で結びつけますが、同時にスズキさんには「人の心」を、ジンスケには「復讐心」を芽生えさせるきっかけにもなり、このすれ違いが非常に切ないのです。
やがて、彼らがひっそりと暮らしている町に、ジンスケの命を狙う組織のリーダーがやってきて……。
ラストまで目が離せない物語にドキドキです。
1巻の冒頭から、怒涛の展開がくり広げられる本作。
スズキさんとジンスケの「疑似家族」がスタートし、ある組織から狙われるようになるまでを描いています。
- 著者
- 佐藤洋寿
- 出版日
- 2015-04-20
まず惚れ惚れするのは、ジンスケの母を襲った男をひと捻りして殺してしまう、スズキさんの腕っぷしの強さでしょう。外見は女子大生のように可かわいらしいのに、隣人に「うるさい」とクレームを入れる神経質そうな姿を見せ、さらに銃を打ち、頭にナイフを刺すなど、かなり凶暴です。
その一方で、ジンスケとの「疑似家族」生活を続けるうちに、ツンデレっぷりが発露。素直になりきれない彼女の姿に、ハードボイルドな物語ながら、読者はきゅんとしながら読み進めることができます。
少しずつスズキさんに心を開いていくジンスケの様子にもほっこりし、このまま2人の生活がずっと続けばいいと思った矢先、ある組織からの追手がやってきて……。
彼らの暮らしはどうなるのか、目が離せません。
現在と過去を交錯させながら物語が展開していく、2巻。
本当の家族のように過ごす2人の間に、少しずつ溝ができていく様子が描かれます。
- 著者
- 佐藤洋寿
- 出版日
- 2015-09-19
最初にすれ違いが起きたのは、なぜ追われることになったのかジンスケが理由を話すシーンです。
前はあの時のこと思い出すのが怖かったんだ
でもそんなんじゃ いつまでも あいつらに勝てないって…
あいつらに勝つには もっと強くならなくちゃって…
(『スズキさんはただ静かに暮らしたい』2巻より引用)
このように、彼は両親の敵討ちを考えます。
過去は所詮過去なんだから
逃げ切れるだけ遠くに逃げればいいのよ
(『スズキさんはただ静かに暮らしたい』2巻より引用)
しかしスズキさんは、とにかく2人で一緒に逃げることを提案するのです。
またジンスケは、「スズキさんのように強くなりたい」という想いを強くしていきます。しかし彼女は、人殺しにはなってほしくないと願うのでした。
何で僕だけ誰も殺しちゃいけないの…?
(『スズキさんはただ静かに暮らしたい』2巻より引用)
すれ違う2人の運命が向かう先は……。
両親の仇であるはずの楠という男から、「人殺し」の方法を学んでいるジンスケ。「口で説明できることは終わったから、あとは実践」とお墨付きをもらい、そこからは隙を見て彼の命を狙う生活が始まります。
またスズキさんも、楠を殺せば穏やかな日常を得られると信じ、2人は敵方の家に乗り込むのでした。
この際どこでもいい ふたりで行こうジンスケ どこか…どこか遠く…
(『スズキさんはただ静かに暮らしたい』3巻より引用)
- 著者
- 佐藤洋寿
- 出版日
- 2016-03-19
ついに、ジンスケの初めての狙撃の瞬間がやってきます。ちゃんと「コック&ロック」した、と自慢げに登場する彼が見たものとは……?
その後にくり広げられる楠とスズキさんの対決は、まさに手に汗握る展開です。
そして、不器用ながら互いを思いやるスズキさんとジンスケの想いは、すれ違いながらも交錯し、やがてすべてを取り込んで1つの結末へと向かっていきます。
「疑似家族」の逃亡劇をスリリングに描ききった本作の最後は、いつまでも心に残るものになっていて、必見です。堂々の完結。ぜひご自身の目で、見届けてください。
また本巻では、スズキさんがなぜ「スズキ」になったのかという過去も語られており、彼女の秘められた想いを垣間見ることもできますよ。
「マンガほっと」で無料で読める本作。そんな「マンガほっと」で読める面白い作品を集めたこちらの記事もおすすめです。
アプリ「マンガほっと」の使い方と、おすすめ掲載作品11選!無料で読める!
「マンガほっと」は、1日で読める話数が多く、使い勝手のよさに定評がある「無料漫画アプリ」です。『北斗の拳』や『シティハンター』といった過去の名作から、『モブ子の恋』や『ワカコ酒』のような今人気の恋愛・グルメ漫画を無料で読むことができます。今回は「マンガほっと」の使い方と、無料で読める「おすすめの掲載作品11選」をピックアップして紹介します。
巨大な敵の追っ手から逃げるというサスペンスな展開ながら、殺し屋の女性と少年の関係を通じて、人との繋がりを描いた本作。スズキさんの「静かに暮らしたい」という願いがたくさん詰まっています。
サクサクと進む短めのストーリーですが、重厚でドラマチックな物語です。ぜひ読んでみてください。