漫画『ケロケロちゃいむ』の魅力をネタバレ紹介!本作は、かえる族のお姫様とかえるになった少年とが繰り広げる摩訶不思議な冒険譚です!その見どころをユニークなキャラクター紹介を通じて、お伝えいたします。
- 著者
- 藤田 まぐろ
- 出版日
『ケロケロちゃいむ』は藤田まぐろによって1995年から1998年まで『りぼん』に連載されていた人気少女漫画です。
カエルの国のお姫さまであるミモリ姫と、水を浴びるとカエルになってしまう少年アオイとの笑いあり、涙ありの冒険を描いた作品。 現代的なファッションやオブジェを取り入れつつも、メルヘンな世界観としっかり調和しています。また、少年少女の純粋な正義感、お互いに許し合う優しさなどが随所に表現されている点も本作の魅力であります。
この記事では、個性豊かな登場人物の紹介を通じて、物語の見どころや注目して頂きたい部分をお伝えしたいです。
少しの間リアルな生活を忘れて、『ケロケロちゃいむ』のキャラクター達と共に穏やかなカエルの物語を楽しんでみてはいかかでしょうか?
かえるの国のお姫様であるミモリは、他のかえる達と平和な時間を過ごしていました。ある日、人間の世界から少年アオイがやってきます。
彼はミモリの兄マカエルに水を浴びると一定時間、可愛いいかえるの姿に変身する魔法をかけられていたのです。
かえる族の魔法なのだからそれを解く方法があるかもしれない。彼女はアオイを助けることを決意します。
こうして、ミモリ姫とアオイの魔法をめぐる不思議な冒険の幕が上がります。
ミモリはかえるの国のお姫様です。10年前から両親不在のなか、数がすっかり減ってしまったかえる達と共に楽しく平和は時間を過ごしていました。アオイにかけれた魔法を解くために冒険の旅にでることになります。
ミモリは母親にそっくりの愛らしい容姿と誰にでも優しく接するおおらかさを兼ね備えた女の子です。
周りが心配するくらい人が良いお姫様でして、旅の途中で困っている人に出会うとすかさず救いの手を差し伸べます。とくにアオイのことになると彼女の献身ぶりは凄まじく、兄のマカエルからも、
「一国の姫があまり庶民に肩入れするもんじゃない......」(『ケロケロちゃいむ』2巻から引用)
と注意を受けるほど、ミモリはアオイに尽くしてしまいます。打算のない優しさがミモリの最大の魅力なのです。
親切心からミモリが手当たり次第にトラブルに突っ込んでいって、至らないところをアオイがカバーすることで事件が一つ一つ解決し、物語にリズム感が生まれます。 また、か弱いのに頑張ってる彼女の姿に愛らしさを感じるでしょう。
ミモリの過剰なまでのポジティヴ思考がなければ、そして彼女が誰に対しても温かく接する性格でなければ、本作は成り立たないと言っても過言ではありません。頑固なアオイと打ち解け、親密な関係を築くことができたのも、ミモリの深い愛があったからこそであるといえます。
物語の後半となる25話では、かえる族とへび族の抗争の歴史に焦点があてられます。実は彼女の母であるマモリが10年前に森の一部を封印して、かえるとへびの戦争を鎮めたことが明らかになるのです。つまり、ミモリの両親は生きていて、かえる族の多くがある区域に閉じ込められていたことが判明します。
ミモリは、後述するへび族のシャドやスーの妨害をはねのけ、ついに封印を解く方法を知るのですが......。最終話で彼女が森に再び真の平和をもたらすため、アオイと共に勇気を振り絞って立ち上がるシーンは必見です。
第2の主人公にして物語のきっかけでもあるアオイは、物語全編を通してミモリのナイト役を引き受けることになります。
出会って間もなく“アオちゃん”の愛称で呼んでくるミモリに対して、最初は彼女の馴れ馴れしさに嫌悪感を示していた彼でしたが、旅の途中で様々な危機を乗り越えていく内に次第ミモリと打ち解けていきます。頑なな彼が、次第にミモリの容姿や人柄に惹かれていく描写も本作のお楽しみポイントの1つでしょう。
終始ミモリの無計画な行動にひっぱりまわされるのですが、文句を言いつつも結局はミモリのために体を張ってくれるのが、彼の良いところ。
14~15話では、アーモンド国の娘ネイビーが無理やり王様と結婚させられそうになるのを阻止しようとします。当初はミモリが身代わりの花嫁となって、式の最中にネイビーを国外へ逃がす計画だったのですが、「......俺がやる!」と言って、ミモリの代わりに花嫁役を引き受けます。
将来、一国を担う姫としての彼女の立場を考えたのか、それとも演技とはいえミモリが自分以外の男性と夫婦の契りを交わす姿を見たくなかったのか、この場面のアオイの心情については色々と意見が分かれるところかもしれません。いずれにせよ、ミモリのことを大切に思っているのがはっきりと分かります。
アオイはミモリと共に魔法を解く術を知るためにあちこち飛び回ることになり、行く先々でトラブルに見舞われるのが本作の物語の主軸なのですが、彼の頑張る姿には勇気をもらえることでしょう。
一見役に立たなそうな「かえるに化ける」という力をフル活用するシーンが、これまた読者の共感を呼ぶのです。男の魅力は外見じゃなくて行動力にあるのだ、というメッセージもこの漫画には込められているのかもしれません。
アオイの最大の見せ場はやはり23~24話で語られる「マホラの神殿」のエピソードです。苦労が実り、ついにミモリとアオイは、なんでも願いを叶えることができると伝えられているマホラの神殿に辿り着きます。
ところが、あと一歩のところでへび族の王女スーの妨害によって願いを叶えることを阻止されてしまいます。さらに、崩れた祭壇の瓦礫に体を打たれ、ミモリが命を失う大惨事に......。
マホラの力をスーから奪い返したアオイは、現れた妖精に向かって自分の願いを口にします。
「魔法なんて解けなくていい。ミモリを助けたい」(『ケロケロちゃいむ』4巻より引用)
たった一度しか叶えることができない願いを躊躇なくミモリのために使うアオイ。男気ありすぎて性別関係なく惚れてしまうことでしょう。
最初は自分にかけれた魔法を解くのに必死だったアオイが、物語が進むにつれてミモリの心と体を守ることに必死になっているという変化が、物語全体を盛り上げているといえます。単純なラブラブ冒険話で完結していないのが作品のクオリティを高めているのです。
本作に欠かすことができない存在が、ミモリの兄マカエルです。ある意味、最もアオイを振り回した人物ともいえます。いうなればトリックスターのような存在です。登場する回は少ないけれど、実は物語のキーマンで、ミモリとアオイの2人の冒険が上手くいったのも彼のおかげ。
マカエルはかえる族に伝わる魔法を自由に使いこなせる王子で、その力を使ってミモリとアオイの冒険を手助けします。恰好も言動もつかみどころのない印象を受けますが、物語が進むにつれて真面目にかえるの国の平和を目指していたことが分かります。
また、妹思いの良い兄としても一面も描かれており、4話ではドールショップで妹のためにぬいぐるみを買ってあげようとしたり、22話ではミモリ達の乗った船を海賊の砲撃から守ってあげたりと、チャラチャラした見た目とは裏腹に、非常に面倒見のよい兄貴です。
見た目と行動について良い意味でギャップが生じている所が、マカエルの魅力であるといえるでしょう。
また、マカエルがいることによって物語に散りばめられた伏線が回収される点にも注目して頂きたいです。とくに、なぜアオイにかえるの魔法をかけたのかという謎が解けるのと同時に、母であるマモリが10年前にかけた封印についても真実が明かされる部分は、本作の構成力の高さを窺うことができます。
「アオイ、この先ミモリを守れよ、そのためにおまえを選んだんだ」(『ケロケロちゃいむ』4巻より引用)
と、マカエルがアオイの耳元でつぶやいたこのセリフの意味が最終話で分かった時には、鳥肌が立つかもしれません。
本作をより深く楽しむためにも、マカエルの言動にも注目してみてください。
- 著者
- 藤田 まぐろ
- 出版日
シャドはへび族の王子であり、一族の復活を目論むイケメンです。額にある第3の目で見られると相手は彼の言いなりになってしまいます。命令口調が似合う、まさに俺様キャラな人物です。
初登場は20話なのですが、ミモリとアオイが本格的に彼と対峙するのが28話以降になるためラスボスの割には存在感が薄いといえます。
しかし、10年前に森にかけられていた封印のことを知りながら妹に嘘の情報を吹き込んでミモリ達と敵対させたり、30話でミモリを地面に押し倒して第3の目を使って強引に嫁にしようとしたり、過激な性格をもった悪役として申し分のない活躍ぶりを披露するのです。
最後は、女王として覚醒したミモリのオーラと彼女のもつ純粋な心に圧倒され、シャドは自分の野望をあきらめることになります。
彼に王族としての高潔さが残っていたからこそ、かえる族とへび族の因縁に終止符をうつことができたともいえるでしょう。
18話から登場するスーは、へび族のお姫様にしてシャドの妹でもあります。とにかく負けず嫌いな女の子で、かえる族で同じ王女でもあるミモリに敵対心を燃やします。
兄に自分の両親はかえる族に殺されたと教え込まれていて、その恨みを晴らすべく、あの手この手でミモリとアオイの冒険をしつこく邪魔してくるのですが、毎回空振りに終わってしまうのがお約束です。
悪役ではあるのですが、兄とは違い情に流されるところがスーの良さです。25話で戦争を先に仕掛けたのがへび族だったことを知り、今までしてきたことを悔やんで目に涙を浮かべるシーンを見ると、実はすごく心根の優しい女の子であることが分かります。
大切なところで邪魔はしてくるけど、彼女の内面を知ることで憎み切れない敵キャラとしての地位を確立しているといえるでしょう。
また、ツンデレ属性も持ち合わせており、ミモリとアオイの仲を羨ましいとは思いつつも、30話ではシャドの攻撃から2人を守っているシーンなどは特に印象的です。
「そんなんじゃ、やっぱりわたしの相手にはもの足りないわ。せいぜいミモリとなかよくやんなさい」(『ケロケロちゃいむ』5巻より引用)
スーの方が逆に可愛くみえてくる方もいらっしゃるかもしれません。
そんな彼女だからこそ、かえる族とへび族の対立がギスギスしたものにならず、もしかすると仲直りできるかもしれないと読者に期待をもたせることができるのです。
戦いのあと、かえる族とへび族は果たしてどのような結末を迎えるのでしょうか?ラストで語られる新しい森の世界を見た時、感動を覚えること間違しでしょう!