身分違いの恋心が切ない!夫婦を演じていた彼女らは、いつしか本気で惹かれ合い……? 下町育ちの少女が王宮で言いわたされた仕事は、冷酷非情なその言動から「狼陛下」と呼ばれている国王の臨時の花嫁になることでした。深い愛情と切ない恋心が交差する、身分違いの恋物語が『狼陛下の花嫁』です。 この記事では、本作の魅力を全巻分一挙にご紹介いたします!本作はスマホのアプリで無料で読むことができるので、ぜひチェックしてみてくださいね。
その立ち居振る舞いから「狼陛下」として人々から恐れられている、国王の珀黎翔(はくれいしょう)。
下級役人の家で生まれ育った汀夕鈴(ていゆうりん)が、「短期の割りのいい仕事」と聞いて言い渡されたのは、そんな彼の臨時花嫁になることでした。
- 著者
- 可歌 まと
- 出版日
- 2009-12-04
狼と小犬の2面性を持つ黎翔に振り回されながらも、持ち前の天然さで彼を振り回す夕鈴。そんな2人を陥れようとする者も現れ、王宮での暮らしは落ち着く暇がありません。
偽物の夫婦としてはじまった関係ですが、しだいに本物の恋心を抱いていきます。しかし、そこには身分の違いという大きな壁があって……。
2人の葛藤やすれ違いが切なく、キュンとする物語です。
この記事では、そんな本作の魅力を全巻のエピソードをふまえてお伝えしていきます。ネタバレを含むのでご注意ください。
高賃金につられて王宮にやって来た汀夕鈴。言い渡された仕事は、その冷酷さから「狼陛下」と呼ばれている珀黎翔の臨時花嫁になることでした。どうやら、ひっきりなしにやってくる縁談を断る口実を作りたかったのだそう。
しかし、彼と一緒に過ごすうちに、「狼陛下」としての言動は演技だということが判明します。「妃」にだけ優しく愛の言葉をささやき、まるで子犬のようにキュートな姿を見せる彼に、夕鈴はしだいに惹かれていくのです。
周りが赤面するほどの蜜月っぷりを見せる2人。ラブラブでドタバタな王宮の暮らしがくり広げられていきます。
知人の紹介なんだが 高賃金ですごく割のいい仕事があるらしい!
(『狼陛下の花嫁』1巻より引用)
父の言葉につられて王宮にやってきた、汀夕鈴。そこで言い渡されたのは、冷酷非情で有名な「狼陛下」こと珀黎翔の臨時花嫁になることでした。
臨時花嫁の期間は1ヶ月間。給料のために我慢するか迷いますが、やはり恐怖から辞退することを決めます。しかし、側近のもとへ報告に行くと、そこには柔和な表情を見せて優しげな雰囲気をまとう黎翔がいたのです。
- 著者
- 可歌 まと
- 出版日
- 2009-12-04
実は「狼陛下」というのは、他国や臣下に侮られないためのイメージ戦略でした。夕鈴は戸惑うものの、彼が本当は怖くない人物だと知り、給料分はきちんと働こうと決めるのです。
ともに王宮で過ごすうちに、夕鈴は、彼が周りの者に向ける鋭い視線や厳しい態度と、自分だけに見せてくれる優しい表情のギャップにときめいていきます。
それは読者も同様です。「狼陛下」を演じるクールな彼の態度と、夕鈴と2人きりでいる時のまるで子犬のような態度。どちらもたまりませんね。
ただ「狼陛下」が本当に演技なのか、というのが1巻のポイントです。
もともと1ヶ月の契約だった臨時花嫁。その期限はすぐにやってきます。しかし最終日、ある理由から夕鈴は働き続けなければならない状況になるのでした……。
この時の黎翔の言葉と表情に、彼の本質を見ることができるのではないでしょうか。彼が本当に優しい人物なのか、それとも根っからの「狼陛下」なのか、考えながら読むと、この先の物語がより楽しくなるはずです。
黎翔の仕事がはかどるならと、政務室に出入りするようになった夕鈴。しかし妃が政務室にいるのをよく思わない者もおり、なかには嫌悪感を隠そうとしない者もいます。
ほかの者が「狼陛下」を恐れて何も口出しをしないなか、父親が国の重鎮を務め、本人も臨時補佐官を任されている柳方淵(りゅうほうえん)は、正面きって夕鈴に苦言を呈しました。
——厚かましいことだ
陛下の何を知るわけでもない妃妾の分際で
(『狼陛下の花嫁』2巻より引用)
黎翔に取り入るために夕鈴を狙う人物は多いですが、彼女自身に対する不満を堂々と口に出す者は初めてでした。
- 著者
- 可歌 まと
- 出版日
- 2010-04-30
方淵は「狼陛下」のことを恐れず、心から慕っている数少ない人間。彼が夕鈴にきつく当たるのは、彼女の行動で黎翔の評判が落ちるのを気にしたからでした。黎翔のことを慕っているがゆえの行動だったのです。
しかし夕鈴とは相いれず、彼女が政務室に赴くたびに2人はにらみ合うような仲になってしまいます……。
そんな時、方淵を貶めようと画策する官吏を、夕鈴が偶然見つけました。曲がったことが嫌いな彼女は、その行動におもいっきり説教をかまします。
その姿を方淵が遠くから見ていて……。
顔をあわせれば嫌味を言いあいますが、意外と性格が似ている2人。これをきっかけに仲良くなるのか、それともより険悪になってしまうのか。今後も彼らの絡みはよく描かれるので、ぜひ注目してみてください。
黎翔の愛を一身に受ける夕鈴。周りで、彼女に取り入って気に入られようとする動きが増えてきました。
なかでも国内で一、二を争う名門である氾(はん)家の家長が、会いたいと申し入れてきます。気の許せる相手ではないと乗り気でない黎翔を見て、夕鈴も気合を入れて臨むのですが、いざ会ってみると、こちらが毒気を抜かれてしまうほど和やかな男性でした。
- 著者
- 可歌 まと
- 出版日
- 2010-11-05
欲望が渦巻く王宮の暗い部分を理解しきれていない夕鈴。もともと嘘が苦手で真っ向勝負気質なため、相手の態度を真に受けてしまうことがよくあります。
王宮の大臣を務めている氾のことを「いい人」だと判断した彼女は、つい警戒を解いてしまいました。
ある日、政務室で夕鈴と氾大臣が顔を合わせていると、そこに夕鈴への贈り物が届きました。彼女が箱を開けようとした瞬間、なんと中から蛇が現れて、それをかばった氾大臣が噛まれてしまうのです。実は、これは氾の自作自演だったのですが、純真な夕鈴は気がつかないのでした。
氾大臣は次の手として、自分の娘・紅珠(こうじゅ)を夕鈴に接触させようとします。もともと国王は一夫多妻が許されているため、夕鈴がいてもこの手の縁談話はやってくるのでした。
しかも紅珠は名家の娘として気品と美しさを兼ね備えており、妃としても申し分ない人物。氾大臣の思惑どおり、紅珠は夕鈴を利用して黎翔に取り入っていくのでしょうか。
また黎翔自身も、いずれは正式な妃をもらわなければなりません。彼は紅珠のことをどう扱うのでしょうか……。
腹の探り合いが続きます。
温泉のある離宮へ赴くことになった黎翔と夕鈴。
いつもはわがままを言わない夕鈴ですが、たまには黎翔をのんびりさせてあげたいと考え、離宮へ行くことを提案しました。
- 著者
- 可歌まと
- 出版日
- 2011-04-05
しかし、この離宮は黎翔の腹違いの兄で真面目に政務をしなかった前王が気に入っていた場所です。黎翔が「狼陛下」を演じることになったきっかけも、前王が威厳を示せず、臣下に実質的な政権を乗っ取られたためでした。
さらに、いつもと違う女官や臣下だらけで、のんびりできそうな雰囲気ではありません。
夕鈴は自分の行動が空回りだったことを知りますが、黎翔は気にしていない様子。彼は以前から「臨時花嫁」以上に夕鈴のことを気に入っている素振りを見せていました。しかし、彼女の提案であれば本来は行きたくない場所に赴くほど、その想いが強いことがわかります。
夕鈴が女官からいじめられたことを隠していた際も、その異変にいち早く気づき、離宮の人間が集まった宴で怒りをあらわにしました。
何があったか妃はきいても答えようとしない
自分の中で抱え込んでしまう
しかし私は彼女を傷つけるものを何ひとつ捨て置く気になれぬのだ
覚えのある者は?
(『狼陛下の花嫁』4巻より引用)
その恐ろしさは、夕鈴も震えてしまうほど。離宮の人たちに「狼陛下」を印象付けるための演技だったとのことですが、これを見た側近の李順は「もしかして」と思案する姿を見せました。
本当にただの印象操作なのか、それとも夕鈴を傷つけたことに本物の怒りを抱えていたのか……。黎翔が彼女のことを本当はどう思っているのか、その心はまだわかりません。
まだまだ黎翔のことを知らない夕鈴。それは、彼女を大変なことに巻き込みたくないからと、彼がわざと遠ざけているためでした。
そんななか、夕鈴が臨時の花嫁であることを知っている数少ない人物、隠密の浩大(こうだい)が登場します。それからというもの、黎翔を浩大に取られてばかり。
夕鈴はついつい「狼陛下」についてもっと知ろうとしてしまうのです。
- 著者
- 可歌まと
- 出版日
- 2011-10-05
むやみに歩み寄ろうとしてきた夕鈴に対し、酔っぱらっていた黎翔は「狼陛下」のまま噛みついてしまいました。あまりのことにショックを受けた夕鈴は、家出を決行。今ではすっかり仲良くなっていた紅珠の私邸へ逃げ込みます。
そのころ、王宮内では「春の宴」の指揮を紅珠の父である氾大臣がとるのか、方淵の父である柳大臣がとるのかで揉めていました。そんな時に夕鈴が紅珠の家へ行ったものだから、「氾家が有利」という噂が広がってしまいます。
自身のまったく知らないところで、夕鈴は問題ごとの中心人物になってしまっていたのです。
紅珠の邸では、紅珠の兄で王宮に勤めている水月(すいげつ)と出会います。彼は「狼陛下が恐ろしくて働きたくない」と出仕拒否をしているところでした。
そんな彼から投げかけられた言葉で、夕鈴はある気持ちに気付いてしまうのです。
お好きなのですね 貴女は
あの方が恐ろしくても冷たくても
(『狼陛下の花嫁』5巻より引用)
「仕事だから」「バイトだから」と今まで気付かないフリをしていた自分の気持ちを、あらためて実感した夕鈴。黎翔と仲直りをして無事に「臨時花嫁」を続けられるのでしょうか。
いつの間にやら夕鈴も渦中の人物になってしまった「春の宴」の騒動。彼女は、もめている大臣同士の息子である方淵と水月の2人が協力して執りおこなうよう提案しました。
しかし、2人の性格は真逆で、意見が衝突することも多く、冷静な話し合いすらできない状況に……。
夕鈴はなんとか仲を取り持とうと必死になりますがうまくいかず、逆に目立ちすぎて、嫌がらせの怪文書まで出回るようになってしまいました。
そんななか、方淵の兄である経倬(けいたく)が接触してきます。
- 著者
- 可歌 まと
- 出版日
- 2012-03-05
「春の宴」の担当者を変えるよう打診してきた経倬。しかし夕鈴は、方淵と水月以外を担当にするつもりはありません。
——私はやっぱり あの二人の作る『陛下のための宴』が見てみたいので
他の方にお任せしたいとは思いません
(『狼陛下の花嫁』6巻より引用)
この言葉を聞いていた当の方淵と水月。今までの不和が嘘のようにそれぞれの作業を分担し、準備を進めていきました。
そして、無事に迎えた宴当日。妃が花駕籠に乗って陛下に花の枝を渡す、という段取りがおこなわれる時のことです。経倬の思惑で、なんと花駕籠が壊れてしまいました。
しかし夕鈴は自らの足で広い庭園を巡回し、黎翔の元まで辿り着くのです。
この時の方淵と水月の表情や、いつも政務室で顔を合わせている面々の対応は、夕鈴が王宮にやってきた頃からは想像できないもの。実際に読んでみると、心打たれるものがあるでしょう。
罠を仕掛けてくる敵はたくさんいますが、着実に味方も増やしている夕鈴。よくも悪くも、王宮内の思惑は彼女を中心に動いていきます。
以前、家出をしたときに「給料ドロボー」と言われたことを気にして、何があっても立ち向かえる「プロの臨時花嫁」を目指すことにした夕鈴。まずは相手のことをよく理解することが大切だと、黎翔についての調査を始めます。
一方の黎翔は、「春の宴」が終わったにも関わらずいまだに方淵や水月と仲良く話す夕鈴に対し、多少の寂しさを感じているようでした。
僕のことは もう飽きちゃった?
あいつらといる方が楽しい?
(『狼陛下の花嫁』7巻より引用)
- 著者
- 可歌 まと
- 出版日
- 2012-09-05
小犬の黎翔に弱い夕鈴。抱きとめられた動揺も忘れ、彼に寄り添おうとしました。
そんなわけないでしょう? 貴方の妃ですよ
(『狼陛下の花嫁』7巻より引用)
この言葉に安心したのか、すぐに狼陛下に戻る黎翔。読者もそんな彼のギャップに魅了されてしまうはず。
そんな時、夕鈴の実家から急ぎの帰郷を願う手紙が届きました。父が持ち込んだ厄介ごとの後始末として、幼馴染の几(き)家で小間使いをすることになってしまいます。
しかし、おばばにこき使われて数日が経ったころ、なんと黎翔がお忍びで突撃してきました。
夕鈴! 来ちゃった!
君はもう少し 君の夫を頼ってくれないか
(『狼陛下の花嫁』7巻より引用)
自分の恋心に気づいてしまった夕鈴にとって、これは非常に戸惑う言葉。演技だからと割り切るには限界があります。
己を律し、彼を頼らずになんとかしようとしますが、さらなるいざこざに巻き込まれ……。王宮を出てもトラブルが襲うのです。
夕鈴が戻ってきてから、これまでは積極的に臣下の前でおこなっていた仲睦まじさアピールが減った黎翔。その様子に、彼女は不安になってしまいます。
なんとか話をする機会をうかがいますが、政務が忙しそうでタイミングがありません。
- 著者
- 可歌 まと
- 出版日
- 2013-04-05
どこかよそよそしい黎翔の態度に、夕鈴はついに爆発。
クビでしょうか私!!!
(『狼陛下の花嫁』8巻より引用)
パニックになる彼女を落ち着かせようと、黎翔は自分の考えを伝えました。
どうやら彼女が実家に戻っている際に、黎翔がちょっとしたからかいをしたせいで夕鈴が熱を出してしまったことを気にしていたようなのです。それで距離感を測りかねていた、と。
陛下にされてイヤなことなんて何も——
(『狼陛下の花嫁』8巻より引用)
顔を真っ赤にして、目に涙を溜めてこんなことを言う夕鈴。黎翔の手は、自然と夕鈴の顎を掴んでいました。
しかし、彼女は花に気を取られてすっと身をかわしてしまうのです。このタイミングで……!とやきもきしてしまいますが、狙ってやっていないのが夕鈴のすごいところ。
「狼陛下」に振り回されてばかりかと思いきや、彼女自身も彼を振り回していました。
2人の距離は縮まったり離れたりでなかなか落ち着きませんが、今後の関係がどう変わっていくのか注目です。
事故でキスをしてしまった夕鈴と黎翔。夕鈴はとんでもないことをしてしまったとクビを覚悟しますが、黎翔はあまり気にしていない様子です。
まだ働けることに安堵する一方、彼にとってキスは何でもないことなんだと、少し引っ掛かりました。
そんななか彼女は、黎翔の叔母の瑠霞(るか)に誘われてピクニックへ行きます。しかし、そこにいたのはたくさんの美しい娘たち。瑠霞が用意した、妃として相応しい人物が揃っていたのです。
- 著者
- 可歌まと
- 出版日
- 2013-10-04
「もっときちんとした相手がいる」と夕鈴に現実を突きつける瑠霞。しかし、夕鈴も毅然とした態度で立ち向かいます。
今までもこれからも変わりなく
心ひとつであの方の味方です
(『狼陛下の花嫁』9巻より引用)
嘘の立場に本当の想いを乗せた、彼女の言葉です。そしてそこに、夕鈴を心配してやってきた黎翔が登場します!
しかしこの2人、先日のキスの件でまだギクシャク。黎翔はキスのことをまだ怒っているのかと問いますが、夕鈴は意地になり、「大したことない」という彼の態度をそのまま返すのです。
すると、そんな彼女にしびれを切らしたのか、黎翔は「臨時花嫁」には決してしないであろう行為を、瑠霞やその他大勢の女性の前で実行します……!
地方視察へ赴くことになった黎翔。夕鈴も同行させます。
表向きの仕事をあらかた終わらせると、夕鈴、側近の李順、隠密の浩大、そして気の許せる部下のひとり克右(こくう)とともにお忍びで出かけることにしました。ここでは演技をする必要はないのですが……。
- 著者
- 可歌まと
- 出版日
- 2014-04-04
夕鈴はまだ黎翔の行動を演技だと信じていますが、彼自身は演技ではなく本心から彼女のそばにいたいのです。
すっかり黎翔のことを好きになっている夕鈴にとっては、もちろん嫌なことではありませんが、クビになることは避けたいと冷や冷やしていました。
そんななか、克右と2人きりになるタイミングが。夕鈴のことを「陛下が気に入っているただの王宮の掃除婦」だと思っている彼は、冗談で彼女の背中を押すようなことを言います。
その言葉を「立場が違う」と全力で否定する夕鈴ですが、「自分は叶わない恋をしている」という現実を実感し、思わず涙を流してしまいました。
理性では抑えられないほど、黎翔のことを好きになってしまっていたのです。
しかしそれは黎翔にとっても同じこと。作中では明言されませんが、彼の視線や言動が夕鈴への愛を雄弁に語っています。
いつのまにか2人の想いは、演技や仕事を超えていました。
夕鈴が「臨時花嫁」であることが、克右にばれてしまいました。ただ、もともと彼は事情を知っても問題ない人物で、隠していたのはなりゆきだったそう。
これからは彼も夕鈴の味方となってくれることになりました。
視察を終えて、黎翔と夕鈴は王宮に戻ります。しかし出発前とは何かが違い、どこか冷たい空気が流れていたのです。
- 著者
- 可歌まと
- 出版日
- 2014-08-05
夕鈴の預かり知らぬところで、どんどん空気が悪くなっていく王宮。妃を愛するあまり政務が疎かになった前王と、黎翔が同じ道を歩むのではないかと危惧する者が増えたのです。
あとどれくらい王宮に居られるのか夕鈴が考えていたころ、李順からついに「終了」を言いわたされてしまいました。
もともと1ヶ月とされていた期間が延びたのは、夕鈴が王宮の陶器などを壊してしまい、その借金を返済する分を稼ぐため。本来はまだ働かなければならない状況で伝えられた「終わり」を、彼女は静かに受け入れます。
ただ、繋がりがすぐに消えないよう、借金は地道に返すことを約束しました。
任期満了までの間、表面上はいつもどおりに過ごす夕鈴と黎翔。しかし最後の日、黎翔はついに「狼陛下」が演技ではなかったことを明かすのです。
行動で愛を示す黎翔に対し、夕鈴も王宮にいたい気持ちを吐露しますが、それは叶いません。大切だからそばにいさせてほしい夕鈴と、大切だから遠くにやりたい黎翔の想いはすれ違ったままです。
いつか来る別れでしたが、読者にとっても非常に悲しい展開です。離ればなれになってしまった2人が何を思い、どう過ごすのか、最後まで目が離せません。
実家で以前のように暮らしていた夕鈴のもとに、宰相の周が現れました。彼も「臨時花嫁」を知る人物のひとりです。
彼が伝えてきたのは、権力争いから遠ざけるため、王都から出てほしいということ。
王宮内では妃も跡継ぎもいない黎翔に代わって、地方にいる腹違いの弟・晏流公(あんりゅうこう)を呼んではどうかという意見が一気に広がり、それと同時に元寵妃である夕鈴を権力争いに利用しようとする動きが出ていたのです。
- 著者
- 可歌まと
- 出版日
- 2015-03-05
黎翔は、離れていても夕鈴のことを大切に想い続けていました。彼の想いと事情をすべて受け入れた夕鈴は、晏流公が暮らしている壬州へと向かいます。
そしてなんと、晏流公の邸で使用人として働くことにするのです。当初の目的は彼の顔を見ることでしたが、ふとしたことがきっかけで晏流公とその母親の蘭瑶と親しく話すような間柄になりました。
どんな相手でも仲良くなってしまうのは、ある意味彼女の才能といってもよいでしょう。ただ、彼女は人を疑えない性格であるため、読者からすれば少しハラハラさせられるでしょう。
晏流公は、素直に黎翔のことも夕鈴のことも慕っているようでしたが、蘭瑶は内に秘める思惑がありそうで……。
その後、浩大や克右の協力で、夕鈴は王都に戻ることができました。
蘭瑶と裏で繋がっていた闇商人を追って、妓館へ潜入調査することになった夕鈴、方淵、水月の3人。自由に動き回れる夕鈴が内部を捜索し、密会がおこなわれている部屋を突き止めました。
あとは浩大と克右の2人に任せようと待機していると、そこへ別の案件で闇商人を追っていた黎翔が現れます。
- 著者
- 可歌まと
- 出版日
- 2015-09-04
思わぬ形で再会した2人。積もり積もった想いや聞きたいことがたくさんありましたが、密会場所から銃声が鳴り響きます。
夕鈴はなんとか事前に蘭瑶の企みを止めようとしていたのですが、それは黎翔のことを慕っている晏流公のため。蘭瑶と闇商人が繋がっていることが黎翔にバレるのを恐れて、彼が部屋に向かうのを止めるのですが……。
これはもう君が悪い!!
(『狼陛下の花嫁』13巻より引用)
無事に闇商人を捕らえた黎翔は、そのまま夕鈴を王宮へと連れていきました。そして闇商人のこと、晏流公のこと、母のこと、自分のこと……これまであえて夕鈴に教えてこなかったことを、ひとつひとつ説明していきます。
そのなかで彼が夕鈴に伝えた、演技ではない本音とは……。
長いすれ違いを経た2人の、本当の夫婦生活が幕を開けます。
「臨時花嫁」時代は、王都で「王をたぶらかす悪女」と噂されていた夕鈴。王宮を離れている間に死亡説なども出ていたことから、今度は「妖怪妃」と言われるようになってしまいました。
しかし、これからは本当の妃として、正しい教養や立ち居振る舞いを身に着けるべく奮闘します。
そして、晏流公とともに王宮に呼び戻された蘭瑶に教育係をお願いしました。かつて華やかな後宮で妃をしていた蘭瑶は、夕鈴にとってこれ以上ないお手本だったのです。
- 著者
- 可歌まと
- 出版日
ダメ元でお願いしたものの、蘭瑶は教育係を引き受けてくれました。夕鈴も、まっとうな妃を目指して努力します。
そんななか、彼女のことを嗅ぎまわる人物が現れました。炎波国の密偵です。
さらに炎波国の王女・朱音も報せなくやってます。側近の李順は予定が狂うと怒りますが、相手は気にしません。そして妃として現れた夕鈴を一瞥すると、皮肉を込めたひと言を放ちました。
しかし、ここは蘭瑶から指南を受けた夕鈴の腕の見せどころ。さらりとかわすその姿に、本物の妃としての成長を感じます。
しかも彼女がもともと持っている、誰とでも仲良くなれる才能は変わらず発揮。炎波国の密偵に懐かれる一歩手前でした。
さて、朱音はいったい何の目的でやって来たのか、密偵がどんな動きをするのか、本物の新婚生活も波乱万丈です。
夕鈴にとって朱音は、いわばライバル的な存在。仮に黎翔と朱音との間に縁談話などが出れば、一足飛びに「正妃」になることを意味します。
夕鈴はどんな手を使ってでも、黎翔が他の人を選ばないように仕向けなければなりません。
- 著者
- 可歌まと
- 出版日
蘭瑶と紅珠のアドバイスで、浮気対策のためのスキンシップを普段から取り入れるようにした夕鈴。自分から積極的に黎翔と触れ合います。
しかし朱音も黎翔に近づこうとしており、やはり「正妃」の椅子を狙っているようでした。
夕鈴は、荒波を立てずに親善交流をしようと試みます。朱音がひとりになるタイミングを見計らって、あとを追いました。しかし、そこには何者かに襲われて倒れている朱音が……。
果たして、誰が彼女を襲ったのでしょうか。また、朱音はなぜ「狼陛下の妃の座」を狙うのでしょうか。
その理由がわかるころ、夕鈴と朱音の関係にも変化が訪れます。
朱音が帰り、やっと2人だけの時間が戻ってきました。夕鈴は蘭瑶の教えにしたがって妃らしく黎翔をときめかせようとしますが、彼が狼と小犬を使いわけるため、かえって夕鈴の方がときめいてばかりいます。
夫婦になってからというもの、以前よりもラブラブっぷりが強まってきました。
- 著者
- 可歌まと
- 出版日
そんな黎翔に振り回されてばかりの夕鈴は、まるで毎日新しい恋をしているよう。彼の仕事が忙しくなると必然的に会える時間が減ってしまうので、勉強の合間をぬってなるべく顔を合わせるようにしていました。
ある時、黎翔が夕鈴に触れると、彼女はつい涙を流してしまうのです。
黎翔は後宮以外では厳しい態度をとっているため、自分を恐れてしまったのかと戸惑いますが、そうではありません。夕鈴は小犬の時の黎翔だけでなく、「狼陛下」の時の彼のことも好きでした。その想いがあふれすぎて、涙になってしまったのです。
しかし黎翔は「嫌われたくない」という心配から、夕鈴との距離をはかりかねてしまいました。
自分の気持ちを隠すのが上手な黎翔と、自分の気持ちをうまく伝えられない夕鈴。まだ完全に心を通わせあっているわけではありませんが、それでもお互いのことを想っていることは確かです。
国王は恐ろしい「狼陛下」、その妃は死んでも蘇る「妖怪妃」……世間からさまざまな噂をされる2人。そんななか、黎翔は夕鈴の前でも「狼」でいることが増えました。
その発端は、突然の噛みつき……。夕鈴が政務室の人々と話すのが楽しいと言った際、黎翔が彼女の頬に噛みついたのです。
それからというもの、黎翔は隙あらば夕鈴の指などを噛むようになります。彼には、まだ何か言っていない秘密があるのかもしれませんね。
- 著者
- 可歌まと
- 出版日
黎翔が夕鈴に対する狼化を進める一方、世間では夕鈴の噂がさらに広まっていきます。
彼女が王宮に戻ってきた時から、国内では「妖怪妃」の噂はありましたが、最近では国外でも聞くように。そして、なんと王宮内でも彼女を妖怪扱いする者が登場します。
新たに政務室に配属された恵紀鏡は、黎翔の父の時代に働いていた人物の孫。白陽国五大家のうちのひとつの出でした。どうやら祖父から頼まれて夕鈴のことを探っているようです。
しかも、夕鈴の周りに妖怪を退治するという呪符を置くなど、本物の妖怪扱いをしてきて……。
辛抱きかなくなった夕鈴は、紀鏡になぜそのような扱いをするのか問い質そうとしますが、話を聞く前に相手が泣いてしまいます。怒りが削がれて逆に励まそうとしたところ、その隙をついて紀鏡がある行動に出るのです。
これが後に、王宮の官吏からも「妖怪妃」として恐れられるきっかけになるのですが、果たして何が起こったのでしょうか……。
黎翔との日々にも、王宮での視線にも慣れてきた頃。変わらず夕鈴にちょっかいをかける恵紀鏡から、黎翔と宰相である周の不仲説について聞かされます。王宮内ではよくあるただの噂だろうと思った夕鈴ですが、やはり気になったのか、彼女は直接、黎翔に訊くことに。
ただ黎翔自身はあまり話したくないのか、質問には答えず誤魔化します。誤魔化されると知りたくなる性分の夕鈴。黎翔と古い付き合いの浩大に2人のことを尋ねますが、「詳しいことはいつか本人から話されるだろう」ということしか教えてもらえませんでした。
- 著者
- 可歌まと
- 出版日
浩大の話で余計2人の関係が気になった夕鈴は、周に直接尋ねることに。周も詳しいことは話しませんが、ただ黎翔との間に絶対的な溝があることだけを伝えます。
…私が以前 陛下からのご信頼を失ったから…にございます
(『狼陛下の花嫁』18巻より引用)
しかし、周もこれ以上は言いたくないのか言えないのか、すぐに話をすり替えます。そのすり替えた内容がいけなかったのか、通りがかった「狼陛下」の怒気が一体を包んだのです。
己の領分からは出るなと 私は昔お前に言ったな?
(『狼陛下の花嫁』18巻より引用)
この怒りは、夕鈴が青ざめて腰を抜かすほどの本気さ。不安そうな彼女に心配をかけまいとする黎翔ですが、かえって彼女にはもやもやとした気持ちが残ります。そして悩んだ末、黎翔が過去を話さない限り檻で囲まれた部屋から出ないと宣言するのでした。
彼女の気持ちを汲み、黎翔はついに周との過去を話すのですが……。
彼からすべてを聞いた夕鈴は2人のすれ違いを知り、元に戻らなくとも少しでも互いの心を知れればと場を設け、黎翔の心の穴を埋めようと尽力するのです。
ふたりの間に溝を作った原因は切ないもの。しかし今までの展開から、夕鈴なら何とかしてくれるだろうという希望も持てます。
また本巻では、ついに踏み込んだ関係になる2人の様子にも注目していただきたいです!最終巻に向けて加速していく物語から、目が離せません。
階段で転倒したことによって、頭を強打してしまった夕鈴。なんと、彼女は記憶喪失になってしまいます。そしてバイトとしてここへ来たこと、さらには黎翔のことも、何もかも忘れてしまっていたのでした。
誰を見ても、宮廷でのことをまったく思い出せない彼女。ついに、下町に帰ると言い出してしまうのです。
そんな彼女に対して、黎翔は……。
- 著者
- 可歌まと
- 出版日
夕鈴の様子を見て、彼女を故郷へ連れて帰ることにした黎翔。そして自分の生まれ育った家に着いた夕鈴が見たものは、自分の記憶とは大きく変わってしまった実家でした。そのことに少なからずショックを受けることとなるのです。
一方、黎翔は几鍔から夕鈴の過去について聞くこととなります。本当は泣き虫だった夕鈴。そんな彼女が変わったきっかけは、母親の死でした。それから、彼女は弟たちを守るため強く生きることを決めたのです。
最終巻となる本巻のポイントは、夕鈴が階段から落ちて頭を打ってしまった理由です。低い階段だったため、本来そのような転び方はしなくて済むはず。しかし、彼女が頭から転んでしまったのには、あるわけがあったのでした。
ここは最終話にも繋がる、非常に大事なポイントとなっています。彼女の強さ、そして黎翔との愛が感じられるその理由とは……。
本作の最後では、その後の2人の様子が描かれています。思わず優しい気持ちになれる、感動の結末。アルバイトと国王という身分違いの恋の行く末を、ぜひ見届けてください。
番外編があり、2人のその後が見られる内容もあるようなので、気になった方はそちらもどうぞ。
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