『禁猟六区 コード・アムリタ』の魅力を全巻ネタバレ紹介!

更新:2021.11.12

「月刊ヒーローズ」に連載されているヴァンパイア・アクション『禁猟六区 コード・アムリタ』は、人間と吸血鬼たちが共存する非日常世界を描いた作品です。東京・下北沢を舞台に繰り広げられるハードボイルドな物語を全巻ネタバレ解説します!

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『禁猟六区 コード・アムリタ』の魅力をネタバレ紹介!

著者
["森橋 ビンゴ", "秋重 学"]
出版日
2016-11-05

『禁猟六区 コード・アムリタ』は小学館の「月刊ヒーローズ」に掲載された漫画作品です。当初は読み切り作品として掲載されていましたが、作品が各所で話題となり、単行本化されました。2018年現在はシリーズの序章にあたる0巻と、1~2巻が発売されています。原作は、ゲームシナリオライターとしても活躍する森橋ビンゴ、作画は『フライ,ダディ,フライ』の秋重学が手掛けます。

本作は「吸血種」と呼ばれるヴァンパイアを扱った作品です。主な舞台となるのは、東京の下北沢。エロスとバイオレンス溢れるヴァンパイア・アクションと、下北沢のオシャレだけどどこか猥雑な雰囲気が非常にマッチしています。

作品世界では、ヴァンパイアたちは正体を明かして人間の中で堂々と生活しています。しかし、そこには人間からの明確な差別意識が存在し、ヴァンパイアたちの行動には様々な制限が設けられているのです。上手く共存しているかに見えて、やはり対立している人間とヴァンパイア。アンダーグラウンドの美学とロックに彩られた下北沢が、緻密で美しい秋重学の絵によってハードボイルドに描かれているのも魅力です。

漫画『禁猟六区 コード・アムリタ』あらすじ

漫画『禁猟六区 コード・アムリタ』あらすじ
出典:『禁猟六区』0巻

5年前、吸血種の存在が世界に認められて以来、人間は彼らと共存することになりました。それまでは本性を隠して生きていた吸血種も、もはや当たり前の存在になったのです。しかしそんな吸血種たちも、差別され、行動を制限されて生きるに留まっていました。 

高校生・桜井太陽は人一倍吸血種に理解を持つ少年でした。なぜなら、彼の恋人は吸血種。そして、三条真琴という吸血種と関わることで、彼らに興味を持つようになったのです。 

そんな中、ROV(ロブ)という組織が水面下で動き始めます。彼らは表向きは吸血種を守る団体でしたが、実は人間や吸血種を誘拐しては「アムリタ」というドラッグの実験台にしていました。アムリタを摂取した者は凶暴化・異形化してしまいます。一方、警視庁担当監査室も「アムリタ」について捜査を開始。再開発が進む街は、吸血種や異形が跋扈する魔界に変貌していくのです。

それは人間と吸血種の共存から始まった!漫画「禁猟六区」0巻ネタバレ紹介

学校を欠席している桜井太陽には吸血種の彼女がいる、と教室で話題になっていました。一方、タバコを吸う太陽と一緒にいるのは、吸血鬼の三条真琴。現在はミステリー作家をしている真琴と太陽が出会ったのは、東京・下北沢でした。
 


2人が出会うきっかけになったのは、真琴が太陽をナンパしたこと。しかし太陽は真琴と出会ったことで、吸血種にもいろいろなタイプがいるということを思い知らされます。このことがきっかけとなり、太陽はそれほど吸血種に対して偏見を持たなくなりました。

ある時、テレビから、同意のない吸血をおこなって逃走中の吸血種の男に逮捕状が出たというニュースが流れます。一応戸締りをしておこうとする太陽でしたが、何と窓から見知らぬ男が侵入、太陽を拘束してしまいます。男曰く、太陽は「上物の血」を持っているというのですが……。

著者
["森橋 ビンゴ", "秋重 学"]
出版日
2016-11-05

男が太陽に襲い掛かろうとした時、ひとりの少女が現れました。彼女は、望月天音。特別な許可により、人間として生きている吸血種でした。

世界観の紹介と、ストーリーの「序章」的な位置付けの0巻。人間と吸血種という奇妙なカップルの太陽と真琴が描かれます。これまでに吸血鬼ものの作品は数多くありましたが、本作のように吸血鬼が公に認可され、人間との共存を許されているという設定は新しいのではないでしょうか。

とはいえ、吸血鬼は差別され、制限を受けて暮らしています。公共の場での吸血行為は禁止、同意のない吸血行為も禁止、居住可能な地域も都内の指定された通称「特定六区」のみ。この「六区」とは、港区・千代田区・豊島区・新宿区・渋谷区・世田谷区を指します。こういった制限のひとつひとつが、彼らと人間との間に消えない軋轢があることを示し、世界観をよりダークなものにしています。

また、主人公のひとりである桜井太陽は「上質の血」を持つ少年です。彼の血を吸った吸血種は、男女問わず一種のトランス状態に陥ってしまうほど。彼はなぜそのような特性を持っているのでしょうか。そして太陽の前に現れたもう一人のヒロイン・望月天音は、自分も吸血種でありながら、美学に反する吸血種たちを銀のギターでなぎ倒していきます。銀といえば吸血鬼の弱点のひとつですが、なぜ天音が平気で使うことができるのかということも気になってきます。

 

違法ドラッグ「アムリタ」の謎…漫画「禁猟六区 コード・アムリタ」1巻ネタバレ紹介

始まりは5年前。長年秘匿されてきたその真実は、米国の大統領によって全世界に公表されることになりました。

この世界には 吸血種(ヴァンプ)が存在する―
(『禁猟六区 コードアムリタ』1巻より引用)

東京・下北沢では、今日も吸血種たちが人間に紛れて生活していました。5年前のあの公表以来、彼らは自分たちの正体を公にして堂々と暮らしているのです。下北沢の路上では、ROV(Rights of Vamps)という団体が、吸血種の生活圏の拡大を訴える署名活動をおこなっています。しかしこの活動には、何となく裏がありそうです。

警視庁担当監査室では「特定六区」の担当たちが集まり、「アムリタ」なるものについての会議が開かれます。そして銀座では、ROVが太陽の写真を手に入れていました。下北沢の街頭での署名活動は、太陽に関する情報を手に入れるための偽装工作だったのです。

著者
["森橋 ビンゴ", "秋重 学"]
出版日
2017-05-02

その夜、太陽の自宅に男が不法侵入してきます。彼は待機していた真琴によって気絶させられましたが、怪しい車両を追いかけた天音は、犬のマスクを被った男と対峙。銀のギターの一撃で倒したように見えましたが、マスクを吹き飛ばされた男は、異様な風貌をしていたのです。異様に長い牙・赤黒い目……なぜか銀のギターが効かず苦戦させられる天音でしたが、止めに入った警察官に助けられ何とか男を鎮圧します。

現場に来た真琴が放った「アムリタ」という言葉。最近、吸血種の間で「アムリタ」と呼ばれる新種のドラッグが流行っているというのです。ROVが怪しいと踏んだ真琴でしたが、そんな彼女の前にROV代表秘書の雪村蝶子が姿を現しました。一方、太陽と天音は虐待されているらしき少女・実花と出会います。

人間と吸血種の軋轢によって不穏な雰囲気が消せない下北沢でしたが、タイトルを「コード・アムリタ」と改めたこの巻からは、それが示すとおり「アムリタ」というドラッグの姿が見え隠れし始めます。加えて、ROVというNPO団体に見せかけた組織も太陽を狙っていることがわかります。やはりそれは、太陽の血が目的なのでしょうか。

天音が対峙した吸血種の男は異形と化しており、銀が効きません。真琴はそれをアムリタの効果ではないかと推測しますが、アムリタの正体はまだまだ未知の領域。太陽たちの周りでこれから何が起こるのだろうと、読んでいる方もハラハラさせられます。

そして実花を救う過程で、異形化した吸血種たちがどろどろに溶けて死んでしまう場面を目撃した太陽。精神的に弱っていたところを天音に元気づけられましたが、さらに死人が続出。まだまだ底の知れないROVと、アムリタについて独自に捜査を進める警視庁。誰がどこまで謎に迫れるかということも、今後の見どころになりそうです。

血の連鎖が止まらない!漫画「禁猟六区 コード・アムリタ」2巻ネタバレ紹介

バンド活動をしている天音にスポットを当てた冒頭では、様々なバンドの新キャラたちが登場。それぞれのバンド内にも確執があることがわかるシーンです。

天音にチケットをもらってライブを見にきた太陽は、ライブハウスの中で不審な黒づくめの人影を見かけます。やがて、ライブハウスのトイレで全身噛み跡だらけの男性の死体が発見されました。警視庁によると、4日前にも似たような状態の死体が見つかっていたというのです。

その時、突然ライブハウスの天井を突き破り、黒い人影が出現します。その人物はその場にいた「Junky Junction」のボーカル・流を誘拐し、外へ出て行ってしまいました。追いかけた天音の前に、警視庁のマスコットの着ぐるみをきた何者かが出現、その攻撃により天音は左手の中指を切り落とされてしまいます。
 

天音は、これではギターのコードが抑えられないと激怒、吸血種の本性をむき出しにして反撃します。一方、ライブハウスでは「エンジェル・まぁく」のベーシスト・竹岡鳴が太陽に襲いかかってきました。彼女は背後から刺されて絶命するのですが、刺したのは真琴らしき人物であることに太陽は気が付きます。真琴はROVに近付くことで、アムリタの原料に迫っていたのですが……。

著者
秋重学 森橋ビンゴ
出版日
2017-11-04

アムリタよりも、太陽と天音を取り巻く狂気にスポットが当てられた印象のある2巻。同じバンドのボーカル・近松歌子に対する竹岡鳴の異常ともいえる執着心には、背筋が寒くなるのではないでしょうか。彼女は普通の人間ですが、吸血種である歌子と同じになりたいという強い願望から太陽を襲ったのです。

また、怒りによって作中で初めてその本性をむき出しにした天音は、過去にもそれで悲しい思いをしている描写がされています。教会で育った天音は叔母に「悪魔の子」と呼ばれて忌み嫌われていたようです。それがどうして銀のギターを片手に吸血種に対して制裁を加える存在となったのか、興味が沸いてきますね。

そして、2巻では暗躍を始める真琴。彼女の目的も少しはわかるかと思っていても、やはり肝心のところはまだまだ見せない展開のようです。天音と世田谷区担当監査官・佐京慎一郎がどのような経緯で信頼関係を築くにあたったのかということも含め、キャラたちを取り囲む人間関係がこの巻で少しずつ明らかになっていきます。

ストーリーはまだまだ謎に包まれ、読者に手の内を見せない『禁猟六区』。今後、主人公たちの感情がどう動いていくのかにも注目したいですね。

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