『デッドマン・ワンダーランド』で一挙にブレイクした片岡人生。緻密な構成と、美麗な筆致からくり出される凄惨な表現に定評があります。今回は、そんな魅力が最大限に楽しめる4作品をご紹介しましょう。
京都府出身の女性漫画家であり、イラストレーターの片岡人生(かたおかじんせい)。同じく漫画家の近藤一馬と結婚しています。
『交響詩篇エウレカセブン』は、片岡がシナリオとキャラクター作画を担当、近藤がロボットの作画を担当するという共著という形で発表しました。それ以降もほとんどの作品を共作しており、ペンネームこそ別々ですが、実質的には2人組の漫画家だといえるでしょう。
どこか退廃的で美麗なタッチの絵柄に定評があり、その一方でグロテスクなストーリーの作品も目立ちます。片岡も近藤も、本来はグロやスプラッタは苦手だそうですが……。
この記事では、そんな彼女が手掛けた作品のなかからおすすめのものを4つご紹介しましょう。
舞台となっているのは、2033年の近未来です。10年前に「東京大震災」が起き、主人公の五十嵐丸太(いがらしがんた)は長野県へ避難して暮らしていました。
平穏な日常を送っていましたが、彼の通う中学校に「赤い男」が出現したことによって、その生活は一変します。
「赤い男」は丸太以外のクラスメイトを惨殺し、唯一生き残った丸太は殺人犯として民営刑務所「デッドマン・ワンダーランド」へ送られるのです。
そこで幼馴染だというシロや「デッドマン」と呼ばれる能力者と出会い、さらにある力にも目覚めていきます。
- 著者
- ["片岡 人生", "近藤 一馬"]
- 出版日
- 2007-09-26
2007年から「月刊少年エース」で連載されていた作品で、2011年にはテレビアニメ化もされました。
刑務所という閉鎖空間でくり広げられる超常能力を用いたサバイバルアクション。特徴は、なんといっても緊迫シーンが連続することでしょう。ただ矢継ぎ早に続くのではなく、一瞬の安堵を挟んで衝撃的な展開がされていくので、心臓に悪いのです。
無実の罪で投獄された丸太ですが、彼の出自や刑務所の存在自体が後のキーポイントになります。このようなサスペンス要素がある一方で、少年漫画らしい成長や戦闘シーンも見どころ。
「デッドマン」とは何なのか、「赤い男」の正体は誰なのか、そして丸太の過去とシロの関係は……?
『デッドマン・ワンダーランド』については<漫画『デッドマン・ワンダーランド』の魅力をネタバレ紹介!シロの正体は…?>の記事で紹介しています。気になる方はあわせてご覧ください。
人間の運命は「魂」が大半を決定しています。現世を滞りなく終えた「魂」は来世に移行し、成長していくのです。
ところが予定外に人間が亡くなってしまうと、運行に支障が生じることもあり、そうすると「魂」は砕け散ってしまいます。
主人公の桜井と天野は、そんな「魂」を人知れず管理しています。「魂」を救済するためならば現世の肉体を殺すことも厭いません。
- 著者
- 片岡 人生
- 出版日
- 2010-11-22
2009年から「モーニング」で連載されていた、原作・前川知大、作画・片岡人生の作品。
物語の冒頭では、20世紀初頭にアメリカのとある医師がおこなった実験について語られます。それは、死の間際にいる人間の体重を測定し、死後と比較して「魂の重量」を計測しようというものでした。実験によると、人間は死ぬと約21グラム軽くなるそうです。
本作では「魂」に重さがあるという点に着目し、主人公の2人は、肉体を離れて物質化した「魂」の記憶を読み取ったり、砕けてしまった「魂」が周囲にもたらす負の影響を除去したりしています。このような彼らの行動は、いわば輪廻転生を滞りなく遂行するための補助役だといえるでしょう。
またこの救済も、ただ単に命を救うものではないのが、物語に奥深さを与えています。社会問題にも踏み込んだ、青年漫画ならではのビターな味わいとなっています。
主人公は、行方不明の父親に負い目がある14歳の少年、レントン・サーストン。周囲からは浮いた存在として毎日を過ごしていました。
そんなある日、LFOと呼ばれる人型兵器が彼の前に現れます。機体の名は「ニルヴァーシュ」といい、乗っていたのはエウレカと名乗る少女でした。
この出会いによって、燻っていたレントンの運命が動き出します。エウレカに誘われて反政府ゲリラ「ゲッコーステイト」に参加し、恐ろしい計画をめぐった争いのなかへ巻き込まれていくのです。
- 著者
- ["片岡 人生", "近藤 一馬", "BONES"]
- 出版日
- 2005-07-26
2005年から「月刊少年エース」で連載されていたBONES原作の作品。テレビアニメ、劇場アニメも制作されました。
物語の舞台は、地球から遠く離れた、「トラパー」という粒子が大気を覆っている惑星。ここに人類が移住しています。
謎の美少女、隠された機能を持つ人型メカ、そして世界を揺るがす陰謀……と娯楽作品に求められるおおよそすべての要素を備えつつ、神秘的なストーリーがくり広げられていきます。
漫画版は、アニメ版と基本的な設定を共有しつつも異なる展開を見せ、おそらく意図的なテンポの良さと凝った構図に魅了されてしまうはず。アニメを知っている方は違いを楽しみながら読むのもよいでしょう。
独特の行動指針で生きる角上陽光(かくじょうようこう)は、妹の美来(みらい)と2人で仲良く暮らしていました。
脚が不自由だった美来は、最新の医療技術で移植を受け、歩けるようになります。しかし移植されたパーツに問題があり、凶暴なモンスター「8∞8(スパイダー)」に変貌してしまうのです……。
スパイダーと化した妹に命を狙われ、瀕死の重傷を負った陽光。そんななかで、スパイダーを狩る異形の義肢集団「ジャカローブ」と出会いました。
- 著者
- ["片岡 人生", "近藤 一馬"]
- 出版日
- 2016-03-23
2015年から「月刊少年エース」で連載されている作品。片岡と近藤のタッグが送る、未知のスチームパンクアクションです。『デッドマン・ワンダーランド』と比べると、息も付かせぬアクションとスプラッター展開にさらなる磨きがかかっています。
歯車やネジ、スプリングが主体のメカメカしい義肢に、「黒い鬼」とも言われる古き良きスチームパンクなその見た目は、先端科学の生体パーツが変貌したスパイダーとの対比になっています。
社会に潜むスパイダーと、密かに対抗する「ジャカローブ」。謎めいた物語はまだ始まったばかりです。今後どのように進んでいくのか要注目!
いかがでしたか?目を背けたくなるような展開も、どこか美しく感じられるのが片岡マジック。スプラッタが苦手な方ほど逆に病みつきになってしまうかもしれません。