モデルをやっていたギャル風の後輩ヒナと、地味で大人しめな先輩ハナの恋を描いた『ハナとヒナは放課後』。最初からハナが好きなヒナと、徐々にヒナへの恋心が芽生えて行くハナの、もどかしく可愛らしいお話でfすよ。
- 著者
- 森永 みるく
- 出版日
- 2016-01-12
ファンシーな服が好きな「ハナ」こと長谷川花と、可愛いキャラものが好きな「ヒナ」こと江森ひなこの恋に発展するまでの様子を描いた本作。
好きが加速して行くたびにすれ違いも増えていく2人の様子が魅力で、キュンとする胸の高鳴りと、ズキっとする胸の痛みが交互にやって来て、もどかしいけれど幸せ、幸せだけれど辛い、という感情を芽生えさせます。
つい後押しをしたくなるような『ハナとヒナは放課後』の魅力を全巻ネタバレも含め紹介していきます。
バイト禁止の学校に内緒で、ファンシーショップでアルバイトをしていたハナ。そこに客として来ていたギャル風のヒナが、ある日バイトの同僚となります。最初は仲良くできそうもないと思っていたハナですが、彼女の見た目と中身のギャップに徐々に距離を縮めるように。
身長や雰囲気から年齢はヒナの方が上だろうと思っていたハナですが、新入生のなかにヒナの姿を見かけて……。学校もバイト先も一緒なのに学校での会話は禁止?そんなもどかしい2人の恋が始まります。
バイトがバレたら退学という噂もある、バイト禁止の高校に通うハナは、フリルやリボンがついたふわっとした可愛らしい服が好きで、そういった服を買うために内緒でバイトをしていました。
そこによく客として来ていたギャル風の少女ヒナが、バイトの募集を見てやって来ます。タイプも何もかも違うヒナに苦手意識を持っていたハナですが、ヒナの子どもっぽいところや中身と見た目のギャップに心を開き友だちに。
- 著者
- 森永 みるく
- 出版日
- 2016-01-12
ハナが2年に進級した春、校内でヒナの姿を見つけます。年上だと思っていたヒナは実は年下で学校の後輩だったのです。
ヒナは学校がバイト禁止であることを知らなかったようで、ハナを見かけて声をかけて来ましたが、ハナはバイトがバレるわけにはいかないと学校では話しかけないようヒナに言います。
バイトをして退学になった生徒もいるそうなので、ハナは過敏になっているんですね。もちろん、バイトを辞めさせられて好きな服を買えなくなることも困るのでしょう。そんなハナの態度にヒナは少々面白くない様子……。ヒナは客として来ていたときから、小さいハナのことを気に入っていたようで、できればもっと仲良くしたいんですね。
1巻の見どころは、そんなまだお互いに1歩踏み込めない2人が、お互いの好きなことを話して少し距離を縮める場面ではないでしょうか。
ハナとヒナのバイト先は可愛いキャラクター商品がたくさん置いてある雑貨屋で、ハナはそこのメイド服のような制服が気に入ってバイトを決めたそう。ヒナがそこをバイト先に選んだ理由は明かされていませんが、お店で取り扱っているキャラクター商品とハナが目当てなのは間違いないでしょう。
はたから見ればヒナがキャラものを好きなのは一目瞭然なのですが、ヒナは必死でそれを否定。それには幼少期のトラウマが原因なのですが、自分の好きなものを素直に言えないのは思春期の女の子らしく、ヒナの可愛いところでもありますね。
ある日突然、なんだかそっけない態度をとりはじめたハナに、ヒナは自分が素直になれなかったからだと反省したのか、バイト終わりにハナを捕まえ、本当はキャラものが好きなことを打ち明けます。
ハナがそっけなかった理由は少々違うのですが、この告白をきっかけに、ハナの可愛い服に対する想いや考えと、ヒナのキャラものに対する感情が同じだと知った2人は、より互いへの友情度を高めました。
ハナはヒナともっと仲良くしたかっただけだったのです。女子の友情は少々気難しいものがありますからね。ヒナときちんと互いの好きなことまで話せたハナは満足したのか、今までの不機嫌さが嘘のように上機嫌になります。周りに感情の浮き沈みがわかるほど素直なのがハナの可愛いところですね。
一方、ヒナは好きなことについて話すハナに対して、友情以上の感情を抱いているようで……?
キャラものを好きな気持ちと似た感覚でハナを好いていたヒナ。しかし、気づけばその気持ちは「恋心」に変わっていました。自分がハナを好きなのはおかしいことで、このままではハナも変だと思われてしまうと考えたヒナは、ボロを出さないように気をつけながらハナとの楽しい時間を過ごしていきます。
ある日、ハナがいつも学校で一緒にいる少女・中野がハナたちのバイト先にやって来ます。中野はハナがバイトをしていることを知っているただ1人の人物なのですが、ヒナは2人だけの秘密ではなかったことがショックな様子。
- 著者
- 森永 みるく
- 出版日
- 2016-06-11
一方ハナも、ヒナの小中学校の友人で、彼女の1番の親友だという少女の話を聞いて心がモヤモヤするようで……。せっかく学校でも話すきっかけを作り仲良くなってきた2人ですが、互いの友人ことで再び距離が離れてしまいました。
今までは、すべての想いがヒナの一方通行のようで、2巻でもヒナの嫉妬心と恋心がぐちゃぐちゃに混ざり合い、入り乱れる巻となってしますが、そんななかついにハナの心境にも変化が現れます。
ヒナが純粋に恋する乙女のように悩む姿も年相応で可愛らしく見どころですが、やはり2巻の1番の見どころはハナの変化ではないでしょうか。
ヒナが以前話していた小中学校の友人・麻衣子がハナの前に現れます。麻衣子は自分をヒナの元カノと言ってハナの前から去りますが、ハナはそのことがきっかけでヒナを「同性の友だち」ではなく「女の子」として意識し始めるように。
ヒナは割と嫉妬心を隠さず、中野を睨んだり冷たい視線を送ったりとあからさまな態度を取りますが、ハナもモヤモヤはしますが、特に嫉妬とか優越感はなく、現在自分がヒナの隣にいられることに喜びを感じている様子。このハナの純真さがヒナとは違うところですね。
その喜びの理由にハナが気づくのが、2人で花火大会に行ったとき。ヒナはデートという気持ちで行っていましたが、実際花火を見ると無邪気にその迫力と美しさに感動します。デートの定番ではありますが、やはり打ち上げ花火は直接見ると迫力が違いますよね。
素直に嬉しそうに笑うヒナを見て、ハナのなかで恋心が弾けたのです。ヒナの気づかぬところで、ドキドキしていた気持ちの正体を理解したハナの姿に、読んでいる側の胸がときめいてしまうような感覚を覚えます。
2人の恋がついに前進するのです。
想いを自覚したハナ。麻衣子の「元カノ」という言葉から、自分もヒナと付き合えるのではと考えましたが、麻衣子のいう元カノとは、以前2人が一緒に読者モデルをやっていたときの企画の話で、実際に付き合っていたわけでないのです。
そして、ハナへの想いを必死に隠したいヒナの発言で、ハナは「もしかしたら……」というふわふわとした嬉しい気持ちからは一転、胸を締め付けられるような苦しい思いをすることに。
- 著者
- 森永 みるく
- 出版日
- 2017-01-12
ハナはそれから少しずつヒナを避けますが、叶わぬ恋だと思っていても好きな人に会いたい気持ちは止められませんよね。2人で一緒にいられるバイトの時間が、ハナにとって以前よりもかけがえのないものになりました。
3巻の見どころはやはり、互いが互いの想いを知る場面ではないでしょうか。自分の気持ちに整理がつけられないまま、それでもヒナとのバイトの時間を大切にしていたハナですが、ある日突然ヒナがバイトを辞めてしまいます。
原因は、麻衣子が不注意で、ヒナのバイト先のことブログに書いたのが原因でした。教師陣には見つかっていないものの、見つかってハナまでバイトがバレてはいけないと、ヒナはバイトを辞めたのです。
ヒナと会う機会も話す理由もなくなってしまったハナ。ショッピング中に偶然出会ったヒナに、辞めた理由を聞いたことで、その想いがあふれ出します。ヒナのことを好きだと自覚してから、ハナは何度も涙を流しました。もうずっと、想いを止められずにいたのです。
いざとなるとハナの方が行動的になるんですね。ハナは想いを聞いたヒナは堪らずハナを抱きしめます。色々と思い悩む期間はヒナのほうが長かったのですから、想像以上にハナからの想いは嬉しかったのではないでしょうか。
必要以上に言葉を交わさない2人の抱擁は、やっと想いが通じあったという気持ちが読んでいる側にも伝わり、つい涙ぐんでしまうような感動を抱かせます。
しかし、両想いになったからと言って、悩みが何もかもなくなるわけではありません。特にヒナのほうは過去のトラウマから、どうしても「女の子同士で付き合う未来」を信じる事ができなかったのです。
だからせめて思い出に1度だけで抱かせて欲しいとヒナはハナにお願いします。ヒナの抱える想いを知ったハナのとった行動は……。最終回ではこれまでにないほど幸せに満ち溢れた2人の姿を見ることができますよ。
見た目も性格も真逆だからこそ惹かれ合い、すれ違うことも多いハナとヒナ。大人と子どもの間にいる女子高生らしい無垢さや純粋さが魅力的で、優しい気持ちにさせてくれる百合作品となっています。