どうも橋本淳です。この時期になると桜が待ち遠しくなるのは僕だけでしょうか? 待ち遠しくしていても、結局、咲く時期が来る頃には、そんなものに目をくれずに、嗚呼、夏が来ないかなと、いつも先々を切望しているのは僕だけでしょうね。 しかし、咲く花だけでなく、その幹や根にも焦点を合わせられる大人になりたいものです。分かりやすい表面的な「こと」「もの」だけをみて、あたかもすべてを理解した“つもり”になるより、時間と労力が掛かってしまうけれど、しっかりとした考察をした上での“理解”をしたいなと思う、今日この頃です。 そんな“本物”とは何かを追い求める橋本が欲したのはこの3冊です。 皆様も何かを求めてぜひ読書を。
- 著者
- 安部 公房
- 出版日
- 1969-05-20
芥川賞を受賞した、安部公房の前衛的な中編・短編集。「S・カルマ氏の犯罪」「バベルの塔の狸」「赤い繭」の3部からなるオムニバス作品。赤い繭はさらに「赤い繭」「洪水」「魔法のチョーク」「事業」と別れています。
読み始めてから終わるまで、夢を見ているような気分です。不条理で不可思議なことの連続なので、なんじゃこりゃと拒否することは容易いのですが、この作品に深く触れたいと思うことで少しずつ理解が進んでいきました。「S・カルマ氏の犯罪」は、名前に逃げられた男の話。朝起きると、自分が名前を忘れていることに気付き動揺する。様々な“物質”が意思を持って男に闘争を挑み革命をしようとする。その流れと本質が面白く読めました(いくつか引っかかるところがあり何度かページを戻りました。その度に自分の理解力と知識力のなさを悔やみます)。
読書の楽しみはまさにこのような脳内トリップ出来るのが醍醐味ですね。ぜひ。
心に刺さった一節
すべての表情が微笑に向って解放されてゆく。微笑こそ、完全に非感情的なものを意味する。
- 著者
- 伊丹 十三
- 出版日
- 2005-03-02
伊丹十三による人生論風エッセイ。スパゲッティの作り方、嗜み方。サラダの作り方。クルマの正しい乗り方。パンに関して。各国の人々について。と羅列すると様々です。これだけではなく、まだまだあります。
基本的に伊丹十三のフィルターを通しての見解だったり意見だったり。それらがただただ面白い。単に悪口にはならず、人生論を聞いてるように感じます。男たるもの、本物を知るべきだと、背筋がスッと伸びる、そんな著書です。真っ当な大人になりきれていない人におススメです。僕も、いつでも再読できるように肌身離さず持ち、ずっとそばに置いておきたい一冊です。
心に刺さった数節
男として自信のないやつが、女を数でこなすことによって、自分が男であるということを、自分に証明しようとしているに過ぎぬのだ。
活字の効能というのは、物事を抽象化する能力を養うことであって、この能力を失った人間というのは、これは話をしていてもまるでとりとめがない。
- 著者
- 柴崎 竜人
- 出版日
- 2016-12-06
近大日本画家の来栖現、その妻・佳世。来栖は、月のほとんどは家にはいることはなく、各地を転々としていた。妻以外の女性とともにいることも多かった。妻が亡くなった時も、葬儀に来栖は出なかった。その事を娘の愛子は許すことができなず、父と連絡を取ることもしていなかった。そんなある日、愛子の息子・晴也が、来栖と手紙のやり取りをしていた事を知った愛子。家族の愛を描いた、悲しくも心温まるストーリー。
4人の視点から語られる物語。来栖という主人公の造形が読んでいくうちに、ウネウネと僕の頭の中で変化していくのが分かりました。多面的に語られる展開に一気読みです。家族愛というと薄っぺらく聞こえがちですが、この作品に触れてみるとそこには確かな愛を感じられます、それは肌で感じるような感覚でした。まだまだ寒いこの季節にこの一冊を。
心に刺さった一節
手に入れないことでしか、守れないものもある。