漫画といえば紙で読む……そんな時代はもう古いのかもしれません。昨今では電子書籍版を配信するサイトが増え、スマートフォンやタブレットなどで手軽に読めるようになりました。雑誌ではなかなか注目されなかった作品に脚光があたることもしばしば。ここでは、『女神たちの二重奏』が電子書籍で大ヒットした作者のおすすめ作品をご紹介していきます。
花小路ゆみ(はなこうじゆみ)は、千葉県出身の漫画家です。高校時代に漫画研究部や美術部、テニス部を兼部した後、短期大学へ進学しました。栄養士の免許を取得して一般企業へ入社、プログラマーとして働きはじめます。
作者自身もおかしな経歴だと評していますが、この頃は休日などにのんびりと漫画を描いていたそうです。
同人誌を作成するサークルに加入すると、制作に費やす時間が増えていき、漫画を描いて生活できればと考え退社。金銭的な面も含め2年間と期限を決めて、作品を描きはじめました。
持ち込みをしていた東京三世社でイラストの仕事を受けるようになり、戸渡海(とわたりうみ)名義で活動。その後は友人の代理で北川玲子のアシスタントを務めます。
北川が編集部に紹介してくれたことがきっかけで、レディースコミック作家として漫画家デビューすることになりました。
まずは東山由美(ひがしやまゆみ)名義で、「ミステリーLa・comic」に『シークレット・メモリー』が掲載。1990年に「BE・LOVE」で『烈風KOMACHI』を初連載します。
出版社で知り合った仲間と「花小路小町(はなこうじこまち)」というクリエイター集団を結成。自身の漫画活動のほか、作画担当として共同制作をしました。その後同名義で『かかとの高いハイヒール』を掲載。レディースコミックの執筆をしながら、青年誌へと活動場所を広げていきます。
2002年に「花小路小町」が解散。花小路ゆみとして活動を再開しました。そのかたわらで、2004年には「ヤングチャンピオン」で『キューティーハニーSEED』を星野小麦名義で執筆しています。
2010年に「週刊漫画サンデー」で連載された『女神たちの二重奏』が、2014年の電子書籍化にともない大ヒット。単行本に換算すると実に10万部にのぼる数が売れました。
活動の拠点がレディースコミックや青年誌なこともあり、登場する女性たちは皆むっちりとした大人の色香が漂っています。しかし下品ではなく、どこか気品も感じられるため、女性読者からも支持を集めているのです。
自分にそっくりな人間が世の中に3人いる、ということは聞いたことがある人も多いでしょう。しかし、本当にまったく同じ容姿をした別人がいて、その相手がどんな生活をしているか想像すると、複雑な気持ちになるのではないでしょうか。
仕事は?家庭は?恋愛は?自分よりと比べてどんな人生を送っているのか、気になってしまいます。
本作は、顔と体格はそっくりなものの、立場と性格がまったく違う2人の女性が人生を交換するお話。
- 著者
- 花小路 ゆみ
- 出版日
- 2015-01-26
茜の人生は破綻していました。両親は住宅ローンを残して亡くなり、兄は引きこもっています。日々の生活をするためにやむを得ず大学を中退したものの、有り金をひったくりに奪われて……まさしく不幸のどん底。自殺をしようと橋の上から線路を眺めていました。
その時、自分とそっくりの顔をした女性と出会うのです。
麗花と名乗った彼女は、美しい身なりをしたまさに理想の女性。思わず声をかけてしまったことから話をし、2人はお互いの境遇を知ることになります。
裕福な男性と結婚した麗花は、生活には困っていませんでしたが、夫の束縛が激しいうえに性的に不能であるという悩みがありました。自暴自棄の状態の茜を状況を聞いて、羨ましいと口にします。
そうして2人は、お互いの立場を交換することにしたのです。
しかしそれですべてが解決するわけではありません。経験してみて初めて相手の悩みを理解し、そうしてようやく自分自身とも向き合えるようになるのです。
性格もまるで両極端な2人ですが、自身の環境を変えていくために奮闘する姿からは勇気をもらえるでしょう。
『女神たちの二重奏』については<『女神たちの二重奏』の魅力を最終回までネタバレ紹介!ベッドシーンがすごい>の記事で紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。
人は誰しも悩みを持っているものです。他者から見ればなんということないことも、本人にしてみれば死ぬほど深刻であるということがままあります。
また恋愛の悩みというのは、性的な部分にも触れることがあるため、近しい人にこそ話しづらいこともあるのではないでしょうか。
そんな時に頼りにしたいのが、本作に登場する若くて美しい心理学者、伊武マリアです。
- 著者
- 鍋島 雅治
- 出版日
- 2008-10-29
東都大学の名誉教授で、行動心理学のなかでも新分野である「恋愛学」の研究をしているマリア。政府公認の少子化対策の一環として設立された機関で、日々さまざまな恋の悩みを持った相談者と向き合っています。
片思いや二股、草食系、DVにセックスレス……他者には打ち明けづらい話もたびたび登場。マリアは確かな分析と実験で、悩みを解決していきます。
「そんなタナボタ狙いで口を開けて待っているからちょっと餌が投げられたらすぅぐに食らいついてまんまとだまされて吊り上げられてしまう!」(『イヴ 恋を科学する麗しき女神』より引用)
ズバっと言い過ぎているほどの口調で、読者の気分もすっきりするでしょう。
かなりの毒舌ですが、彼女の手腕は見どころのひとつ。恋愛で悩んでいる方はぜひ読んでみてください。
歓楽街といえば、お酒を楽しく飲める場所なだけでなく、綺麗なお姉さんを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。もしかしたら女性には馴染みの薄い場所かもしれませんが、男性のなかには日々の憩いとしてつい足を運んでしまう方も多いはずです。
「風俗嬢」というのは、風俗店に勤務して、性的サービスをおこなう女性のこと。日々男性にサービスを施す彼女たちですが、トラブルに巻き込まれることも多いんです。
歌舞伎町弁護人 凜花(1)
2015年01月23日
そんな時に頼りになるのが、本作に登場する美人弁護士の美鈴凛花。その名のとおり美しく凛とした容姿をしていて、一流企業の顧問弁護士も務めた経験があります。
同じく弁護士をしていた父親が失踪してしまったため、歌舞伎町に事務所を構える「美鈴弁護士事務所」を継ぐことになってしまいました。場所柄、ストーカー被害などに悩む風俗嬢たちの相談を引き受けていくことになります。
加害者がかつて所属していた事務所の大口客だったりと、風俗嬢に被害を与えているのは社会的に地位のある人が多数。そんな彼らの横柄な態度をやり込める凛花の姿に、胸がすく思いがします。
難しい法律用語や事件の問題点などはわかりやすくまとめられているので、構えずにストーリーを楽しむことができますよ。
さまざまなクライアントと関わるなかで、彼女が弁護士として成長していく姿も見どころのひとつ。歌舞伎町で戦う奮闘っぷりに注目してください。
劇画タッチでありつつ女性的な柔らかさがある花小路ゆみの作品。物語も女性が活躍するものが多いのが特徴です。気になったものがあればぜひ読んでみてください。