青空文庫で無料で読める、江戸川乱歩おすすめ短編ランキングベスト5!

更新:2016.2.9

2015年で、江戸川乱歩は没後50年。芸人で芥川賞を受賞した作家の又吉直樹も大のファンだとか。2016年5月には、三鷹の森ジブリ美術館で、「幽霊棟へようこそ~通俗文化の王道~」の展示が行われました。 今回は、短編の中にも奇怪極まる乱歩の世界を紹介します。

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江戸川乱歩の経歴

明智小五郎や怪人二十面相と言えば、耳にした事もあるという人が多いのではないでしょうか?

江戸川乱歩は明治27年、三重県名賀郡名張町(現在の名張市)に長男として生まれます。
2歳の頃父親の転勤で、現在の名古屋市に引っ越しますが、それを境に、大人になってからも、なんと46回も引っ越しを経験しました。

大学卒業後はアメリカに渡り、怪奇小説家になる事を目指していた江戸川乱歩。しかし、資金不足で渡米する事は叶わず、貿易会社に就職します。ですがその後、職を転々とし、古本屋、支那そば屋、英語の家庭教師、探偵事務所等、経験した職業は多岐に渡りました。

昭和40年にクモ膜下出血で亡くなるまで、作家としてはもちろんですが、プロデューサーとしてもすぐれた才能を発揮し、高木彬光、筒井康隆、大藪春彦など、江戸川乱歩に才能を見出された作家は少なくありません。

そんな乱歩ですが、実は、31年の専業作家の内17年は休筆しています。本人曰く、一番最初の休筆の理由は、著書「一寸法師」が気に入らず、通俗的なものを書いてしまったという自己嫌悪からだったと言います。

日本の推理小説の礎を築いた乱歩の作品は、100を超え、小説ばかりでなく映画にもなっています。正に推理小説界の源流だと言えるでしょう。

なんと、三重県名張市では江戸川乱歩の出生地にちなんで、怪人二十面相に特別住民票が交付されました。

ところで、青空文庫についてご存知ですか?これは、著作権が消滅した作品の テキストを無料で公開しているインターネット上の電子図書館です。

今回は、青空文庫でも読める江戸川乱歩のおすすめ短編小説を紹介します。

 

5位:「ビブリア古書堂の事件簿」で注目された、『押絵と旅する男』

江戸川乱歩の作品には珍しく、推理もトリックも使われていない作品です。大正時代の混沌とした世の中に、閉鎖された幻想的な世界を書き込んだ作品です。

物語は、主人公がわざわざ蜃気楼を見に富山県の魚津へ出掛けた帰り道に、汽車の中でとある男に出逢う所から始まります。その男は妙に印象的で、風呂敷に額らしきものを包み、わざわざその表側を窓の外に向けて立て掛けていたのです。

著者
江戸川 乱歩
出版日
2005-01-12

「これがごらんになりたいのでございましょう」

こう男は主人公に告げると、立て掛けてあった押絵の入った額を、遠眼鏡で覗いて見るようにと言います。男に言われるままに、遠眼鏡を手に取って覗いて見ると、そこには世にも美しい若い女性と初老の男の姿があったのです。

何故このような押絵を持ち、旅に出ているのか、男は不思議な自分の身の上話を語り始め……。

物語を読んでいる内に、自分が蜃気楼の中に迷い込んでしまったような、現実世界に少し疲れた時におすすめの作品です。

4位:『D坂の殺人』 明智小五郎が初めて登場した作品 

(上)事実・(下)推理の二部構成になっている、心理学と犯罪をテーマに書かれた作品です。江戸川乱歩が住んでいたD坂(団子坂)が舞台となっています。

明智小五郎の幼馴染みであると言うD坂の古書店の妻が、密室の中、絞殺体で発見される所から事件は始まります。見つかった死体には抵抗した後もなく、犯人らしき人物を見たと言う証言も食い違い、捜査は難航して行くのでした。 

著者
江戸川 乱歩
出版日
2015-09-19

絞殺体の身体中にあった生傷、電灯に残された指紋。疑惑は第一発見者でもある明智小五郎にも及び……。今作で初登場となる明智小五郎が解き明かす、事件の思いがけない真相とは。

江戸川乱歩が書く推理小説の王道を行く作品であり、短時間で本格的且つ巧妙な推理小説を読みたいという方にオススメです。

3位:『鏡地獄』 活字であることの制約が活きている作品

江戸川乱歩が科学雑誌での取材から発想した、球体の鏡がでてくる何とも奇抜なストーリーです。過去に、テレビ番組「驚きの嵐世紀の実験!学者も予測不可能SP」でこの作品を元に、全面が鏡になった球体に人間が入ると、どのように映るのか実験が行われました。球体の中では、顔と後頭部が一緒に映り、奇妙な見え方になったそうです。

著者
江戸川 乱歩
出版日

両親が亡くなり、莫大な遺産を受け継いだ主人公は、鏡をあらゆる方法で使い自分の世界にのめり込んでゆきます。
初めは望遠鏡を使い、人家の開け放った室内を覗く程度でしたが、物体を異常に大きくする装置や、しまいには鏡で覆われた部屋を作ってしまいました。その部屋は、六方を鏡で囲っているため鏡と鏡が反射し合い、上下左右関係無く、自身が無限の像となって映るとか……。
初めは彼自身が、鏡の収集家、研究者として、鏡の主導権を握っているはずでしたが、やがて自分と鏡との境目が分からなくなってしまいます。最終的に、閉じ込められてしまった球体の鏡の中で、彼が見たものは何だったのでしょうか。

江戸川乱歩の短編小説の中では一番短く、21ページに収まってしまう『鏡地獄』。是非手にとって鏡の中の奇妙な異世界に出掛けてみませんか?

2位:『屋根裏の散歩者』 他人の秘密を盗み見ることで思いついた殺人

この作品は江戸川乱歩自身が、自宅の屋根裏に忍び込み、徘徊した経験を元に書かれています。自分で屋根裏に入り込み、作品を一つ書き上げてしまうとは……さすが天才が考えることは違いますね。

物語は、職に就かず遊びにさえも心を動かされる事のない、一種の精神病でもあった郷田三郎が屋根裏に忍び込み、他人の秘密を盗み見る所から始まります。

誰かから見られている、なんて気づいていない隣人達の思いがけない仕草や秘密に、三郎は今だかつてない興奮を覚えていきます。

著者
江戸川 乱歩
出版日
2008-09-25

日課のように屋根裏へと忍び込んでいたある日、未だに見たことがなかった空間を発見します。その部屋は、三郎が一番好まない男の部屋でした。そして、男を誰にも気付かれずに殺せる、ある方法を思い付くのです。

「近いうちに、ちっとも証拠が残らない方法でお前を殺してやるのだぞ。」

実行後、三郎の狙い通りに自殺と処理されるはずだった計画殺人でしたが……。完璧であったはずの殺人が、見事明智小五郎の頭脳によって紐解かれていく様は、読んでいて気持ち良いです。

変態を書かせたら右に出るものなし、と言われる江戸川乱歩ですが、殺人を犯してしまった主人公の、少し間の抜けた何とも言い様のない人間臭さが、他の作品にはない哀愁を感じさせる一作です。

1位:『人間椅子』 不気味からニヤリへ

1925年に発表された22作目となる短編小説です。江戸川乱歩といえば、一番に思い付くのがこの作品ではないでしょうか。

まず、初めてこの題名を目にした時に思うのは、正直、子供には見せられないのでは、というエロティックな思いでしたが、読み進めていくうちに、あながち間違いでは無かったことが分かります。

世にも醜い容貌である、すこぶる腕のよい椅子職人が、美しい閨秀作家佳子に恋をしてしまいます。そして、自分の燃え上がる恋心故に、犯してしまった罪を、原稿に綴り佳子に告白するのです。

著者
江戸川 乱歩
出版日
2015-03-20

椅子職人であった彼は、無理難題な注文を受け、様々な椅子を製作しているうちに、他の誰も思い付かないような事を実行に移します。それは自分が作った椅子の中に、自らが入り込むという人間離れした事でした。

自分が中に入っているとは知らない、この椅子に腰を掛けていく様々な人々。椅子に座る人達の体や感触、体臭までも感じられる、想像を掻き立てられる細やかな描写にはゾクッとします。

そして読み進めていくうちに、佳子は少しずつ不気味さを感じながらも、目が離せなくなっていきます。様々な場所を旅してきた椅子が、最終的にたどり着くのは果たして何処なのか?手紙に隠された驚くべき本当の意図とは。

最後の場面には、作者のにやりとした意図に驚いてしまう逸品です。
 


「うつし世は夢、夜の夢こそまこと」 
江戸川乱歩の座右の銘でもある言葉です。

彼の作品は大きく分けると、本格探偵小説、犯罪怪奇小説、そして少年に向けた推理小説の3つに分類されますが、乱歩にとって、本当は垣根など存在するものではないのかもしれません。

現在も企画されている江戸川乱歩賞では、賞として贈られるブロンズ像の他に、国内最高額である一千万が副賞として贈られます。受賞後も活躍する作家が多いのも、江戸川乱歩賞の大きな特徴であるとも言えるようです。

さあ、そんな稀代の名作家、江戸川ワールドを是非、活字の世界でお楽しみ下さい。

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