不細工な容姿に冴えない性格をしている主人公が、全身整形手術をきっかけに絶世の美女に!しかし単なるサクセスストーリーでは終わりません。そんな『君は綺麗なアヒルの子』の魅力と見どころをご紹介していきます。
デブなうえに不細工で、性格も地味。完全にコミュ障な女子大生の主人公が、整形をして、美人としての人生を歩み出しますが……すべてが好転するかと思いきや、単なるシンデレラストーリーでは終わりません。
その裏では、何やら怪しい目的が動いているようです。全身整形をした主人公が迎える結末はどのようなものになるのでしょうか。
今回は、『君は綺麗なアヒルの子』の魅力と各巻の見どころをご紹介していきます。
- 著者
- タナカトモ
- 出版日
- 2018-01-15
主人公は、これまで酷い見た目のせいで不遇な扱いを受けてきた女子大生の駒井芹(こまいせり)。彼女が大学内でもとびきりの美人として有名な甘城誘花(あまぎゆうか)と出会うところから物語が動き始めます。
芹は両親から虐待を受けて育ち、学校でもいじめられ、大学入学とともに逃げるように都会に出てひとり暮らしを始めました。しかしお世辞にも綺麗といえる容姿ではなく、またこれまで友人もいなかったためかなりのコミュ障。大学生になってから表立っていじめられることはなくなったものの、孤独で寂しい生活を送っています。
しかしある日、自分とは無縁だと思っていた美人の誘花と席が隣になったことで友達に。また離れて暮らしていた両親が火事で亡くなり、保険金として2000万円という大金が手に入ります。ここから彼女の人生は、思わぬ方向に進み始めるのです。
このころ芹は、図書館で見かける柳木という男子学生に密かに想いを寄せていました。しかし彼が誘花に告白しているところを見てしまい、ショックを受けます。そんな彼女に誘花が進めたのが、骨格を含めすべてを変える「全身整形」……。
そして芹は、学年で1番と噂されるほどの美人として生まれ変わることになりました。
……と、ここまでであれば冴えない主人公が変わっていくある意味シンデレラストーリーとして受け止められるでしょう。しかし本作の本番はここから。
まず、芹と友人になり全身整形を薦めた誘花ですが、彼女は単なる親切心から芹に近付いたわけではないようです。その詳細な狙いは今のところ定かではありませんが、どうやら個人的な恨みを持っているようにもとれる描写が見受けられます。
誘花は芹をはじめ周りの友人たちには人当りよく接しますが、全身整形手術を施した石田という医師の前では恐ろしい表情を見せ、また芹が想いを寄せている柳木も利用しようと企みます。
しかし芹にとって誘花は人生を変えてくれた恩人。美しい見た目を手に入れた後も、彼女のアドバイスを真剣に受け止め、行動の指針としていくのです。いつかまた、絶望の底に落とされてしまのでしょうか。
誘花の黒い目的が見え隠れし、2人の関係性が今後どのように変わっていくのか注目です。
主人公の芹は不細工だった当時、誰かとまともな交友関係を築くことができないでいました。そのため誘花をはじめほかの登場人物に対しても、自分に興味を持ち、話しかけてくれることに戸惑います。その一方でこれまでに体験できなかった嬉しさを感じ、普通であればためらうようなことも無警戒に対応していくのです。
本作はそんな芹の視点を中心に進んでいくため、読者は彼女を取り巻く人々の思惑を推測しながら読み進めていくことになります。現時点では彼らにどんな狙いがあるのかまだ明らかになっていませんが、芹の不用心である意味能天気な部分が、かえって物語に異様な緊迫感を持たせているのです。
やがて物語が進んでいくと、芹が徐々に違和感を抱き始めます。作中では彼女のモノローグが多用されるのですが、彼女の視界が徐々に広がっていくのがありありとわかり、不穏な空気を助長していきます。
- 著者
- タナカトモ
- 出版日
- 2018-01-15
主人公の芹が整形をし、新しい人生を歩きだす1巻。これまで誰とも積極的に関わることなく暗い生活をしていた彼女が、美人になったことで、これからの人生を謳歌しようとする序章が描かれています。
全身整形にかかった月日はおよそ1年半。その間芹は大学を休学していましたが、術後は1年生として再度入学することになりました。周囲の自分を見る目が明らかに変わり、戸惑いながらも高揚感を抱くのです。
見どころは、なんといっても芹が誘花に対し、自分が不細工であることを吐露する場面です。図書館で見かけて気になっていた男性が、誘花に想いを寄せていることを知り、見た目ですべての物事の優劣が決まってしまう事実に直面。押し込めていた感情を思わずぶつけてしまうのです
「親の保険金でまとまったお金も手にしたし 初めての友達もできた 好きな人を見てるのも楽しかった」
「でもやっぱり ひっどいブスには 世の中厳しいねぇ」
「初めて……近付こうとした男の子が 初めての友達を好きだなんて」(『君は綺麗なアヒルの子』1巻より引用)
これまで彼女が受けてきた酷い扱いを考えると、切ない気持ちになってしまいます。
そしてそんな彼女に、誘花が悪意を秘めた提案をするのです。
「確かに芹の言う通り 綺麗なものに世界は優しいわ」
「もう悩まないで 芹 芹に優しい世界にしましょう」(『君は綺麗なアヒルの子』1巻より引用)
この時の誘花の表情と、これから芹の人生が変わっていくことへの期待感で、最高潮の盛り上がりを見せる場面です。
- 著者
- タナカトモ
- 出版日
- 2018-02-15
全身整形を施し、新たな生活を始めた芹の前に、多くの問題が降り注ぎます。まず彼女は容姿だけは絶世の美女になりましたが、中身は冴えない非モテ女子のまま。新しい環境についていくことができずにいました。
そんな彼女を見かねて、医師の石田がデートの練習をすることに。実はこれも誘花の計画のひとつなのですが、石田は誘花の協力者でありながら、初々しい芹の様子を見て情が沸いてしまうのです。
また2巻では、芹と誘花に対し嫌悪感を抱く新たな女性も登場。人間関係が複雑になっていきます。
- 著者
- タナカトモ
- 出版日
- 2018-09-15
2巻から誘花と芹に嫌悪感をむき出しにする文学研究会の先輩ナミの様子が描かれていましたが、その理由が3巻から明らかになります。実は彼女はメイク美人。もともと(ではないのですが)美人な2人に嫉妬していたのでした。
しかしそれがバレたあとも彼女に優しくする芹の様子に、ナミも心を開いていきます……。
と、ここまではストーリーが平和にいきそうで安心できるような展開なのですが、このあと、誘花がなぜ芹に復讐しようとしているのかが明らかにされ、物語がクライマックスに向けて動き出していく恐ろしさが感じられます。
実は彼女はある事故がきっかけに両親を早くに亡くしていました。その事故と芹がどう関わっているのかというと……。
結末に向けてスピードアップしていくストーリーから目が離せません!
- 著者
- タナカトモ
- 出版日
- 2018-09-15
徐々に新しい自分の容姿にも慣れてきた芹。そんな彼女を見て、誘花は「そろそろかしら」とつぶやきます。そしてついに、ここから彼女の恐ろしい復讐が始まるのです……。
それを受け、精神的にボロボロになっていく芹。しかし、生来の性格の良さにより得た味方であるナミがそばにいてくれました。また、誘花側の人間であるはずの石田も彼女の性格の良さに、本当に復讐すべき人間なのかを疑問に思います。この2人の存在が今後のストーリーに重要になってきそうですね。
そして芹は辛い気持ちを抱えながら、自分を陥れようとしているのが誘花ではないかということに気づいてしまいます。
さぁ、ついに次巻が最終巻です!容姿が人に与える影響をオラマチックに描いた本作。復讐の真相、それを知った時、芹はどうするか、人は本当に容姿だけが綺麗であれば幸せなのか。さまざまな疑問を巻き込みながら、ストーリーが終わりへと近づきます。