マンガ

中村明日美子の世界観に浸るおすすめ作品4冊。『同級生』だけじゃない!

更新:2020.12.2 作成:2016.5.10

2016年に『同級生』がアニメ化して勢いに乗っている作者。「同級生」シリーズで一躍有名になった作家ですが、実はBLだけではないのです。今回は、繊細なタッチと独特の作風が魅力的な彼女の作品をご紹介します。

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中村明日美子とは?

神奈川県出身の漫画家。2000年に「月刊マンガF」(太田出版)第3回エロティクスマンガ賞で佳作を受賞し、同年の10月受賞作『コーヒー砂糖いり恋する窓辺』を同誌で発表しデビューしました。

なんと当時はまだ大学生。そんな中村明日美子の緻密で繊細なタッチや世界観が“現代のアールヌーヴォー”“ネオ耽美”などと評されます。そして「同級生」シリーズで人気作家の仲間入りを果たすのです。

BLのイメージが強い漫画家ですが、エロティックでアングラな雰囲気の作品から少女漫画やコメディまで、幅広く描いています。今回はそんな中村明日美子の作品を、4作紹介させていただきます。

両親を失い寄宿舎学校で暮らす性同一性障害の少年の物語『Jの総て』

構成要素:性同一性障害・母との確執・美少年

中村明日美子の特徴である繊細な線で描かれた本作の舞台は、1950年代のアメリカの寄宿舎学校(ギムナジウム)。主人公は当時人気絶頂だったマリリン・モンローに憧れ、自らも彼女のようになりたいと願う少年・Jです。

彼は幼少期に父親との間に性的関係があり、Jと父との関係を知ってしまった彼の母が、父を射殺したという大変暗い過去を持っています。彼はカレンズバーグという女性に引き取られて、私立カレンズバーグ高等中学校に編入することになります。そんなJが同室になった優等生・ポールに恋をして、すれ違い傷つき、成長していくという物語です。

著者
中村 明日美子
出版日
2015-09-07

寄宿舎学校という閉塞的な環境と、1950年代のアメリカに生きる同性愛者の生きづらさを描いた作品。

過激な描写に読み進めるのが辛くなるようなシーンもありますが、中村明日美子を知るためには必読な一冊です。

『Jの全て』前日譚。成長過程の少年たちの友情と破綻を描く『ばら色の頬のころ』

構成要素:思春期・美少年・すれ違い

上で紹介した『Jの全て』に出てくるポールとモーガンの出会いと、Jが編入してくるまでの話を描いたスピンオフ作品です。読む順番としては『Jの全て』を先に読むことをおすすめします。

本作は青春の苦さや痛みを描き、描写も「同級生」シリーズに近く過激なシーン少なめの、比較的読みやすい作品になっています。

著者
中村 明日美子
出版日
2015-11-05

市長の息子であるモーガンと、ユダヤ人の父を持つポールというふたりの少年が惹かれあい、心を開き、交流していく様子を描いた序盤。穏やかに少年達の交流を描くかと思いきや、中盤以降の大人達の都合や画策によって、ポールは再び心を閉ざしてしまいます。

距離を見誤りギクシャクしてしまうふたりの関係性が、この作品の見どころです。

本作のなかだけでは、ふたりの関係は完結しません。上で紹介した『Jの全て』を読み終えた後に読むことで、彼らの関係性や人となりはより魅力的なものとなるでしょう。ぜひ合わせて読んでほしい作品です。

中村明日美子が描くハードボイルドラブストーリー!『ノケモノと花嫁』

構成要素:ロリータ・ハードボイルド・ミステリー

原宿系ファッション雑誌「KERA!」にて2006年から小説版が掲載され、本作である漫画版は2007年から掲載されています。『少女革命ウテナ』や『輪るピングドラム』の幾原邦彦が原作。

原宿系ファッション雑誌で掲載されているだけあって、登場人物はロリータ系の華やかな服を身にまとっているのが特徴。原宿系ファッションに興味がない人でも中村が描く美しい線と華やかな衣装で、物語に引き込まれてしまうような作品です。

著者
中村 明日美子
出版日
2009-12-15

主人公であるお団子頭の美少女・世羅ヒツジは、運命の恋人である熊の着ぐるみを着た羽熊塚イタルとの駆け落ちの最中に、大人に対抗するコドモの集団である「燃えるキリン」に襲われ離れ離れになってしまうところから物語が始まります。

序盤のあらすじだけで謎が深まる作品ですが、これは原作の幾原邦彦の特徴で、最初に謎を持ちかけて物語のなかで徐々に明らかになる仕組みなのです。なので解釈には時間がかかるのですが、その分飽きのこないストーリー展開になっています。

普段と少し違う物語世界に浸りたい方や、もともと幾原邦彦が好きな方にもおすすめの作品です。

中村明日美子ワールド全開な短編集!百合からBL・コメディまで『2週間のアバンチュール』

今回紹介した作品のなかで、唯一の短編集です。百合・BL・性転換・不倫など様々なテーマで描かれた4つの作品が収録されています。

表題作「2週間のアバンチュール」は2部構成です。主人公はどこか冷めたところのある少女・アンジュ。第1部の「2週間のアバンチュール-南仏-」は南仏の海での林間学校に参加したアンジュが、おマセなリーダー格の少女・ローズにいじめられ、復讐する経緯を描いた物語です。

第2部の「2週間のアバンチュール-修道院-」は大人しく控えめな少女・マリーが何の知識もないまま初潮を迎えてしまい、アンジュが「悪魔祓い」と称して無知なマリーに性的ないたずらを繰り返す話です。

アンジュの幼い少女ならではの毒のある無邪気さが、じわじわと迫り来るような恐怖を引き立てます。

著者
中村 明日美子
出版日
2008-04-24

「彼の左目」は上で紹介した『Jの全て』と『ばら色の頬の頃』の番外編で、作中で密かに恋人同士だったジェリーとユージンのその後が描かれています。

そのほかにも、高校の同級生5人で温泉旅行に行ったらヒメコと名乗るニューハーフになっていた菊池が、過去に好きだった堀田との関係を清算する「ヒメコちゃん」、チーズトーストに執心する男爵の2ページのグルメ漫画「チーズトースト考」など、中村明日美子の世界観をより広く知るためにはうってつけの短編集となっています。

いかがでしたか?今回は「同級生」シリーズで一躍有名になった中村明日美子の作品から4作品紹介させていただきました。爽やかな青春物とはまた少し違った独特な世界観に飛び込んでいただけたら幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。