笑って泣ける、家族愛を描いた名作「トラさん」。2019年に実写映画化も決まり、人気アイドルKis-My-Ft2のメンバーのひとり・北山宏光が主演ということでも注目を集めています。切なくもあたたかい家族愛の物語は、感動必至。読めばきっと涙が止まらなくなります。 スマホアプリで無料で読むこともできます!
- 著者
- 板羽 皆
- 出版日
- 2014-12-25
「月間YOU」で連載された名作『トラさん』。2019年に実写映画化も決まり、Kis-My-Ft2の北山宏光が映画に初出演、かつ初主演ということでも話題を集めています。
本作は自己中ダメ夫・寿々男(北山宏光)が死後、猫のトラさんとして妻(多部未華子)と娘(平澤宏々路)と過ごし、家族と自分を見つめなおす物語です。「今、ここにある幸せ」に気づかせてくれる感動のストーリーは、涙なしでは読めません。
妻と小学4年生の娘がいながら、お酒とギャンブルに溺れるダメ男・寿々男(スズオ)。職業は漫画家ですが、アイデアが思い浮かばず悶々とする日々を送っています。
彼はある日、仕事を放り出してパチンコに行きます。運良く勝つことができますが、帰り道に歩道橋から落ちて死んでしまいました。
そしてふと気がつけば、肉体を失った魂の行き先を決める「関所」にいました。スズオは関所の裁判官に家族と自分の本当の気持ちを見つめ直すよう、1年の期限つきで現世に戻されます。
……ただし、猫として。
『トラさん』は自己中で自分が一番大事なダメ人間・スズオが事故で死に、猫になって家族と自分を見つめ直す物語です。ひろってきた猫が父親の生まれ変わりだとも知らず、ミユは「トラさん」と名づけてかわいがります。
生前は、妻の財布から生活費を持ち出してパチンコをするクズでした。しかし、猫の「トラさん」となって妻・ナツコと、娘・ミユと過ごすうちにスズオの心に少しずつ変化が起こります。
猫になった自分はナツコが倒れても助けてあげることができず、ミユが泣いていても言葉をかけてあげることもできない。そんな中で、スズオは自分が人間だったことが、生きてナツコとミユのそばにいたことがどれだけ幸せだったかということに気づいていきます。さらにミユの成長にも気づいていなかったことも思い知らされ、自己嫌悪します。
そんなエピソードの一つ一つに心を打たれ、泣けるのです。
生きているときには気がつかなかったナツコやミユや自分の気持ちに向き合い続け、ようやく「本当の幸せ」にたどり着いたスズオは、ある決断をします。それは、ナツコとミユへの、そしてナツコのお腹にいるまだ見ぬ我が子への精一杯の気持ちを形にすることでした。
そこからはもう、涙を止めることができないでしょう。笑って泣いて、切なくてほっこりする……。そんな心が揺さぶられる本作をぜひ読んでください。
ダメ人間だったスズオですが、猫になるとかわいく思えるから不思議です。そんなエピソードをご紹介します。
ある日の夕食。トラさんたちは動物番組を見ています。テレビに出てくる猫は、「ゴァン」と言ってご飯をおねだりしたり、箱の中にスライディングしたりして、ナツコとミユはそれを拍手をして見ています。そんなふたりの様子を見て、テレビの猫に嫉妬したトラさんは、ナツコとミユの気を引こうとしました。
「アコ」といって箱を要求し、応援するナツコとミユの目の前で、みごと箱の中へスライディング成功!!「トラさんすごーい!」と笑顔になったふたりを見て、ふたりが笑っていることがこんなにも嬉しいのかと感じます。
ナツコとミユのためにいい旦那・いいお父さんになろうと思ったトラさん。ナツコにつきまとって妻の話をよく聞く旦那になろうとするものの、ごはんのおねだりをしていると思われてしまいます。
そして今度はミユ。宿題を手伝おうとしたものの、いまどきの小学生の宿題はむずかしくて教えられません。どうしたらいいお父さんになれるか悩みもだえていると、ミユが大爆笑します。
「お尻フリフリダンスめっちゃおもしろい」
(『トラさん』1巻より抜粋)
トラさんはすっかり嬉しくなり、はりきってお尻をフリフリするのでした。
妻につきまとったり娘の前でお尻フリフリなんて、人間のスズオがやったら「キモい」といわれてしまいそうですが、猫のトラさんになればどんな姿もかわいく思えます。ダメ人間だったスズオですが、仕事など人間としての仕事がなくなれば、スズオ本来の明るさ・ポジティブ思考が魅力的になるのです。
『トラさん』は全2巻で完結です。まずは1巻の見どころをご紹介します。
主人公のスズオは自己中で家族よりも自分が大事なダメ夫。妻の財布から持ち出した生活費でパチンコをした帰り道、事故で死んでしまいます。
気がつくとスズオは魂の行き先を決める「関所」にいました。スズオのダメっぷりにあきれた関所の裁判官に、執行猶予として家族と自分の本当の心を見つめなおすようにいわれ、1年の期限つきで家族のもとに戻されます。ただし、猫として。
- 著者
- 板羽 皆
- 出版日
- 2014-12-25
猫のトラさんとして妻・ナツコと娘・ミユと暮らすうちにいろいろなできごとが起こります。ナツコのお腹に赤ちゃんがいることがわかったり、ミユが父親の死の悲しみを一人で抱えていることを知ったり、ナツコとミユがどれだけ自分を愛してくれていたかに気づいたり……。一つ一つがトラさんの心に響き、今まで自分がいかに家族を知ろうとしてこなかったか、思い知らされます。
そしてトラさんはいい夫・いいお父さんになろうと決めました。猫の手で器用にパソコンをあやつり、情報を集めました。そしてナツコのグチを聞こうとしたり、ミユの宿題を教えようとしたりするものの、猫の姿ではうまくいかず、限界を感じます。
そんなある日、ナツコがパート先の店長と一緒に帰ってきました。お腹に赤ちゃんがいるナツコを店長が気遣って荷物を運んできたようです。そして、店長はナツコにオーガニックレストランにいこうと熱心に誘います。「いけすかないオーガニックヤロー」とトラさんは怒りました。
しかしナツコとミユは店長をさわやかイケメンとほめています。スズオにはないフレッシュさがあると笑うふたりのそばで、落ちこむトラさんなのでした。
そして、ミユにも仲がいい男友達の要くんが訪ねて来て、ふたりで遊びにでかけます。トラさんは自分が知らないうちに、ナツコとミユに親しい男性がいたことにショックを受けます。
すっかりふて腐れたトラさんは、猫仲間のホワイテストにグチをこぼしました。するとホワイテストはこんなことを問いかけるのです。「あなたはもういないのに、ふたりがあなた以外の人と幸せになるのが嫌なの?」、と。
そこでトラさんはナツコとミユの未来に自分がいないことを思い知ります。死んだ自分はいっしょにいてやることができない。しかしそばにいてくれる誰かが必要なのだろうとわかっていても、気持ちが割り切れないトラさん。先に死ぬことが辛いといったトラさんの気持ちに、胸が締め付けられる思いがします。
2巻の見どころは、店長と要君へのジェラシーに燃えるトラさんから、やがて「本当の幸せ」を見つけたトラさんに変わっていく過程と、トラさんの最後の夢に向かう姿です。
関所の裁判長から「自分の幸せを見つけること」と課題を出されたトラさん。そうはいってもそれがなんなのかわかりません。それどころかナツコとミユに忘れられたくないトラさんは、思い出の品を家中ひっかき回してぐちゃぐちゃにしてしまいます。
ナツコに怒られ「もうスズオを忘れたい」と言われたトラさんは落ちこみます。そんなとき出会ったのは、ガブという超ポジティブ猫。「いい所だらけの僕がひとに嫌われるわけない」というガブに引き気味のトラさん。まるで少し前の自分を見ているようです。しかし、根拠のない自信たっぷりのガブに勇気づけられたトラさんは、家に帰ることにします。
- 著者
- 板羽 皆
- 出版日
- 2017-02-24
家の前についたとき、辺りは騒然としていました。ナツコが救急車に乗せられていたのです。ミユはトラさんのせいだといいます。トラさんがぐちゃぐちゃにした部屋をナツコが疲れた体で片付けたからだと。
そしてミユはいいます。
「大切な人は一番優しくしないとダメなんだよ!
傷つけたらダメだよ!!大切にしないと一人になっちゃうよ!!!」
(『トラさん』2巻より抜粋)
その言葉に、トラさんはやっと目が覚めます。ナツコとミユに恥じない自分でありたいと思うのです。
ナツコが入院しているあいだ、スズオのお母さんが手伝いにやってきました。トラさんに語るお母さんの言葉は息子への愛情にあふれていて、自分がどれだけ大切に育てられたかを実感します。そして親のありがたさと父親としての自分の未熟さを痛感するのでした。
待ち望んだナツコの退院日。ナツコとお母さんがスズオの話をして泣いています。ナツコとお母さんの涙を見て、そこでようやくトラさんは、「自分の幸せ」を見つけました。
トラさんは裁判長に「一日だけ人間に戻してほしい」と最後のお願いをします。描き残した漫画を完成させて、ナツコとミユにお金を残したい。そのために6日間のあいだ、一日4時間だけ人間にもどることを裁判長に許されました。
トラさんの命の期限は6日間。のこされた時間でトラさんはナツコとミユの姿を魂に刻みつけます。そしてナツコとミユが寝静まった夜中、トラさんは人生最後の漫画を描くのです。
最終回を読み終わったあとは、切ないけれどさわやかな風が心を吹きぬけ、最後はほっこりとした気持ちになることでしょう。
『トラさん』は家族の大切さ、「今、ここにある幸せ」を教えてくれます。感動のラストはぜひあなたの目で確かめてみてください。
『トラさん』は、疲れた心をほぐしてくれます。たくさん泣いてください。