名前は聞いたことがあるけれど、知っていることといえば「特別天然記念物」ということくらい?この記事ではオオサンショウウオについて、意外と知らない生態や、食用とされていたころの味、飼育の可否などについてわかりやすくお伝えしていきます。あわせて彼らの魅力がたっぷり詰まった関連本もご紹介するので、ぜひチェックしてみてください。
有尾目オオサンショウウオ科オオサンショウウオ属に分類される、世界最大の両生類です。日本の固有種で、岐阜県以西の本州と、九州、四国の標高400~600mにある河川に生息しています。
英名は「Japanese giant salamander」、またあまりにも口が大きいことから、日本では「ハンザキ(半裂き)」と呼ばれることもあります。
野生の体長は50~70cmが一般的ですが、京都水族館で飼育されている個体がなんと150cmと、国内最大を誇っています。
頭が平たく、尾が全身の3分の1をしめており、皮膚はごつごつとして川底の岩と同じよう色をしているのが特徴。ほとんどの時間を水中で過ごし、魚類やカエル、ザリガニ、ミミズなどを食べます。時には共食いをすることも。
夜行性のため、日中は暗がりでじっとしています。
同じ両生類の仲間であるカエルの寿命は約10年、イモリの寿命は約20年です。それに対してオオサンショウウオは、飼育下では50年以上も生きるといわれています。
しかし実は、いまだに正確な数字はわかっていません。野生だと、厳しい環境下であるためか10年程度のものが多いようです。
一般的に生物のなかで寿命が長いのは哺乳類だと考えられていますが、両生類は体の大きさの割に長生きなことがわかります。
彼らは特別天然記念物に指定されているため、食べることはもちろん、捕獲することも禁止されています。ただ指定される前は貴重なエネルギー源とされていたそうで、明治から昭和にかけて活躍した北大路魯山人も、自身の著作にその感想を残していました。
「変わったたべものの中で美味しいものは?と問われるなら、さしずめ山椒魚と答えておこう。」
「ひと口食ってみたら、味はすっぽんを品よくしたような味で、非常に美味であった。汁もまた美味かった。」
「すっぽんとふぐの合の子と言ったら妙な比喩であるが、まあそのくらいの位置にある美味と言うことができようか。すっぽんも相当美味いが、すっぽんには一種の臭みがある。山椒魚はすっぽんのアクを抜いたような、すっきりした上品な味である。」(『魯山人味道』より引用)
魯山人は美食家で、また毒舌としても知られています。そんな彼にここまで絶賛されるとは、どうやらおいしいようですね。
特別天然記念物であるため、個人で飼育をすることはできません。
また食用のために人為的に用いられたとされ、京都の鴨川付近で繁殖しているチュウゴクオオサンショウウオとの交雑種であれば飼育できるという情報もありますが、実はこれらも国際希少野生動植物に指定されています。
見た目では区別がつかないため、見分けがつかないためDNA鑑定をしてみないことにはオオサンショウウオなのかチュウゴクオオサンショウウオなのか交雑種なのかを判断することができません。事実上、日本にいる「オオサンショウウオ」はどれも飼育することはできないといえるでしょう。
- 著者
- ゆうき えつこ
- 出版日
- 2014-07-01
野生動物撮影コーディネーターのゆうきえつこと、動物写真家の福田幸広がタッグを組んだ写真絵本。世界で初めて、オオサンショウウオの産卵から子育てまでを撮影することに成功しました。
「謎多き世界最大の両生類の物語」と表紙に書いてあるように、本作はただの写真集ではなく、「物語」になっているのが特徴です。オオサンショウウオを主人公にして、彼らの暮らしに密着しています。
基本的には夜行性で、しかもかなりゆったりとしか動かない彼らを辛抱強く待ち、密着した福田の努力がうかがえるでしょう。子どもにもわかりやすいつくりなので、親子で一緒に読むのがおすすめです。
- 著者
- にしかわ かんと
- 出版日
- 2015-10-15
著者のにしかわかんとは、動物系統分類学のなかでも両生類を専門にしている学者です。
表紙のインパクトが絶大な本書では、オオサンショウウオの寿命が長いことに着目し、少女の成長と比較しながら彼らの生態を描いています。
オオサンショウウオは卵から孵化した後、はじめの1年間はオスに守られながら成長するそう。数年経つと、「変態」して肺呼吸となり、成熟。そして再び繁殖していくのです。
生態を詳しく知れることはもちろん、命のつながりや川と人との関わり合いなども考えさせられる一冊になっています。
今回は特別天然記念物に指定されているオオサンショウウオを紹介しました。人間に近い寿命をもっているかもしれないと考えると、興味深いですね。もっと詳しく知りたい方はぜひおすすめした2冊を実際に読んでみてください。