食べることが大好きな女子高生・千早は、ムチっとした自分の体にコンプレックスを抱えダイエットを決意。しかし、友人や幼馴染の誘惑に勝てずつい、いつも食べ過ぎてしまいます。この記事では、千早の恋とダイエットを描いた『千早さんはそのままでいい』の魅力をご紹介していきます。
- 著者
- くずしろ
- 出版日
- 2016-01-04
豊満なムチムチボディを持つ千早は、細い女性のほうがよいという世論に当てられてダイエットを決意。しかし、実際ダイエットをしようにも、食べることが大好きな千早。言い訳をしてはついつい食べてしまい、なかなか結果を出せずにいました。
千早の気持ちをわかってくれるのは、ダイエットに成功した中学の同級生・累だけ。幼馴染の志真と友人の岸辺は嬉々として千早に食べ物を与えようとしてくるのです。
ダイエットしたくても結局誘惑に負けてしまう千早の食べっぷりと、幼馴染・志真との恋が見所の『千早さんはそのままでいい』の面白さをご紹介していきます。ネタバレを含むのでご注意ください。
食べるのをやめようやめようとするも、結局食べてしまう千早。食べる前の思い悩む姿と、食べたときの幸せそうな顔のギャップが可愛らしい人物です。また、食べても問題ない、食べなくちゃいけないと思ったときの嬉しそうな表情も非常に可愛らしい。
千早が食べるのを我慢できないのは、どんどん食べ物を勧めてくる周りの人間にも原因はある様子。しかし、料理を前にして簡単に理性が崩壊してしまう姿を見るに、彼女はきっとダイエットには向かない性格のようです。
彼女は本当に食べるのが大好き。千早が何か食べているのを見ると、他の人も食欲が出てきたり、美味しそうと感じてしまうほどです。
また、彼女の食事シーンはどこかエロティックな印象も受けます。食べ物を口に運ぶ瞬間や食べ終わったあとの、紅潮した頬や熱を帯びた視線。食べ物に合わせてわずかに開かれた口や出された舌が官能的な雰囲気をかもし出しています。
人が食事をする姿をエロいと感じる人もいるそうですが、千早の食事シーンはまさにそれ。待ちに待った食べ物を口に運んでいるせいか、食べる喜びを噛み締めているからか、どうもエロく見えてしまいます。
友人である岸辺やその他の女性キャラと何かを食べるときは、一層エロい雰囲気が増します。岸辺は確信犯で、彼女と千早が食べ物を分け合っているときは、どうしても百合もののような、官能的な雰囲気が漂ってしまうのです。
筆者の食に対するこだわりが強く表れている飲食のシーン。ただ食べる姿を描いているのではなく、口周りの表現や表情の描き方がとてもエロく描かれています。
ダイエットと食事がメインテーマではありますが、もう1つ、千早と幼馴染である志真との恋愛模様も、同時進行で描かれていきます。
ある日、私は痩せたほうがいいかと千早に問われた志真は、それぐらいが好きだと答えたます。しかし、志真の好みなんてどうでもいい千早は、個人的な意見を聞きたかったわけではないと一刀両断。
痩せる必要はないんじゃないかと漏らす志真に対し、千早は自分の太ももを触らせてプニプニで筋肉がないと訴えます。思春期の健全な男子である志真は、彼女の太ももの感触に赤面しますが、本人は触られることよりプニプニなことのほうが気になる様子。
志真がぽっちゃりくらいがよいと言ったことから、少なからず志真は千早のことを好いているとは思いますが、千早が志真をどう思っているのかはいまいち不透明です。千早にとって志真は「男子」というより「幼馴染」というイメージの方が強いのかもしれませんね。
岸辺・累とともに志真の家で勉強会をすることになったとき、岸辺に1人で男子のなかに入るのは平気なのか問われ、千早はそこで初めて「男子」「女子」というのを意識したのではないでしょうか。
千早が志真を「男の子」だと認識したあと、志真との間接キスを気にする場面があります。口を付けたことに慌てた志真を見て、彼女もそのことを意識するのです。以前より志真を気にしている証拠ではないでしょうか。
一方で、口を付けた直後は間接キスだと思う志真は、その後に子どものころ回し飲みをしていたことを思い出し、特に意識することはないかと開き直ってしまいます。
この微妙なすれ違いが、2人の恋のような、友だちのような、微妙な距離の原因になってしまうのですが……。千早が志真をただの幼馴染として意識しているのか、好意を持った相手として意識しているのかによって、2人の今後の関係は変わっていきそうです。
主人公・千早はダイエットを決意しても食べることをやめられず、勉強もどうやら不得意。食以外に関してはダメなとこが多々ある様子です。そんな彼女の周りにいる人物はみな一様によい人ばかり。
幼馴染の志真は、痩せたいという千早に食べ物を食べさせるなど、千早にとっては嬉しくない行為ばかりします。彼は嬉しそうに食事をする千早を見るのが好きなようで、食事制限をして笑わなくなるくらいだったら食べていてほしいと思っているようです。
千早の友人でスレンダーな体型の岸辺。千早は岸辺の細さを羨ましがっていますが、岸辺は反対に千早の豊満なボディを羨ましがっているよう。思ったことはすぐに口にするハキハキとした性格の人物ですが、千早の食に関して何かを強制することはなく、彼女の意志を常に尊重してあげる、千早想いのキャラクターですね。
志真の友人で、千早とも中学が一緒だった同級生・累。彼も千早と同じダイエッターで、中学のころはまるまるとしていましたが、ダイエットが成功し一気にかっこよくなり、高校デビューを果たした人物です。妙に食べ物を勧めてくる志真に対して怒ることはありますが、累自身も食べることが好きな分、千早が我慢できずにご飯を食べても特に責めはせず、必要なときは食べるよう勧めてくれます。
志真の家族はもちろん、千早に関わったことのある人物は、千早の意志を尊重しつつも、千早が無理をしているようだったら、それを辞めさせるような人ばかり。それはきっと、千早自身がとても優しくいい人だからでしょうね。
決して太っているわけではないけれど、胸は大きく太ももはムチムチ。少々ぽっちゃりとした体型を気にしている千早は、痩せたほうがいいかもとダイエットを決意。しかし、食べることが好きでお菓子の誘惑にもご飯の誘惑にも勝てず、ついつい食べてしまいます。
1巻では必死に抵抗を続けるのに、食べ物を前にしたら即堕ちしてしまう千早さんの姿が見所。調理実習で餃子を作った際、ただでさえ油っぽい餃子を炭水化物である米と一緒に食べることに躊躇をします。
- 著者
- くずしろ
- 出版日
- 2016-01-04
しかし、千早さん的には両者はどうしても切り離せない最高の組み合わせ……。確かに焼きたての餃子と炊きたての白米の魅力は犯罪級ですよね。炊き上がった米を見た千早さんは結局欲望に負けてしまいます。
「ちょ………ちょびっと…だけ」
(『千早さんはそのままでいい』1巻より引用)
しかし、ちょびっとと言ってよそったご飯は、隣に座った岸辺よりもこんもりと盛られていました。千早さんのちょびっとは人の普通より多い量のことを指すようですね。千早さんの「大盛り」が一体どうなるのか気になるところです。
定食屋をやっている志真の家にご飯を食べに行ったときは、店の常連から昔よくおかずをあげていたという話をされ、子どものころ同様おかずを食べるかと聞かれます。一瞬悩んだものの欲望に勝ち、つまみ食いはいけないと自分を律した千早。さすが、高校生となれば客のおかずをもらうことはしないですね。
忙しそうだった店の手伝いも終え、自分が何を食べるか考えていた千早の目に飛び込んできたのは揚げたての唐揚げ。唐揚げはさすがにカロリーが高いと葛藤する千早ですが、気づいたら唐揚げが口のなかに……。
誘惑に勝てずつまみ食いをしてしまった千早は、ご飯も唐揚げ定食にしたよう。ダイエットの意思はあるもののいざ食べ物を前にするとその思いも消え去る、食べることが好きな人の典型的なタイプですね。
本当に成功するかわからない、千早のダイエット生活が始まります。
食べない決意とダイエット宣言はできるのに、実際の行動には落とせない千早。多少我慢を覚えるようにはなりましたが、我慢した分は結局食べてしまう……。昼間はもちろん、食べてはいけないとわかっている夜中にも、食べ物の誘惑は止まらず、ついつい食べてしまうのです。
2巻では、誘惑に負けて、夕飯も食べた上に夜食も食べてしまう、ダメダメな千早の姿が見所ではないでしょうか。夕飯を食べていないのならまだ罪悪感も少ないですが、夕飯を食べた上での夜食は、のちのちものすごい後悔として押し寄せてきますよね。
そのきっかけとなったのは、チャルメラの音……。
- 著者
- くずしろ
- 出版日
- 2016-10-04
音は聞くことはあるけど屋台を見たことがない、と家を飛び出した千早。その途中で同じように家を出てきた志真と出会います。千早は純粋に音の元を探りにきただけのようですが、せっかくだから食べようと志真に誘われるのです。
「昼前に! 家で! おちついて食べるラーメンより美味いに決まってる」
(『千早さんはそのままでいい』2巻より引用)
背徳感がさらに美味しさを際立たせることもありますが、ダイエットをしたい人間にとって志真くんの言葉は罪ですね。そして、食べ物方面にはチョロい千早はあっさりと説得され、志真よりも美味しそうに、勢いよく麺をすするのです。スープまで飲むあたり、さすが千早ですね。
他にも、ある夜志真が千早にご飯を食べに来るように電話してきます。夕飯に出た麻婆豆腐に物足りなさを感じ、自身で作ったチャーハンと合わせてみたら美味しかった、というのを画像付きで説明するのです。
千早もすでに夕飯を食べたあとでしたが、「麻婆豆腐+チャーハン」というワードに勝てず志真の家に行き、麻婆チャーハンを食べることに。結局美味しかったようなのでいいのですが、志真はダイエットしている人の気持ちがまったくわからない人物ですね。
ぽっちゃりが好きでダイエットをする人の気持ちがわからない志真が近くにいる限り、千早は痩せられないのではないでしょうか。
食べ物のことを中心に生きてきた千早ですが、志真のことを意識し始め、幼馴染としてではなく、男女としての距離が徐々に近づいていきます。しかし、志真との関係、距離の詰め方に迷っているうちに志真のほうに問題が発生してしまいました。
今まで女性のことなどあまり言ってこなかった志真が、突如女性のことを口にするのです。千早はそこで自分の中にある嫉妬の感情を知り、自分が志真のことを好きだと自覚していくのですが……。3巻では、突然意識し始めたせいか少々大胆な行動を取る千早が見所になります。
- 著者
- くずしろ
- 出版日
- 2017-09-04
文化祭で必要なホットプレートを頼み忘れるというミスを犯した千早。それをうまくカバーする志真の姿は、千早にカッコよく写ったよう。今までひとりで戸惑ったり葛藤していた志真がここにきて報われそうです。
そして文化祭中、クラスの出し物にやってきた客と男子生徒との間に言い争いが起こるなど、トラブルも多く、いっぱいいっぱいになた千早は、つい志真に甘えてしまいます。彼女が自分を意識していてくれたことを知った志真はその空気を誤魔化し茶化すように、自分のことが好きなのかと問い、千早はそれを否定しませんでした。
「……そうかも…」
(『千早さんはそのままでいい』3巻より引用)
しかしこの曖昧な告白は曖昧なまま流され、2人の関係は結局何も進展はせず、いつも通りの日々を送ることに。
そんな2人の前にやってきたのが恋の一大イベント、クリスマス。千早は当日バイトで、そのあとは志真・岸辺・累とともに過ごす予定になっていましたが、合流してすぐ志真にだけケーキをプレゼントします。
ただこのプレゼントは以前お世話になった礼として渡しているので、当然進展はありません。クリスマスのあとの恋のイベントと言ったら次はバレンタインですが、千早はバレンタインもみんなとは別にチョコを用意し志真にあげました。
もう好きと言っているようなものですが、ここでもこれ以上の進展はなく。次に千早が行動を起こしたのは春。2年に進級する前、2人で出かけた際、焼きマシュマロを食べている志真が、マシュマロは唇と同じ感触と言ったときです。
焼きマシュマロを食べるかと聞かれた千早が志真にしたことは……。
お互い態度には出ているのに言葉ではきちんと表現していないままの関係。そのなかで志真にある転機が訪れます……。
テンポと2人の距離がもどかしくも気持ちいい『千早さんはそのままでいい』は、千早と志真にキュンとしつつお腹も空くお話となっています。ただのグルメ漫画ではなく、グルメに対する欲望漫画となっている本作を読めば、普通の食事ももっと美味しいものになると思いますよ。