誰もがよく知る人気作品『ドラえもん』。そのヒロインであるしずかちゃんの知られざる一面をご紹介したいと思います。あなたはしずかちゃんというお馴染みのキャラについて、どれだけ知っているでしょうか?
- 著者
- 藤子・F・不二雄
- 出版日
- 1974-07-31
世界的人気を誇る人気作品『ドラえもん』。様々な秘密道具を使って問題解決をする「すこしふしぎ」な日常は、時代と世代を超えて愛されて続けています。
そんな『ドラえもん』の主要人物の1人、しずかちゃん。愛らしい小学生の女の子で、作中の良心とも言うべきヒロインです。
お風呂好きが祟って、よく肌を露出するちょっとお色気なところもあるしずかちゃんですが、今回は彼女にまつわる意外な事実をご紹介しましょう。
「しずかちゃん」こと、本名・源静香(みなもとしずか)は、今でこそ当たり前のようにそう呼ばれていますが、媒体や時期によって呼び方が変化しているのをご存知でしたか?
実は「しずかちゃん」呼びは、多くの人に馴染み深いであろうアニメ版だけの呼称。原作漫画ではずっと「しずちゃん」と呼ばれており、さらに連載初期には「しず子」という名前で紹介されていました。これは愛称の「しずちゃん」が先に決まっていて、フルネームを後から設定したために起こった錯誤でしょう。
ちなみにアニメも北米版では「スー」、中国版は「宜静」、ベトナム版では「Xuka(スーカ)」というように、どことなく雰囲気を残しつつ各国に準拠した名前にされています。
しずかちゃんは『ドラえもん』のほとんどのエピソードに登場するレギュラーキャラです。のび太やドラえもん、ジャイアンなどの行動を諫めたり、とても常識人のイメージがあるのではないでしょうか。他にも乙女チックな存在として劇中男子からの人気も高く、名実ともに、まさにヒロインと言えるでしょう。
しかし、原作漫画では毒舌発言がちらほら見られます。具体的な台詞は後でご紹介しますが、のび太のことを「あんた」と呼んで手厳しい指摘をしたり、あるいはジャイアンと連んで笑いものにしたり。他にも交換日記の中で悪口スレスレの内容を書いたりと結構ブラック。
藤子F不二雄流のブラックユーモアでしょうか。
のび太については<のび太に関する13の事実!『ドラえもん』のいじめられっ子は意外とリア充?>で紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。
- 著者
- 藤子・F・不二雄
- 出版日
- 1976-04-25
ブラックなしずかちゃんと言えば、エイプリルフールを題材にした10巻のエピソード「ハリ千本ノマス」回もなかなか酷い姿が描かれました。
毎年のエイプリルフールで人間不信になっているのび太のために、ドラえもんが嘘が本当になる道具を与えるという話です。そうとは知らないいつもの面々。ジャイアンとスネ夫は例年通り嘘をつこうとしますが、しずかちゃんだけは少し違いました。
嘘にも種明かしでガッカリさせる(上げて落とす)嘘と、恐ろしい嘘を信じさせた後に不吉なことはなかったと明かす親切な嘘があると言うのです。
「いくら四月ばかでも、よろこばせといて がっかりさせるのはかわいそうよ。
それより、びっくりさせといて あとでほっとさせるほうが、しんせつだわ。
あたし、親切なうそついてあげよう」
(『ドラえもん』10巻より引用)
しずかちゃんは自分は後者だと宣言して、意気揚々とのび太の下に向かうのでした。結局騙すことに変わりありません……。ジャイアンも笑いながら「やはりだますんじゃないか」と言っています。
しかしこの「親切心」でついた嘘が、道具のせいで本当になり……。
『ドラえもん』名物(?)と言えば、想像を絶するひどい歌声のジャイアン・リサイタル。ジャイアンのダミ声が、のび太らをよく苦しめるシーンが出てきます。いじめっ子を体現するガキ大将ジャイアン、その対極に位置するのは癒やし系ヒロインのしずかちゃんでしょう。
そんなしずかちゃんはピアノのレッスンを受けるなど、とても育ちの良いお嬢さんです。そんなわけですから音楽的才能があるのだろう……と思いきや、ことバイオリンに限っては酷い腕前なのです。
どれくらい酷いかと言うと近所から苦情が来るほどで、劇中ではジャイアンの歌と比較されるようなシーンもあります。
ジャイアンについて紹介した<ジャイアンに関する13の事実!『ドラえもん』ガキ大将の性格は良い?悪い?>もおすすめです。ぜひご覧ください。
さて、源家ではペットを飼っています。特に印象深いのは柴犬のペロで、しずかちゃんが幼児期から過ごしてきた大の仲良しでした。劇中でペロが病死してしまうという悲しい出来事が起こるのですが、ドラえもんのび太の活躍でことなきを得ました。
そんな源家のペット事情ですが、実は飼っているのはペロだけではありません。チロ、シロという柴犬の他、猫にハムスター、カナリアや文鳥、ジュウシマツにインコ、オウムと多種多様です。
ペットをたくさん飼っているのはそれほど珍しくないのですが、全部が一度に出てくることはなく、どれかが登場している時にそれ以外に言及するシーンも見当たりません。ペロもなぜか子犬の姿で描かれることもあって、いろいろと複雑な事情を感じてしまいます。
- 著者
- 藤子・F・不二雄
- 出版日
- 1975-07-01
ご存知の通り、未来ではのび太としずかちゃんは将来結婚します。ただ、作中時点ではまだ仲の良い小学校の友達でしかありません。親しき仲にも礼儀ありというわけでもありませんが、のび太がうっかりやらかしてしまったエピソードがあります。
それは8巻に収録された「人間製造機」という話の中でのこと。そのものずばり、人間を作ってしまえる秘密道具です。ドラえもんに釘をさされたものの、何を思ったのかのび太はこれを持ち出し、しずかちゃんのところへ行って、こともあろうに「赤ちゃんを作ろう」と持ちかけてしまうのです。
のび太本人は意味をわからず発言したようですが、しずかちゃんが怒ってひっぱたくのも無理はありませんね。
しずかちゃんは非常に女の子らしい女の子です。可愛らしいものや甘いものを好むのですが、特に目がないのは焼き芋。
そんな大好物の焼き芋ですが、しずかちゃんはなぜか嫌がって、人前では食べることも好きだと言うこともありません。少しでも知られると消え入りそうなほどに恥ずかしがります。
今でこそそんな意識はあまりありませんが、連載当時は焼き芋はちょっと後ろめたい食べ物でした。『ドラえもん』以外でも『サザエさん』などの昭和の漫画ではよくあった表現なのですが、戦後代用食という劣等感があったり、イコールで結びつけられがちなオナラのイメージがあったりするからでしょうか……。
いずれにせよ、頬を赤らめて恥ずかしがる様子が可愛いことに変わりありません。
しずかちゃんの代名詞、それは入浴シーンと言っても過言ではありません。お風呂が大好きで、1日3食ならぬ1日3浴は当たり前です。あまりにもしょっちゅう入浴しているので、のび太らがどこでもドアでしずかちゃんのもとを訪れた際は、高確率で浴室に出てしまうのは最早お約束のネタと化しています。
どうしてここまでしずかちゃんはお風呂好きなのか?
なぜ入浴シーンがよく出てくるのか?
もしかしてF先生がスケベだからではないか?
生前、藤子F不二雄本人が招かれたトークイベントで、ファンの1人がそんな質問を投げかけたことがあります。
藤子F不二雄は笑いながら「君たちと同じです」と答えたそうです。これをはぐらかしたと捉えるか、肯定したと捉えるか。あなたはどちらだと思いますか?
- 著者
- 藤子・F・不二雄
- 出版日
- 1982-07-28
『ドラえもん』には感動的な話もたくさんあります。そのなかでも、特に親世代の涙腺を直撃するのが、単独で映画化もされた25巻に収録されたエピソード「のび太の結婚前夜」です。
のび太としずかちゃんは将来結婚する、とは度々語られていますが、未来はともかく現代でその兆候はほとんどありません。不安を覚えたのび太は、ドラえもんに頼み込んで結婚式当日へと向かうのですが、誤って前日に着いてしまうのです。そこで2人が見た式前日の源家のやりとりは感涙必至。
そこでは大人のしずかちゃんがマリッジブルーになっていました。そしてお父さんが寂しがるからという理由をつけて、「あたし、およめに行くの、やめる!!」と言い出すのでした。
そんな彼女へ、すっかり白髪になったお父さんが、生まれてからの様子を振り返り、不安を取り除くように優しく語りかけるのです。
「とんでもない。
きみはぼくらにすばらしいおくり物を残していってくれるんだよ。数えきれないほどのね。
最初のおくり物はきみがうまれてきてくれたことだ。(中略)
それからの毎日、楽しかった日、みちたりた日びの思い出こそ、
きみからの最高のおくり物だったんだよ」
(『ドラえもん』25巻より引用)
そして少しくらいの寂しさは、その思い出が自分を温めてくれると語るのです。そしてさらに結婚相手であるのび太についても語り……。親に出来る最後の勤めであるかのように彼女の背中を押す言葉には、ついうるっときてしまいます。
- 著者
- 藤子・F・不二雄
- 出版日
- 1987-01-01
最後にしずかちゃんの名言をご紹介して終わりたいと思います。まずはこちら。
「人間の値うちは、テストの点数だけできまるものじゃないのよ」
(『ドラえもん』25巻より引用)
人間をテストで計ることは出来ない。よい言葉ですね。……と思いきや、これ酷いシーンなんです。のび太が珍しく100点を取って内心大喜びしてるところへ、確認もせずに言い放った台詞です。日頃の行いが悪いと、気を遣ったフォローがトゲになるという例です……。
「ときどき理屈に合わないことをするのが人間なのよ」
(『大長編ドラえもん7 のび太と鉄人兵団』より引用)
これは鉄人兵団の尖兵リルルが、敵と知りつつなぜ看護するのか疑問に思い、それに答えたしずかちゃんの台詞。良くも悪くも、人間性というものを表した名言であり、名シーンでした。
いかがでしたか? 今回は原作漫画にスポットを当ててご紹介しました。アニメのイメージがあって、意外な事実が多かったのでは?ご存知だったという方はかなりのマニアと言ってよいでしょう。