誰もがよく知る『ドラえもん』の登場人物のび太。今回はそんな彼の意外な素顔と、知られざる事実をご紹介したいと思います。実はあのダメダメな少年がリア充だったかも、という側面からもご紹介します。
国民的人気作品『ドラえもん』の登場人物のび太。絶大な知名度を誇るアニメの影響で、彼のことは知らない人の方が少ないであろう、ドラえもんと並ぶ同作品の主人公です。
本名は野比のび太。のび太という名はニックネームはなく、伸び伸びと成長してほしい、という願いの込められた立派な本名です。親しい友人からは「のび太」と呼ばれています。
誕生日は8月7日。作者の設定の齟齬で生年は1962年と1964年の2種類あります。原作漫画では掲載誌に合わせて学年が変動しますが、基本的には小学4年生です。作中で身長体重等は出てこないものの、スネ夫より高くてジャイアンより低いことから、小学4年生の平均程度である140cm、30kgほどでしょう。
視力は悪く、眼鏡がないと漫画的表現である「3」のような目となるのが特徴です。
引っ込み思案と言うよりは、怠け癖のある出不精といった性格の少年。大人しさを反映してか一人称は「僕」です。ジャイアン達にはしょっちゅうからかわれている、典型的いじめられっ子でもあります。とはいえ彼自身の言動も品行方正というより、ややクズじみたことが目立つので自業自得な面も。
よく「~かしら」と呟くのですが、これは女言葉ではなく「~だろうか」を意味する「かしらん」が縮まったもの。昭和の古い時代に使われていた言い回しで、東京の方言(山の手言葉)を印象付けるために口癖に採用されたのでしょう。
- 著者
- 藤子・F・ 不二雄
- 出版日
- 2008-02-15
- 著者
- 藤子・F・不二雄
- 出版日
- 1978-06-27
怠け者で運動が出来ず、頭も良くないのび太。そんな彼には隠された特技があります。
それは……あやとり!
『ドラえもん』15巻に収録された「あやとりの世界」では、もしもボックスによって作られたパラレルワールドでプロに認められるほどの腕前なのです。既存の技以外にオリジナルを考案してみせるなど、ことあやとりに限れば天性の才能を発揮する少年だったりします。
そしてもちろん忘れてはならないのがもう1つの特技。本編や大長編の冒険において、何度となく窮地を救ったそれは……射撃です!
のび太の一体どこにそんな技能が眠っていたのか、普段のぐうたらからは一切想像出来ませんが、一度拳銃を握れば西部劇のガンマンよろしく名人級の早撃ちを披露してくれます。狙った的には必ず当てる、玄人はだしのスナイパー。
どちらも素晴らしい才能ながら、彼の生きる現代では使いどころが一切ない、という無駄な能力なのが実にのび太らしいです。
- 著者
- 藤子・F・不二雄
- 出版日
- 1984-03-28
あえて特技に換算しませんでしたが、のび太には普段の生活で遺憾なく発揮する天才的な才能がまだあります。
それは眠ることです。
睡眠など誰でも出来ることと思えますが、入眠までに要する時間の短さは尋常ではありません。あやとりの時と同じく、もしもボックスで睡眠が尊ばれるパラレルワールドに行った話「ねむりの天才のび太」(『ドラえもん』30巻収録)では、0.93秒という驚異的な記録を叩き出したのです。これはオリンピックの正式種目たる、睡眠昼寝大会で世界記録を狙える凄まじい速さでした。
このような調子なので、のび太は隙あらば昼寝します。一体1日の睡眠時間はどれくらいになることやら。
当然のように現実世界で役に立つ力ではありません。ストレス社会で生き、睡眠障害に悩むこともある現代人には羨ましい話ではありますが。
のび太のママこと野比玉子(のびたまこ)。年齢は38歳です。旧姓は片岡で、今でこそのび太そっくりの容貌なのですが、結婚前の若いころはしずかちゃん以上の美人でした。
作中初期はのび太に甘い優しいママとして描かれていました。現在私達に馴染みのある怖いのび太ママのイメージからは想像も出来ませんが、何かある度にのび太を甘やかしていた時期があったのです。そんな状態から徐々に、連載当時の高度経済成長期という時代背景を反映して、教育熱心なお母さん像へと変貌していきました。
ママは普段は普通の母親ですが、一度怒り始めると後が怖いのです。お説教が始まれば終わるまでだいたい1時間。長い時には2時間を越えることもあります。そしてその間、ずっと正座していなければいけません。小学生にとっては長時間の正座だけでも充分罰となり得るでしょう。
ただしママが怒るのは、ひとえにのび太を想う愛情の裏返しです。その証拠に、のび太を怒る原因のほとんどは宿題等の勉強、部屋の片付け、家事手伝い、寄り道せず帰ることなど、普通の母親が普通に子供を叱る内容です。時には理不尽なこともありますが……。
ちなみにのび太がママに怒られた回数は、『ドラえもん』全45巻のうち327回にも上るそうです。
- 著者
- 藤子・F・不二雄
- 出版日
- 1991-12-14
のび太のパパの名前は野比のび助と言います。くしくも、未来で生まれることになるのび太としずかちゃんの息子ノビスケとは同じ名前。
年齢は36歳、職業はごくごく一般的なサラリーマンです。役職は課長補佐。
ママが38歳なので姉さん女房ということになります。そんなパパとママの馴れ初めは、学生時代にたまたま道でぶつかったことが縁、というちょっと運命的なものでした。
いや、この時まさにパパは人生の転機、運命を決める岐路に立っていたのです。
今でこそ平凡な会社員ですが、学生当時のパパの夢は画家でした。全国図画コンクールで金賞を受賞する腕前があり、後に大成して有名になる本物の画家に師事していたこともあります。
そのため進路は美術学校を志望していたのですが、厳格な父(のび太の祖父)の反対にあって夢半ばで挫折。そこへ幸運にも富豪がパトロンに名乗り出て、海外留学への道が拓けたのですが……。パパは他人に頼って実現する夢に疑問を抱いて、結局固辞したのです。
そしてそのパトロンを断った帰り道に、ママと出会ったのでした。43巻のエピソードで描かれた、知られざるパパのドラマチックな人生です。
のび太のイメージといえば、のろまないじめられっ子でしょうか。しかし彼には、いじめられっ子にありがちな陰気なマイナスイメージはまるでありません。
主にジャイアンやスネ夫にいじめられるものの、草野球の仲間であり、しょっちゅう空き地に集まる仲です。他にもクラスメイトや野球のチームメイトなど、多くの知人や友達に囲まれる様子はよく描かれています。
あれでいて、のび太は結構コミュ力が高い少年です。しかも将来はしずかちゃんという可愛らしい相手との結婚が確約もされているので、実はいじめられっ子どころかかなりのリア充と言えるでしょう。
- 著者
- 藤子・F・不二雄
- 出版日
- 1974-07-31
のび太の陽キャラを感じさせる設定はまだあります。なんとのび太が将来、起業するというのです。
1988年、就職に失敗したのび太は、それにめげることなく自ら会社を興しました――。これは『ドラえもん』1巻に明かされたことで、歴史的事実として起こった出来事です。
なんというベンチャー精神でしょうか。残念ながら会社は1993年に火事で焼失、それがきっかけで倒産してしまったようなのですが、0から興した会社を実に7年間も経営していたというのですから驚きです。
結果的にその倒産が響いて、子孫のセワシがのび太の運命に介入することになるわけですが。不運に見舞われたとはいえ、ドラえもんが介入する以前でも、独立起業するくらいにはのび太は有能だったわけです。
うっかり持ち上げられるだけ持ち上げてしまいましたが、今度はのび太の駄目なところに注目してみましょう。
のび太はママだけでなく、担任の先生に叱られることが常態化しています。成績不振、宿題はよく忘れ、授業中には居眠りし、テストの点数を指摘され、遅刻したり嘘をついたり、忘れ物で怒られることも。
その度にのび太はお説教されたり、廊下に立たされるわけですが、一向に改善する気配はありません。
- 著者
- 藤子・F・不二雄
- 出版日
- 1974-12-25
『ドラえもん』は「すこしふしぎ」な子供向けギャグ短編が基本です。中には大人も思わず泣いてしまう感動的なエピソードもいくつかあります。
たとえば6巻の「台風のフー子」です。これは後に大長編『ドラえもん のび太とふしぎ風使い』の原案ともなりました。
いつものように、仲間がペット自慢で盛り上がってるのをのび太は羨ましがり、ドラえもんの道具「台風のたまご」でペットを生み出そうとします。そこから小型台風のフー子が孵りました。問題はいろいろあったものの、のび太はフー子をよく可愛がり、しばらく暮らしました。
ところがある夜、超大型台風が日本に上陸。野比家を直撃します。一家の危機にフー子は飛び出し……台風を打ち消して、そして姿を消したのです。
感情がないはずの気象現象との絆が、窮地を救ったという名エピソードです。
- 著者
- 藤子・F・不二雄
- 出版日
- 1974-10-31
のび太には幼稚園のころに亡くなったおばあちゃんがいます。孫を溺愛する優しい祖母に、おばあちゃん子であるのび太がよく懐いていました。
そんなおばあちゃんが登場する原作4巻のエピソード「おばあちゃんのおもいで」はとても感動的な話で、何度もアニメや映画にもなりました。
ある日のび太は、昔お気に入りだったクマのぬいぐるみをゴミ捨て場で見つけます。それはおばあちゃんが繕ってくれた大切な品でした。思い出を懐かしむ彼は、タイムマシンを使って会いに行くことを思い付きます。
ドラえもんの忠告もあって対面はせず、そっと見守るのび太でしたが……いずれ祖母がいなくなることを知らない過去の自分の言動、おばあちゃんの姿を目にして我慢出来るはずがありません。
未来から来たと言って信じてもらえないのを承知で、のび太はおばあちゃんに正体を告げました。ですが、予想に反しておばあちゃんはのび太が成長した本人だと受け入れたのです。
これだけでも感動的なのですが、見方を変えるとさらに泣けるのです。8年後の孫がわざわざ自分に会いに来た理由。8年後に会うことが出来ない、とおばあちゃんの側から考えるととても切ないエピソードです。
- 著者
- 藤子・F・不二雄
- 出版日
- 1982-07-28
続いての感動エピソードはしずかちゃんに関する話です。単独で映画化もされた25巻の「のび太の結婚前夜」。こちらは『ドラえもん』ではあまりイメージのない恋愛メインのお話です。
ドラえもんが来たことで、のび太は憧れのしずかちゃんと将来結婚する運命にあります。それにも関わらず不安になったのび太は、ドラえもんに頼んで2人の結婚式を見に行くことにしました。ここで間違って当日ではなく前日に着いた2人は、式前日の源家を覗くことになりました。
マリッジブルーに陥っていたしずかちゃんへ、すっかり老けたお父さんが父親の心境を語って聞かせます。それは『ドラえもん』の対象年齢の読者には、おぼろ気にしかわからない内容ですが、このシーンを大人の親目線で見ると涙腺が決壊するほどの感動的な話でした。
ぜひ、こんな良い育てられ方をしたしずかちゃんをお嫁にもらうことができるとは、本当にのび太は幸せ者です。
しずかちゃんについては<しずかちゃんに関する10の事実!『ドラえもん』のヒロインは可愛くて毒舌?>で紹介しています。
- 著者
- 藤子・F・不二雄
- 出版日
- 1977-12-20
『ドラえもん』ファンの間では今も語り草になる、とあるタイムパラドックスの問題があります。
それは14巻「無人島へ家出」でのこと。この話の中で、のび太はドラえもんの道具を勝手に持ち出して、誰もいない無人島へと家出しました。紆余曲折あって唯一の脱出手段、タケコプターを紛失。助けを呼ぶことも出来ず、10年間過ごすはめになりました。
物語では最終的に、役立たずと判断した道具が実はSOS発信器だったことがわかり、それによってドラえもんに救出されました。ドラえもんはタイムマシンで10年前にのび太を送り、タイムふろしきで成長した姿を元に戻して、10年間の家出はなかったことになり一件落着。
ところがここに問題があります。
無人島で10年間過ごしたのび太が、元の時代に戻って家出しなかったことで起こる矛盾。それは家出がなくなると、10年後のび太の救助が行われなくなるということです。救助が行われないと家出は継続することになり、そうすると救助が行われるはずで……というタイムパラドックス。
ですが、これは順序立てて考えると解決可能です。わかりやすいように10年後の時間軸のキャラをA、10年前をBとします。
10年後ののび太Aは、同じ時間軸のドラえもんAに救助される。のび太Aは10年前に戻り、家出はなかったことになります。同じ時、無人島にはのび太Bがいます。10年が経過してからのび太AがSOS発信のタイミングで、10年間過ごしてきたドラえもんBに事情を説明して、のび太Bの救助をさせるのです。
10年後のタイミングで、必ず救助をおこなうという事実を作るのです。こうすれば10年間はのび太が同じ時代に2人存在することになりますが、矛盾は回避出来ます。
- 著者
- 藤子・F・不二雄
- 出版日
- 1974-11-28
ここまでのび太のいいところも悪いところもご紹介してきましたが、最後はとっておきの名言で終わりに替えたいと思います。普段はちゃらんぽらんなのび太でも、思わず「のび太の癖に生意気な!」となってしまうほどいいことを言っていたりするのです。
第3位:
「みたろ、ドラえもん。かったんだよ。ぼくひとりで。
もう安心して帰れるだろ、ドラえもん」(『ドラえもん』6巻より引用)
ご存知、実質的最終回「さようなら、ドラえもん」での台詞です。いつも情けないのび太が、ドラえもんに心配をかけさせたくない一心でジャイアンすら根負けさせた名エピソード。最後のモノローグも合わせると感涙必至。
「ドラえもん、きみが帰ったら部屋ががらんとしちゃったよ。
でも……、すぐになれると思う。
だから……、心配するなよ、ドラえもん」
(『ドラえもん』6巻より引用)
第2位:
「いちばんいけないのは じぶんなんかだめだと思いこむことだよ」
(『ドラえもん』7巻より引用)
ぜひとも胸に刻んで日々を生きたい名言。
「好きでたまらニャい」にて近所の猫に片想いし、容姿を気にして勝手に失恋するドラえもん。それを叱咤激励するのび太の姿は、いつもと立場が逆転して頼り甲斐のある少年に見えました。さらにこうも付け加えるのです。
「自身を持て! ぼくは世界一だと!」(『ドラえもん』7巻より引用)
なかなか見られない、のび太のドラえもんへの愛ある叱責です。
第1位:
「のんびり行こうよ、人生は」(『ドラえもん』5巻より引用)
こちらは打って変わって名言というか迷言というか……野比のび太というキャラをよく表した台詞と言えるでしょう。
「のろのろ、じたばた」という話でのんびり屋を心配された一幕での発言ですが、とにかく急ぎがちな現代人は逆に見習うべき姿勢かも知れません。
いかがでしたか? ぐうたらのろまののび太も、結構凄いやつなんです。
ドラえもんについては<ドラえもんに関する11の事実!『ドラえもん』の体には、秘密がいっぱい!>の記事で紹介しています。気になる方はあわせてご覧ください。