「毒針」「猛毒」「凶悪」などのイメージがあるサソリ。実に世界に1000種類以上いることがわかっています。今回はそんな彼らの生態や特徴、食性などをわかりやすく解説していきます。あわせておすすめの関連本もご紹介するので、ぜひチェックしてみてください。
節足動物門鋏角亜門クモ綱サソリ目に分類される動物の総称で、現存する節足動物のなかでは最古の生き物だといわれています。
大陸がいまの形になる前から存在していたためか、生息範囲は広く、とりわけ南半球に関しては南極大陸やニュージーランドなど一部を除いてほぼすべての地域に分布している繁栄ぶりです。
体の特徴として、足は4対で合計8本あり、尾に近いものほど長くなっています。体長は種類によってさまざまですが、平均で4~10cmほど。寿命は5~8年ですが、なかには20年を越えるものもいます。
肉食で、主食は昆虫や小動物など。ハサミで獲物を捕まえ、尾にある針を刺して殺し、ハサミで千切って食べます。基本的に活発ではないので、自ら狩りをするのではなく、動かずに待ち伏せをすることが多いようです。
毒をもっているため敵が少なそうな印象がありますが、実は彼らにとっても天敵は多く存在し、とくにクジャクはサソリを好んで食べるそう。ちなみに人間を殺せるほどの猛毒をもった種類はごくわずかしかいません。
世界中に1000種類以上いるなかから特徴的なものをご紹介します。
ダイオウサソリ
「エンペラースコーピオン」とも呼ばれる世界最大の種類で、大きいものだと20cmにまで成長します。体重は30g程度です。
生息地はアフリカ。黒くて大きいハサミをもっているのが特徴です。一見怖そうですが、おとなしい性格で毒性も弱いため、実はペットとして人気。価格も1000~6000円とお手頃になっています。
デザートヘアリースコーピオン
自然界で20年以上生きるといわれる長寿が特徴です。アリゾナ砂漠に生息し、素早く攻撃的な性格をしています。
白く透きとおった見た目と、乾燥した環境でも生きられる飼いやすさから、ペットとしても人気の種です。価格は6000〜9000円ほどになっています。
オブトサソリ
非常に攻撃的で、強い毒を持つ種類です。通称「デスストーカー」と呼ばれていて、1度狙った獲物は俊敏な動きで追いかけて逃さず、尾にある針で刺して仕留めます。
生息地は中東。サソリのなかでも危険な種類として認識されていて、人間が死亡した例も確認されているので注意が必要です。
日本には2種類が生息しており、沖縄の宮古島、多良間島、石垣島、西表島、波照間島、与那国島などで見ることができます。
ヤエヤマサソリ
3cmほどの小型種で、石垣島を中心とする八重山諸島に生息。国外では東南アジアやオセアニア、オーストラリアになどに分布しています。主にシロアリなどを食べ、岩や枯葉の下で暮らしているそうです。
オスはほとんどおらず、「単為生殖」で子孫を残しているのが特徴。単為生殖はサソリのなかでもかなり珍しく、可能性のあるものも含めて18種類しかいません。
毒性は非常に弱く、また尾についている針は人間の皮膚を貫くことができないほど小さなもの。刺されてもほぼ無害です。
マダラサソリ
6~8cmほどの中型サイズ。森林よりも拓けた場所を好み、生垣や人家の壁面で見ることができます。
体に黄色い斑点模様があり、尾が体長の半分を占めているのが特徴。毒性はそれほど強くなく、ミツバチ程度だといわれています。もし刺されたとしても患部がほんのりと赤くなり、2~3日で回復するでしょう。
攻撃的な性格をしているキョクトウサソリ科のなかでは、唯一飼育が可能な種類です。
実は非常に小食なサソリ。1週間でコオロギ1匹もあれば事足りてしまいます。種類によっては1年間ほど絶食することができるものもいるそうです。
というのも、彼らはもともと活動的な生物ではありません。普段は岩陰や木の陰に隠れており、動くの目の前を通った獲物を捕食する時のみ。
また砂漠など過酷な環境のなかでも、低燃費で生き抜くことができるよう環境に順応していったのでしょう。4億年以上前から現代まで種が存続しているのも納得できます。
- 著者
- ["相原 和久", "秋山 智隆", "川添 宣広"]
- 出版日
ユニークな3人の作者が手掛けた、節足動物に関するガイド本です。
相原和久は両生爬虫類飼育の愛好家、秋山智隆は日本蜘蛛学会会員、そして川添宣広は爬虫類、両生類、魚類などの撮影と出版をおこなっている人物です。
本書では、世界に約800種類いるといわれるタランチュラのなかから140種類、サソリから50種類を取りあげて、その生態、飼育方法、繁殖方法、緊急時の対応などを丁寧に解説しています。
また「ビジュアルガイド」というだけあり、写真がふんだんに使われているのも特徴。見たことのない種類の体の様子も細かく知ることができます。
- 著者
- ["ファーブル", "奥本 大三郎"]
- 出版日
- 1991-07-05
著者は、フランスの博物学者であるジャン=アンリ・カジミール・ファーブル。 貧しい家で育った彼は、昆虫と出会い、その魅力にとりつかれました。
本作は、世界中で高い評価を受け、ファーブルの名を広めた「昆虫記」の第4巻。サソリについて、鋭い観察眼で語っています。求愛ダンスや絶食、獲物の捕らえ方、毒針の威力などを知ることができるでしょう。
彼の研究の特徴は、ほとんど先行研究を頼りにせず、ただひたすら自分で観察と実験をすること。目の前にいる生物にひたすら向き合い、記録していきます。
物語調で書かれているため、難解さはありません。大人から子どもまで楽しめるおすすめの一冊です。